
長期検討型のITサービスでは、最終接触のCPAだけで広告を止めず、初回・途中の接点とWeb全体の契約数を合わせて評価することが重要です。認知広告を残すかどうかは、接触履歴に加え、自社の検討期間を踏まえた有効相談や契約の変化から判断します。GMOクラウドALTUSの公表事例を手がかりに、広告配分と比較コンテンツを見直す方法、数字の改善を過大評価しないための確認点を解説します。
本記事で紹介するのは、出典に記載された第三者の支援・改善事例であり、TimeValueの支援実績ではありません。
GMOクラウドALTUSの公表事例では、広告の途中接点にも目を向けた運用に取り組み、Web全体のCPAが従来の2分の1以下になったと報告されています。本記事では、この事例の確認できる事実と限界を押さえ、長期検討型のITサービスで、認知広告、検索広告、比較コンテンツ、LPをどのように評価し直すかを解説します。後半の施策案は、自社への応用を考えるための提案です。
目次
GMOクラウドALTUSの事例で何が起きたのか

メディックスの公式事例は、GMOグローバルサイン・ホールディングスが事例当時に提供していたIaaS型クラウドサービス、GMOクラウドALTUSの広告運用を扱っています。公表時点では申し込みから成約までWebで完結する商材と説明され、最後に接触した広告のCPAを重視する中で、Web全体のCV数が減っていったという課題が紹介されています。
メディックスの事例では、成約に至る経路を分析したCVユーザーの約50%が、90日〜1年間の検討期間を持っていたと説明されています。認知と獲得の広告を組み合わせ、途中接点の貢献も評価した結果、Web全体のCPAが従来比2分の1以下となり、年間の成約目標を達成したと報告されています。出典はメディックスの公式支援事例で、アドエビスの公式事例にも同案件が掲載されています。ただし、アドエビスの資料は「半数以上が31日〜1年」と記し、検討期間の範囲が一致しません。本稿の期間はメディックスの記述に限定し、表記差の理由は公開情報から確認できないものとして扱います。
公開情報では、比較した年月、広告費、成約件数、母数の具体的な人数、媒体別の改善幅は確認できません。約50%は全サイト訪問者ではなく、事例で分析したCVユーザーの割合です。施策ごとの因果効果を測定した実験結果とも示されていません。公表年月の明記がない過去の運用事例として読み、当時の計測方法や製品仕様を現行の機能と同一視しないことが重要です。
安いCPAへの集中で獲得が細る構造を考える

すでに知っている人を集める広告には上限がある
自社名やサービス名を検索する人は、すでに別の場所でサービスを知っている場合があります。その検索広告のCPAが低いからといって、予算を倍にすれば契約も倍になるとは限りません。検索する人の数が増えていなければ、既存の需要を取り合う配分になるためです。まず、予算不足で表示を逃しているのか、そもそも需要が少ないのかを分けます。
一方、課題解説の記事や比較広告は、初めて知った日に契約されないことがあります。そこで直接の成約が少ないという理由だけで止めると、後日サービス名を検索する人まで減る可能性があります。ただし、すべての認知施策が有効とは限りません。入口として役立っているかを確かめる方法を持つことが、無条件で広告を残すこととの違いです。
広告経路の記録と広告による純増は別に考える
成約した人がある広告を見ていたとしても、その広告がなければ成約しなかったとは証明できません。もともと関心の強い人が、多くの広告や記事に接触していただけかもしれないからです。複数接点への貢献配分は、見落としていた経路を探すために有用ですが、その数字だけを広告の追加効果として扱わないようにします。
この区別が曖昧なままでは、獲得を増やす施策より、成約直前の人に繰り返し見せる施策が高く評価されるおそれがあります。途中接点が多い広告については、接触後に比較行動が進んだか、未接触の群と傾向が違うか、予算を変えた際に全体の成果がどう動いたかも合わせて見ます。経路の発見と、追加投資の判断を段階に分けることが大切です。
自社の検討期間を確かめるところから始める

記事を読んでから契約までの時間を一律にしない
法人向けITでも、少額で始められるサービスと、既存システムの変更を伴うサービスでは、検討の長さが異なります。ALTUSの約50%という数字を自社の基準にせず、把握できる範囲で、最初の接点から問い合わせ、商談、契約までの日数を確認します。最初の接点が記録できない案件は、無理に日付を埋めず、不明として扱います。
平均日数だけを見ると、短期で契約する層と長期で検討する層の違いが隠れます。自社の検討期間の分布を見て、短期、中期、長期といった区分で比べる方法があります。区切りは案件数と検討の進み方に合わせて決めます。案件が少ない場合は細かく割りすぎず、まず短期と長期で流入元や閲覧内容が異なるかを確かめます。
観測できない経路を前提に計測を設計する
利用端末の切り替え、同意の状態、担当者から別担当者への情報共有などにより、すべての接点を一人の経路として取得できるとは限りません。計測できた広告経路を、顧客の行動全体だと扱わないことが必要です。問い合わせ時の任意の認知経路や、商談で確認できた検討背景は、広告ログを補う情報として使えます。
同時に、フォーム完了、商談成立、契約完了を別の成果として記録します。資料のダウンロードと有料契約を一つのCVにまとめると、媒体のCPAが下がった理由を説明できません。既存ツールの範囲で整理できることから始め、個人情報の取り扱いや同意、保存範囲を確認したうえで、必要な計測を追加する順序が適切です。
広告とコンテンツの役割を検討段階に合わせる

課題を知る入口には自社の宣伝を詰め込みすぎない
まだ製品名を知らない層には、抱えている問題の整理や、選択肢を比較する方法が役立ちます。法人ITなら、運用負荷、既存環境との適合、移行時の確認事項、費用の構成などが候補になります。自社のサービスが解決できる課題に範囲を絞り、誰にでも当てはまる一般記事を大量に作るのではなく、比較検討へ進める内容を整えます。
広告は記事の内容と一致させます。「費用の考え方を知る」と案内して、着地先が問い合わせフォームだけなら、訪問者の期待に応えられません。記事中で比較条件を示し、その条件を自社製品で確かめるリンクを置く流れが考えられます。記事を読んだ人全員にすぐ商談を求めず、次の疑問に答える道を用意します。
比較中の顧客には導入できる条件を示す
製品を比較している段階では、機能一覧だけでなく、自社の環境で利用できるかを判断する情報が必要です。料金に含まれる範囲、追加費用の条件、設定や移行の支援、導入前に確かめる事項を整理します。特定の競合より安い、速いといった比較をするなら、比較対象、測定条件、確認時点を明記できるものに限ります。
この段階のLPでは、実際の利用条件を相談する入口、仕様を確認する入口、申し込みの入口を役割ごとに分けます。ただし、CTAを同じ強さで並べすぎると選びにくくなります。広告が何を約束しているかを基準に主な行動を一つ定め、別の検討段階の人が進める補助導線を添えます。クリックを取りやすいCTAが、最終的な契約に適切とは限りません。
配分を変える前に用意したい三つの見方

入口別の成果を同じ経過期間で比べる
今月獲得したリードと、半年前に獲得したリードを、現時点の受注率でそのまま比べると、前者が不利になります。入口ごとに獲得月をそろえ、初回接点から同じ経過期間で進展を見ます。直近の施策は問い合わせや有効商談などの途中成果で確かめ、受注が熟した群は契約と採算で判断する二段階の見方が必要です。
媒体内のCPAとWeb全体の成果を並べる
媒体の管理画面で広告AのCPAが改善していても、Web全体の新規契約が減っていれば、配分が適切とは言えません。逆に認知側へ配分した直後に、直接獲得のCPAが一時的に上がることもあります。媒体別の変化と、Web全体の新規問い合わせ、商談、契約、費用の変化を同じ期間で確認します。
計測方法が異なる複数媒体のCVを単純に足すと、同じ成約を重複して数える場合があります。全体の成果は、自社で把握する重複を除いた問い合わせや契約を基準にし、媒体の数字は配信を調整するための補助として使います。どちらか一方が正しいという話ではなく、目的と集計条件を分けることが重要です。
新規顧客と既存顧客の行動を混ぜない
サービス名の検索や料金ページ閲覧には、既存顧客の利用目的も含まれ得ます。新規獲得のための改善を評価するなら、分かる範囲で新規契約、追加契約、サポートへのアクセスを区別します。新規顧客を増やしたいのに、既存顧客の行動が多いページを認知施策の成功と見なすと、次の打ち手を誤りやすくなります。
CTRとCVRが上がったときこそ契約の増え方を確認する

本記事では、CTRを広告表示に対するクリックの割合、LPのCVRを訪問に対する目的行動の完了割合として扱います。CPAは広告費を定義した成果件数で割る指標です。比較するときは、目的行動が資料請求なのか契約なのか、訪問の数え方は同じかを必ずそろえます。
認知向け広告のCTRが高いのに、製品比較へ進む人が少ない場合は、記事のテーマが自社の提供価値から離れているかもしれません。比較ページのCVRが低い場合は、広告の期待と料金・条件の説明が合っているかを調べます。獲得広告のCPAが高い場合でも、その入口の契約率や契約規模が大きければ、配分を減らすべきとは限りません。
問い合わせCPAは広告費を問い合わせ数で、広告費だけの契約獲得単価は広告費を契約数で割って求めます。問い合わせCPAが高くても、その後の契約率が高ければ、契約獲得単価が低くなる場合があります。問い合わせ数が減った場合も、対象に合う顧客の割合と契約数が増えているなら、事業成果が悪化したとは言えません。逆に、問い合わせCPAが下がっても契約に至らない相談が増えたなら、広告やLPの訴求を見直す必要があります。
ただし、契約獲得単価は顧客獲得にかかった費用のすべてではありません。制作費や運用支援費、商談対応などを含めた費用、契約後の粗利、継続状況も踏まえて採算を見ます。長期契約の見込みだけを使って広告費の上限を大きくせず、実際に確認できる回収実績から、許容できる投資範囲を決めることが大切です。
数字の改善が集計条件の変更で起きていないか

長期検討の計測を導入すると、以前は記録できなかった成果が見えるようになる場合があります。このとき、CV数の増加をすべて新規契約の増加と扱うのは適切ではありません。施策の成果と、観測範囲が広がった効果を分けるため、計測変更の前後では、自社が把握する実際の契約件数も照合します。
例えば、従来は問い合わせ完了だけを数え、新しい設定で資料ダウンロードもCVに加えれば、総CV数は増えやすくなります。広告費が同じならCPAも下がりますが、問い合わせや契約を増やしたとは限りません。評価する成果の定義を途中で変えた場合は、以前と同じ成果だけで再集計した数字を残す必要があります。
比較期間中に値下げ、無料提供範囲の変更、営業キャンペーンがあった場合も同様です。契約しやすくなった理由が広告以外にあるなら、認知施策だけの改善幅として紹介できません。成果がよくなった事実と、その原因として何が考えられるかを別々に整理すると、次の予算判断に使いやすくなります。
- CVの定義、重複除外、計測期間が前後で同じか
- 広告費と制作・運用費のどこまでをCPAに含めたか
- 新規と既存、指名と非指名の構成が変わっていないか
- 価格、提供条件、販売施策など広告以外の変更がなかったか
- 契約まで十分に時間が経過した案件を比較しているか
特にサービスの乗り換えを伴う案件では、検索した月と申し込んだ月が離れることがあります。「今月の契約が多い広告」を探すだけでは、過去の投資の結果を今月の配分へ誤って結びつけます。獲得時期が同じ案件群で比較し、そのうえで月ごとの全体件数も見ると、直近の需要変化と、過去に作った見込み客の成果を区別しやすくなります。
一つの集計で結論が変わるときは、すぐに最もよく見える数字を採用せず、条件の違いを説明できるか確認します。広告経路上では高評価なのに新規契約の増加が見えないなら、配分モデルの特性や重複接触を疑う余地があります。反対に経路を取得できない契約が多ければ、見えている接点だけで全予算を判断しないことが必要です。
認知広告へ予算を戻すときの検証方法

一度に全面変更せず仮説を一つ定める
認知施策を始めるなら、「特定の課題に関する比較記事への接触を増やすと、有効な新規相談が増える」といった仮説を置きます。誰へ何を届け、どの行動を経て契約につなげたいかが言えないまま配信面だけを増やすと、表示回数が増えたことしか確認できません。媒体の追加より先に、記事と製品ページのつながりを整えます。
検証の枠では、費用の上限、比較対象、途中で確認する指標、契約が見えるまでの期間を決めます。可能なら条件の近い地域や対象群を分ける方法がありますが、十分な規模や比較可能性がない場合は無理に実験と呼ばず、前後比較の限界を明示します。競合の動きや商戦期、料金変更など、広告以外の変化も残します。
途中指標が悪いときは長期施策でも修正する
契約まで時間がかかるからといって、何か月も無条件に待つ必要はありません。対象外の流入ばかり、記事の内容が読まれていない、比較ページに進めないといった問題は、途中で直せます。長期で見るのは契約の評価であり、広告の誤配信やページの不具合まで放置する理由にはなりません。
一方、数週間で契約がないことだけで停止すると、検討途中の成果を切り捨てます。自社で確認した検討期間に照らし、必要な観測時間が経過した群を優先して評価します。最終的に、有効相談や契約の純増が確認できず、他の投資先より効率が悪いと判断できるなら、認知という名目にかかわらず、訴求や配分を見直します。
ITサービス企業が最初に直すべき範囲を絞る

アクセスはあるが比較ページへの移動が少ないなら、記事と製品説明の接続を直します。比較ページは読まれるが相談されないなら、導入条件とCTAを見直します。相談は増えるが契約が増えないなら、入口の需要がサービスの対象に合うかを確かめます。計測のために大きな仕組みを作る前に、改善すべき場面を特定することが先です。
支援会社へ依頼する場合も、認知施策と獲得施策を別々の成功指標だけで評価しないようにします。広告運用、記事制作、LP改善、成果分析をつなぎ、ある変更が次の段階へどう影響したかまで確認できる範囲を決めます。毎月の数字を報告するだけでなく、その数字から何を変更し、どの条件で確かめるかまでが改善の仕事です。
参考情報
- メディックス:GMOグローバルサイン・ホールディングスの広告運用支援事例(確認日:2026年10月5日。公開・比較年月の明記なし)
- アドエビス:GMOクラウドALTUSのアトリビューション運用事例(確認日:2026年10月5日。同一案件の公表情報)
よくある質問
直接CVが少ない広告は残したほうがよいですか?
一律には決められません。途中接点としての役割、比較ページへの移動、有効相談や契約の変化を確かめます。接触履歴があるだけでは追加効果は分からないため、費用上限と検証条件を設けて継続の可否を判断します。
事例と同じく1年間のデータが集まるまで待つ必要がありますか?
事例の検討期間を自社の基準にする必要はありません。自社の初回接点から商談・契約までの期間を確かめ、同じ経過期間で比較します。長期の契約成果を待つ間も、対象外流入やページの不具合は早期に改善できます。
認知広告の予算は全体の何%にすべきですか?
一律の比率では決められません。新規需要の量、既存の獲得広告の余地、比較コンテンツの状態、許容できる投資額を確認します。小さな検証枠から始め、十分に経過した案件群の商談・契約成果を見て調整してください。
専用の計測ツールがないと改善できませんか?
まずは既存の広告・アクセス解析と、問い合わせや契約の記録を同じ条件で整理できます。途中接点が分からず重要な判断ができない場合に、必要な計測を検討します。ツール導入だけで広告の因果効果が分かるわけではありません。
まとめ:最後のCPAから検討全体の改善へ

ALTUSの事例は、最終接触だけでは捉えにくい長期検討の存在を考えるきっかけになります。大切なのは、認知広告を増やすこと自体ではなく、適切な顧客が課題を理解し、条件を比較し、申し込みへ進める接点を作ることです。広告単位の効率とWeb全体の成果を並べると、残す施策と直す施策を判断しやすくなります。
出典確認日:2026年10月6日。紹介した事例は各出典の公表時点の情報であり、TimeValueの支援実績ではありません。
TimeValueでは、広告運用、クリエイティブ制作、LP改善、データ分析を組み合わせて、獲得までの経路を見直します。CPAは改善しているのに契約が伸びない、認知施策の判断が難しいと感じる方は、TimeValueへご相談ください。いま取得できる数字を起点に、検証すべき課題と改善の範囲を整理しましょう。
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無料診断について相談する受付上限は毎月10社です。現在の受付状況はお問い合わせ時にご確認ください。
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