初回定期のCPAが目標の1.8倍から下がらず、クリエイティブは2週間で疲れる。
そのうえ2回目の継続率まで落ち、CPAを下げても利益が戻りません。
起きていたのは入札の問題ではなく、何をCVとして数え、どの指標で判断するかという評価軸の問題でした。
月1,000万円規模の化粧品D2Cが12週間で何を変えたかを、効かなかった打ち手も含めて順に書きます。
初回CPAの高騰は、入札やオファーではなく、評価軸を3か月LTVに置き換えると動きます。
訴求ごとに許容CACを引き直した結果、初回CPAは31%下がり、LTV÷CACは1.08から1.91になりました。
- 最初の2週間は入札もオファーも動かさず、計測とLTVの点検だけに使う
- 初回CPAではなく、訴求ごとの2回目継続率で許容CACを分ける
- 値引きの上乗せとクリエイティブの増産は、どちらも採算を悪化させた
※本記事の数値は、実案件で起きやすい状況を一般化したモデルケース(シミュレーション)です。特定企業の実績ではありません。
目次
- 3か月で動いたのは、初回CPAではなく2回目継続率でした
- Before:初回CPAが目標の1.8倍だったとき、何が起きていたか
- Week1〜2:配信は動かさず、計測とLTVだけを点検する
- Week3〜4:評価軸を初回CPAから許容CACに置き換える
- Week5〜6:効かなかった打ち手を2つ、先に書きます
- Week7〜10:LPと、初回到着後7日間を作り直す
- Week11〜12:引上率とLTV÷CACで予算を配分し直す
- 効かないケースと、やってはいけない対処
- よくある質問
- まとめ
3か月で動いたのは、初回CPAではなく2回目継続率でした
12週間で最も大きく動いたのは、2回目継続率でした。
61.5%から78.2%へ、16.7ポイント上がっています。
初回CPAは10,800円から7,400円で、下げ幅は31%です。
目標の6,000円には届いていません。
それでもLTV÷CACは1.08から1.91まで戻り、採算は成立する水準に入っています。
原因は評価軸でした。
初回CPAだけで入札とオファーを調整すると、配信は価格訴求に寄っていきます。
価格で入った顧客は、2回目の請求前に解約します。
初回CPAを下げるほど、3か月LTVが削れる構造でした。
3か月でやったことの大半は、入札の調整ではなく、許容CACを訴求ごとに引き直す作業です。
表1|Before/After(モデル試算・月次換算)
| 指標 | Before(Week0) | After(Week12) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 月間広告費 | 10,000,000円 | 10,000,000円 | 同額 |
| 初回CPA | 10,800円 | 7,400円 | -31.5% |
| 初回定期申込 | 926件 | 1,351件 | +45.9% |
| 2回目継続率 | 61.5% | 78.2% | +16.7pt |
| 3か月LTV | 11,700円 | 14,100円 | +20.5% |
| LTV÷CAC | 1.08 | 1.91 | +0.83 |
※モデルケースの数値です。広告費は3か月とも1,000万円で固定しています。
POINT
初回CPAが目標未達でも、LTV÷CACが1.8倍を超えていれば止める理由にはなりません。
先に見る順番を初回CPAからLTV÷CACに入れ替えるだけで、判断が変わります。
Before:初回CPAが目標の1.8倍だったとき、何が起きていたか
前提を先に置きます。
スキンケア単品の定期購入で、初回3,980円、2回目以降6,980円です。
媒体はMeta約70%、Google P-MAX約20%、指名検索約10%。
体制は社内マーケ1名に、制作会社1社と運用代理店1社です。
目標は初回CPA6,000円、2回目継続率75%、3か月LTV÷CAC1.8倍でした。
Week0の初回CPAは10,800円で、目標の1.8倍のまま4か月が経過しています。
社内では「Metaが悪くなった」という説明が定着しかけていました。
ただしCPMの上昇は前年同月比18%で、CPAが1.8倍になる説明にはなりません。
実際には、CVの中身が変わっていたことが最大の要因でした。
Meta側のPurchaseイベントに、単品購入と初回定期申込が両方入っていたためです。
単品購入は定期より安く獲れるので、配信はそちらへ寄っていきます。
管理画面上のCPAは6,400円で、目標をほぼ達成しているように見えていました。
一方で基幹システム側の初回定期申込は926件しかありません。
もうひとつ、2回目継続率が1年前の72%から61.5%まで落ちていました。
この2つが重なった結果が、LTV÷CAC 1.08という数字です。
Week1〜2:配信は動かさず、計測とLTVだけを点検する
最初の2週間は、入札も予算もオファーもクリエイティブも動かしていません。
変えたのは計測の設定とデータの取り出し方だけです。
数字が信用できないまま施策を打つと、翌週の変化の理由を切り分けられないためです。
Week1の観測は、件数のずれでした。
管理画面のCV数は1,562件、基幹システムの初回定期申込は926件です。
差の636件を突合すると、単品購入が498件、重複計上が138件でした。
重複排除キーが一部の決済経路で欠けていたためです。
単品購入のCPAは3,100円で、初回定期申込よりはるかに安く獲れます。
そこでPurchaseイベントを2つに分離し、初回定期申込だけを主要コンバージョンに指定しました。
管理画面のCPAは6,400円から10,800円に跳ね上がりますが、実態に合っただけです。
POINT
計測を直すと、たいていCPAは悪化して見えます。
直す前に「来週の数字は上がります」と共有しておくと、改善そのものを疑われずに済みます。
Week2はLTVの点検に使いました。
クリエイティブIDと注文データをUTMのcontent値で紐付け、過去6か月・約5,400件を訴求別に割っています。
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Week3〜4:評価軸を初回CPAから許容CACに置き換える
訴求別に割った継続率は、価格訴求44.2%、成分訴求81.0%で36.8ポイントの差でした。
初回CPAは価格訴求が7,900円、成分訴求は13,600円です。
初回CPAだけで見れば、価格訴求に寄せるのが正解になります。
ところがLTV÷CACで並べると、価格訴求1.09に対して悩み共感訴求は1.18でした。
方向が初回CPAと逆になります。
その価格訴求から初回申込の44%が入っており、配信の最適化が継続率の低い入口に予算を寄せていました。
そこで単一の目標CPA6,000円を廃止し、3か月LTVを1.8で割った許容CACを訴求ごとに置きました。
表2|訴求タイプ別の継続率・許容CACと、Week3で行った配分変更(モデル試算)
| 訴求タイプ | 初回CPA | 2回目継続率 | 3か月LTV | 許容CAC | 構成比の変更 |
|---|---|---|---|---|---|
| 価格・初回限定訴求 | 7,900円 | 44.2% | 8,600円 | 4,780円 | 44%→20% |
| 成分・エビデンス訴求 | 13,600円 | 81.0% | 14,500円 | 8,060円 | 18%→30% |
| 悩み共感・ビフォーアフター | 11,200円 | 72.5% | 13,200円 | 7,330円 | 26%→32% |
| 使用シーン・習慣訴求 | 12,400円 | 79.4% | 14,200円 | 7,890円 | 12%→18% |
※モデル試算です。許容CACは3か月LTV÷1.8。Week0時点では4つとも超過しています。
予算配分を、初回CPAの安い順から、3か月LTVの高い順に組み替えました。
Week4の初回CPAは11,600円に上がりました。
単価の高い訴求へ寄せたので当然の動きです。
一方で、Week4に獲得した顧客の2回目継続率は68.9%まで上がりました。
LTV÷CACは1.08から1.13で、初回CPAは悪化しているのに採算は良くなっています。
POINT
評価軸を入れ替えた直後は、旧指標がいったん悪化します。
ここで戻すと元に戻るだけなので、最低4週間は新しい軸で判断を続けます。
Week5〜6:効かなかった打ち手を2つ、先に書きます
ここからの2週間は、うまくいっていません。
どちらも巻き戻しています。
Week5に出たのは「オファーを強くすればCPAを戻せる」という提案でした。
初回価格を3,980円から1,980円に下げ、1週間だけ適用しています。
初回CPAは7,100円まで下がり、申込件数は前週比で38%増えました。
ここで止めていれば、成功事例に見えたはずです。
問題は30日後に出ました。
Week5に獲得した顧客の2回目継続率は48.3%で、Week4から20.6ポイント下がっています。
初回CPAは34%改善したのに、LTV÷CACは0.94とWeek0より悪くなりました。
2,000円の値引きは初回価格の50%で、2回目の6,980円は3.5倍の値上げに見えます。
Week6の頭で初回価格を戻し、次はクリエイティブを週12本から週30本に増やしました。
増やしたのは本数だけで、訴求の型は4つのままです。
結果、初回CPAは11,900円で横ばいでした。
CPMは2,150円から2,480円に上がり、CVRは1.10%から1.04%に下がっています。
候補が増えて学習が分散し、1本あたりの配信量が判定に必要な母数に届かないためです。
表3|Week5・Week6で効かなかった打ち手の数値(モデル試算・週次)
| 指標 | Week4(基準) | Week5(値引き強化) | Week6(本数増産) | Week7(巻き戻し後) |
|---|---|---|---|---|
| 初回CPA | 11,600円 | 7,100円 | 11,900円 | 10,400円 |
| 2回目継続率 | 68.9% | 48.3% | 66.2% | 71.4% |
| LTV÷CAC | 1.11 | 0.94 | 1.05 | 1.28 |
※モデル試算です。2回目継続率は、その週に獲得した顧客が35日後に2回目決済を通した比率です。単週の値は振れます。
疲弊の原因は本数不足ではなく、訴求の型の少なさでした。
フリークエンシーは3.8回から5.1回に上がっています。
Week7の頭で納品を週12本に戻し、訴求の型を4つから7つに増やす方針へ切り替えました。
Week7〜10:LPと、初回到着後7日間を作り直す
Week7の観測は、4つの訴求すべてが同じ成分推しのLP1枚に着地していたことです。
悩み共感訴求からの流入は、1画面目の直帰率が72%です。
そこでLPを成分解説型と悩み訴求型の2枚に分けました。
差し替えたのはファーストビューと上から3ブロックだけで、6営業日で公開しました。
悩み共感訴求のCVRは1.21%から1.68%、直帰率は72%から54%です。
Week8はカート到達後の離脱です。
完了率は41%で、脱落が多いのは生年月日と肌質アンケートの2項目でした。
入力項目を11から6に減らし、肌質アンケートは申込完了後に移しました。
解約条件の記載も、カート直前からファーストビューの下に移しています。
解約条件を早い段階で明示すると、CVRは下がらず2回目継続率が上がります。
カート完了率は41%から58%、全体のCVRは1.34%から1.55%です。
Week8に獲得した顧客の2回目継続率は74.6%でした。
Week9の観測は解約のタイミングで、申請の63%が初回到着から7日以内に集中していました。
同梱物を7点から3点に減らし、初回到着3日後のLINE配信と使い方動画のQRコードを追加しています。
7日以内の解約申請は63%から41%に下がりました。
Week9に獲得した顧客の2回目継続率は76.8%です。
広告の施策ではありませんが、LTV÷CACにはどの広告施策よりも効きました。
Week10は媒体の整理です。
P-MAXのCV数は月187件と報告されていましたが、うち94件が指名検索と重複していました。
ブランド名の除外設定が入っておらず、重複を除いた実CPAは5,900円ではなく11,600円でした。
除外リストを適用し、P-MAXのCV数は98件に、指名検索は112件から168件になりました。
合計は299件から266件ですが、合計CPAは7,800円から6,100円に下がっています。
Week11〜12:引上率とLTV÷CACで予算を配分し直す
Week11の観測は引上率です。
3か月以内に別商品を追加購入した比率は、8.4%しかありませんでした。
2回目まで続いた顧客は、商品を使い切っています。
そこで2回目決済の3日後に、LINEとメールでクロスセルの案内を出しました。
対象は2回目継続者のみ、商品は同ラインの美容液1点に絞りました。
引上率は8.4%から14.6%に上がり、寄与は1人あたり約620円です。
Week12は、LTV÷CACだけを基準に予算を配分し直す週です。
指名検索を上限まで出し切り、Metaの成分訴求と悩み共感訴求を厚くしました。
指名検索の2回目継続率は86.2%で、4媒体で最も高い数字です。
価格訴求は16%まで下げましたが、ゼロにはしていません。
ゼロにすると他の訴求のCPMが上がり、全体のCPAはむしろ悪化しました。
Week11に一度ゼロにして、3日で戻しました。
入口の広さを担保する枠として、15%前後を維持しています。
Week12時点の初回CPAは7,400円で、目標の6,000円には届いていません。
ただしLTV÷CACは1.91で、目標の1.8倍を超えました。
そこで目標CPAそのものを7,800円に置き直しました。
6,000円は、継続率が72%あった時代に決めた数字だったためです。
週次30分の会議で、固定して見た6指標
- 初回定期申込の件数と初回CPA
- CVRとカート完了率
- CPMとフリークエンシー
- 訴求タイプ別の初回申込構成比
- 35日前コホートの2回目継続率
- 先行指標(LINE友だち追加率・同梱QR読取率)
会議は隔週45分から週次30分に変え、見る指標をこの6つに固定しました。
変更は週に2つまでという制限も守っています。
効かないケースと、やってはいけない対処
ここまでの進め方が合わない場合を、3つ挙げます。
ひとつめは、定期に回数縛りがある場合です。
2回目継続率は制度上ほぼ100%になり、指標として使えません。
この場合は、縛りが解けた直後の継続率を見ます。
3回縛りなら、4回目継続率が実質的な2回目継続率です。
ふたつめは、月の初回申込が100件を下回る場合です。
訴求別に割ると1グループが20件台になり、差が偶然か構造かを判定できません。
みっつめは、商品のリピート率が低い場合です。
訴求を変えても2回目継続率が60%を超えないなら、広告側でできることは限られます。
注意
2回目継続率が50%を切っている状態で広告費を増やすと、赤字が線形に拡大します。
先に継続率を戻し、それから配信量を戻す順番にします。
やってはいけない対処も並べます。
- 計測を直す週に、入札やオファーも同時に動かす翌週の数字が計測修正の結果か施策の結果か判定できません。変更は週に2つまでに絞ります。
- 初回CPAが目標を超えた翌日に、オファーを強くするWeek5で起きたことです。CPAは下がりますが、継続率が20ポイント落ちます。
- クリエイティブの疲弊に、本数の増産だけで対応するWeek6で起きたことです。学習が分散してCPMが上がり、CVRは下がります。増やすのは訴求の型です。
- 2回目継続率を待たずに、35日以内で施策を判定する2回目決済が通るまで結果は確定しません。先行指標を置き、本判定は35日後にします。
- 効かなかった施策を、戻さずに次を重ねる失敗が残ったまま変更を足すと、原因を特定できません。巻き戻してから次に進みます。
よくある質問
最初の2週間、本当に配信を動かさなくていいのですか
配信を止める必要はありません。動かさないのは入札、予算、オファー、クリエイティブ、LPの5つです。定期購入では、単品購入や送料無料キャンペーンが同じPurchaseイベントに混ざっていることが多くあります。ここを直さないまま施策を打つと、翌週の変化の理由を判定できません。
初回価格を下げるのは、いつなら有効ですか
2回目継続率が75%以上で安定し、新規の到達が頭打ちになっている場合は機能することがあります。逆に継続率が60%台で値引きを重ねると、価格で入る顧客の比率が上がり、継続率はさらに落ちます。30%を超える値引きは、2回目の価格が別商品に見える水準です。
初回CPAが目標に届かないまま終わってよいのですか
目標CPAの置き方自体を点検してください。このモデルケースの目標6,000円は、2回目継続率が72%あった時代の値です。継続率が61.5%に落ちた状態では、同じ目標を維持する根拠がありません。目標CPAは3か月LTVから逆算し、四半期ごとに引き直す運用に変えました。
まとめ
- 初回CPAが目標の1.8倍でも、原因は入札ではなくCVの定義と評価軸にあることが多い
- 最初の2週間は入札やオファーを動かさず、計測とLTVの点検だけに使う
- 訴求ごとに2回目継続率は2倍近く違うため、許容CACも訴求ごとに分ける
- オファーの値引き強化とクリエイティブの本数増産は、どちらも採算を悪化させた
- 初回到着後7日間の体験設計は、広告側のどの打ち手よりLTVに効いた
- 判定は35日後のコホートで行い、変更は週に2つまでに絞る
12週間で初回CPAは31%下がり、LTV÷CACは1.08から1.91になりました。
順番を守れば、同じ予算のままでも採算は動きます。
初回CPAは下がったのに、定期の継続率が戻らないまま止まっている場合
KAIZENは、CV定義・LP・同梱物・LINEまでを一続きの改善として設計する支援です。
訴求ごとの継続率を分解し、許容CACを引き直すところから着手します。