CPAが目標の2倍のまま下がらず、CV数も横ばい。
広告費を絞ると商談が減り、戻すとCPAがまた跳ね上がる。
この状態の原因は入札ではなく、何をCVとして数えるかという定義のほうにありました。
BtoB SaaSが12週間でCPAを32%、商談単価を49%下げるまでを、効かなかった打ち手も含めて書きます。
CPA高騰は入札では直りません。
資料請求と無料トライアルを1つのCVとして最適化していたことが原因で、2つを分けて商談単価で配分し直すと動きます。
- 最初の2週間は施策を止め、計測の点検だけに使う
- 資料請求と無料トライアルは、別のCVとして目標を分ける
- CPAではなく、商談数と商談単価で予算を配分する
※本記事の数値は、実案件で起きやすい状況を一般化したモデルケース(シミュレーション)です。特定企業の実績ではありません。
目次
- 3か月で動いたのは、CPAよりも商談単価でした
- 前提と、Before時点で起きていたこと
- Week1〜2:施策を止めて計測を点検する
- Week3〜4:商談単価から逆算して目標を分ける
- Week5〜6:効かなかった2つの打ち手
- Week7〜12:クエリとLPと予算配分を直す
- 効かないケースと、やってはいけない対処
- 自社で回すための週次の型
- よくある質問
- まとめ
3か月で動いたのは、CPAよりも商談単価でした
12週間で最も大きく動いたのは、CPAではなく商談単価でした。
419,000円から213,000円へ、49%下がっています。
CPAの下げ幅は32%で、改善幅は商談単価のほうが1.5倍大きい結果です。
しかもCV数を大きく増やした週は、商談単価が悪化しています。
原因は評価軸のほうにありました。
資料請求と無料トライアルを、1つの「CV」としてまとめて最適化していたことです。
資料請求の商談化率は9%、無料トライアルは48%でした。
同じ1件でも、商談に届く確率が5倍以上違います。
この2つを同じCVとして扱うと、入札は安く取れるほうへ寄ります。
CPAは下がりますが、商談数はほとんど増えません。
3か月でやったことの大半は、入札の調整ではなく、この評価軸のずれを直す作業でした。
表1|Before/After(モデル試算・月次換算)
| 指標 | Before(Week0) | After(Week12) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 月間広告費 | 4,000,000円 | 4,000,000円 | 同額 |
| CPA | 74,100円 | 50,600円 | -31.7% |
| CV数 | 54件 | 79件 | +46.3% |
| CVR | 0.84% | 1.10% | +0.26pt |
| CPC | 620円 | 555円 | -10.5% |
| 商談化率 | 17.7% | 23.8% | +6.1pt |
| 商談単価 | 419,000円 | 213,000円 | -49.2% |
※モデルケースの数値です。BeforeのCV数は、計測点検で重複分を除いた補正後の値です。
目標CPA35,000円にはWeek12でも届いていません。
一方で、目標商談単価250,000円は下回りました。
前提と、Before時点で起きていたこと
前提が違えば、同じ打ち手でも結果は変わります。
事業はARR数億円規模のBtoB SaaSで、月の広告予算は300万〜500万円です。
記事中の計算は、すべて400万円に統一しています。
媒体はGoogle検索広告とMetaの2つ、CVは資料請求と無料トライアル申込の2種類です。
体制はマーケ担当2名と運用代理店1社で、12週間とも変えていません。
商談データはSFAに蓄積されていましたが、広告データとは接続されていませんでした。
Before時点の月次は、表示412,000回、クリック6,452回です。
そこからCV54件、商談9.5件、受注1.9件でした。
広告費400万円に対して、受注は月2件に届きません。
1件あたりの獲得コストは200万円を超える計算になります。
問題はCPAの高さだけではありません。
予算を前年比1.3倍に増やしてもCV数は横ばいで、商談化率も半年前の22%から17.7%へ落ちていました。
増やした予算が商談に変換されない構造が、すでにできあがっていました。
社内で出ていた3つの意見
- 「入札単価が高すぎる。全体的に下げるべき」
- 「キーワードが少ない。網羅性を上げれば安いCVが取れる」
- 「LPのCVRが低い。デザインを作り直すべき」
1つ目と2つ目は、Week5とWeek6で実際に試して、どちらも巻き戻しています。
3つ目のLPは、作り直しではなく着地の出し分けで対応しました。
Week1〜2:施策を止めて計測を点検する
最初の2週間、入札も予算も広告文も動かしていません。
やったのは、数字が信用できるかの確認だけです。
きっかけは、管理画面のCV数62件とSFAのリード数54件が合わないことでした。
タグの設置状況を洗い出すと、3種類の重複が見つかります。
- 資料請求の完了タグが、サンクスページとフォーム送信の両方で発火
- 無料トライアル申込が、申込完了とアカウント発行の2点で計上
- サンクスページのURLがブックマークされ、直接流入でも計上
重複は月8件、CVの約13%にあたります。
この分を除くと、実際のCPAは64,500円ではなく74,100円でした。
点検の初日に、CPAが1.15倍に悪化して見えるところから、この3か月は始まりました。
点検の前に「補正でCPAは上がる」と社内に共有しておくことをおすすめします。
Week2:CVの定義を2つに割る
資料請求とトライアルは、同じ主要コンバージョンに入っていました。
自動入札は、その合計値を目標に動いていたことになります。
価値の違う2つを同じ重みで扱えば、安く取れるほうが優先されます。
そこでコンバージョンアクションを種別ごとに分離しました。
あわせてSFAの商談データをオフラインCVとして取り込み、突合キーをGCLIDに統一しています。
この週の数字はまだ動きませんが、CV種別ごとの商談化率が初めて見えるようになりました。
施策を動かす前に確認したい6項目
- 管理画面のCV数と、CRMやSFAのリード数が一致しているか
- 同じ完了地点にタグが二重で置かれていないか
- CVが2種類以上ある場合、主要コンバージョンが分かれているか
- 商談や受注のデータが、広告側に戻る経路があるか
- 計測期間の設定が、媒体間で揃っているか
- 社内アクセスとテスト送信が、除外されているか
Week3〜4:商談単価から逆算して目標を分ける
商談単価は、広告費を商談数で割った値です。
商談数は、CV数と商談化率の掛け算で決まります。
つまりCPAを下げても、商談化率が同じ幅で落ちれば、商談単価は1円も変わりません。
資料請求とトライアルの商談化率は、9%と48%でした。
そこで目標を商談単価250,000円に置き、そこから逆算します。
計算は250,000円に商談化率を掛けるだけで、資料請求は22,500円、トライアルは120,000円が許容CPAです。
実CPAは、それぞれ55,000円と140,800円でした。
商談単価から逆算すると、高すぎたのはトライアルではなく資料請求のほうでした。
許容値の2.4倍に対し、トライアルは1.2倍にとどまります。
社内では、トライアルは単価が高いから抑えるべきだと言われていました。
商談単価で見ると、判断が逆になります。
Week4:検索クエリを3つに仕分ける
直近6か月のクエリを、指名と比較検討、課題と業務名、情報収集と用語の3つに分けました。
その結果、クリックの41%が情報収集系に使われていると分かります。
この層のCVRは0.2%、商談化率は2%で、月54万円が流れていました。
停止の影響を見るため、除外の処理はWeek7にまとめています。
CPAが上がっている原因が、計測なのか配信なのか切り分けたい方へ
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- コンバージョンの重複計上と、CV定義の分離状況
- CV種別ごとの商談化率が見える状態になっているか
- 入札や予算より先に直すべき項目の優先順位
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Week5〜6:効かなかった2つの打ち手
この2週間は、どちらも失敗しています。
ただし失敗の中身が、そのあとの判断材料になりました。
Week5:入札を一律で20%下げた
CPCは620円と高く、下げればCPAも下がるはずだ、というのが社内で最も支持された案でした。
目標コンバージョン単価を全キャンペーンで一律20%引き下げ、ほかは触っていません。
結果は悪化でした。
CPCは528円まで下がりましたが、CV数は54件から47件へ減り、CPAは85,100円に上がっています。
理由は掲載位置です。
ページ上部の表示シェアが62%から41%へ落ち、指名と比較検討のクエリで競合に負けました。
このクエリ群は、トライアル申込の主要な流入元です。
トライアルが12件から7件に減り、商談数は9.5件から7.0件になりました。
Week6:キーワードを180語追加した
母数を増やせばCV数は戻る、という判断です。
部分一致を中心に、業務名と課題語を広く拾いました。
CV数は47件から73件に増え、CPAも54,800円に下がりました。
ここだけを見れば、明らかな成功です。
ただし増えた26件は、すべて資料請求でした。
しかも追加分の商談化率は4%で、既存の9%を下回っています。
全体の商談化率は17.7%から11.1%へ下がり、商談単価は494,000円になりました。
Before時点の419,000円より、18%悪い数字です。
表2|効かなかった打ち手と、なぜ効かなかったか(モデル試算)
| 打ち手 | 狙い | 動いた指標 | 効かなかった理由 | その後 |
|---|---|---|---|---|
| 入札の一律20%引き下げ | CPAの改善 | CPC -15%/CV -13%/CPA +15% | 商談化率の高いクエリで掲載位置を失った | Week7に全面巻き戻し |
| キーワード180語の追加 | CV数の回復 | CV +55%/CPA -36%/商談化率 -6.6pt | 増えたのが商談化しない資料請求だけだった | 152語を停止、28語のみ継続 |
※モデルケースの数値です。指標はWeek6終了時点の月次換算です。
注意
CPAだけを見ていると、Week6は改善に見えます。
商談化率を同時に見ていなければ、この構成のまま予算を増やしていたはずです。
そもそものCPA水準が妥当かどうかは、BtoB SaaSのCPA相場とベンチマークで整理しています。
Week7〜12:クエリとLPと予算配分を直す
Week7は巻き戻しから始めました。
入札を元の水準に戻し、追加した180語のうち152語を停止しています。
そのうえでキャンペーンを3つに分け、情報収集系のクエリを除外しました。
上位表示シェアは58%、CPCは585円に戻っています。
Week8:LPを1枚から2枚に分ける
どのクエリからも同じLPに着地し、資料請求とトライアルのボタンが並んでいました。
選択肢が2つあると、迷った人は軽いほうを選びます。
そこで指名と比較検討はトライアルLP、課題と業務名は資料請求LPへ着地させました。
デザインには手を入れていません。
結果として、Week8末のCV数は66件、商談数13.6件、商談単価は294,000円です。
Week9〜10:Metaの役割を変え、フォームを削る
Metaは月100万円で、主に資料請求を獲得していました。
その商談化率は3%で、Google検索経由の9%の3分の1です。
そこで新規獲得を止め、リターゲティングと導入事例の配信だけを残しました。
予算は100万円から65万円に下げ、差額は比較検討クエリへ移しています。
Meta経由のCVは月18件から6件に減りましたが、商談数は変わりません。
Week10では、トライアル申込フォームの入力項目を7つから3つに減らしました。
電話番号や従業員規模など4項目は、申込後のログイン画面へ移しています。
フォーム完了率は21%から34%、トライアル申込は月20件から29件に増えました。
移した4項目は、申込後の画面で82%が入力していました。
取得のタイミングを変えただけで、営業が使う情報は残っています。
Week11〜12:商談化率を基準に予算を配る
最後の2週間は、新しい施策をほとんど入れていません。
商談化率41%の比較検討クエリは許容CPCを740円まで上げ、上位表示シェア76%を狙います。
同時に、課題と業務名のクエリは目標を12%下げ、全体の予算は増やしていません。
Week12では、予算配分を資料請求46%、トライアル54%にしました。
Before時点は58%と42%です。
表3|CV種別ごとの変化(モデル試算・月次換算)
| 指標 | 資料請求 Before | 資料請求 After | トライアル Before | トライアル After |
|---|---|---|---|---|
| 配分予算 | 2,310,000円 | 1,848,000円 | 1,690,000円 | 2,152,000円 |
| CV数 | 42件 | 44件 | 12件 | 35件 |
| CPA | 55,000円 | 42,000円 | 140,800円 | 61,500円 |
| 商談化率 | 9.0% | 11.0% | 48.0% | 40.0% |
| 商談数 | 3.8件 | 4.8件 | 5.8件 | 14.0件 |
| 商談単価 | 611,000円 | 382,000円 | 293,000円 | 154,000円 |
※モデルケースの数値です。件数を3倍近くに伸ばした分、トライアルの商談化率は薄まりました。
トライアルのCPAは56%下がりましたが、商談単価の改善は47%にとどまります。
差の9ポイントが、商談化率の低下分です。
件数を増やせば、リードの質はどこかで薄まります。
どこまで薄まってよいかを決める基準が、商談単価です。
あわせて当初の目標CPA35,000円は取り下げ、資料請求22,500円とトライアル120,000円の2本立てにしました。
効かないケースと、やってはいけない対処
ここまでの進め方が、そのままでは合わないケースもあります。
合わない3つのケース
1つ目は、CVが月10件を下回っている場合です。
商談化率の差が偶然なのか実力なのか、判定できません。
この規模では、CV種別を分けるより、まず件数を積むほうが先です。
分けるのは月30件を超えてからで間に合います。
2つ目は、商談データが社内に蓄積されていない場合です。
商談単価を主KPIに置けないため、この手順は途中で止まります。
3つ目は、単価が低く商談を挟まないSaaSです。
セルフサーブで完結する事業では、商談単価より継続率が指標になります。
やってはいけない4つの対処
- 計測を直す週に、入札も同時に動かす翌週の数字が、計測修正の結果なのか入札の結果なのか分からなくなります。
- CPAが目標を超えた翌日に、予算を止める学習が途切れ、再開時にCPAがさらに上がります。判定はCVが20件たまってからです。
- CV種別を分けずに、目標CPAだけを下げる安く取れるCVに配信が寄り、商談数が減ります。Week5とWeek6で起きたことと同じです。
- 効かなかった施策を、戻さずに次を重ねる失敗が残ったまま変更を足すと、原因が特定できません。
同じ手順を別業種で適用した例は、【モデルケース】IT・システム開発でCPL高騰を解消するまでの3か月にまとめています。
自社で回すための週次の型
12週間を通して、やり方は毎週同じでした。
観測、仮説、変更、結果の4つを1周させるだけです。
週次で見た指標は、7つに絞りました。
これ以上増やすと、どれが動いたのか判断できなくなります。
- CV数(資料請求/トライアルの内訳つき)
- CV種別ごとのCPA
- 商談数
- 商談化率
- 商談単価
- CPC
- ページ上部の表示シェア
変更は、週2つまでを上限にしています。
Week5とWeek6の失敗を特定できたのは、変更が1つずつだったためです。
変更を入れるときは、判定日を先に決めます。
この案件では、入札系は2週間、LPと導線は3週間にしました。
Week5の入札引き下げを1週間で見切れたのは、判定日を先に決めていたためです。
週次ミーティングで確認する5項目
- 先週入れた変更は何と何か、記録に残っているか
- 7つの指標のうち、動いたものはどれか
- 動いた理由の仮説は、1つに絞れているか
- 判定日を過ぎた変更で、結論を出していないものはないか
- 今週入れる変更は2つ以内か
よくある質問
最初の2週間、本当に何も動かさなくていいのですか
配信を止める必要はありません。動かさないのは入札、予算、キーワード、広告文、LPの5つで、計測の設定変更とタグの修正はこの期間にまとめて実施します。施策の変更と計測の修正が同じ週に重なると、翌週の数字がどちらの結果か判定できなくなるためです。
資料請求とトライアルを分けると、CV数が減って見えませんか
分離そのものでCV数は減りません。減って見えるのは、同時に重複計上を直したときです。このモデルケースでは点検で月8件の重複が見つかり、CPAは64,500円から74,100円に悪化して見えました。社内には、この補正を先に説明しておくことをおすすめします。
CPAが下がったのに商談単価が上がるのは、なぜ起きますか
商談単価は広告費を商談数で割った値で、商談数はCV数と商談化率の掛け算です。CV数が増えても商談化率がそれ以上に落ちれば、商談単価は上がります。Week6では商談化率が11.1%まで下がり、商談単価は419,000円から494,000円になりました。
まとめ
- 最初の2週間は施策を止め、計測の点検だけに使う
- 資料請求と無料トライアルは、商談化率が5倍以上違う別の指標として扱う
- 目標は商談単価から逆算し、CV種別ごとの許容CPAに落とす
- 入札の一律引き下げとキーワードの大量追加は、商談を減らす方向に働いた
- CPAが下がっても、商談化率が落ちれば商談単価は上がる
- 変更は週2つまで、判定日は変更を入れる前に決めておく
12週間でCPAは32%、商談単価は49%下がりました。
動かしたのは入札ではなく、何をCVとして数えるかの定義です。
CPAは下がったのに、商談が増えないまま止まっている場合
TimeValue株式会社のKAIZENは、広告の運用だけでなく、CV定義から商談までの評価軸をまとめて組み直す支援です。
この記事の12週間と同じ順番で、計測の点検から着手します。