TikTokやリールでCPAが上がると、入札と予算から触りたくなります。
ところが、ショート動画で数字が動く原因は、その2つの外側にあることがほとんどです。
計測のズレ、クリエイティブの消耗、冒頭2秒の離脱。
原因が複数の場所に分かれているため、探す順番を決めないと切り分けられません。
この記事では、確認する7か所とその順番、そして条件別の最初の一手をまとめます。
CPA高騰の原因は入札ではなく、計測・消耗・冒頭2秒・訴求距離・受け皿・予算・審査の7か所にあります。
上から順に確認し、1週間に1か所だけ変えると、原因が特定できます。
- ショート動画は静止画より消耗が早い。CPAが動く前に、フリークエンシーとCTRの初週比に兆候が出る
- 冒頭2秒で落ちているのかLPで落ちているのかは、2秒視聴率と75%視聴率を並べれば切り分けられる
- 本数増・バズ動画の転用・即停止・入札の先下げ。この4つはCPA高騰の対処にならない
※本記事の数値は、実案件で起きやすい状況を一般化したモデル試算です。特定企業の実績ではありません。
目次
- CPAが上がったとき、動いているのは4つの層のどれかです
- 点検1:数字そのものが合っているかを先に確かめる
- 点検2:動画が消耗していないかを初速との比で見る
- 点検3:冒頭2秒で落ちているのか、その先かを切り分ける
- 残る4か所を、訴求・受け皿・予算・審査の順に下りる
- 条件別に見た、最初に手をつける場所
- 効かないケースと、やってはいけない対処
- よくある質問
- まとめ
CPAが上がったとき、動いているのは4つの層のどれかです
CPAが上がったという相談で最初に出てくるのは、入札を上げるか予算を減らすかという二択です。
その前に見るものがあります。
CPAは単独の指標ではなく、4つの層の掛け算として出てくる数字だからです。
配信の単価が上がったのか、動画が見られなくなったのか、クリックされなくなったのか、LPで落ちているのか。
この4つは、それぞれ違う対処を必要とします。
入札と予算が効くのは最初の1層だけです。
ほかの3層が原因のときは、触っても数字は動きません。
表1|CPAが1.7倍になったときの、層ごとの動き方(モデル試算)
| 層 | 見る指標 | 先週 | 今週 | この層が原因のときの症状 |
|---|---|---|---|---|
| 配信の単価 | CPM | 820円 | 880円 | CPMだけ上がり、他の率は横ばい |
| 動画の突破率 | 2秒視聴率 | 38% | 26% | 再生は出るが早い段階で落ちる |
| 遷移の質 | CTR | 1.4% | 0.9% | 最後まで見られてもクリックされない |
| 受け皿 | LPのCVR | 2.1% | 2.0% | 到達はするがフォームまで進まない |
※【モデル試算】自社の管理画面の数字に置き換えて、同じ表を作ってください。
この例で動いているのは2秒視聴率とCTRです。
CPMは7%しか上がっていないので、入札や予算の問題ではありません。
ここで入札を上げると、見られていない動画をより高い単価で配信することになります。
POINT
触る順番を固定すると、変更と結果の対応が取れます。
1週間に2か所以上を同時に変えると、どちらが効いたか分からなくなります。
点検1:数字そのものが合っているかを先に確かめる
CPAが動いたとき、最初に確かめるのは施策ではなく数字の信頼性です。
ショート動画広告は、計測が落ちやすい条件が他の媒体より多く揃っています。
ここを飛ばすと、存在しない問題に対策を打つことになります。
TikTokやInstagramの広告からLPへ遷移すると、多くの場合はアプリ内のブラウザで開きます。
この環境では、Cookieの保持期間やリダイレクトの扱いが外部ブラウザと変わることがあります。
結果として、媒体側のCV数とサイト側の計測に差が出ます。
差が出ること自体は避けられません。
問題は、差の大きさを把握しないまま両方の数字を並べて議論することです。
もう1つ見落とされやすいのが、媒体ごとのアトリビューション期間です。
クリック後の計上期間が違うまま並べると、期間の長い媒体のCPAが構造的に低く出ます。
比較の場では、最短の期間に揃え直してください。
計測を揃えるだけで、施策を何も変えずにCPAの見え方が2割前後動く場合があります。
この作業は1回やれば済みます。
点検2から点検7は、揃った数字の上で初めて意味を持ちます。
注意
計測の修正と施策の変更を、同じ週に行わないでください。
翌週の数字がどちらの結果なのか、判断できなくなります。
点検2:動画が消耗していないかを初速との比で見る
ショート動画の広告は、静止画バナーより早く効かなくなります。
同じ人に何度も表示されるまでの時間が短く、内容も一度見れば把握できるためです。
これは運用のミスではなく、前提として本数計画に織り込むものです。
消耗が進むと、指標は決まった順番で動きます。
最初にフリークエンシーが上がり、次にCTRが下がり、最後にCPAが上がります。
CPAが動いたときには、2段階前から兆候が出ています。
差し替えを検討する目安は2つです。
7日間のフリークエンシーが3.5回を超えたか、CTRが初週の7割を下回ったか。
どちらも、絶対値ではなく自社の初速との比で見ます。
- 初速を記録する投入後48時間の2秒視聴率・CTR・CPMを控えます。この3つが、後の比較の原点になります。
- 初週比で追う絶対値ではなく初週との比で見ます。季節要因や競合の入札変動の影響を、ある程度打ち消せます。
- 差し替えを予約する閾値を割った時点ではなく、割りそうな時点で次の動画の制作を始めます。制作に1〜2週間かかるためです。
消耗した動画を止めるだけでは、CPAは戻りません。
止めた分の予算が残った動画に流れ、そちらの消耗を早めるためです。
停止は、差し替えとセットで動かしてください。
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- 媒体CVとサイト側CVの差が、許容できる範囲に収まっているか
- フリークエンシーとCTRの初週比から、差し替え時期が来ていないか
- 動画で言っている一言が、LPの1画面目に出ているか
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点検3:冒頭2秒で落ちているのか、その先かを切り分ける
ショート動画は、最初の2秒で見続けるかどうかが決まります。
視聴者は能動的に広告を見に来ていないため、判断が速くなります。
ここで落ちている場合、後半をどれだけ作り込んでも数字は動きません。
切り分けは簡単です。
2秒視聴率と75%視聴率を並べるだけで、落ちている場所が分かります。
表2|視聴維持率の読み方と、次に打つ手
| 2秒視聴率 | 75%視聴率 | 起きていること | 次に変えるもの |
|---|---|---|---|
| 低い(20%未満) | 低い | 冒頭で離脱している | 最初の2秒の画と一言 |
| 高い(35%以上) | 低い(3%未満) | 掴めているが中盤で飽きられている | 課題提示から解決までの尺 |
| 高い | 高い(6%以上) | 最後まで見られてもクリックされない | オファーと遷移先の提示 |
| 低い | 高い | 刺さる層が狭く、母数が足りない | フックの種類を増やす |
※【モデル試算】閾値は媒体と商材で変わります。同じ表を自社の直近3本で作り、相対比較で使ってください。
判断の基準は絶対値ではありません。
自社の過去3本の中央値を基準に、そこから3割以上落ちていれば冒頭を疑います。
媒体の公表値と比べても、商材が違えば参考になりません。
フックで最も外れやすい作り方
成果が安定している動画は、フック・課題提示・解決・オファーの順番がほぼ共通しています。
15秒なら、フックに2秒、課題提示に3秒、解決に6秒、オファーに4秒が目安です。
尺が30秒や60秒に伸びても、フックの長さはほとんど変わりません。
最も外れやすいのは、ロゴや商品名から始める作り方です。
広告だと2秒で分かると、そのまま送られます。
オファーも末尾だけでなく、解決パートの途中に短く挿入してください。
残る4か所を、訴求・受け皿・予算・審査の順に下りる
計測・消耗・冒頭の3つで原因が見つからないときは、ここから下りていきます。
点検4:訴求が商材の検討期間から離れていないか
検索広告は、すでに困っている人が自分で言葉を入力して来ます。
ショート動画は、何も探していない人の画面に割り込みます。
探していない人に「今すぐ購入」と言っても、判断の材料がありません。
クリックはされてもLPで戻り、CPAだけが上がります。
検討期間が数日を超える商材では、CVポイントを1段手前に下げてください。
定期購入なら初回トライアル、高単価の耐久財ならカタログ請求や来店予約が目安です。
ただし、下げたCVがその後どれだけ購入や商談に進んだかを、同時に記録してください。
資料請求は増えたが売上が変わらない、という結果は起こります。
点検5:LPの1画面目が動画と噛み合っているか
動画を見た人がLPを開いたとき、期待している内容があります。
そこに同じものが出ていないと、1画面目で戻ります。
これは「LPのCVRが低い」という問題とは別で、動画とLPの接続が切れている状態です。
確認は1分で終わります。
動画の中で最も強く言っている一言を書き出し、LPの1画面目にその言葉があるかを見るだけです。
動画とLPの接続を確認する項目
- 動画の一言が、LPの1画面目の見出しに含まれている
- 動画で見せた商品と同じ画像が、1画面目にある
- 価格・初回条件・解約条件が、2スクロール以内にある
- スマートフォンの実機で、読み込みが2秒以内に完了する
- 1画面目にCTAボタンがあり、指の届く位置にある
LPを新しく作り直す必要はありません。
1画面目の見出しと画像を動画に合わせるだけで、直帰の水準が変わります。
訴求が大きく違う動画が3パターン以上あるときは、LPも分けてください。
点検6:1本あたりの予算が学習に足りているか
制作単価が下がったため、少額の予算を多くの動画に分ける運用が増えています。
この配分は、CPAを押し上げる方向に働きます。
媒体の最適化は、一定量のCVデータが溜まって初めて精度が上がるためです。
目安は、1本あたりの週次CVが10件前後を確保できる本数です。
月予算60万円で目標CPA5,000円なら、同時配信は3〜5本に収まります。
本数を増やしたいときは、予算を増やすか、主力の2〜3割をテスト枠に切り出してください。
勝ち負けの判定は、CVが15件前後溜まってから行います。
CV5件の時点でのCPA差は、ほとんどが偶然の範囲です。
点検7:審査で配信量が絞られていないか
配信量が急に落ちたとき、審査で止まっている可能性があります。
ショート動画は映像・音声・テロップ・音楽の4要素があり、審査の対象が広くなります。
止まり方は2種類あります。
広告自体が非承認になる場合と、承認はされているが配信量が絞られる場合です。
後者は管理画面にエラーが出ないため、気づくのが遅れます。
インプレッションが前日比で半分以下になったら、まず審査状況を確認してください。
同じ訴求を表現違いで2〜3本持っておくと、1本が止まっても配信が続きます。
注意
審査の基準は媒体ごとに異なり、更新もされます。
化粧品・健康食品・医療・金融などの表現は、各媒体の最新のガイドラインと必要に応じて専門家の確認を経てください。
条件別に見た、最初に手をつける場所
点検1から点検7まで見てきましたが、全部を同時に直すことはできません。
条件ごとに、最初に触る場所を決めておきます。
表3|条件別の判断基準と、最初の一手
| いまの状態 | 判断基準 | 最初に手をつける場所 | 変えないもの | 効果が見える時期 |
|---|---|---|---|---|
| 媒体CVとサイト側CVの差が2割超 | 実機テストでタグが発火しない | 計測の修正 | 予算・入札・クリエイティブ | 修正の翌週 |
| フリークエンシー3.5回超 | CTRが初週比7割未満 | 新規動画3本の投入 | ターゲティング・LP | 投入から1〜2週間 |
| 2秒視聴率が自社中央値の7割未満 | 75%視聴率も同時に低い | 冒頭2秒の作り直し | 尺・オファー・LP | 差し替えから1週間 |
| CTRは高いがLP直帰が7割超 | 動画の一言がLP1画面目にない | LP1画面目の差し替え | クリエイティブ・予算 | 公開から3〜5日 |
| 1本の週次CVが5件未満 | 同時配信が6本以上 | 本数を3〜4本に絞る | クリエイティブの内容 | 絞ってから2週間 |
| インプレッションが前日比で半減 | 審査ステータスに変更がある | 審査の確認と表現の修正 | 予算・ターゲティング | 再審査から2〜3日 |
※【モデル試算】閾値は目安です。上から順に確認し、最初に当てはまった行だけを実行してください。
この表の使い方は1つだけです。
上から読み、最初に当てはまった行を実行します。
2行目以降は、1行目の結果が出てから判断します。
複数を同時に変えると、次にCPAが上がったときも同じ場所から探し直すことになります。
効かないケースと、やってはいけない対処
ここまでの点検を行っても、CPAが下がらない場合があります。
市場の需要が縮んでいる、競合が大幅に予算を増やした、商材の価格競争力が落ちている。
こうした場合、広告運用側でできることは限られます。
それとは別に、対処として選ばれやすいが効かない手が4つあります。
1つ目は、予算を増やさずに本数だけを増やすことです。
1本あたりの予算が薄まり、どの動画も学習が完了しません。
勝ち負けが判定できないまま、全体のCPAだけが上がります。
2つ目は、オーガニックでバズった動画をそのまま広告に転用することです。
オーガニックの動画は最後まで見てもらうことで評価され、広告は次の行動に移すことで評価されます。
再生数が伸びた動画には、オファーも遷移先の提示も入っていないことが多くあります。
転用するなら、フックだけを借りて、課題提示から後ろを作り直してください。
3つ目は、CPAが高い広告セットを即停止することです。
CVが3件や5件の段階でのCPAは、次の10件でまったく違う値に動きます。
1件のCVが加わるだけで、CPAが半分になる水準です。
4つ目は、目標CPAや入札上限を先に下げることです。
配信量そのものが減り、学習に必要なデータが集まらなくなります。
CPAは一時的に下がっても、翌週には元に戻ることが多くなります。
今週から着手できること
- 実機で広告をタップし、LPでタグが発火するかを確認する
- 各媒体のアトリビューション期間を書き出し、比較用に最短へ揃える
- 配信中の全動画について、投入後48時間の初速を記録する表を作る
- 2秒視聴率と75%視聴率を並べ、自社の中央値を出す
- 動画の一言とLP1画面目の見出しを、同じ行に書き出して突き合わせる
POINT
CPAだけで判断すると、認知寄りの配信を早く切りすぎることがあります。
指名検索の表示回数を同じ資料に並べ、2週間の停止テストで確かめてから決めてください。
よくある質問
動画は何本あれば運用が回りますか
月予算と目標CPAで決まります。1本あたりの週次CVが10件前後を確保できる本数が上限です。月予算60万円で目標CPA5,000円なら、同時配信は3〜5本が目安になります。加えて毎月2〜3本の新規を用意できると、差し替えが滞りません。足りないときは、既存動画のフック違い・尺違いを作るところから始めてください。
TikTokとリールで、同じ動画を使い回してよいですか
素材の使い回しはできますが、そのままの投入は避けてください。媒体ごとに利用者層と滞在の文脈が違い、同じフックでも2秒視聴率に差が出ます。実務上は、同じ素材からフックの入りとテロップだけを媒体別に作り分ける方法が現実的です。安全領域の位置も異なるため、書き出し前に各媒体のプレビューで文字が読める位置にあるかを確認してください。
CPAが目標の2倍のまま2週間が過ぎました。止めるべきですか
CV件数を先に確認してください。累計CVが15件未満なら、まだ判断材料が足りません。その場合は止めるのではなく、日予算を半分にして期間を延ばし、件数を溜めます。15件以上あってCPAが2倍のままなら、点検の順番に戻ります。2秒視聴率が自社中央値の7割未満なら冒頭、CTRが高いのにLP直帰が7割超ならLPが先です。
まとめ
- CPAは4層の掛け算の結果。入札と予算が効くのは最初の1層だけなので、動いている層を先に特定する
- 点検の順番は、計測・消耗・冒頭2秒・訴求距離・受け皿・予算・審査の7つ。上から順に見る
- 計測のズレは、施策を何も変えずにCPAの見え方を2割前後動かすことがある
- ショート動画は消耗が早い。フリークエンシーとCTR初週比で、CPAが動く前に兆候をつかむ
- 2秒視聴率と75%視聴率を並べると、冒頭・中盤・オファーのどこで落ちているかが分かる
- 動画で言った一言がLPの1画面目にないと、到達しても戻る。作り直すのは1画面目だけでよい
- 本数増・バズ動画の転用・即停止・入札の先下げは、CPA高騰の対処にならない
直すのは入札ではなく、止まっている場所です。
順番を固定すると、次にCPAが上がったときの判断が早くなります。
動画の制作本数を増やす前に、止まっている場所を特定します
KAIZENは、広告運用だけでなく計測・LP・クリエイティブの設計をまとめて見直す一括支援です。
管理画面の数字とLPとフォームを同じ表に載せ、次の4週間で着手する順番を決めます。