化粧品ECで新規購入者は増えているのに、利益が残らない。反対に、既存顧客へのメールは売れているが、ブランド全体の売上は伸びない。広告予算を新規獲得へ増やすべきか、CRMへ回して二回目購入を増やすべきか。判断に必要なのは、広告とCRMの売上順位より、今どこで成長が止まり、追加の費用で何を変えられるかです。
この記事では、新規獲得とリピート促進の予算を、購入者数、商品ごとの買い方、同じ期間の利益、追加施策の効果から判断する方法を整理します。適正な予算比率や業界平均を示すものではありません。具体的な文案例や配分手順は、自社で検証するための提案です。

目次を開く
新規売上と既存売上を分け、停滞している数字を特定する

最初に、同じ集計期間の受注を初回購入と再購入へ分けます。新規売上は、初回購入者数と初回の平均注文額。既存売上は、期間内に再購入した人数、購入回数、平均注文額から確認できます。総売上だけでは、新規が減っているのか、二回目へ進まないのか、値引きで注文額が下がったのかが分かりません。
新規の定義は、初めて会員登録した人ではなく、今回の分析で初めて購入したと確認できる人に揃えます。ゲスト注文やメールアドレス変更で過去購入を識別できない場合は、不明の扱いを残します。計測や会員判定を変えた前後の差を、新規獲得の成果と取り違えないようにします。
既存売上が減っている場合、再購入率の悪化だけとは限りません。過去の新規獲得が減り、次に買う可能性のある顧客自体が少ないこともあります。今月の再購入者数だけを見てCRM担当へ増配信を求めず、どの時期に獲得した顧客が再購入する段階にいるかを確認します。
| 確認した状態 | 優先して調べる問題 | 予算の使い道の候補 |
|---|---|---|
| 新規購入が減り、再購入は安定 | 新しい対象への接点不足、広告の追加効率 | 獲得訴求と配信の検証 |
| 初回は増えるが本品・二回目が弱い | 初回オファーのずれ、利用後の疑問 | 広告の約束、CRMと購入先の改善 |
| 既存向け配信売上だけ増える | 自然購入の置き換え、前倒し、値引き | 配信対象と増分の検証 |
| どちらも購入率が低下 | 商品条件、ページ、決済の共通障害 | 予算移動より購入導線の修正 |
この表は、自社の状態を確かめるための分岐です。新規か既存かの二択で予算を動かす前に、両方に共通する購入障害がないかを見ます。主力商品の価格や条件が変わった、カートが使いにくくなったといった問題なら、配信量を増やしても同じ場所で止まる人が増えます。
化粧品の買い方に合わせて、再購入の意味を揃える
トライアルから本品へ進むこと、使い切った本品を補充すること、別の色やシリーズを買うことは、すべて次の注文でも理由が違います。一つのリピート率にまとめると、何を改善すればよいかが曖昧になります。まず主力商品で、増やしたい二回目の購入を一つ定めます。
トライアルの本品転換なら、試した商品と通常サイズの対応、使用後に残る疑問、本品の価格や購入条件を確認します。補充なら、残量や購入間隔、同じ商品を探し直さずに買える導線が論点です。色物の買い足しなら、前回との違いや使う場面が選択を助ける可能性があります。
商品を使い切る時間は、容量だけでは決まりません。複数購入、他商品との併用、使用頻度などで違います。購入日から一定の日数が過ぎた人へ、全員が使い切ったと断定する案内は避けます。自社で確認できる購入傾向と、利用者が自分の状態を選べる案内を組み合わせます。
大きなセットを初回に販売した顧客は、次の購入まで長くなることがあります。その群を少量のトライアル購入者と同じ短い期間で比べ、CRMが弱いと判断しないことが大切です。最初に何を、いくらで、どの量買った人なのかを揃えて見ます。
初回から同じ経過期間で、顧客群を比べる
初回購入月や週で顧客群を作り、初回から同じ日数までの二回目購入と累計利益を比べます。最近獲得した人は、まだ買い足す機会を迎えていないかもしれません。観察途中の群と、必要な期間を観察できた群は分けて表示します。
Shopifyの顧客コホート分析では、初回注文日を基にした顧客群から再購入の動きを確認できます。利用しているサービスで使える項目は確認が必要ですが、初回時期を揃えて追う考え方は、自社の受注集計でも取り入れられます。分析画面の予測と、実際に生じた注文は区別してください。
再購入した人だけの平均額を見ると、買わなかった人に使った広告費や初回特典費が消えてしまいます。初回の対象者全体を分母にし、再購入ゼロの人も含めて、一人当たりの期間売上と利益を確認します。この数字が、新規獲得へ追加投資できる範囲を考える基礎になります。
予算の比較は、広告費とメール代だけで済ませない
新規獲得には、媒体費のほか、広告素材、LP、初回特典、トライアル配送などの費用が関わります。CRMにも、配信ツール、原稿や画像、顧客の条件整理、購入先の改修、クーポンや特典の費用があります。メールの送信単価が安いという理由だけで、CRMを高収益と判断しないようにします。
費用は、今回新しく増えるものと、すでに必要な共通費に分けます。追加テストに必要な制作費は含める一方、サイト全体の固定費を恣意的に片方へ寄せると比較が歪みます。初回の改修費を回収できるかと、施策を継続したとき採算が合うかも分けて考えます。
顧客群の広告・CRM費控除前利益は、対象期間の値引き・返品を反映した売上から、商品原価、配送、決済、別途発生する同梱特典費などの変動費を引く形で揃えます。そこから、まだ差し引いていない媒体費、制作・改修費、配信ツール費などを引き、どこまで回収できたかを見ます。会計上の正式な利益と混同しないよう、含めた費用を明記します。
値引き後の売上を使う場合は、同じ値引きを再度費用へ足さないようにします。広告で獲得した人がCRM経由で二回目を買った場合、その二回目の売上を新規獲得とCRMへ別々に加え、合計を事業売上とすることも避けます。注文は一度だけ数え、接点は役割を理解するために使います。
許容CPAは、確認できる回収期間から逆算する
新規購入者に使える獲得費は、同じ期間の顧客当たり広告・CRM費控除前利益から、必要利益や購入後施策の費用を確保して考えます。期間利益を全額広告へ使えば、利益や共通費を賄う余地がなくなります。どの期間まで待てるかという資金上の条件も合わせます。
まだ本品転換を観察できていないトライアルでは、未確認の再購入を確定値として上限を上げません。似た商品を参考にする場合も、初回価格、内容量、購入方法、獲得対象が違う部分を残します。実績、予測、予測が外れたときの損失を分け、検証予算の範囲で判断します。
新規獲得へ増やす前に、追加分の注文を確認する
新規購入率と二回目購入が安定し、広告費を回収できているなら、獲得を広げる候補になります。ただし、過去の平均CPAが良いことだけで、増額した分も同じ条件で取れるとは限りません。追加の予算が、別の検索、配信先、商品、購入方法へ使われていないかを見ます。
広告案は、どんな初回購入を増やしたいかから作ります。トライアルなら「少量で使用感を確かめる」という目的と、試せる商品の範囲を示す案。本品なら使用場面や選ぶ理由を伝え、容量・買い方が確認できるページへつなぐ案が考えられます。初回の安さだけで集め、後から通常価格へ移ってもらう前提は検証が必要です。
トライアルのCPAが安い広告でも、本品へ進む人が少なければ、同じ期間の回収は弱くなります。広告別に本品購入人数を追える範囲で、トライアル獲得費と本品購入者当たり獲得費を分けます。注文が対応しない部分を推測で埋めず、確認できる範囲と全体の受注を並べます。
新しい対象へ広げたときは、商品ページの説明も確認します。既存のファンなら分かるシリーズ名や商品順序が、初めての人には分からないかもしれません。流入を増やす予算と、初回購入を支える情報を直す予算を一緒に考えることが、獲得効率の悪化を切り分ける助けになります。
Google 広告には、顧客獲得や既存顧客の維持に関する顧客ライフサイクル目標が用意されています。利用条件と対応する設定は公式資料で確認してください。機能上の新規判定と自社の購買履歴が完全に同じとは限らないため、設定の導入自体を新規純増の証拠にはしません。
CRMへ増やすなら、配信数より二回目の障害を直す

初回購入者はいるのに二回目が弱い場合、まず商品が届いて使う段階と、次を買う段階を分けます。使用方法が分からない人へ割引だけを送っても、疑問は残ります。逆に商品を理解し、買い足したい人を長いブランド紹介へ戻すと、購入の手間が増えます。
トライアル後の案内なら、文案例として「試した商品の通常サイズを確認する」を購入導線に使えます。補充なら「前回の商品・容量を確認する」、色物の買い足しなら「前回の色と新色を比べる」など、受け手が今する判断を明確にします。配信対象の実際の購入情報と対応する場合だけ使用します。
メールやLINEのリンク先は、案内の続きになっているかを確認します。本品への移行を勧めたのにトップページへ送る、詰め替えを案内したのに対応する本体が分からない、前回の色が選択されないといった問題は、配信回数を増やす前に直す対象です。
配信時期は注文日だけで決めず、商品が届くまでの違いや、自社で確認できる購入間隔も考えます。使い切りを断定しない文面として「次の購入を検討される方へ」と案内し、まだ残っている人が見送れるようにする方法があります。未開封・未クリックを、未使用や不満の証拠にしないことも大切です。
すでに買った人を除くことも、CRMの改善になる
二回目を購入した直後に、本品未購入者向けの割引が届くと、不要な配信や条件の行き違いが起こります。対象商品を購入済みか、問い合わせ対応中か、販促を受け取ることを希望しているかなど、必要な状態を更新します。情報の利用目的や同意の範囲を守り、配信を止める選択も反映します。
CRMを細かく分けるほど、作る文面や確認する条件が増えます。最初は、トライアル未転換、本品の補充検討、別商品の比較など、案内の内容が明確に変わる少数の群から始めます。使い分ける内容がないまま、顧客分類だけ増やして運用費を膨らませないようにします。
CRM経由売上を、そのまま追加成果と見なさない
定期的に買っていた人が、今回はメールのリンクから購入した場合、メール経由売上は増えます。しかし、メールがなければ買わなかった注文とは限りません。クーポンを送って購入が早まった場合も、その後の通常購入が減れば、期間全体の売上は変わらないことがあります。
Google アナリティクスのアトリビューションの説明は、購入などへの貢献を接点に割り当てる考え方を示しています。経路への割当てと、施策によって追加された注文を知る問いは分けて扱います。最後にクリックされた接点だけで、広告とCRMの予算を決めないことが重要です。
対象者が十分なら、販促案内を送る群と比較群を、商品や初回時期などが偏らない形で設ける方法を検討します。比較対象から必要な配送連絡や利用上の重要情報を取り除く必要はありません。比べるのは追加の販促であり、購入者が受けるべきサービスは保ちます。
比較期間は、案内直後だけでなく、前倒しが見える次の購入機会まで含めるかを決めます。値引きの有無を変えるなら、その費用も含めます。配信が増やした利益と、案内を作り届けるために増えた費用を比較できれば、CRMへ追加投資する理由が明確になります。
同時比較が難しい場合は、近い初回条件の顧客群を同じ経過期間で並べ、価格や広告、季節の変化を記録します。前後比較の限界を残し、配信だけの効果とは言い切りません。それでも、案内後にどの商品が買われ、どこで止まるかを確認する材料にはなります。
予算は固定比率ではなく、守る枠と試す枠に分ける
新規とCRMを最初から一定割合で分けるより、現在確認できた獲得、既存顧客に必要な接点、次の成長を調べる検証を分けると判断しやすくなります。必要な購入後案内を、短期の販促効果が見えないという理由で全部削ることは避けます。
獲得の継続枠には、現時点で許容する回収条件を満たす商品と対象を置きます。CRMの継続枠には、必要な案内と、追加効果を確認できた施策を置きます。検証枠では、新しい広告訴求、本品への転換案内、購入先の説明など、一つの問いに費用を使います。
増やす優先順位は、平均の利益率より、次の追加投資で改善できる余地で考えます。CRMが高効率でも対象者が少なく、すでに必要な案内が届いているなら、予算だけを増やしても注文は伸びないかもしれません。新規獲得は回収まで長くても、対象と上限を決めて顧客基盤を広げる意味がある場合があります。
実務では、各候補に「対象人数」「確認した問題」「変更する接点」「追加費用」「結果を見られる時期」「続ける条件」を付けます。データが不足する項目は未確認のままにします。もっとも都合のよいLTVを当てはめて順位を作らず、仮定が外れた場合の負担まで比較します。
予算を動かした後は、減らした側も見る
新規広告からCRMへ予算を移してCRM売上が増えても、新規購入の減少がそれ以上なら、全体の成長にはつながりません。反対にCRM費を減らしても、不要な重複配信を整理できれば売上への影響は小さい可能性があります。増やした側と減らした側の両方を同じ期間で追います。
予算変更直後に分かるのは、配信量、訪問、初回注文などの途中経過です。二回目や期間利益の確定には時間が必要です。追跡を待つ間も広告費を無制限に追加する必要はありません。当初の上限で新しい支出を管理し、すでに獲得した群の結果を観察します。
条件を満たしたら段階的に拡大し、追加分の回収が悪化したら対象や訴求を再点検します。見込みが外れたときは、CRMをもっと送れば取り戻せるという前提にしません。初回広告が約束した価値、購入後の疑問、本品価格との関係まで戻って確認します。
次に使う予算と変更点を具体的な施策にする
新規獲得では、新規購入者数、獲得費、初回商品、同じ期間の本品・二回目購入、顧客当たり利益を揃えます。CRMでは、対象者数、到達できた範囲、次の購入、期間利益、配信停止や問い合わせを見ます。クリック率は原因を調べる補助として使い、購入の代わりにはしません。
全体では、新規と既存を合わせた受注売上・変動費控除後利益・施策費を確認します。顧客群を追う表と月次の実績は役割が違います。月次は現在の事業の状態を見るもの、顧客群の表は獲得条件とその後の回収を見るものとして、両方を使います。
次の施策は「広告を強化する」より具体的にします。「主力トライアルの新規対象へ、使用場面を伝える訴求を試す」「本品未購入者のリンク先で通常サイズとの対応を直す」のように、対象と変更を一つにします。実行後は、実施したかだけでなく、その問いに答えられたかを確認します。
外部支援へ相談する際にも、広告、CRM、LPを別々の数字で説明するより、主力商品の初回購入から二回目までを同じ顧客群で示すと課題が伝わります。新規を増やす余地があるのか、獲得後の回収を先に直すべきかを、共通の売上と利益へ戻して判断することが重要です。
よくある質問
メールとリターゲティング広告が同じ顧客へ届く場合、予算をどう評価しますか?
注文をそれぞれへ全額計上して足さず、顧客単位で接触の重なりを確認します。可能なら販促の組み合わせを比べ、追加の広告が注文や利益を増やしたかを見ます。接触を識別できない部分は不明として残し、片方の経由売上だけで配分を決めないようにします。
定期購入と都度購入では、二回目の注文を同じ成果にできますか?
注文は集計できますが、購入判断が異なるため施策評価は分けます。定期の予定注文と、都度購入者が再び選んだ注文を混ぜるとCRMの役割を見誤ります。初回の購入方法ごとに継続・変更・停止と費用を確認し、顧客群全体の同じ期間利益へ戻して比較します。
欠品が続いた月に再購入が落ちた場合、CRM予算を減らすべきですか?
再購入できなかった条件を先に分けます。配信時点と訪問時点の販売状態を確認し、購入機会がない期間を案内内容の失敗と同じに扱わないようにします。予算は一時的に調整しつつ、販売可能な条件へ戻った後の比較で施策自体の採否を判断します。
モールで買った人が自社ECで初めて買った場合、新規として扱いますか?
自社ECでの初回と、ブランド全体での初回を別の定義にします。販路をまたいだ購入を確認できない場合は、ブランド新規と断定しません。今回の予算が自社ECへの移行を目指すのか新しい購入者を増やすのかを定め、把握できる範囲で指標を揃えます。
まとめ:新規とリピートを、同じ顧客群の成長として考える

新規獲得とリピート促進の配分は、広告とCRMの経由売上を競わせるだけでは決まりません。どんな初回購入を増やし、その人が次に何を判断できれば購入するのかをつなぎ、同じ期間の利益で回収を確かめます。
まず主力商品を一つ選び、新規購入、二回目までの動き、費用を整理してください。現在の成果を保つ枠と、新しい問いを試す枠を分け、追加した予算が注文と利益を増やしたかを確認します。比率を固定するより、確認できた成長の障害へ費用を使うことが、次の投資判断につながります。