システム開発会社のインハウス化の判断|内製と外注の分け方

技術の知識があるため、できそうに見えるからです。
計測の実装やデータの扱いは確かに自社で対応できますが、運用の判断は別の技能です。
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目次
目次
- 開発会社が広告の運用を自社でやりたくなるのは、なぜか
- できることと、できないことが混在する
- 技術ができることと、運用ができることは、どう違うのか
- 2つの技能の違い
- どこまでを自社で持つかの線引きを、どう決めるのか
- 領域ごとの向き不向き
- 稼働の工数を使うことは、何を意味するのか
- 機会費用として計算する
- 自社でやる費用を、どう見積もるのか
- 比較に含める項目
- 誰に担わせるかを、どう判断するのか
- 担当の形ごとの性質
- 内製にした後、活動が止まるのはなぜか
- 止まる兆候
- 切り替えの計画を、どう作るのか
- 見る数字を決める
- よくある質問
- まとめ
技術の知識があるため、できそうに見えるからです。
計測の実装やデータの扱いは確かに自社で対応できますが、運用の判断は別の技能です。
開発会社が広告の運用を自社でやりたくなるのは、なぜか
技術の知識があるため、できそうに見えるからです。
計測の実装やデータの扱いは確かに自社で対応できますが、運用の判断は別の技能です。
システム開発会社には技術者がいます。
計測のタグの設置、データの集計、管理画面の操作。
これらは社内で対応できます。
だから、広告の運用も自社でできるように見えます。
この見立ては半分正しく、半分外れています。
できることと、できないことが混在する
開発会社が持っている力と、足りない力
| 領域 | 開発会社の状況 | 備考 |
|---|---|---|
| 計測の実装 | 自社で対応できる | 技術の作業 |
| データの集計と可視化 | 自社で対応できる | 技術の作業 |
| 管理画面の操作 | 習得できる | 手順は学べる |
| 訴求の設計 | 経験が要る | 技術の知識とは別 |
| 配分の判断 | 事業の数字の理解が要る | 社内にある |
| 媒体の変化への追随 | 継続的な時間が要る | 稼働との取り合いになる |
内製を検討する動機
Testifyが2026年5月に実施した調査では、代理店を全面委託している企業の8割超が1年以内のインハウス化を計画または検討していました。
動機はノウハウの蓄積が56.7%、コスト削減が46.7%です。
障壁は教育の時間と知見の不足が44.8%、媒体の更新への追随が40.3%、人材の採用が36.7%と報告されています。
目的を1つに絞る
費用の削減が目的なら、手数料の比率が高い領域から移します。知見の蓄積が目的なら、判断に関わる領域から移します。順番が逆になるため、両方を同時に追うと設計がぶれます。
技術ができることと、運用ができることは、どう違うのか
技術は正解が決まっており、運用は決まっていません。
設定の方法は学べますが、何にいくら配分するかの判断は事業の理解から出てきます。
広告の運用で差がつくのは、設定の巧拙より判断の側です。
この点を見誤ると、内製の効果が出ません。
2つの技能の違い
技術の作業と、運用の判断の違い
| 項目 | 技術の作業 | 運用の判断 |
|---|---|---|
| 正解 | 決まっている | 決まっていない |
| 習得の方法 | 手順を学ぶ | 試して結果から学ぶ |
| 必要な期間 | 短い | 長い |
| 判断の材料 | 仕様 | 事業の数字と市場の状況 |
| 失敗の影響 | やり直せる | 費用が消える |
差がつく場所が移動している
検索広告の自動化が進み、手動で設定していた範囲が減っています。
Googleは2025年5月6日にAI Max for Search campaignsを発表し、公称でCV数またはCV値が平均14%増としています。
自動作成アセットとキャンペーンレベルの部分一致は2026年9月に自動アップグレードされ、新規のDSAキャンペーンは2026年9月以降作成できません。
設定の細かさより、渡す成果の定義と検証の設計で差がつく方向に動いています。
この領域は、事業の数字を知っている社内のほうが有利です。
社内が有利な領域を先に移す
条件に合う引き合いの定義。
渡す成果の設計。
配分の判断。
この3つは、社内のほうが精度を出せます。
実務の習得を軽く見ない
管理画面の操作は学べますが、媒体の仕様は継続的に変わります。追随する時間を確保できるかが、内製の成否を分けます。
どこまでを自社で持つかの線引きを、どう決めるのか
判断と実装は自社、制作と日々の調整は外という線が扱いやすい形です。
開発会社は実装を持てるため、他の業種より社内側を広く取れます。
すべてを内製にする必要はありません。
どこを社内に持つかを決める作業です。
領域ごとの向き不向き
開発会社における内製の向き不向き
| 領域 | 内製に向くか | 理由 |
|---|---|---|
| 条件に合う引き合いの定義 | 向く | 営業と技術の合意が必要 |
| 配分の判断 | 向く | 事業の数字と接続が必要 |
| 計測の設計と実装 | 向く | 社内に技術者がいる |
| データの集計と可視化 | 向く | 社内で作れる |
| 訴求の文言と素材の制作 | 外でよい | 制作の専門性が要る |
| 媒体ごとの日々の調整 | どちらでもよい | 時間の確保次第 |
| 媒体の仕様変更への追随 | 外に残す価値がある | 継続的な時間が要る |
計測とデータを社内に持つ利点
開発会社は、計測の実装を自社でできます。
社内の案件の記録と、広告の記録をつなぐ作業も自社で進められます。
この接続ができると、経路別の受注率と粗利率が出せます。
制作を外に出す判断
訴求の素材やサイトの制作は、社内の技術者の稼働を使います。
その稼働は、請求できる案件に使えたはずの時間です。
外に出したほうが、機会費用の面で有利なことがあります。
線を文書にする
どこまでが社内で、どこからが外部かを文書に残します。担当が変わったときに、範囲が揺れなくなります。
稼働の工数を使うことは、何を意味するのか
請求できる時間を減らすということです。
社内の技術者が対応すると、その時間の分だけ売上の上限が下がります。
受託の事業では、技術者の時間が売上に直結します。
内製の費用を考えるとき、この点が他の業種と違います。
機会費用として計算する
社内で対応したときの費用の見方
| 作業 | 社内で対応した場合 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 計測の実装 | 請求できる時間が減る | 案件に使えた時間 |
| サイトの制作 | 請求できる時間が減る | 同上 |
| 日々の運用 | 請求できる時間が減る | 継続的に発生する |
| 媒体の仕様への追随 | 請求できる時間が減る | 断続的に発生する |
| データの集計 | 請求できる時間が減る | 自動化で減らせる |
機会費用を数字で出す
数字は説明のための仮の値です。
技術者の請求単価が月100万円なら、1日あたり約5万円です。
サイトの制作に技術者が20日を使えば、100万円分の請求機会が消えます。
外部に80万円で依頼できるなら、外に出したほうが有利になります。
稼働に余裕がある時期は判断が変わる
案件が薄い時期は、社内の技術者の時間が余っています。
その時期に内製で進めるのは合理的です。
ただし、稼働が戻ったときに止まることを前提に計画します。
継続的に発生する作業を社内に置かない
日々の運用や仕様への追随は、継続的に時間を取ります。稼働の変動に左右される社内の体制では、安定しません。
自社でやる費用を、どう見積もるのか
手数料と人件費に加えて、機会費用と教育の期間を含めます。
受託の事業では、社内の時間に請求できたはずの価値があります。
内製のほうが安いという試算には、含めていない費用があることが多くあります。
比較に含める項目
機会費用まで入れた内外の費用比較を、項目ごとに見ていきます。
媒体費については、外注の場合は同じ、内製の場合は同じ。
手数料については、外注の場合は発生する、内製の場合は発生しない。
担当の人件費については、外注の場合は窓口の一部、内製の場合は担当の人件費。
技術者の機会費用については、外注の場合は発生しない、内製の場合は請求できたはずの時間。
採用と教育の費用については、外注の場合は不要、内製の場合は発生する。
立ち上がりの期間の損失については、外注の場合は小さい、内製の場合は成果が下がる期間がある。
体制の維持については、外注の場合は委託先が負う、内製の場合は稼働の変動で止まる。
損益分岐の時期を出す
内製の費用が外注の費用を下回るのは何か月目か。
これを出しておくと、途中の数字が悪くても判断がぶれません。
専任を置く場合の計算
技術者ではなく、専任の担当を採用する場合は機会費用が発生しません。
この形なら、手数料と人件費の比較が中心になります。
ただし、採用と教育の期間は計上します。
前提を明記する
配分の判断が速くなることで成果が上がる前提を置くなら、その前提を明記します。明記しないまま試算すると、後から検証ができません。
誰に担わせるかを、どう判断するのか
技術者の兼任ではなく、専任か外部が現実的です。
兼任にすると、稼働が上がった時期に活動が止まります。
社内で担当を決めるとき、技術者の兼任を選ぶことがあります。
この形は、稼働の変動に弱いという性質があります。
担当の形ごとの性質
担当の置き方と、その性質を、項目ごとに見ていきます。
技術者の兼任については、立ち上がりの速さは速い、稼働の変動への強さは弱い、費用は機会費用が発生。
営業の兼任については、立ち上がりの速さは中程度、稼働の変動への強さは中程度、費用は営業の時間が減る。
専任の採用については、立ち上がりの速さは遅い、稼働の変動への強さは強い、費用は人件費が発生。
社内からの異動については、立ち上がりの速さは中程度、稼働の変動への強さは強い、費用は元の業務の穴が空く。
外部への委託については、立ち上がりの速さは速い、稼働の変動への強さは強い、費用は手数料が発生。
兼任が止まる場面
大型の案件が始まったとき。
納期が迫ったとき。
この2つで、兼任の活動は確実に止まります。
止まった期間の分だけ、引き合いが細ります。
専任を置く判断の目安
獲得の予算が一定の規模を超え、かつ稼働の変動が大きい場合は、専任を置く価値があります。
逆に、規模が小さい段階では外部に任せるほうが安定します。
経営者が担う場合
規模の小さい会社では、経営者が担うことがあります。判断の速さでは有利ですが、時間の確保が課題になります。月に何時間を充てるかを決めて、計画に入れます。
内製にした後、活動が止まるのはなぜか
担当が1人に固定されるからです。
稼働の変動や異動で止まり、そのまま再開されないことがあります。
内製化の目的の1つは、社内に知見を残すことです。
担当1人に集まると、外部に預けていたときと同じ構造になります。
止まる兆候
内製が止まるときの兆候と、対処を、項目ごとに見ていきます。
配分が数か月動いていないについては、起きていることは担当の時間が取れていない、対処は時間を計画に入れる。
設定の意図を他の人が説明できないについては、起きていることは記録が残っていない、対処は変更の理由を記録する。
新しい施策が試されていないについては、起きていることは余力がない、対処は検証の枠を確保する。
媒体の変更に気づいていないについては、起きていることは情報の確認が止まっている、対処は情報源と頻度を決める。
数字の報告が止まるについては、起きていることは集計の手間が大きい、対処は自動で出る形にする。
変更の記録を残す
何をいつ変えたか、なぜ変えたか、結果どうだったか。
この3点を、簡易な形で残します。
形式が重いと続かないため、数行で足ります。
外部の目を残す
完全に内製にすると、媒体の変化や他社の動向が入りにくくなります。
分析や検証の設計だけ外部に依頼する形を残す方法があります。
定期的に外部の見積もりを取る
内製の費用が妥当かを確認するため、定期的に外部の見積もりを取ります。戻す前提ではなく、水準を確認するために行います。
切り替えの計画を、どう作るのか
目的を1つ決め、第1段階の範囲と期間を区切るところからです。
全体の計画を先に作ると、途中で止められなくなります。
切り替えは、一度に設計するのではなく、段階ごとに区切って進めます。
切り替えの計画を作る手順を、項目ごとに見ていきます。
1については、やることは目的を1つに決めて経営と合意する、期間の目安は2週間。
2については、やることは現在の委託の範囲と費用の内訳を整理する、期間の目安は2週間。
3については、やることは技術者の機会費用を含めた比較を作る、期間の目安は2週間。
4については、やることは社内に移す範囲と担当の形を決める、期間の目安は2週間。
5については、やることはアカウントと計測の所有と権限を確認する、期間の目安は2週間。
6については、やることは引き継ぎの項目と期間を外部と合意する、期間の目安は1か月。
見る数字を決める
数字は説明のための仮の値です。
月の広告費が200万円、手数料が20%で40万円とします。
技術者が月に5日を使うなら、機会費用は約25万円です。
専任を置かず兼任で進めると、手数料の削減分の大半が機会費用で消えます。
切り替えの途中で確認する数字を、項目ごとに見ていきます。
条件に合う引き合いの件数については、見る頻度は毎週、何を確かめるかは量が落ちていないか。
引き合い1件あたりの獲得費用については、見る頻度は毎週、何を確かめるかは効率が保てているか。
社内で使った工数については、見る頻度は毎月、何を確かめるかは機会費用の実額。
手数料と機会費用を含む総費用については、見る頻度は毎月、何を確かめるかは比較の前提が保たれているか。
面談化率と提案に進んだ比率については、見る頻度は毎月、何を確かめるかは質が落ちていないか。
受注金額については、見る頻度は四半期、何を確かめるかは事業の数字に効いているか。
第1段階の評価まで次を決めない
第1段階が終わってから、第2段階に進むかを判断します。
全段階の予定を先に固めると、途中の結果を反映できません。
外部との関係を一度に切らない
切り替えの期間は、両方が並行する形にします。
費用の重複を計画に含めておくと、途中で無理な打ち切りをせずに済みます。
内製と外注の線引きで判断に迷う場合は、無料相談で現状の体制を見てもらうところから始められます。運用の進め方ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
社内に技術者がいるので、広告の運用も自社でできますか
計測の実装やデータの集計は自社で対応できます。一方で、訴求の設計や配分の判断は技術の知識とは別の技能です。まず計測と数字の管理を社内に持ち、運用の判断を段階的に移す形が現実的です。
技術者に兼任させてもいいですか
稼働が上がった時期に活動が止まります。大型の案件が始まったときや納期が迫ったときに確実に止まり、その期間の分だけ引き合いが細ります。専任か外部のほうが安定します。
内製の費用は、どう計算すればいいですか
手数料と人件費に加えて、技術者の機会費用を含めてください。受託の事業では社内の時間に請求できたはずの価値があります。採用と教育の期間、立ち上がりに成果が下がる分も計上します。
稼働が空いている時期に内製を始めてもいいですか
合理的な判断です。ただし稼働が戻ったときに止まることを前提に計画してください。継続的に時間を取る日々の運用や媒体の仕様への追随は、社内に置くと安定しません。
内製にした後、活動が止まってしまいました
担当が1人に固定されていることが原因です。変更の理由を数行で記録する形を作り、時間を稼働の計画に入れてください。分析や検証の設計だけ外部に残す方法もあります。
まとめ
- 技術の知識があるため、できそうに見えるからです。計測の実装やデータの扱いは確かに自社で対応できますが、運用の判断は別の技能です
- 技術は正解が決まっており、運用は決まっていません。設定の方法は学べますが、何にいくら配分するかの判断は事業の理解から出てきます
- 判断と実装は自社、制作と日々の調整は外という線が扱いやすい形です。開発会社は実装を持てるため、他の業種より社内側を広く取れます
- 請求できる時間を減らすということです。社内の技術者が対応すると、その時間の分だけ売上の上限が下がります
- 手数料と人件費に加えて、機会費用と教育の期間を含めます。受託の事業では、社内の時間に請求できたはずの価値があります
- 技術者の兼任ではなく、専任か外部が現実的です。兼任にすると、稼働が上がった時期に活動が止まります
- 担当が1人に固定されるからです。稼働の変動や異動で止まり、そのまま再開されないことがあります
- 目的を1つ決め、第1段階の範囲と期間を区切るところからです。全体の計画を先に作ると、途中で止められなくなります