代理店を変えるべきか、それとも内製化すべきか。
このご相談は、成果が落ちた直後にいただくことがほとんどです。
ただ、手段を入れ替えても数字が戻らない案件が一定あります。
問題の出どころが、代理店ではなく発注側の設計にあるときです。
この記事では、症状がどちら側から出ているかを切り分ける基準と、機能ごとに置き場所を決める手順を整理します。
代理店を変えるかどうかは、比較検討ではなく切り分けの結果として決まります。
「運用者だけを入れ替えたら数字が戻るか」を先に問えば、答えはほぼ出ます。
- CV定義・商材の競争力・営業の受け皿・意思決定の速さ・予算の下限は、代理店を変えても動かない
- 代理店起因だと言えるのは、情報が出てこない・施策が止まっている・アカウントが代理店名義、の3点
- 内製化は全部か外注かではなく、5つの機能ごとに置き場所を決める
※本記事の数値は、実案件で起きやすい状況を一般化したモデルケース(シミュレーション)です。特定企業の実績ではありません。
目次
- 代理店を変える前に、問題の出どころを切り分けます
- 代理店を変えても解決しない5つのこと
- 代理店起因だと言える4つのケース
- 内製化は、5つの機能ごとに置き場所を決めます
- 内製化のコストを、人月で見積もる
- 切り替えるときに、実際に失うもの
- 効かないケースと、やってはいけない対処
- 判断の前に、2週間でやっておくこと
- よくある質問
- まとめ
代理店を変える前に、問題の出どころを切り分けます
成果が落ちたとき、最初に検討されるのは担当代理店の交代です。
ただ、替えても戻らないケースが一定あります。
替えて戻るのは、問題の出どころが代理店の運用にあるときだけです。
発注側の設計に原因があるなら、誰が運用しても似た結果になります。
切り替えのコストと空白期間だけが増えます。
代理店を変えるかどうかは切り分けの結果であって、最初に立てる選択肢ではありません。
切り分けの問いは1つだけ
判定の基準は単純です。
「発注側が何も変えず、運用者だけを入れ替えたら数字が戻るか」を問います。
戻ると言い切れるなら、代理店起因です。
戻らない、または分からないなら、発注側の設計から先に見ます。
実際には、両方が混ざっている案件が最も多くなります。
その場合も、発注側の設計を先に直す順番は変わりません。
症状は、事象まで下ろさないと判定できない
「成果が悪い」のままでは、どちら起因かを判定できません。
具体的な事象まで下ろす必要があります。
CPAが上がったなら、どのCVのCPAが、いつから、どの媒体で上がったのかまで特定します。
問い合わせが減ったなら、表示回数・クリック率・CVRのどれが落ちたのかを分けます。
受注だけが減り、CV数が同じなら、原因は広告の外にあります。
ここまで下ろすと、出どころは自動的に絞られます。
多くの場合、比較検討を始める前に答えが出ます。
POINT
切り分けができていない状態で他社に相談すると、どの社からも「うちなら改善できます」と返ってきます。
提案の中身ではなく、前提を確認してくる社かどうかで見てください。
代理店を変えても解決しない5つのこと
この5つに当てはまるなら、切り替えの検討は後回しで構いません。
1つ目はCV定義です。
資料請求と見積依頼を同じCVとして数えていれば、どの運用者でも最適化先を誤ります。
媒体の自動入札は、渡されたCVを等価として扱います。
価値の違いは、渡す側が分けておくしかありません。
2つ目は商材の競争力です。
価格・保証・納期のどれかで明確に劣っていると、クリック後に離脱します。
広告で解けるのは、認知と到達と訴求の順番までです。
比較段階で負ける理由までは動かせません。
3つ目は営業の受け皿です。
問い合わせから折り返しまで48時間かかると、商談化率は大きく下がります。
この状態でCPAだけを追うと、安いCVが増え、受注はさらに遠のきます。
4つ目は意思決定の速さです。
LPの1行を変えるのに2週間かかる体制では、検証の回数が確保できません。
運用の巧拙より、月に何回試せるかのほうが効いてきます。
ここは代理店を替えても変わりません。
対処は、広告文とLP文言の変更権限を担当者に下ろすことです。
予算が最低ラインを下回っている場合
5つ目は予算です。
媒体と商材に対して予算が小さすぎると、自動入札の学習が進みません。
週あたりのCV数が10件を下回ると、自動入札は判断材料を持てないまま動きます。
許容CPAが3万円なら、週10件で月120万円が目安になります【モデル試算】。
これを下回るなら、媒体数を絞るのが先です。
この状態で代理店を替えても、手数料の最低額が変わるだけです。
表1|代理店を替えても解決しない症状と、本当の出どころ
| 症状 | 代理店のせいに見える理由 | 本当の出どころ | 先にやること |
|---|---|---|---|
| CPAが下がらない | 入札や配信の調整不足に見える | 価値の違うCVを同一に扱っている | 主CVと副CVに分け、主CVだけを最適化対象にする |
| クリックはあるが問い合わせが来ない | キーワードやLPの選定が悪く見える | 価格・保証・納期で比較負けしている | 競合3社と条件を並べ、勝てる層に絞る |
| CVは増えたが受注が増えない | 質の低いCVを取っていると見える | 折り返しの遅さと商談化の運用 | 問い合わせから初回接触までの時間を計測する |
| 配信が安定しない | 運用が雑に見える | 週あたりCV数が学習の下限を割っている | 媒体を1つに寄せ、予算を集約する |
※症状と出どころの対応を一般化した整理です。実際には複数の要因が同時に起きていることがほとんどです。
代理店起因だと言える4つのケース
一方で、明確に代理店側の問題だと言えるケースもあります。
ここでは4つに絞ります。
1つ目は、報告が結果の羅列だけになっている場合です。
なぜそうなったかと、次に何をするかが書かれていない状態です。
この形の報告は、運用の意図が無いときに出ます。
2つ目は、検索語句や配信面を開示しない場合です。
依頼して2週間出てこないなら、体制側の問題として扱って差し支えありません。
3つ目は、担当者の兼務が多く、施策が止まっている場合です。
広告文の追加も除外もLP改善提案も無い月が続くなら、手が回っていません。
4つ目は、広告アカウントが代理店名義のままになっている場合です。
これは運用の質ではなく、資産の帰属の問題です。
アカウントが自社名義でない限り、切り替えの自由度は常に代理店側にあります。
いきなり切り替えに進まない
この4つは、運用者や体制を替えれば改善しうるものです。
ただ、最初にやるのは切り替えではありません。
まず担当変更と情報開示を、期限を切って要求します。
検索語句レポートと変更履歴は2週間、名義と体制の回答は1か月が目安です。
ここで体制変更の提案が出てくるなら、担当者個人の稼働の問題だったということです。
回答が無い、または同じ形の報告が続くなら、そこで切り替えの検討に移ります。
注意
開示を求めるときは、不信感としてではなく手続きとして伝えてください。
「社内報告に必要なので」と理由を添えると、出てくる速度が変わります。
いま出ている問題が代理店起因かどうか、その場で切り分けます
TimeValue株式会社では、無料マーケティング診断を毎月10社限定で実施しています。
現在の管理画面とレポートを一緒に確認します。
- CV定義と計測が、判断に使える状態になっているか
- 検索語句と配信面から、運用の実体が読み取れるか
- アカウント名義と権限が、自社側にあるか
オンライン30〜45分/資料の事前提出は不要です。
内製化は、5つの機能ごとに置き場所を決めます
内製化の相談は、多くの場合「全部やるか、全部任せるか」の二択で来ます。
実際には、その間に置き場所を決める作業があります。
広告運用は、戦略設計・媒体運用・クリエイティブ制作・計測実装・分析レポートの5つに分かれます。
この5つは、必要なスキルも稼働の性質も違います。
まとめて扱うから、判断が二択になります。
戦略設計は、商材と顧客を知らないと精度が出ません。
計測実装も、何を成果と置くかの要件は社内でしか決められません。
最も社内に残す価値が高いのは、戦略設計と計測の要件定義です。
分析レポートを外に出すと、判断の根拠も外に出ます
5つの中で扱いが難しいのが、分析レポートです。
工数が重いため、真っ先に外に出したくなります。
ただ、丸ごと外に出すと、社内に残るのは結論だけになります。
代理店を替えるべきかどうかも、自社で判定できなくなります。
現実的な分け方は、生データの保持と集計作業を分けることです。
管理画面の閲覧権限は自社で持ち続けます。
表2|5つの機能と、置き場所の判断
| 機能 | やること | 社内に残す理由 | 推奨 |
|---|---|---|---|
| 戦略設計 | 予算配分、媒体選定、訴求の方向決め | 商材と顧客の知識が前提になる | 社内主導・外部は壁打ち |
| 媒体運用 | 入札、除外、構成変更、日次の調整 | 細かい判断を社内で握れる | 外注 |
| クリエイティブ制作 | 広告文、バナー、動画の生成と差し替え | 商材の言葉を正確に使える | 外注+社内で最終確認 |
| 計測実装 | タグ設置、イベント設計、CV定義 | 何を成果とするかは社内でしか決まらない | 要件は社内・実装は外注 |
| 分析レポート | 数字の集計、要因分析、次の提案 | 判断の根拠を手元に置ける | 生データは社内・整理は外注 |
※社内に専任担当が1名いる体制を前提とした、一般的な振り分けです。
5行それぞれについて、いまの置き場所を書き込み、推奨と食い違う行を見直しの候補にします。
内製化のコストを、人月で見積もる
内製化の判断で抜けやすいのが、稼働量の見積もりです。
ここを人月で置くと、比較ができるようになります。
月予算300万円、媒体2つ、商材1つという条件で置いてみます【モデル試算】。
媒体運用に0.5人月、制作に0.4人月、分析に0.3人月、戦略設計と計測に各0.2人月です。
合計で1.6人月になります。
専任1名では足りず、1.5〜2名の体制が必要になる規模です。
人件費は、給与に社会保険料と間接費を乗せて1人月70万円で置きます。
1.6人月で月112万円です【モデル試算】。
ここに、ツール費が月5〜15万円乗ります。
手数料と釣り合うのは、どのくらいの予算規模か
合計すると、社内で抱える月額は約122万円になります【モデル試算】。
代理店手数料を広告費の20%とすると、122万円に相当するのは月予算610万円です。
月予算が600万円を下回る規模では、内製化は費用面での優位を持ちません。
これに加えて、初期コストがかかります。
採用に1名あたり100〜200万円、立ち上がりまでに3〜6か月です【モデル試算】。
さらに属人化のリスクが残ります。
1名体制で回すと、退職とともに除外の理由も配分の根拠も失われます。
防ぐには、設定変更の理由を記録に残す運用が要ります。
これ自体が月0.1人月程度の追加工数です【モデル試算】。
POINT
内製化の価値は、費用削減ではなく判断の速さと蓄積にあります。
費用だけで比較すると、多くの規模で成立しません。
切り替えるときに、実際に失うもの
実務でつまずくのは引き継ぎです。
ここを軽く見ると、数か月分の蓄積を落とします。
最も影響が大きいのは、アカウントの名義です。
代理店名義だった場合、原則としてアカウントごと失います。
作り直すと自動入札の学習もゼロから始まり、再学習に2〜4週かかります【モデル試算】。
この期間はCPAが一時的に上がります。
計画に織り込まないと、切り替え直後に判断を誤ります。
除外キーワードと除外配信面の蓄積も、引き継ぎ対象です。
クリエイティブの原本と使用権は、契約書の条項で決まります。
切り替え時期は、繁忙期を外す
切り替えの時期は、商材の繁忙期を避けて設定します。
再学習の2〜4週が最も売れる時期に重なると、損失が大きくなります。
閑散期に切り替え、繁忙期は安定した状態で迎えます。
並走期間を1〜2週取れるなら、そのほうが安全です。
旧アカウントを止めずに新アカウントを立ち上げます。
並走には二重の広告費がかかりますが、失敗したときに戻れる状態を買う費用だと考えます。
そして、切り替え後1か月は成果ではなく実行量で評価します。
表3|切り替え時に引き継げるもの、失うもの
| 対象 | 引き継ぎ可否 | 失うもの | 代替手段 |
|---|---|---|---|
| 広告アカウント(自社名義) | 引き継げる | なし | 権限の付け替えのみ |
| 広告アカウント(代理店名義) | 原則として引き継げない | 学習データ、過去実績、設定の履歴 | 新規作成。2〜4週の再学習期間を見込む |
| 除外キーワード・除外配信面 | 交渉次第 | 数か月分の除外運用 | 切り替え前にリストのエクスポートを依頼 |
| クリエイティブ原本 | 契約次第 | 制作物の再利用権 | 契約書の著作権・使用許諾条項を確認 |
※契約形態と媒体によって前提は変わります。移管可否は契約書と媒体規約で確認してください。
効かないケースと、やってはいけない対処
判断を誤りやすい型を並べます。
どれも、一見すると合理的に見えるものです。
1つ目は、相見積もりの金額だけで決めることです。
手数料率だけを比べると、稼働量の差が見えません。
手数料15%で月1回しか触らない体制と、20%で週次に回す体制は別物です。
比べるべきは、月あたりの稼働と対応範囲です。
2つ目は、成果報酬型を安全策だと考えることです。
報酬がCV数に連動すると、安いCVを増やす方向に力が働きます。
受注まで連動させられない限り、固定報酬のほうが読めます。
3つ目は、単月の数字で切り替えを判断することです。
月次のCPAは、季節性と競合の出稿で簡単に2割動きます。
見るべきは3か月の移動平均と、施策の実行量です。
4つ目は、提案書の見栄えと事例の数で選ぶことです。
初回でCV定義と受注単価を聞かずに改善案を出す社は、同じ提案を他社にも出しています。
5つ目は、切り替えを繁忙期に当てることです。
再学習の2〜4週が、最も売れる時期に重なります。
6つ目は、5つの機能を一度に内製化することです。
採用・教育・実装が同時に走り、どれも中途半端になります。
内製化は媒体運用かクリエイティブ制作の片方から始め、半年ごとに範囲を広げるのが現実的です。
もう1つ、効きにくい対処があります。
同じ条件のまま、手数料率だけを下げる交渉です。
率が下がれば割ける工数も下がり、報告の頻度と施策の量がそのまま落ちます。
注意
切り替えの理由が「担当者と合わない」だけの場合は、まず担当変更を要求してください。
会社を替えるより早く、失うものもありません。
判断の前に、2週間でやっておくこと
ここまでの内容は、2週間あれば一通り確認できます。
- 症状を事象まで下ろす「成果が悪い」を、いつから・どの媒体の・どのCVが・どの指標で悪いのかまで分解します。ここが曖昧なままだと、以降の判定がすべて印象論になります。
- 開示を期限付きで依頼する検索語句レポート、配信面の一覧、直近3か月の変更履歴を、2週間の期限を付けて依頼します。出てくるかどうか自体が判定材料です。
- 5つの機能を棚卸しする戦略設計・媒体運用・制作・計測実装・分析レポートの5行に、いまの担当と稼働状況を埋めます。
- 発注側の5項目を自己点検するCV定義、商材の競争力、営業の受け皿、意思決定の速さ、予算の下限を確認し、1つでも当てはまれば先にそこを直します。
- 出どころを1行で書く「運用者だけを入れ替えたら数字が戻るか」に、はい・いいえで答えます。答えが出れば、打ち手はほぼ決まります。
2週間後に手元にあるべきもの
- 悪化している指標と、悪化が始まった時期の特定
- 直近3か月の検索語句レポート(生データ)と配信面の一覧
- 媒体管理画面の変更履歴と、アカウント名義・権限の状態
- 5つの機能の担当表と、止まっている機能の特定
- 発注側5項目の自己点検結果
これが揃えば、替えるか残すかの判断は社内で下せます。
他社の提案を聞くのは、そのあとで構いません。
よくある質問
代理店を変えると、成果はどれくらいで戻りますか
自社名義のアカウントをそのまま引き継げる場合は、1〜2か月で判断できる状態になります。アカウントを作り直す場合は、自動入札の再学習に2〜4週かかるため、切り替え直後の1か月は成果で評価しないでください【モデル試算】。実際に比較できるのは3か月目からです。出どころが発注側の設計にあった場合は、期間を置いても戻りません。
広告アカウントが代理店名義でした。移管できますか
媒体と契約内容によります。媒体側の規約に移管の仕組みがある場合でも、代理店が応じるかどうかは契約の問題です。まず契約書のアカウント帰属に関する条項を確認し、そのうえで移管の可否を書面で確認してください。応じてもらえない場合は、新規アカウントでの再スタートを前提に計画します。次の契約では、自社名義で開設して管理権限だけを付与する形をお勧めします。
媒体ごとに別の代理店へ分割発注するのは有効ですか
範囲をまたぐ判断を社内で下せる体制があるなら有効です。各社は自分の担当範囲では最適な提案をしますが、予算をどちらに寄せるべきかは誰も答えられません。CVの定義も社ごとにずれます。分割するなら、計測はタグマネージャで一元管理し、CV定義は発注側が配ってください。担い手が社内にいない場合は、単価が下がった分を調整工数で失います。
まとめ
- 替えるかどうかは、「運用者だけを入れ替えたら数字が戻るか」の1問で切り分ける
- CV定義・商材の競争力・営業の受け皿・意思決定の速さ・予算の下限は、替えても動かない
- 情報が出てこない、施策が止まっている、アカウントが代理店名義の3点は代理店起因
- 内製化は5つの機能に分け、戦略設計と計測の要件定義を社内に残すところから始める
- 月予算600万円を下回る規模では、内製化に費用面の優位は出にくい【モデル試算】
- 切り替えは繁忙期を外し、再学習の2〜4週を計画に織り込む
手段を替える前に、出どころを1行で書けるかどうかを確認してください。
書けないうちは、どの選択肢を選んでも結果は運任せになります。
替えるべきかの判断から、切り替え後の設計まで一緒に見ます
KAIZENは、広告運用だけを請け負うサービスではありません。
CV定義の整理、計測の実装、営業の受け皿までを範囲に含めます。
替えるべきでないと判断した場合は、理由を添えてそのままお伝えします。