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目次
目次
- 受託の事業で、顧客の生涯価値という考え方は使えるのか
- 1回の受注で判断したときのずれ
- 1社との取引を、どの範囲まで数えるのか
- 区切り方
- 保守の契約が果たしている役割は何か
- 保守が持つ2つの役割
- 取引が続かなくなるのは、どの時点か
- 途切れやすい場面
- 紹介の発生を、取引の価値に含めてよいか
- 紹介の価値を測る
- 顧客の規模や業種で、取引の続き方はどう違うのか
- 層ごとの違い
- 上限の数字が独り歩きすると、何が起きるのか
- 数字が膨らむ置き方
- 取引の価値を測る作業を、どこから始めるのか
- 見る数字を決める
- よくある質問
- まとめ
使えます。
一回の納品で終わる前提で計算すると、獲得にかけてよい額が実態より小さく出ます。
受託の事業で、顧客の生涯価値という考え方は使えるのか
使えます。
一回の納品で終わる前提で計算すると、獲得にかけてよい額が実態より小さく出ます。
受託の開発は、案件ごとに契約して納品する形です。
そのため、1件の受注金額で採算を判断しがちです。
実際には、1社との取引は1回で終わりません。
保守の契約が続き、追加の開発が来て、別の部署から相談が来ます。
この全体を数えないと、獲得にかけてよい額が過小になります。
1回の受注で判断したときのずれ
初回の案件だけで採算を見ると、獲得の費用の上限が低くなります。
結果として、取れたはずの顧客に投資できません。
1社との取引を構成する要素
| 要素 | 発生の仕方 | 金額の傾向 |
|---|---|---|
| 初回の開発 | 受注時 | 大きい |
| 保守と運用 | 納品後に継続 | 小さいが続く |
| 追加の開発と改修 | 納品後に随時 | 中程度 |
| 別の部門からの依頼 | 関係ができた後 | 案件による |
| リプレースや再構築 | 数年後 | 大きい |
| 紹介による別の顧客 | 関係ができた後 | 直接の収益ではない |
継続の性質が業種で違う
自社の主要な業務を支えるシステムを作った場合、取引は長く続きます。
単発の改修や、期間限定の仕組みでは続きません。
案件の性質によって、続き方が変わります。
数える範囲を先に決める
どこまでを1社との取引として数えるか。この範囲を決めないと、計算のたびに数字が変わります。初回から何年分を数えるかを固定します。
1社との取引を、どの範囲まで数えるのか
確認できる期間で区切ります。
理屈の上では永続しますが、実績のない年数まで含めると上限が過大になります。
取引が何年続くかは、後になってみないと分かりません。
過去の実績から、確認できる範囲を区切って使います。
区切り方
取引の価値を計算する範囲の決め方
| 区切り方 | 出し方 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 3年で区切る | 初回から3年分の粗利 | 実績の蓄積が浅い |
| 5年で区切る | 初回から5年分の粗利 | 継続の実績がある |
| 保守の契約期間 | 保守が続いた年数の平均 | 保守が主な収益源 |
| リプレースまで | 再構築の周期 | 長期の取引が中心 |
粗利で計算する
受注金額ではなく、投入した工数の原価と外注費を引いた粗利で計算します。
保守の契約は金額が小さくても、工数も小さいため粗利率が高いことがあります。
逆に、開発は金額が大きくても粗利率が低いことがあります。
計算の例
数字は説明のための仮の値です。
初回の開発が1,500万円で粗利500万円、保守が年200万円で粗利120万円とします。
追加の開発が3年で合計600万円、粗利200万円なら、3年間の粗利は1,060万円です。
初回の粗利だけで見ると500万円なので、2倍以上の差があります。
過大に見積もらない
継続する前提で長い期間を置くと、上限が実態から離れます。確認できる年数に区切り、区切った理由を記録します。
保守の契約が果たしている役割は何か
収益の安定と、次の案件の入口の2つです。
金額が小さくても、切れると次の相談も来なくなります。
保守と運用の契約は、金額が小さいため軽く扱われることがあります。
受託の事業では、この契約が持つ意味は金額以上です。
保守が持つ2つの役割
保守の契約の役割
| 役割 | 内容 | 切れたときに起きること |
|---|---|---|
| 収益の安定 | 毎月の固定的な収入 | 稼働の変動が大きくなる |
| 接点の維持 | 定期的にやり取りが続く | 相談が他社に流れる |
| 情報の入手 | 相手の状況が分かる | 次の案件の兆候を逃す |
| 信頼の蓄積 | 対応の積み重ねが評価される | 指名されなくなる |
| 追加開発の入口 | 不具合や要望から次の案件 | 改修が別の会社に出る |
保守を単独で採算判断しない
保守の契約だけを見ると、採算が合わないことがあります。
対応の人員を確保する必要があるためです。
次の案件につながる価値を含めて判断します。
保守が切れる場面
納品した担当者が異動したとき。
相手の社内で内製の方針が出たとき。
費用の見直しが行われたとき。
この3つで切れることが多くあります。
切れる前に気づく
定期的な報告の場を持ち、利用の状況と課題を聞く形にします。連絡が減っている顧客を一覧で出して、接触の対象にします。
取引が続かなくなるのは、どの時点か
納品の直後と、担当者が変わったときです。
納品後の対応が薄いと、次の相談が他社に流れます。
取引が終わる原因は、品質の問題だけではありません。
関係の維持の仕方に原因があることがよくあります。
途切れやすい場面
取引が途切れる場面と、事前にできること
| 場面 | 起きていること | 事前にできること |
|---|---|---|
| 納品の直後 | 稼働が次の案件に移る | 一定期間の伴走を契約に含める |
| 不具合の対応 | 対応が遅れて不信が生まれる | 対応の窓口と期限を明記する |
| 相手の担当者の異動 | 関係が個人に依存していた | 複数の担当と接点を持つ |
| 自社の担当の異動 | 経緯が引き継がれない | 案件の記録を残す |
| 予算の見直し | 費用の根拠が説明できない | 実績と効果を定期的に報告する |
納品後の一定期間を設計する
納品して終わりにすると、使い始めの困りごとに対応できません。
一定期間の伴走を契約に含めるか、別の契約として提案します。
関係を個人に依存させない
営業も技術も、担当が1人だと異動や退職で関係が切れます。
複数の担当が相手と接点を持つ形にします。
案件の記録を残す
なぜその設計にしたか、どういう制約があったか。この記録がないと、数年後の追加開発で一から調べることになります。調査の工数がかかり、他社との差が出にくくなります。
紹介の発生を、取引の価値に含めてよいか
含めますが、別の枠で扱います。
発生が読めないため、獲得の上限の計算には入れず、参考の数字として持ちます。
受託の開発では、紹介からの受注が一定割合を占めることがあります。
この価値をどう扱うかは、判断が分かれます。
紹介の価値を測る
紹介の扱い方を、項目ごとに見ていきます。
上限の計算に含めるについては、計算に含めるかは含めない、使い方は発生が読めず過大になる。
参考の数字として持つについては、計算に含めるかは別に集計、使い方は顧客層の評価に使う。
紹介元を記録するについては、計算に含めるかは記録する、使い方はどの顧客から発生するか把握。
紹介の発生率を出すについては、計算に含めるかは集計する、使い方は層ごとの比較に使う。
紹介が発生しやすい顧客の条件
満足度が高いだけでは発生しません。
相手の業界内に横のつながりがあり、同じ課題を持つ企業が近くにあることが条件になります。
業種によって、発生のしやすさが大きく違います。
紹介を促す形
対価を前面に出すと、質の低い紹介が増えます。
紹介しやすい材料を渡すほうが、結果として件数も質も安定します。
事例の資料や、相談の受け方を整えておきます。
紹介元を記録する
どの顧客から何件の紹介が来たかを記録します。記録があると、紹介が発生しやすい顧客層が分かります。その層への投資の判断に使えます。
顧客の規模や業種で、取引の続き方はどう違うのか
継続の長さと、追加の発生の頻度が変わります。
獲得の上限を全社で1つにすると、どちらの層にも合いません。
取引の続き方は、顧客の規模と、作ったシステムの性質で変わります。
層ごとの違い
顧客層ごとの取引の続き方を、項目ごとに見ていきます。
大企業の基幹の業務については、初回の規模は大きい、保守の継続は長い、追加の発生は多い、獲得の上限は高く設定。
大企業の部門単位については、初回の規模は中程度、保守の継続は中程度、追加の発生は中程度、獲得の上限は中程度。
中堅企業の主要業務については、初回の規模は中程度、保守の継続は長い、追加の発生は中程度、獲得の上限は中程度。
単発の改修や移行については、初回の規模は小さい、保守の継続は短い、追加の発生は少ない、獲得の上限は低く設定。
期間限定の仕組みについては、初回の規模は小さい、保守の継続はなし、追加の発生は少ない、獲得の上限は低く設定。
上限を層ごとに変える
同じ獲得の上限を全体に適用すると、大きな取引になる層に投資できません。
層ごとに取引の価値を出して、それぞれに上限を設定します。
対象企業数の上限も確認する
大企業の基幹業務を対象にすると、取引の価値は高くなります。
一方で、国内の対象企業数は限られます。
上限の高い層に集中すると、件数の上限にすぐ到達します。
層ごとに評価の周期を変える
取引が長く続く層は、初回の受注だけで評価できません。3年後の取引額まで見る形にします。
上限の数字が独り歩きすると、何が起きるのか
獲得の費用が過大になります。
継続を楽観した前提で計算すると、回収できない獲得が続きます。
取引の価値は、前提の置き方で大きく変わる数字です。
前提が共有されないまま数字だけが使われると、判断を誤ります。
数字が膨らむ置き方
取引の価値が過大になる前提を、項目ごとに見ていきます。
長い年数で計算するについては、何が起きるかは実績のない期間を含む、どう直すかは確認できる年数で区切る。
受注金額で計算するについては、何が起きるかは工数の原価が反映されない、どう直すかは粗利で計算する。
紹介の価値を含めるについては、何が起きるかは発生が読めない、どう直すかは別の枠で扱う。
全社の平均を使うについては、何が起きるかはどの層にも当てはまらない、どう直すかは層ごとに出す。
好調な時期の数字を使うについては、何が起きるかは案件の構成の変化が反映されない、どう直すかは直近の実績で更新する。
数字と一緒に前提を書く
何年で区切ったか、粗利か受注金額か、どの層の数字か。
これを併記しないと、受け取った側が別の意味で使います。
見直しの時期を決める
案件の構成や単価が変わると、取引の価値も変わります。
四半期または半期ごとに更新する時期を決めます。
上限を超えたときの扱いを決める
獲得の費用が上限を超えた経路をどうするか。何か月続いたら止めるかを決めておかないと、上限が形だけのものになります。
取引の価値を測る作業を、どこから始めるのか
過去の顧客の取引の履歴を並べるところからです。
1社あたり何年、いくらの取引になっているかが分からないと、上限は出せません。
計算式を作る前に、実績を並べる作業から始めます。
取引の価値を測る手順を、項目ごとに見ていきます。
1については、やることは過去5年の顧客ごとの取引額を並べる、期間の目安は3週間。
2については、やることは顧客層の区分を決めて集計し直す、期間の目安は2週間。
3については、やることは案件ごとの粗利率を出して粗利に直す、期間の目安は3週間。
4については、やることは区切る年数を決めて層ごとの価値を出す、期間の目安は1週間。
5については、やることは層ごとの獲得の上限を決めて合意する、期間の目安は2週間。
6については、やることは保守の継続と途切れた理由を集計する、期間の目安は2週間。
見る数字を決める
数字は説明のための仮の値です。
ある層の3年間の粗利が1,000万円で、そのうち1割を獲得に充てるなら、上限は100万円です。
受注率が20%なら、提案1件あたりに使える額は20万円になります。
初回の粗利だけで計算すると、この半分以下になります。
取引の前提を点検する数字を、項目ごとに見ていきます。
保守の継続率については、見る頻度は四半期、何を確かめるかは接点が維持できているか。
顧客あたりの年間取引額については、見る頻度は四半期、何を確かめるかは取引が広がっているか。
追加開発の発生件数については、見る頻度は四半期、何を確かめるかは関係が続いているか。
層別の粗利率については、見る頻度は四半期、何を確かめるかは前提が崩れていないか。
主要顧客への依存度については、見る頻度は四半期、何を確かめるかは集中しすぎていないか。
紹介の発生件数と紹介元については、見る頻度は半期、何を確かめるかはどの層から発生しているか。
前提を文書にして共有する
区切った年数、粗利の計算に含めた原価、層の分け方。
この3つを文書にして、経営と各部門で共有します。
最初は粗い数字で構わない
正確な原価の配賦に時間をかけるより、粗い数字で層ごとの差を把握するほうが先です。
差が分かれば、獲得の配分の判断はできます。
取引の価値の前提づくりで判断に迷う場合は、無料相談で現状の数字を一緒に整理するところから始められます。獲得の上限の設計ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
受託の開発でも、顧客の生涯価値を計算する意味はありますか
あります。1回の受注金額だけで採算を判断すると、獲得にかけてよい額が実態より小さく出ます。保守、追加開発、別部門からの依頼、リプレースまでを含めた粗利で計算してください。
何年分の取引を計算に含めるべきですか
自社で確認できる実績の範囲です。継続の実績が浅いなら3年、蓄積があれば5年といった区切り方になります。理屈の上では永続しますが、実績のない年数まで含めると上限が過大になります。
保守の契約は採算が合いません。続けるべきですか
保守単独では採算が合わないことがあります。接点の維持と次の案件の入口という役割を含めて判断してください。保守が切れると、追加の改修も他社に出ます。
紹介の価値を獲得の上限に含めていいですか
発生が読めないため、上限の計算には含めないでください。紹介元を記録して層ごとの発生率を出し、顧客層の評価に使う参考の数字として持つ形が実務的です。
獲得の上限は全社で1つにしてもいいですか
顧客層で取引の続き方が違うため、1つにすると合いません。大企業の基幹業務と単発の改修では、継続の長さも追加の頻度も違います。層ごとに価値を出して上限を分けてください。
まとめ
- 使えます。一回の納品で終わる前提で計算すると、獲得にかけてよい額が実態より小さく出ます
- 確認できる期間で区切ります。理屈の上では永続しますが、実績のない年数まで含めると上限が過大になります
- 収益の安定と、次の案件の入口の2つです。金額が小さくても、切れると次の相談も来なくなります
- 納品の直後と、担当者が変わったときです。納品後の対応が薄いと、次の相談が他社に流れます
- 含めますが、別の枠で扱います。発生が読めないため、獲得の上限の計算には入れず、参考の数字として持ちます
- 継続の長さと、追加の発生の頻度が変わります。獲得の上限を全社で1つにすると、どちらの層にも合いません
- 獲得の費用が過大になります。継続を楽観した前提で計算すると、回収できない獲得が続きます
- 過去の顧客の取引の履歴を並べるところからです。1社あたり何年、いくらの取引になっているかが分からないと、上限は出せません