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目次
目次
- システム開発会社のKPIを、獲得件数だけで置けないのはなぜか
- 上限が先にあるという前提
- 売上目標を、どの順番で分解するのか
- 分解の順番
- 受託事業でマーケティングが負う範囲は、どこまでか
- 切り分けの考え方
- 稼働率をKPIに含めるべきか
- 稼働率を上げる方向の副作用
- 受注までの期間が長いことを、評価にどう織り込むのか
- 途中に挟まる関与者
- KPIを達成しているのに利益が伸びない場合、何を見るのか
- 数字の組み合わせで切り分ける
- KPIを期中に変えてよいのはどういう場合か
- 前提が変わる場面
- 工数からの逆算を、どこから始めるか
- 見る数字を決める
- よくある質問
- まとめ
受注できる量に上限があるからです。
問い合わせが増えても、手がける人が足りなければ受注にはなりません。
システム開発会社のKPIを、獲得件数だけで置けないのはなぜか
受注できる量に上限があるからです。
問い合わせが増えても、手がける人が足りなければ受注にはなりません。
受託の開発では、売上が人の稼働から生まれます。
一定期間に投入できる工数が決まっており、それが受注の上限になります。
この構造があるため、引き合いを増やし続けても売上は比例しません。
ある水準を超えると、増えた引き合いは断ることになります。
断るまでに見積もりの工数を使っているので、増えるのは負担だけです。
上限が先にあるという前提
受注の上限を決める要素
| 要素 | 上限を作る仕組み | 動かすのにかかる時間 |
|---|---|---|
| 稼働できる技術者の人数 | 同時に進められる案件数が決まる | 採用と育成で半年以上 |
| 一人あたりの投入可能な工数 | 月あたりの上限がある | 短期では動かせない |
| 案件ごとの必要な工数 | 規模が大きいほど枠を占める | 案件の選択で調整できる |
| 協力会社の確保 | 一時的に枠を広げられる | 数週間から数か月 |
| 特定の技術を扱える人数 | その領域の案件の上限になる | 育成に時間がかかる |
獲得のKPIを、上限から逆に置く
売上目標から必要な受注金額を出し、そこから必要な引き合いの件数を出す。
この順番は他の業種と同じです。
違うのは、その前に投入できる工数から上限を確認する工程が入る点です。
上限を超えた引き合いの扱い
断る案件が増えると、提案の工数だけが消費されます。上限に近づいた時点で、獲得の量を絞るか、対象を絞る判断が必要になります。この判断を先に決めておかないと、現場の負担だけが増えます。
売上目標を、どの順番で分解するのか
稼働可能な工数から入り、単価と受注金額に降ります。
件数から入ると、規模の違う案件が混ざって計算が合わなくなります。
受託の売上は、投入した工数と単価の掛け算で決まります。
件数は、その結果として出てくる数字です。
分解の順番
売上目標の分解の順番
| 順番 | 出す数字 | 計算 |
|---|---|---|
| 1 | 年間に投入できる工数 | 技術者数×稼働可能な月数 |
| 2 | 請求できる工数の比率 | 投入工数のうち案件に充てられる割合 |
| 3 | 想定する単価 | 過去の実績から領域別に出す |
| 4 | 到達しうる売上の上限 | 請求可能工数×単価 |
| 5 | 必要な受注金額 | 売上目標から既存の継続分を引く |
| 6 | 必要な引き合い件数 | 受注金額÷平均受注単価÷受注率 |
請求できる工数の比率を先に出す
提案書の作成、見積もり、社内の管理、教育。
これらは請求できません。
この比率を把握していないと、売上の上限を過大に見積もります。
件数ではなく金額で管理する
小規模の改修と、大規模の新規開発では、1件の意味がまったく違います。
件数の目標を置くと、規模の小さい案件を多数取る動きが出ます。
受注金額で管理します。
既存顧客からの継続分を先に引く
保守の契約や、既存顧客からの追加の開発は、翌期もある程度見込めます。この分を先に出しておくと、新規で取るべき金額が明確になります。
受託事業でマーケティングが負う範囲は、どこまでか
引き合いの量と、その内容の適合度までです。
受注金額は見積もりと提案の内容で決まるため、マーケティング単独では動かせません。
受託の受注は、提案と見積もりの結果で決まります。
この工程には技術者が関わり、そこでの判断が受注を左右します。
切り分けの考え方
受託の数字と、動かす部門の対応
| 数字 | 主に動かす部門 | マーケティングのKPIにするか |
|---|---|---|
| 売上 | 全社 | しない |
| 受注金額 | 営業と技術 | しない |
| 提案した案件数 | 営業と技術 | 共有指標にする |
| 商談化した件数 | マーケティングと営業 | 共有指標にする |
| 条件に合う引き合いの件数 | マーケティング | する |
| 引き合い全体の件数 | マーケティング | するが単独では置かない |
| 引き合い1件あたりの獲得費用 | マーケティング | する |
条件に合う引き合いを定義する
対象とする規模、技術の領域、発注の時期。
この条件を決めて、満たすものだけを有効な引き合いとして数えます。
条件がないまま件数を数えると、断る案件まで成果に含まれます。
提案の工数を数字として持つ
提案1件あたりに何時間かかっているかを把握します。
この時間は、受注しなければ回収できない費用です。
引き合いの件数と、提案の工数を並べて管理します。
共有指標を1つ置く
提案した案件数を、営業と技術とマーケティングの共通の指標にします。提案まで進んだ件数が増えていれば、入口は機能しています。
稼働率をKPIに含めるべきか
含めますが、マーケティングの指標としてではなく、全社の指標として置きます。
稼働率だけを追うと、利益の薄い案件を受ける動きが出ます。
稼働率は、受託の事業で最も見られる数字です。
ただし、単独で追うと副作用があります。
稼働率を上げる方向の副作用
空いている技術者を埋めるために、単価の低い案件を受けます。
稼働率は上がり、利益率は下がります。
この動きは、期末に近づくほど強くなります。
稼働率と他の数字の組み合わせ
| 稼働率 | 平均単価 | 粗利率 | 起きていること |
|---|---|---|---|
| 高い | 維持 | 維持 | 想定どおり |
| 高い | 低下 | 低下 | 埋めるために安く受けている |
| 低い | 維持 | 維持 | 案件が足りない |
| 高い | 維持 | 低下 | 見積もりが実態と合っていない |
| 低い | 上昇 | 上昇 | 選別が進んでいる |
単価と粗利率を並べる
稼働率は、単価と粗利率と並べて見ます。
3つを同時に見ないと、良し悪しが判定できません。
見積もりの精度を数字で持つ
見積もった工数と、実際にかかった工数の差を案件ごとに記録します。
この差が大きい案件の傾向が分かると、見積もりの基準を直せます。
粗利率の悪化の多くは、ここから生じます。
稼働率の目標を100%に置かない
余裕がない状態では、提案の工数も、採用の対応も、技術の習得もできません。請求できない時間を計画に含めた水準を目標にします。
受注までの期間が長いことを、評価にどう織り込むのか
先行して見る段階を置きます。
初回の相談から契約まで数か月かかる事業では、受注だけを見ると評価が遅れます。
受託の開発では、初回の相談から契約までに複数の段階があります。
それぞれに別の関与者が入ります。
途中に挟まる関与者
現場の担当者が課題を持ち込み、情報システム部門が要件を確認し、購買や経営が金額を決裁します。
大きな案件では、複数社を比較する工程も入ります。
受注までの段階と、数える対象を、項目ごとに見ていきます。
初回の相談については、数える対象は問い合わせと紹介の件数、遅れに気づける時期は当月。
要件の確認については、数える対象はヒアリングを実施した件数、遅れに気づける時期は当月から翌月。
概算の提示については、数える対象は概算を出した件数、遅れに気づける時期は1から2か月後。
提案と見積もりについては、数える対象は正式な提案を出した件数、遅れに気づける時期は2から3か月後。
決裁については、数える対象は決裁の場に上がった件数、遅れに気づける時期は3か月以降。
契約については、数える対象は受注件数と金額、遅れに気づける時期は3か月以降。
期をまたぐ案件を別に集計する
期末に残っている提案を、件数と金額で集計します。
これを見ずに期の評価をすると、翌期に貢献する仕込みが評価されません。
評価の周期を、受注の周期に合わせる
平均の商談期間が4か月なら、月次で受注の増減を議論しても原因は分かりません。
月次では引き合いと提案の量を見ます。
四半期で、段階ごとの率を並べます。
失注した案件も段階ごとに記録する
どの段階で落ちたかを記録します。概算の提示で落ちるのか、決裁で落ちるのかで、打ち手が変わります。
KPIを達成しているのに利益が伸びない場合、何を見るのか
見積もりと実績の差を見ます。
受注金額が増えても、想定より工数がかかっていれば利益は残りません。
受注の数字が良いのに利益が伸びない状態は、受託の事業で起きやすい形です。
数字の組み合わせで切り分ける
受注と工数の動きから読み取れることを、項目ごとに見ていきます。
達成については、見積もりとの工数差は小さい、粗利率は維持、起きていることは想定どおり。
達成については、見積もりとの工数差は大きい、粗利率は低下、起きていることは見積もりが甘い。
達成については、見積もりとの工数差は小さい、粗利率は低下、起きていることは単価が下がっている。
未達については、見積もりとの工数差は小さい、粗利率は維持、起きていることは案件が足りない。
達成については、見積もりとの工数差は大きい、粗利率は大幅に低下、起きていることは要件の膨張が起きている。
要件の膨張を記録する
契約後に要件が増えることがあります。
追加の請求ができれば問題になりませんが、できないまま工数だけ増えることがあります。
どの案件でどれだけ増えたかを記録します。
獲得の段階に原因があることがある
要件が曖昧なまま引き合いを受けていると、見積もりの精度が落ちます。
引き合いの段階で確認する項目を決めておくと、後工程の差が小さくなります。
案件の選別の基準を数字で持つ
過去の案件を、領域別、規模別に並べて粗利率を出します。粗利率の低い条件が特定できたら、その条件の案件を受ける基準を変えます。
KPIを期中に変えてよいのはどういう場合か
受注の上限が変わったときです。
採用が想定どおり進まない場合や、大型案件で枠が埋まった場合は、獲得の目標を見直します。
KPIの目標値は、原則として期中に変えません。
ただし、受託の事業には前提が変わる場面があります。
前提が変わる場面
期中に前提が変わる場面と、扱いを、項目ごとに見ていきます。
採用が計画より遅れたについては、起きることは受注の上限が下がる、扱いは獲得の量を絞る。
大型案件を受注したについては、起きることは枠が長期間埋まる、扱いは獲得の対象を小規模に寄せる。
主要な顧客の案件が延期については、起きることは枠が空く、扱いは獲得を前倒しする。
特定の技術の需要が急増については、起きることはその領域の上限が課題になる、扱いは育成と協力会社を検討する。
協力会社の体制が変わったについては、起きることは上限が下がる、扱いは受ける案件を絞る。
目標値ではなく、対象を変える
獲得件数の目標を下げるより、対象とする案件の条件を変えるほうが実務的です。
規模の小さい案件に寄せる、特定の領域に絞る、といった調整です。
変更の理由を記録する
なぜ変えたかを記録しておくと、期末の評価で説明ができます。
記録がないと、未達の言い訳と受け取られます。
定義は変えない
有効な引き合いの定義や、提案の定義は期中に変えません。変えると、前後の比較ができなくなります。
工数からの逆算を、どこから始めるか
請求できる工数の比率を出すところからです。
受注の上限が分からないと、獲得の目標を置いても意味がありません。
受託の事業のKPI設計は、供給側の数字を把握することから始まります。
置き直しの進め方を、項目ごとに見ていきます。
1については、やることは過去12か月の投入工数と請求できた工数を出す、期間の目安は2週間。
2については、やることは領域別と規模別に単価と粗利率を並べる、期間の目安は2週間。
3については、やることは受注の上限となる工数を確定する、期間の目安は1週間。
4については、やることは条件に合う引き合いの定義を営業と技術で揃える、期間の目安は2週間。
5については、やることは提案1件あたりの工数を把握する、期間の目安は2週間。
6については、やることはKPIを3つに絞って合意する、期間の目安は2週間。
見る数字を決める
数字は説明のための仮の値です。
技術者が20人、年間の請求可能工数が一人あたり10か月分なら、200人月です。
単価が月100万円なら、売上の上限は2億円になります。
継続の保守が5,000万円なら、新規で1億5,000万円の受注が必要です。
毎月と四半期で確認する数字を、項目ごとに見ていきます。
条件に合う引き合いの件数については、見る頻度は毎週、何のために見るかは入口の量。
提案した案件数と金額については、見る頻度は毎月、何のために見るかは中間の進捗。
受注金額については、見る頻度は毎月、何のために見るかは目標への進捗。
稼働率と平均単価と粗利率については、見る頻度は毎月、何のために見るかは受注の中身。
見積もりと実績の工数差については、見る頻度は案件終了時、何のために見るかは見積もりの精度。
段階別の失注の内訳については、見る頻度は四半期、何のために見るかはどこで落ちているか。
定義を文書にして残す
条件に合う引き合いとは何か、提案とはどの段階からか。
この定義を文書にしておかないと、担当が変わったときに数字の意味が変わります。
上限の数字を経営と共有する
受注の上限が工数で決まることを、経営と共有します。
これがないと、獲得の目標だけが上がり続けます。
KPIの置き方が定まらない場合は、無料相談で現状の数字を一緒に整理するところから始められます。指標の設計ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
システム開発会社のKPIは、引き合い件数でいいですか
単独では置きません。受注できる量が投入できる工数で決まるため、引き合いが増えても受注は比例しません。条件に合う引き合いの件数と、提案した案件の金額を並べて置いてください。
売上目標はどう分解すればいいですか
稼働可能な工数から入ります。技術者数と請求できる工数の比率から売上の上限を出し、そこから必要な受注金額を逆算してください。件数から入ると規模の違う案件が混ざります。
稼働率をKPIにしてもいいですか
全社の指標として置き、単独では追わないでください。稼働率だけを上げようとすると、空きを埋めるために単価の低い案件を受ける動きが出ます。平均単価と粗利率を必ず並べてください。
受注金額は達成しているのに利益が伸びません
見積もりと実績の工数差を案件ごとに確認してください。要件の膨張が起きているか、引き合いの段階で要件が曖昧なまま見積もっている可能性があります。粗利率の悪化の多くはここから生じます。
採用が遅れて受注の上限が下がりました。KPIは変えるべきですか
目標値を下げるより、対象とする案件の条件を変えるほうが実務的です。規模の小さい案件に寄せる、領域を絞るといった調整をしてください。変更の理由は記録に残しておきます。
まとめ
- 受注できる量に上限があるからです。問い合わせが増えても、手がける人が足りなければ受注にはなりません
- 稼働可能な工数から入り、単価と受注金額に降ります。件数から入ると、規模の違う案件が混ざって計算が合わなくなります
- 引き合いの量と、その内容の適合度までです。受注金額は見積もりと提案の内容で決まるため、マーケティング単独では動かせません
- 含めますが、マーケティングの指標としてではなく、全社の指標として置きます。稼働率だけを追うと、利益の薄い案件を受ける動きが出ます
- 先行して見る段階を置きます。初回の相談から契約まで数か月かかる事業では、受注だけを見ると評価が遅れます
- 見積もりと実績の差を見ます。受注金額が増えても、想定より工数がかかっていれば利益は残りません
- 受注の上限が変わったときです。採用が想定どおり進まない場合や、大型案件で枠が埋まった場合は、獲得の目標を見直します
- 請求できる工数の比率を出すところからです。受注の上限が分からないと、獲得の目標を置いても意味がありません