問い合わせは増えたのに、営業からは「商談が増えた実感がない」と言われる。
BtoBのSEOで最も多い行き詰まりです。
原因は記事の質ではなく、集めている検索意図が発注の手前ではなく情報収集の段階に寄っていることにあります。
この記事では、キーワードを3層に分け、層ごとにCVを置き分け、広告と役割を分けるまでの手順をまとめます。
商談にならない原因は記事の本数ではなく、集めている層とCVの置き方のズレです。
3層に分け、層ごとに違うCVを置き、指名と比較検討は広告で刈ります。
- CV数を1つの数で見るのをやめ、流入キーワードの層別に分解するところから始める
- 課題認知の記事に問い合わせボタンを置いても押されない。資料と比較表を置き分ける
- 評価は順位ではなくCV種別ごとの件数と質で行い、判断できるまで3〜6か月かかる前提で設計する
目次
- 問い合わせが増えたのに商談が増えないとき、何が起きているか
- 増えた問い合わせに混ざっている3種類の人
- キーワードを検討段階で3つの層に分けます
- 層ごとに置くCVを変え、フォームの手前を直します
- 広告とSEOの役割分担は、検討段階で決めます
- 効果が出るまでの時間差を、その間どう評価するか
- 効かないケースと、やってはいけない対処
- よくある質問
- まとめ
問い合わせが増えたのに商談が増えないとき、何が起きているか
SEOの相談で最初にいただく数字は、たいていセッション数とCV数です。
「記事経由の問い合わせが月20件から45件になりました」という報告が来ます。
その一方で、営業側からは「商談が増えた実感がない」と言われます。
この2つは矛盾していません。
CVという1つの箱に、価値の違うものをまとめて入れているからです。
SEO経由のCVを流入キーワード別に分解すると、商談につながる比率は大きく偏ります。
指名や比較検討から来たCVは、半数以上が商談に進みます。
一方で、用語解説や「やり方」を調べる記事から来たCVは1割前後にとどまります。
CV数が増えても商談が増えないのは、増えた分のほとんどが後者だからです。
表1|流入キーワードの層別に見たCVの中身(モデル試算)
| 層 | CV件数 | 有効リード率 | 商談化率 | 1商談あたりの必要CV数 |
|---|---|---|---|---|
| 指名・発注直前 | 8件 | 88% | 63% | 1.6件 |
| 比較検討 | 22件 | 64% | 32% | 3.1件 |
| 課題認知 | 70件 | 27% | 7% | 14.3件 |
| 合計 | 100件 | 41% | 12% | 8.3件 |
※【モデル試算】BtoBの無形サービスを想定した一般化した値です。自社の数値と照らして読み替えてください。
この表で見るべきは、合計の12%ではありません。
課題認知の層が70件を占め、商談化率が7%だという内訳のほうです。
ここを増やすと、CV数のグラフは右肩上がりになります。
同時に、営業が処理する件数だけが増えて、商談の本数は動きません。
営業からの「質が落ちた」という指摘は、感覚ではなく構造の話です。
POINT
CV数の増減を見る前に、CVを層別・種別に分けて記録できる状態にしてください。
分けられないかぎり、打ち手の良し悪しは判定できません。
分解の手順自体は難しくありません。
フォームに流入元のページURLを保存し、サーチコンソールでそのURLのクエリを取ります。
この2つを突き合わせるだけで、層別の内訳は出ます。
増えた問い合わせに混ざっている3種類の人
層の話の前に、もう1つ分けるものがあります。
そもそも自社の顧客になり得るかどうか、です。
記事が検索で露出すると、来訪者の幅が広がります。
広告のように配信先を絞れないため、これは避けられません。
混ざりやすいのは3種類です。
- 競合・同業。他社の運用者が調査目的で資料をダウンロードする
- 学生・求職者。会社名で検索し、事業内容を知るために記事を読む
- 対象外の規模。個人事業主や、予算帯が合わない小規模事業者
この3つは、除外すれば減らせるものではありません。
記事は誰でも読めるからです。
できるのは、CVの手前で分けることと、CV後の集計から外すことの2つです。
フォームに会社名と従業員規模の項目を置くと、集計側では分けられます。
ただし、項目を増やすと送信率は落ちます。
課題認知の層に必須項目を増やすと、取れるはずのリードまで減ります。
そこで、CV種別ごとに項目数を変えます。
資料ダウンロードは会社名・氏名・メールの3項目まで。
問い合わせは電話番号と相談内容まで求め、即時対応の対象にします。
もう1つ、見落とされやすい原因があります。
記事の主題と、自社が売っているものの距離です。
検索需要の大きさだけでテーマを決めると、用語解説やツール比較など、自社サービスから遠い記事が積み上がります。
読者はその記事を読み終えた時点で、何の会社のページを見ているか分かりません。
注意
テーマ選定の段階で、自社サービスまで何ステップで説明できるかを条件に入れてください。
距離の遠い記事は、CVが出ても「情報が欲しかっただけ」で止まります。
キーワードを検討段階で3つの層に分けます
キーワードの分け方は、業種を問わず3層で足ります。
課題認知、比較検討、指名・発注直前の3つです。
この分け方の利点は、CVの置き方と広告の使い分けが同じ軸で決まることにあります。
検索ボリュームや難易度で分類すると、施策が決まりません。
「難易度が高い」と分かっても、次に何をするかが出てこないためです。
表2|3層の見分け方と、それぞれの扱い
| 層 | キーワードの形 | 読者の状態 | 置くCV | 記事CVRの目安 |
|---|---|---|---|---|
| 課題認知 | 「◯◯とは」「◯◯ 方法」「◯◯ 原因」 | 問題の輪郭を探している。発注先は考えていない | 資料ダウンロード、メール講座 | 0.6〜1.2% |
| 比較検討 | 「◯◯ 比較」「◯◯ 会社 選び方」「◯◯ 料金」 | 選択肢を並べ、条件を絞っている | 比較表、チェックリスト、事例 | 1.5〜3.0% |
| 指名・発注直前 | 自社名、サービス名、「◯◯ 見積」「◯◯ 依頼」 | 発注先を決めに来ている | 問い合わせ、見積依頼 | 3.0〜6.0% |
※【モデル試算】同じ語でも業種によって層が変わります。実際の検索結果を見て判定してください。
層の判定は、検索結果の1ページ目を見れば決まる
層の判定に迷ったときは、実際に検索してください。
1ページ目に並んでいるページの種類が、その語の層を示します。
- 解説記事・ブログが並ぶ → 課題認知
- 比較記事・ランキング・料金ページが並ぶ → 比較検討
- 企業のサービスページ・公式サイトが並ぶ → 指名・発注直前
検索エンジンは、その語で満たされる意図をすでに判定しています。
比較記事しか並ばない語に自社サービスページを当てても、上位には入りません。
逆に、サービスページが並ぶ語に解説記事を当てても同じです。
層ごとに置くCVを変え、フォームの手前を直します
層を分けたら、次はCVの置き方です。
課題認知の記事に問い合わせボタンを置いても、押される確率はほとんど上がりません。
読者はまだ、発注という選択肢を持っていないためです。
この段階で必要なのは、連絡先を渡してもいいと思える理由です。
資料ダウンロードやチェックリストは、相談ではなく情報の受け取りなので、その理由になります。
表2のCVRを見ると、層の間で差は10倍近くつきます。
全記事に同じ問い合わせCTAを置いている場合、この差は平均されて見えなくなります。
置き分けは4ステップで終わります
- 記事を3層にタグ付けする既存記事の一覧に「層」の列を追加し、1本ずつ判定します。判定は前章の検索結果の見方で行います。50本程度なら半日で終わります。
- 層ごとに主CVを1つ決める課題認知は資料、比較検討は比較表、指名は問い合わせです。1記事に主CVは1つだけにします。
- 副CVを記事末尾に小さく置く主CVの下に、別の選択肢を1つだけ添えます。並列に2つ置くと、どちらも押されなくなります。
- CV種別で計測を分けるフォームの完了ページまたは送信イベントを種別ごとに分け、商談化率を別々に追える状態にします。
関連導線も同じ考え方で置きます。
課題認知の記事から、いきなりサービスページへ送っても進みません。
関連記事のリンクは、同じ層ではなく1つ先の層の記事に張ります。
フォームの手前で伝えることを決める
最も落ちるのは、CTAを見てからフォームを表示するまでの区間です。
読者が止まる理由は、たいてい次の3つです。
- 送信後に何が起きるか分からない。電話がかかってくるのか不明
- 自社が対象なのか分からない。規模や業種の条件が書かれていない
- 費用の目安が分からない。相談した時点で費用が発生するのか不明
この3つに答える文を、フォームの直前に3行置きます。
「送信後1営業日以内にメールでご連絡します」「従業員50名以上の企業を主な対象としています」「相談は無料です」の3行です。
文言を足すだけなので、実装の手間はほとんどありません。
フォーム手前で確認する項目
- 送信後の連絡手段と所要時間が書かれている
- 対象となる企業規模・業種の条件が書かれている
- 無料か有料かが書かれている
- 入力項目が主CVの種別に合った数に絞られている
- スマートフォンで1画面に収まる長さになっている
- 送信ボタンの文言が行動と一致している(「送信」ではなく「資料を受け取る」)
増えた問い合わせのうち、商談につながっているのはどの記事からかを一緒に出しませんか
TimeValue株式会社では、無料マーケティング診断を毎月10社限定で実施しています。
- SEO経由CVの層別内訳と、層ごとの商談化率
- 記事とサービスの距離が遠くなっている記事の特定
- 広告とSEOで重複して費用が出ているキーワードの確認
オンライン30〜45分/資料の事前提出は不要です。
広告とSEOの役割分担は、検討段階で決めます
広告とSEOを別々の担当が見ていると、役割分担が決まらないまま並走します。
分担の基準は1つで足ります。
検討段階のどこを、どちらで取るかです。
指名と発注直前は、取りこぼしのコストが大きい領域です。
1件の取りこぼしがそのまま失注になるため、広告で確実に押さえます。
課題認知は逆です。
語数が多く、1件あたりの価値が低いため、広告で買うと費用が合いません。
記事で面を取るほうが、長期的な単価は下がります。
比較検討は、両方を使う領域です。
SEOで安定して3位以内に入った語から、広告を段階的に縮小していきます。
同じキーワードに二重でコストを払っていないか
役割分担を決めていない状態で起きるのが、費用の二重払いです。
典型は、SEOで1位を取っている語に広告も出し続けているケースです。
広告のクリックの一部は、広告がなくても自然検索から来ていた人です。
- 検索クエリと自然検索順位を突き合わせる広告の検索クエリレポートと、サーチコンソールのクエリを同じ期間で出します。両方に出ている語を抽出します。
- 自然検索で安定3位以内の語を選ぶ過去90日の平均掲載順位が3位以内で、クリック数が一定以上ある語に絞ります。
- 2週間だけ広告を止めて差分を見るその語群の広告を止め、自然検索のクリック数とCV数がどれだけ戻るかを測ります。戻りが7割を超えるなら、広告の再開は慎重に判断します。
ただし、競合が自社名に出稿している場合は話が変わります。
止めた枠を競合に取られるため、戻り率だけで判断しないでください。
予算全体の配分は、広告予算をどう配分するかで扱っています。
効果が出るまでの時間差を、その間どう評価するか
SEOの効果が数字に出るまでには時間がかかります。
記事公開から検索での評価が安定するまで、一般に数か月単位です。
そこからCVが積み上がり、商談と受注に進むまでにさらに時間が必要です。
この間、順位だけを見ていると判断を誤ります。
順位は上がっているのに商談が増えない、あるいはその逆が普通に起きるためです。
時期によって、見る指標そのものを切り替えてください。
表3|時期別の評価指標と、判断の内容
| 時期 | 主指標 | 見ない指標 | この時点で判断すること |
|---|---|---|---|
| 1〜2か月 | 計測の整備状況、公開本数 | 順位、CV数 | 層のタグ付けとCV種別の分離が終わっているか |
| 3〜4か月 | CV種別ごとの件数 | 順位、合計CV数 | どの層からCVが出ているか。出ていない層はCVの形が合っているか |
| 5〜6か月 | 有効リード率、層別の商談化率 | 合計CV数 | 課題認知の層から比較検討へ引き上がっているか |
| 7〜12か月 | 層別の商談数、商談単価 | ― | 記事を追加する層と、広告に寄せる層を決め直す |
※【モデル試算】期間は商材の検討期間によって変わります。検討期間が3か月を超える商材では後ろ倒しになります。
「いつ何を報告するか」を先に合意しておくと、3か月目に成果を問われて止まる事態を避けられます。
ズレの点検は、月1回で足ります。
サーチコンソールでCV上位記事のクエリを90日分取り、3層に分類します。
比較検討向けに書いた記事が課題認知の語ばかりで流入していないかを見ます。
直す対象は毎月1つだけ選びます。
主題・CV種別・内部リンクを同時に変えると、効果の判別ができなくなります。
リードが溜まったあとの扱いは、リードは溜まっているのに商談にならないで詳しく扱っています。
効かないケースと、やってはいけない対処
ここまでの設計が効かないケースもあります。
該当するときは、SEOの手前を先に直してください。
- 自然検索からの流入が月1,000セッションに届いていない。母数が足りず判断できない
- 営業体制が整っておらず、リードに接触できていない。流入を増やしても滞留する
- サービスの対象条件が決まっていない。誰に売るかが定まらないと層の設計ができない
- 商談は出ているが受注率が低い。流入の質ではなく提案側の問題
やってはいけない1:記事数を増やす
商談が増えないときに最も選ばれやすく、最も効きにくい対処です。
課題認知の記事を100本に増やしても、商談化率7%は変わりません。
変わるのは、営業が処理するリード件数だけです。
やってはいけない2:リライトと順位だけを追う
順位が5位から3位に上がっても、その記事が課題認知の層なら商談は増えません。
リライトの対象は、順位が惜しい記事ではなく、層とCVの組み合わせがずれている記事です。
比較検討の語で流入があるのに、CVが資料DLのままになっている記事を優先します。
やってはいけない3:CVポイントを問い合わせに一本化する
「質の低いCVを減らす」目的で、資料DLを廃止する判断が出ることがあります。
この対処は、短期的にはCV数と営業の負荷を下げます。
一方で、課題認知の層との接点が完全になくなります。
減らすのではなく、種別を分けて集計から外すのが正しい対処です。
今週から着手できること
- フォーム送信時に流入元ページのURLを保存する設定を依頼する
- 既存記事の一覧に「層」の列を追加し、上位30本をタグ付けする
- サーチコンソールでCV上位5記事のクエリを90日分書き出す
- フォームの直前に、連絡手段・対象条件・費用の3行を追加する
- 自然検索3位以内の語と広告の出稿語を突き合わせ、重複を一覧にする
- 月次報告の主指標を、順位からCV種別ごとの件数に差し替える
よくある質問
記事を作り始めて3か月ですが、商談が1件も出ていません。続けるべきですか
続けるかどうかの前に、既存記事を3層でタグ付けしてください。8割以上が課題認知なら、3か月で商談が出ないのは想定どおりです。この場合は本数を増やすのではなく、比較検討の記事を3本追加し、CVを比較表に変えます。判断材料が揃うのは、CV種別を分けて計測を始めてから2〜3か月後です。
同業からの資料ダウンロードが多くて困っています。どう防げますか
完全には防げません。記事は誰でも閲覧でき、フォームの入力内容は自己申告だからです。現実的な対処は2つです。フォームに従業員規模と部署の項目を置き、集計時に対象外を除外すること。もう1つは、営業への自動共有の条件を設定し、対象外は共有しないことです。商談化率も除外後の母数で出してください。
指名キーワードの広告は、SEOで1位なら止めていいですか
止める前に、2週間だけ停止して戻り率を測ってください。自然検索のクリックとCVがどれだけ戻るかで判断します。戻りが7割を超えるなら、広告費の多くは純増コストだった可能性があります。ただし競合が自社名に出稿している場合は別です。止めた枠を取られるため、少額でも出稿を続けるほうが安全です。
まとめ
- CVを1つの数で見るのをやめ、流入キーワードの層で分解する。見るのは合計ではなく内訳
- 増えた分には競合・求職者・対象外規模が混ざる。防ぐのではなく、フォーム項目と集計で分ける
- キーワードは課題認知・比較検討・指名の3層で足りる。判定は検索結果の1ページ目で決まる
- 層ごとに置くCVを変える。課題認知は資料DL、比較検討は比較表、指名は問い合わせ
- フォームの手前に、連絡手段・対象条件・費用の3行を置く
- 指名と発注直前は広告で押さえ、課題認知はSEOで面を取る。自然検索3位以内の語は重複出稿を確認する
- 評価指標は時期で切り替える。3〜4か月はCV種別の件数、5〜6か月は有効リード率、7か月以降は商談数
SEOで直すのは、記事の本数ではなく集める層とCVの置き方です。
広告との分担を決めた時点で、どちらの数字も同じ表で語れるようになります。
SEOと広告を別々に評価している状態を、1つの表に載せ替えます
KAIZENは、広告運用とサイト改善を分けずに一括で見る支援です。流入キーワードの層別分解から、CV種別ごとの商談化率、広告とSEOの重複確認までを同じ数字の上で扱います。
順位やPVではなく、商談数と受注に効いているかどうかで施策の優先順位を決め直します。