
宿泊予約につなげるには、SNSで伝える滞在体験と、実際に選べるプラン、予約画面までの案内をそろえ、再生数だけでなく予約件数と売上で確かめることが重要です。ホテルのInstagramで動画は見られている。客室の写真には反応がある。それでも公式サイトの予約が増えず、投稿を続けるべきか、広告費を足すべきか迷っていませんか。宿泊は、気になった瞬間に購入が終わる商品ではありません。行く理由を見つけ、同行者と話し、日程や価格を確かめる。その途中で関心が途切れれば、再生数が増えても予約には届きません。
参考になるのが、OMO by 星野リゾートとNazunaのキャンペーン事例です。どちらも公式の公開資料に予約成果が記載されていますが、施策の仕組みや比較条件は同じではありません。両事例はTimeValueの支援実績ではありません。この記事では二つの事例を正しく読み分け、SNSの企画、広告、予約ページ、成果の測り方を一続きで改善する方法を考えます。後半の具体策は自社で検証するための提案であり、各社が実施した内容の追加説明ではありません。
目次
OMOは動画を見る理由と予約へ進む理由をつないだ

コムニコが2024年5月13日に公開したOMO by 星野リゾートの公式導入発表では、Instagramのフォロー、ブランドムービー視聴、動画に関するクイズ回答を経て、正解者が特別プランを予約できる企画を紹介しています。DMの自動応答ツールを活用し、特別プランの予約数は過去のキャンペーン実施時と比べ約9倍、動画視聴数も3倍に増加したと公表されています。
重要なのは、ホテル全体の予約が9倍になったという成果ではないことです。特定の企画による予約数の比較であり、公開発表からは比較対象の実施期間、広告費、参加者数などを揃えて確認できません。ツールの導入だけで予約が増えたとも判断できません。自社へ適用するときは、企画内容と対象、オファー、予約のしやすさを一組として捉えます。
この事例から得られる示唆は、ブランドを知る行動と予約する行動が離れていないことです。単に動画を再生して終わるのではなく、内容に触れる理由を作り、その後に具体的な宿泊プランへ進めています。真似る対象をクイズの形式だけにすると、参加は増えても宿泊したい人が増えない企画になりかねません。
Nazunaの事例では広告費と予約売上の関係を確認できる

Nazunaは自社の公式発表で、箱根の新施設の先行予約企画について、2025年4月1日から20日の広告費24万円、リード490件、予約139組、売上954万円を公表しています。SNS広告とリスティング広告などを使い、宿泊体験を伝える表現と特別価格のオファーを組み合わせた施策です。掲載されたROASは約39.75倍、CPAは1,727円です。
公表値の意味を計算から確認すると、954万円を24万円で割ったものがROASです。広告費に対してどれだけの売上を計上したかを見る値であり、利益率や事業全体の投資回収率とは違います。制作費・運用費など広告費以外の費用、宿泊提供の原価、割引を含む提供条件の詳細、キャンセル後の確定売上は、公開資料だけでは確認できません。
また、公表値を再計算すると、CPAは広告費24万円を予約139組で割った約1,727円に一致します。リード490件で割った値ではありません。約28.4%も139組を490件で割った割合です。リードの具体的な獲得条件や重複の扱いは掲載されていません。広告を見た人全体やサイト訪問者全体に対する予約率と比べることはできません。成果が大きい事例ほど、どの行動を成果として数えたかを先に確かめたいところです。
新規開業の先行販売には、その時期固有の期待やオファーがあります。通常営業の平日集客に、同じ費用対効果がそのまま続くと想定するのは避けます。自社で使うときは、誰が何を魅力に感じたのか、その人に予約できる商品と日程が提供されていたか、という関係に注目します。
まず予約を増やしたい商品と宿泊理由を決める

「公式予約を増やす」だけでは、発信する内容を選べません。都市型ホテルの週末旅行、温泉宿の記念日滞在、連泊で周辺を巡る旅行では、選ぶ理由も検討する期間も異なります。キャンペーンは、売りたい客室やプランと、利用者にとっての宿泊理由を結び付けて作ります。
たとえば街歩きを楽しむプランなら、駅から近いことだけでなく、滞在中にどのように街を楽しめるかを伝えます。客室で過ごす時間が魅力なら、部屋、食事、入浴などの体験がどうつながるかを見せます。施設の設備を順に紹介するだけでは、他の宿をやめてその施設を選ぶ理由が弱いことがあります。
この段階で広告文だけを作らず、予約画面で選べる商品まで確認してください。投稿で紹介した客室が別料金だった、体験に事前予約が必要だった、対象日に選べない、といった違いがあると期待が崩れます。条件は読みにくい注記へ集めず、宿泊の判断に影響するものから分かる場所へ示します。
割引は選択肢の一つですが、価格だけで参加者を集めると、その企画が終わった後の予約につながりにくい可能性があります。自社の体験価値を知ってもらう内容と、実際に利用できる特典を組み合わせます。限定数や期限を使う場合も、実際の提供条件に基づいて表示し、残り数を演出のために作りません。
投稿は参加したい理由より泊まりたい理由を残す

SNS企画は参加のハードルを下げるほど広がりやすい一方、宿泊への関心が薄い人も集まります。応募件数だけを目的にすると、景品目当ての反応を大きな成果と取り違えることがあります。投稿や動画には、その施設を候補にしたくなる判断材料を入れます。
短い動画なら、冒頭でどのような滞在を楽しめるかを示し、途中でその理由が分かる具体的な場面を見せ、最後に選べるプランへ案内する構成が考えられます。豪華さを表す形容詞だけを増やすより、客室からの眺め、朝の過ごし方、街との距離など、自社で確認できる内容を使います。映像と実際の提供条件を一致させることが必要です。
クイズや診断を使う場合も、回答する間に宿の特徴が理解できる内容かを考えます。施設と無関係な質問を増やして参加者数だけを稼ぐより、旅行の目的や好みに応じて関心を深められる企画の方が、次に案内する商品との関係を作りやすくなります。ただし個別の回答を取得するなら、何に利用するかを明確にし、不要な個人情報まで集めない設計にします。
広告に転用するときは、自然投稿で反応が良かった動画が、初めて見る人にも伝わるかを確認します。既存フォロワーは施設名や場所を知っているかもしれません。広告では誰向けの、どこにある、どのような宿泊かが分からなければ、反応だけ集まって予約候補にならないことがあります。
DMやプロフィールの次に迷わせない予約導線を作る

関心を持った人へ毎回総合トップページを案内すると、投稿で見た客室やプランを探し直す必要があります。キャンペーンの案内先は、その企画で予約できる内容、対象日、料金の条件を確認できるページにします。案内文とページ名が一致しているだけでも、利用者が別の場所へ来たと感じにくくなります。
DMを使うなら、返答が届いた時点で次の行動が分かるようにします。プラン内容を確認する、日程と料金を確認する、必要な条件を相談するなど、目的の違うリンクを整理します。いくつものURLを同じ重要度で並べるより、主な入口を一つ決め、補足情報はその周りへ置く方が検証しやすくなります。
予約ページでは、参加したことと予約が成立したことを明確に分けます。特別プランにアクセスできても、希望日の空室があるとは限りません。予約が確定する段階、対象の客室、食事の有無、人数条件、料金が変わる要素を確認できるようにし、SNSで見た印象だけで誤認したまま進めないようにします。
スマートフォンのアプリ内ブラウザでも、ページが開き、日付と人数を変更でき、戻ったときに選択が消えないかを確かめます。別の予約システムへ移る場合は、企画のプランが引き継がれるかも重要です。投稿の反応が良いのに予約画面への移行が少ないとき、企画の魅力を増やす前にこの接続を点検する価値があります。
広告では認知と予約に近い反応を分けて改善する

SNS広告は魅力を知ってもらう入口、検索広告は施設や旅行条件を探す人の入口になり得ます。ただし、必ずその役割に収まるとは限りません。実際の広告文、検索語句、着地後の行動を見て、どの広告がどの段階の関心を集めたかを確認します。
動画の視聴率が高いのに予約ページへ進まないなら、見る価値はあっても自分の旅行と結び付いていない可能性があります。地域、対象となる滞在、選べるプランを明らかにする案を試します。クリック率が高いのに日程検索が少ないなら、広告で期待した条件がページで見つからないかもしれません。どちらも、すぐに配信量だけ増やす判断とは分けます。
日程検索までは進むのに予約が少ない場合は、対象日の空室、表示された価格、プランの条件を確認します。広告が不調なのか、提示できる宿泊商品が需要と合っていないのかを分けないと、広告の表現だけを変更し続けることになります。広告から案内する日程や客室を変える案も含めて検証してください。
予約CPAが良い広告を見つけても、宿泊日や客室の構成を見ずに全体の予算を寄せないことが大切です。すでに予約が入りやすい日に需要が偏っているなら、全体の売上拡大に寄与する余地は限られるかもしれません。需要のある層へ届けることと、埋めたい宿泊商品へ適切に届けることを両方見ます。
CTRから宿泊売上まで指標をつなげて読む

指標は、同じ名前でも分母が違うと比較できません。CTRは広告が表示された回数に対するクリック、予約ページへの移行率は対象の訪問者に対する移行、予約率は定義した対象に対する予約です。SNSの参加者を分母にした予約率と、サイト訪問者を分母にした予約率を並べて優劣を決めないようにします。
企画の評価では、少なくとも参加やリードの件数、予約の件数、予約売上を分けます。さらに宿泊後の採算を見るときは、キャンセルや返金、割引と販売費用を反映した結果を確認します。まだ宿泊していない予約の見込売上と、宿泊が完了した売上が混在しているなら、同じ数字として扱いません。
広告費を予約件数で割る予約CPAと、広告費をリード数で割るリードCPAは目的が違います。リードCPAが安くても予約への転換が低ければ、最終的な予約CPAは悪化します。集客の入口で使う補助指標を決めたうえで、予算の判断は目標となる成果までつなげて行います。
ROASも広告費基準の売上評価です。制作や運用に大きな費用をかけた企画と、既存の素材だけを使った企画を広告費だけで比べると、採算の印象が変わります。公式予約へ移った分と新たに増えた予約の区別も重要です。広告管理画面が報告する売上をすべて純増とみなさず、施設全体の予約推移と合わせて見ます。
自社で試すときは一つの企画を小さく完結させる

最初から複数施設、複数プラン、多数の動画を同時に変えると、成果が動いた理由を判断しにくくなります。まず対象とする宿泊理由を一つ決め、動画や投稿、広告、案内先、予約完了までを揃えます。企画を実施できる条件と、予約成果を観測できる範囲があることを先に確かめます。
検証する問いは具体的にします。「SNSを強化すれば予約が増えるか」より、「体験内容が分かる動画から該当プランへ直接案内すると、対象者の予約が増えるか」の方が変更点と成果を対応させられます。値引き条件まで同時に変える場合は、動画や導線だけの効果を取り出せないことを前提にします。
次の表は、公表事例の実施内容ではなく、自社の状態に合わせて改善を選ぶための例です。参加者数を増やすことを全ての場面の答えにせず、予約への接続が切れている場所を確認します。
| 観測した状態 | 考えられる確認点 | 試す内容 | 主に確かめる成果 |
|---|---|---|---|
| 動画は見られるが案内先へ進まない | 場所や宿泊理由が伝わるか | 滞在とプランの関係を明らかにする | 対象者のプラン到達と予約 |
| 参加は多いが予約意向が弱い | 企画と宿の魅力に関係があるか | 宿泊を考える判断材料を企画に含める | 参加者からの予約率と予約CPA |
| プランは見られるが日程を調べない | 料金条件や次の操作が分かるか | 条件を整理し、日程確認へ直接案内する | 日程確認と予約完了 |
| 予約は増えたが売上への寄与が小さい | 割引、キャンセル、予約日の偏り | 対象商品と配信条件を見直す | 宿泊後の売上と販売費用控除後の採算 |
前回の企画と比較するときは、期間の日数、休前日や連休の有無、販売する客室、広告費、オファーを並べて確認します。条件が異なる比較自体に価値がないわけではありません。ただし、違いを残したまま「動画を変えたから予約が増えた」と結論付けることは避けます。同時に比較できない場合は、成果の説明を条件付きにしてください。
実施前の確認では、企画参加から予約完了までを一度通し、対象プラン、価格、確認メールの案内が一致するかを見ます。期限を過ぎた後の投稿やリンクも考え、終了した企画を申し込めるように見せない表示を用意します。媒体の仕様やルールは変わるため、過去事例に出てくるツール名や操作方法を現在そのまま利用できるとは考えず、実施時の公式情報で確認してください。
キャンペーンの外でも検討を続けられる情報を残す
広告を見たその日に、同行者や日程が決まるとは限りません。後から施設名を検索した人が、動画で見た滞在内容を公式サイトでも確かめられるようにします。客室や周辺の楽しみ方を、広告だけで消費される素材にせず、通常のプランを選ぶ判断材料として整理する案です。終了した割引だけを大きく残し、現在の料金やプランが見つからない状態は避けます。
SEOの観点でも、キャンペーンごとにほぼ同じ短いページを量産するより、施設の特徴や宿泊条件を確認できる基本ページを充実させる方が、訪問者の目的に応えやすくなります。個別企画の案内は基本ページと結び付け、期間後には終了を明示して、現在選べるプランへ進めるようにします。検索順位の上昇を保証する施策として扱うものではありません。
予約に至らなかった人へ再び案内する場合も、配信を受け取る意思と利用目的を確認した接点を使います。前の企画へ参加したことだけで無期限の配信に同意したとみなさず、現在案内できる内容と停止方法を分かるようにします。興味を持った体験に関連する新しい情報を届け、その反応と予約を確認する方が、同じ値引き告知を繰り返すより検証する意味が明確になります。
このように、広告から予約する短い導線と、検索や再訪で検討を続ける導線を合わせて考えます。すぐ予約しなかった訪問者を全員失敗と扱わず、同時に追跡できない後日の売上を推測で成功へ加えない。その両方を守ることが、SNSと公式サイトを継続的に改善するために必要です。
よくある質問
フォロワーが少なくても予約につながる企画はできますか?
人数だけで可否は決まりません。届けたい宿泊者と商品の関係、広告で接点を作れるか、予約まで進める導線があるかを確認します。まず小さな対象で検証し、参加者数より実際の予約と獲得費用から拡大を判断してください。
OMOの約9倍を自社の目標に置いてよいですか?
特定のキャンペーンを過去の企画と比べた数字で、ホテル全体の予約増加率ではありません。比較期間や費用を同条件で確認できないため、そのまま自社の目標にせず、自社の過去実績と販売可能な宿泊商品から判断します。
ROASが高ければキャンペーンは成功ですか?
広告費に対する売上が高くても、割引や制作費、運用費、キャンセルを含めると採算が変わります。宿泊日や客室の偏り、もともと入る予定だった予約も確認し、施設全体で売上と利益を増やせたかを合わせて見ます。
クイズとDMの仕組みを必ず導入する必要がありますか?
必要とは限りません。動画からプランへ直接進める方が分かりやすい商品もあります。クイズやDMが宿の理解を深め、予約前の迷いを減らす役割を持つかを確かめ、参加の手順を増やすこと自体を目的にしないでください。
まとめ:SNSの反応を予約売上へつなぐ接点を整える

二つの事例は、SNSの表現だけでなく、参加する理由、宿泊プラン、予約までの案内を一緒に考える材料になります。大きな成果の数字を目標へ写す前に、何を分母にし、どの期間の、どの予約を数えた成果なのかを読み取ってください。自社では投稿と広告の反応、予約画面への移行、宿泊後の売上をつないで改善を判断します。
TimeValueでは、SNSや広告のクリエイティブ、広告運用、Webサイト・LP改善、データ分析を含むWebマーケティング支援を行っています。再生や反応はあるのに予約につながらない場合は、企画から予約ページまでの導線と、現在の成果の測り方からご相談ください。
出典確認日:2026年10月6日。紹介した事例は各出典の公表時点の情報であり、TimeValueの支援実績ではありません。
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