
受託の稼働と開発の工数が、同じ人の時間を取り合うことです。
案件が忙しくなると開発が止まり、暇になると再開する形では前に進みません。
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目次
目次
- 受託の会社が自社のサービスを立ち上げるとき、何が壁になるのか
- 最大の壁は、時間の取り合い
- 受託の稼働と、開発の工数をどう分けるのか
- 確保の形
- 取引のある顧客を、立ち上げにどう使うのか
- 使える場面と、注意する点
- 評価の指標を、受託の数字で置くと何が起きるのか
- 数字の出方が違う
- 最初の利用者を、どこから集めるのか
- 初期に向く経路
- 担当を、どう置くのか
- 担当の形ごとの性質
- 続けるか止めるかの条件を、いつ決めるのか
- 条件の置き方
- 立ち上げの進め方を、どう組み立てるのか
- 見る数字を決める
- よくある質問
- まとめ
受託の稼働と開発の工数が、同じ人の時間を取り合うことです。
案件が忙しくなると開発が止まり、暇になると再開する形では前に進みません。
受託の会社が自社のサービスを立ち上げるとき、何が壁になるのか
受託の稼働と開発の工数が、同じ人の時間を取り合うことです。
案件が忙しくなると開発が止まり、暇になると再開する形では前に進みません。
受託の開発会社が自社のサービスを持ちたいと考える理由は、いくつかあります。
人月の事業では売上の上限が人数で決まること。
稼働の変動に収益が左右されること。
継続的な収入がないこと。
どれも正当な動機です。
ただし、立ち上げの進め方には受託特有の難しさがあります。
最大の壁は、時間の取り合い
受託と自社サービスで取り合うもの
| 取り合うもの | 受託側の優先度 | 自社サービス側で起きること |
|---|---|---|
| 技術者の稼働 | 高い | 開発が止まる |
| 経営の関心 | 高い | 判断が遅れる |
| 資金 | 高い | 投資が続かない |
| 獲得の予算 | 高い | 認知が広がらない |
| 営業の時間 | 高い | 最初の顧客が取れない |
止まったり動いたりの弊害
案件が忙しい時期に開発が止まり、暇な時期に再開する形では、完成までの期間が読めません。
その間に市場が動き、想定した課題が別の方法で解決されていることがあります。
事業の性質が根本的に違う
受託は、受注した分だけ収益が立ちます。
継続課金のサービスは、獲得の費用が先に出て、収益は後から積み上がります。
評価の仕方も、必要な期間も違います。
始める前に決めること
工数をどう確保するか。何をもって続ける判断とするか。受託の事業にどこまで影響を許容するか。この3つを先に決めます。
受託の稼働と、開発の工数をどう分けるのか
時間ではなく、人で分けます。
同じ人の時間を分けると、受託の納期が優先されて自社の開発が止まります。
工数の確保の仕方には、いくつかの形があります。
どれを選ぶかで、進み方が変わります。
確保の形
工数の確保の仕方と、その性質
| 確保の形 | 進み方 | 受託への影響 | 費用 |
|---|---|---|---|
| 同じ人が時間を分ける | 止まりやすい | 小さい | 機会費用 |
| 専任を割り当てる | 安定する | 請求できる工数が減る | 機会費用 |
| 新たに採用する | 安定する | なし | 人件費 |
| 外部に開発を委託する | 安定する | なし | 委託費 |
| 案件が薄い時期だけ進める | 読めない | なし | 機会費用 |
専任を割り当てる場合の考え方
技術者を1人専任にすると、その人が生む請求機会が消えます。
数字は説明のための仮の値です。
請求単価が月100万円なら、年間で1,200万円の機会費用になります。
この額を投資として認識したうえで判断します。
案件が薄い時期だけ進める形の限界
稼働の空いた時期だけ進めると、完成までの期間が読めません。
市場に出すタイミングも決められません。
検証の段階なら成立しますが、本格的な開発には向きません。
受託の案件として受けられないか確認する
似た課題を持つ顧客から、受託の案件として作る方法があります。その成果物を、権利の取り決めのうえで自社のサービスに展開する形です。この形なら、開発の費用を受注で賄えます。
取引のある顧客を、立ち上げにどう使うのか
課題の確認と、最初の利用者の確保に使えます。
ただし、受託の関係があるため、断りにくい立場にある点に注意が要ります。
既存の顧客は、話を聞いてもらいやすい相手です。
一方で、受託の取引がある相手は、正直な反応を返しにくい立場にあります。
使える場面と、注意する点
既存顧客を使う場面と注意点
| 場面 | 得られるもの | 注意する点 |
|---|---|---|
| 課題の確認 | 業務の実態が聞ける | 付き合いで肯定される |
| 初期の利用 | 実際の環境での検証 | 不具合が取引に影響する |
| 価格の確認 | 支払える水準が分かる | 関係を考慮した回答になる |
| 事例の掲載 | 材料が得られる | 依頼を断りにくい立場 |
| 紹介 | 次の候補が得られる | 関係に負担をかける |
反応の受け取り方
興味があるという反応と、費用を払うという判断は別です。
金額を提示して、その場で判断を求める形にすると、実態に近い反応が得られます。
受託の関係に影響させない
サービスの検証が、受託の取引に影響しないことを明確にします。
断っても取引に響かないことを、先に伝えます。
既存顧客だけで判断しない
既存の顧客は、自社の受託の対象として選ばれた相手です。その層に偏った反応で判断すると、市場の広さを見誤ります。取引のない相手にも同じ話を持っていきます。
評価の指標を、受託の数字で置くと何が起きるのか
早い段階で止める判断になります。
受託の粗利率や回収の速さを基準にすると、継続課金の事業は必ず下回ります。
受託の事業では、受注した時点で収益が見込めます。
継続課金のサービスは、獲得の費用が先に出て、収益は月ごとに少しずつ立ちます。
数字の出方が違う
受託と継続課金の数字の出方の違い
| 項目 | 受託 | 継続課金のサービス |
|---|---|---|
| 収益の立ち方 | 受注時に確定 | 利用期間に応じて |
| 費用の出方 | 案件に対応して発生 | 獲得が先行する |
| 初期の利益 | 出る | 出ない |
| 評価の期間 | 案件単位 | 数年単位 |
| 上限 | 人数で決まる | 市場の広さで決まる |
段階ごとに目標の種類を変える
最初の数か月は、収益ではなく学習の進み方で目標を置きます。
話を聞いた社数、課題として認識された比率、試験的に使った社数。
この段階を経てから、収益の目標に移します。
目標の種類が変わることを先に合意する
段階によって目標が変わることを、経営と先に合意します。
合意がないと、最初の期から収益の目標を求められます。
受託の事業の数字を守る条件を決める
自社のサービスに工数を割くことで、受託の稼働率が下がります。どこまでの低下を許容するかを、先に決めておきます。
最初の利用者を、どこから集めるのか
広い配信ではなく、直接の接触からです。
認知がない段階では、広告の効率が極端に悪く出ます。
自社のサービスの獲得を、広告から始めることがあります。
認知も実績もない段階では、同じ費用でも結果が違います。
初期に向く経路
立ち上げの初期に向く集め方を、項目ごとに見ていきます。
既存顧客への個別の相談については、向く理由は話を聞いてもらえる、限界は件数が限られる。
過去の取引先への打診については、向く理由は関係の土台がある、限界は件数が限られる。
業界の勉強会や集まりについては、向く理由は同じ課題の相手がいる、限界は件数が限られる。
直接の接触については、向く理由は相手を選んで話せる、限界は工数がかかる。
特定の課題での検索については、向く理由は検討している相手に届く、限界は需要の量に依存する。
広い配信を初期に使わない理由
認知がなく、比較の材料もない状態では、クリックされても検討に進みません。
獲得の費用が高く出て、その数字が判断に使われます。
実態は、サービスの問題ではなく段階の問題です。
直接の接触で得られるもの
なぜ必要だと感じたか、いまどう対処しているか、いくらなら払うか。
この情報は、広い配信からは得られません。
最初の数十件の接触で得た言葉が、後の訴求の材料になります。
広い配信に移る時期
使い続けている利用者が一定数でき、選ばれる理由が言語化できた段階です。この前に移ると、効率の悪い獲得が続きます。
担当を、どう置くのか
受託の案件を持たない人を置きます。
案件を持ったままだと、納期の前にサービスの活動が止まります。
担当の置き方は、進み方を大きく左右します。
担当の形ごとの性質
自社サービスの担当をどう置くかを、項目ごとに見ていきます。
案件を持ったまま兼任については、進み方は止まりやすい、受託への影響は小さい、費用は機会費用。
案件を外して専任については、進み方は安定する、受託への影響は請求機会が減る、費用は機会費用。
経営者が担うについては、進み方は判断は速い、受託への影響は経営の時間が減る、費用はなし。
新たに採用するについては、進み方は安定する、受託への影響はなし、費用は人件費。
別会社として分けるについては、進み方は独立して進む、受託への影響は関係が薄くなる、費用は管理の費用。
兼任が止まる場面
納期が迫ったとき。
不具合の対応が発生したとき。
この2つで、兼任の活動は確実に止まります。
評価を分ける
人を分けられない場合でも、評価は分けます。
サービスに使った時間と、そこで得られた知見を別に評価します。
評価が受託の数字だけだと、サービスの活動に時間が使われません。
人数は少なく始める
初期は、人数より判断の速さが効きます。少人数で仮説を回し、型ができてから増やします。
続けるか止めるかの条件を、いつ決めるのか
始める前に決めます。
始めた後に決めようとすると、投じた工数が判断に影響します。
自社のサービスの立ち上げは、うまくいかない場合があります。
その場合にどうするかを、始める前に決めておきます。
条件の置き方
段階ごとの継続の条件を、項目ごとに見ていきます。
課題の確認については、確認する内容は話を聞いた相手の反応、続ける条件の例は課題として認識されているか。
最初の利用者については、確認する内容は契約と継続、続ける条件の例は使い続けている社数があるか。
型の確立については、確認する内容は獲得の再現性、続ける条件の例は同じ経路で繰り返し取れるか。
拡大については、確認する内容は獲得の費用と回収の期間、続ける条件の例は許容の範囲に収まるか。
期限と工数の両方を置く
期限だけだと、あと少しという判断が続きます。
工数だけだと、時間をかけて消化します。
両方を置き、どちらかに達したら判断する形にします。
判断する人を担当の外に置く
立ち上げの担当が判断すると、続ける方向に傾きます。
判断する役割を、担当の外に置きます。
止めても残るものを整理する
作った仕組み、得られた知見、築いた関係。これらを受託の事業に戻せる形にしておきます。作ったものを受託の案件で再利用できることがあります。
立ち上げの進め方を、どう組み立てるのか
工数の確保の形を決めるところからです。
確保の形が決まらないまま始めると、止まったり動いたりを繰り返します。
自社のサービスの立ち上げは、作る作業の前に、進め方を決める作業から始まります。
自社サービスを立ち上げる段取りを、項目ごとに見ていきます。
1については、やることは工数の確保の形を決めて機会費用を出す、期間の目安は2週間。
2については、やることは受託の稼働への影響の許容範囲を合意する、期間の目安は2週間。
3については、やることは検証の期間と確認する内容を決める、期間の目安は2週間。
4については、やることは直接の接触で数十社と話す、期間の目安は2から3か月。
5については、やることは最初の利用者を確保して継続を追う、期間の目安は3か月。
6については、やることは選ばれる理由を言語化して訴求を作る、期間の目安は1か月。
見る数字を決める
数字は説明のための仮の値です。
専任を1人置くと、請求単価が月100万円なら年間1,200万円の機会費用になります。
検証の期間に30社と話し、8社が課題として認識し、3社が試験的に使い、2社が継続すれば、次の設計に使える材料が揃います。
この段階では、収益より継続した社数の意味が大きくなります。
立ち上げの段階別に見る数字を、項目ごとに見ていきます。
課題の確認については、確認する数字は話した社数と課題の認識の有無、頻度は毎週。
最初の利用者については、確認する数字は契約社数と利用の継続、頻度は毎週。
型の確立については、確認する数字は同じ経路からの契約件数、頻度は毎月。
拡大については、確認する数字は獲得の費用と回収の期間、頻度は毎月。
全段階については、確認する数字は受託の稼働率と受注金額、頻度は毎月。
受託の数字を必ず並べる
自社のサービスの数字だけを報告すると、受託への影響が見えません。
受託の稼働率と受注金額を並べて報告します。
得た知見を記録する
話した相手の反応、断られた理由、使い続けた理由。
これを記録しておくと、止めた場合でも次に使えます。
自社のサービスの立ち上げで判断に迷う場合は、無料相談で現状の構成を見てもらうところから始められます。獲得の設計ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
受託をやりながら自社のサービスを作れますか
工数の確保の形を先に決める必要があります。同じ人の時間を分ける形では、受託の納期が優先されて開発が止まります。専任を割り当てるか、外部に開発を委託する形が安定します。
自社のサービスの目標は、受託の粗利率を基準にしていいですか
基準にすると早い段階で止める判断になります。継続課金は獲得の費用が先に出て収益は後から積み上がるため、初期の利益は出ません。最初の数か月は学習の進み方で目標を置いてください。
既存の顧客に使ってもらえばいいのでは
課題の確認と最初の利用者の確保には使えます。ただし受託の取引がある相手は断りにくい立場にあり、付き合いで肯定されることがあります。取引のない相手にも同じ話を持っていってください。
最初の利用者はどこから集めればいいですか
広い配信ではなく直接の接触からです。認知がない段階では広告の効率が極端に悪く出て、その数字が判断に使われます。最初の数十件の接触で得た言葉が、後の訴求の材料になります。
止める条件はいつ決めるべきですか
始める前です。始めた後に決めると、投じた工数が判断に影響します。期限と工数の両方を置き、判断する役割を立ち上げの担当の外に置いてください。
まとめ
- 受託の稼働と開発の工数が、同じ人の時間を取り合うことです。案件が忙しくなると開発が止まり、暇になると再開する形では前に進みません
- 時間ではなく、人で分けます。同じ人の時間を分けると、受託の納期が優先されて自社の開発が止まります
- 課題の確認と、最初の利用者の確保に使えます。ただし、受託の関係があるため、断りにくい立場にある点に注意が要ります
- 早い段階で止める判断になります。受託の粗利率や回収の速さを基準にすると、継続課金の事業は必ず下回ります
- 広い配信ではなく、直接の接触からです。認知がない段階では、広告の効率が極端に悪く出ます
- 受託の案件を持たない人を置きます。案件を持ったままだと、納期の前にサービスの活動が止まります
- 始める前に決めます。始めた後に決めようとすると、投じた工数が判断に影響します
- 工数の確保の形を決めるところからです。確保の形が決まらないまま始めると、止まったり動いたりを繰り返します