
ROASとは、広告費に対して広告経由でどれだけの売上を得たかを示す指標です。
ただし、売上の定義や計測期間が揃っていなければ、数値が高くても広告の採算性を正しく判断できません。
なお、TimeValue株式会社では、広告運用・クリエイティブ制作・LP改善・データ分析・AI導入までを一括で引き受けるWebマーケティング支援「KAIZEN」を提供しています。
現在、オンラインの無料マーケティング診断を毎月10社限定で実施中です。いまの数字を見ながら、どこから直すのが早いかを一緒に整理します。
今月の無料診断は残り4社です
広告からLPまで、まとめて見ます。オンラインで30分から対応しています。
目次
目次
- ROASとは何を表す指標ですか
- ROASは利益率を直接表す数字ではありません
- ROASを計算するとき売上はどこまで含めますか
- 税や送料を含めるかも決めておきます
- セット販売やアップセルの売上にも注意します
- ROASが高ければ広告は黒字だと判断できますか
- 必要なROASは粗利率によって変わります
- 売上最大化と利益最大化は同じではありません
- ROASを見るとき計測期間はどう決めますか
- 広告費の発生日と売上の発生日を区別します
- 月末の広告ほど評価が不完全になりやすくなります
- 比較する期間条件を揃えます
- アトリビューションによってROASはどれくらい変わりますか
- クリック成果と表示成果は意味が違います
- 媒体間のROASを足して全体ROASにしないようにします
- 返品やキャンセルがある場合ROASはどう扱いますか
- キャンセル率が広告ごとに違うことがあります
- 売上が確定するタイミングを決めます
- LTVや定期購入がある事業ではROASをどう見ますか
- 実績LTVと予測LTVを区別します
- 初回ROASを捨ててよいわけではありません
- 目標ROASはどのように決めますか
- 損益分岐となるROASを把握します
- 新規顧客獲得ではLTVも反映します
- 目標ROASは固定値とは限りません
- ROASを広告運用の判断に使うとき何を確認しますか
- ROASの変化を分解して確認します
- 予算を増やすほどROASが下がる場合があります
- 社内でROASの定義を固定します
- よくある質問
- まとめ
ROASとは、広告費に対して広告経由でどれだけの売上を得たかを示す指標です。
ただし、売上の定義や計測期間が揃っていなければ、数値が高くても広告の採算性を正しく判断できません。
ROASとは何を表す指標ですか
ROASとは、広告費に対して広告経由でどれだけの売上を得たかを示す指標です。
ただし、売上の定義や計測期間が揃っていなければ、数値が高くても広告の採算性を正しく判断できません。
ROASはReturn On Advertising Spendの略で、日本語では広告費用対効果と表現されます。
広告運用では、広告費に対して何倍の売上を生み出したかを確認するときに使います。
計算式は次のとおりです。
ROAS=広告経由の売上÷広告費×100
説明のための仮の値として、広告費100万円を使い、広告経由の売上が500万円だった場合、ROASは500%です。
広告費1円に対して5円の売上を得た状態と読み取れます。
計算そのものは難しくありません。
実務で難しいのは、計算式の分子に入れる「広告経由の売上」をどう定義するかです。
広告管理画面に500万円と表示されているからROAS500%と判断できるとは限りません。
その500万円にどの商品が含まれているのか、購入後のキャンセルが反映されているのか、広告接触から何日後までの購入を広告成果とするのかによって意味が変わります。
ROASは利益率を直接表す数字ではありません
ROASで使われるのは利益ではなく売上です。
そのため、ROASが高ければ必ず利益が出ているわけではありません。
説明のための仮の値として、同じROAS400%の商品が2つあるとします。
一方は売上100円あたり70円の粗利が残り、もう一方は20円しか粗利が残らないのであれば、許容できる広告費は大きく異なります。
ROASだけを見ると両者の広告効率は同じに見えます。
しかし経営上の収益性まで同じとは判断できません。
そのため、ROASは広告費から売上をどれだけ作ったかを見る指標として使い、利益を確認するときには原価、粗利率、物流費、決済手数料、返品などを別途加味する必要があります。
ROASと関連指標の違い
| 指標 | 主に確認する内容 | 計算の考え方 |
|---|---|---|
| ROAS | 広告費に対する売上 | 広告経由売上÷広告費 |
| CPA | 1件の獲得に必要な広告費 | 広告費÷獲得件数 |
| 粗利ベースの広告採算 | 広告費を差し引いた後に利益が残るか | 売上だけでなく原価や変動費も考慮 |
| LTV | 1顧客が一定期間にもたらす価値 | 初回購入だけでなく継続購入も含めて考える |
ROASは便利な指標ですが、単独で広告事業の収益性を説明できる数字ではありません。
広告運用担当者と経営者がROASについて話す際には、何を測っている数字なのかを揃えておく必要があります。
ROASを計算するとき売上はどこまで含めますか
ROASの売上には、事前に定めた広告成果として帰属させる売上だけを含めます。
新規購入、既存顧客の再購入、セット商品などの扱いを統一しないと、期間や媒体をまたいだ比較が崩れます。
ROASを使うときに最初に決めるべきなのは、売上の範囲です。
広告経由で購入された注文の売上をすべて含めるのか、新規顧客だけを対象にするのか、既存顧客による再購入も含めるのかによって数値は変わります。
例えば既存顧客が広告を見て再購入した場合、広告管理画面では広告成果として計上されることがあります。
しかし事業側では、その顧客は広告がなくても購入していた可能性があります。
この売上を新規顧客獲得施策の評価にそのまま使うと、広告の新規獲得力を実態以上に評価する可能性があります。
一方で、既存顧客への再購入促進を目的とした広告なら、既存顧客売上を除外する必要はありません。
広告の目的によって、見るべき売上の範囲が変わります。
税や送料を含めるかも決めておきます
ECでは、商品代金だけでなく送料や消費税を含んだ注文金額が計測される場合があります。
一方、社内の売上集計では税抜商品売上だけを管理しているケースもあります。
この状態で広告管理画面と社内データを比較すると、同じ注文でも売上金額が一致しません。
どちらが絶対に正しいという話ではありません。
継続的に比較できるよう、同じ定義で計測することが大切です。
広告媒体Aでは税込売上、媒体Bでは税抜売上という状態では、媒体間のROASを単純比較できません。
セット販売やアップセルの売上にも注意します
広告から商品Aの商品ページへ流入し、その後商品Bも同時購入した場合、注文全体の金額を広告経由売上として扱うことがあります。
これは、広告がその注文全体のきっかけになったと考えるなら合理的です。
ただし、商品別の採算を評価したい場合には問題が生じます。
広告で集客している商品Aの広告効率を見たいのに、利益率の高い商品Bの売上まで含まれていると、商品A単体の収益性が見えにくくなるためです。
ROASの売上定義で決めておきたい項目
| 項目 | 確認する内容 | 数値が変わる理由 |
|---|---|---|
| 新規顧客 | 新規購入のみを見るか | 既存顧客売上を含めるとROASが高くなる場合がある |
| 再購入 | 既存顧客の購入を含めるか | リターゲティング施策では成果として重要になる |
| 送料 | 売上に含めるか | 注文金額と商品売上の定義が変わる |
| 消費税 | 税込か税抜か | 社内売上と広告媒体の数字がずれる場合がある |
| 同時購入 | 注文全体を売上とするか | 広告対象商品以外の売上が加算される場合がある |
ROASを運用会議で使うのであれば、計算式より先に売上定義を共有しておく方が安全です。
同じROAS500%でも、分子に何が入っているかによって意味は大きく異なります。
ROASが高ければ広告は黒字だと判断できますか
ROASが高いだけでは、広告が黒字とは判断できません。
ROASは売上を基準にするため、商品原価や物流費、決済手数料などを差し引いた後に広告費を回収できるかを別途確認する必要があります。
ROASを見るときに起きやすい誤解が、100%を超えていれば広告費以上の売上があるため黒字だという考え方です。
ROAS100%は、広告費100円に対して売上100円という状態です。
商品を仕入れたり製造したりする費用が存在する以上、多くの事業ではこれだけで利益は残りません。
説明のための仮の値として、販売価格10,000円の商品があり、商品原価、物流費、決済手数料などの変動費が合計6,000円だとします。
広告費を使う前に残る金額は4,000円です。
この場合、1件販売するために使える広告費の上限を考える際には、10,000円の売上ではなく4,000円の残額を基準に考える必要があります。
広告費が3,000円なら、ROASは約333%です。
売上10,000円を広告費3,000円で割るためです。
この数字だけを見ると高く感じるかもしれません。
しかし広告費以外の変動費が6,000円あるため、最終的に残るのは1,000円です。
必要なROASは粗利率によって変わります
商品やサービスによって利益構造は異なります。
原価率が高い商品では、高いROASを維持しなければ広告費を回収できません。
反対に、追加提供コストの小さいサービスでは、比較的低いROASでも利益が残る場合があります。
したがって、ROAS300%なら良い、500%を超えていれば優秀といった一律の基準は使えません。
同じ会社でも商品カテゴリによって粗利率が違えば、求めるROASも分ける必要があります。
売上最大化と利益最大化は同じではありません
ROASを高くすることだけを目的にすると、広告配信を絞りすぎることがあります。
購入確率が高いユーザーだけに広告を出せばROASは上がりやすくなります。
しかし配信量が小さくなれば、利益総額も小さくなる可能性があります。
説明のための仮の値として、広告費100万円でROAS800%の状態と、広告費500万円でROAS500%の状態を比較します。
前者の売上は800万円、後者の売上は2,500万円です。
どちらが事業にとって望ましいかは粗利率や固定費、在庫、成長方針によって変わります。
広告運用ではROASの高さだけでなく、広告費を増やしたときに利益額がどこまで増えるかを見る必要があります。
ROASを見るとき計測期間はどう決めますか
ROASの計測期間は、広告接触から購入までにかかる時間と事業の意思決定周期に合わせて決めます。
日次や月次だけで機械的に区切ると、検討期間の長い商品では広告成果を過小評価することがあります。
ROASは期間の取り方によって数字が変わります。
広告費は広告を配信した日に発生しますが、売上は必ずしも同じ日に発生するわけではありません。
広告をクリックしてその場で購入する人もいれば、数日後に再訪して購入する人もいます。
高単価商品や比較検討が必要なサービスでは、初回接触から購入までさらに長い時間がかかることがあります。
この時間差を無視して当日ROASだけを見ると、配信直後の広告が悪く見えやすくなります。
広告費の発生日と売上の発生日を区別します
説明のための仮の値として、9月1日に広告費10万円を配信し、その広告をクリックしたユーザーが9月5日に20万円の商品を購入したとします。
購入日だけを基準に集計すると、9月1日は売上ゼロに見えます。
一方、媒体側のアトリビューションでは9月1日の広告成果として売上が紐づく場合があります。
広告管理画面、アクセス解析、受注管理システムで数字が一致しない原因の一つが、この日付基準の違いです。
日別ROASを確認する際には、広告クリック日基準なのか、購入日基準なのかを確認する必要があります。
月末の広告ほど評価が不完全になりやすくなります
月次レポートでも同じ問題が起きます。
9月30日に広告をクリックして10月3日に購入した場合、9月の広告費に対する成果として後から売上が追加されることがあります。
そのため、9月30日時点で確定したROASと、10月7日時点で改めて確認した9月ROASが異なるケースがあります。
月次レポートを広告配信終了直後に確定すると、月末付近の広告成果が十分に反映されない可能性があります。
購入までの平均日数が長い商材では、速報値と確定値を分ける運用も有効です。
比較する期間条件を揃えます
前月ROASと今月ROASを比較するときにも注意が必要です。
前月は月末から十分な日数が経過して成果がほぼ確定しているのに、今月は月の途中で比較しているのであれば、条件が揃っていません。
数値を比較するときは、広告費だけでなく成果が確定するまでの時間も同じ条件にする必要があります。
アトリビューションによってROASはどれくらい変わりますか
ROASは、どの広告接触に売上を帰属させるかによって大きく変わります。
クリック後だけを見るのか、広告表示後の購入も含めるのか、複数媒体の接触をどう扱うかを確認してから比較する必要があります。
ユーザーは購入するまでに複数の広告やチャネルへ接触することがあります。
SNS広告を見た後に検索し、検索広告をクリックして購入するケースは珍しくありません。
この購入をどの広告の成果と考えるかによってROASは変わります。
SNS広告側では自社広告が購入に影響したと判断し、検索広告側でも自社広告経由の購入として計測することがあります。
その結果、各広告媒体の売上を単純に足すと、実際の会社全体の売上を上回ることがあります。
これは広告媒体の数字が間違っているとは限りません。
広告媒体ごとに成果の帰属ルールが異なるためです。
クリック成果と表示成果は意味が違います
広告をクリックして購入した場合は、広告との関係が比較的分かりやすい成果です。
一方、広告を表示したもののクリックせず、その後別の経路から購入したユーザーを広告成果として扱う場合があります。
これが広告表示後の成果です。
認知目的の広告では表示による影響を考える意味があります。
しかし獲得効率を厳密に比較する場面で表示後成果を大量に含めると、広告の直接的な獲得力を実態より高く見る可能性があります。
そのため媒体のROASを見る際には、クリック経由だけなのか、表示経由も含むのかを確認します。
媒体間のROASを足して全体ROASにしないようにします
説明のための仮の値として、会社全体のEC売上が1,000万円だったとします。
一方、媒体Aの管理画面では広告経由売上700万円、媒体Bでは500万円と計測されている場合があります。
両者を足すと1,200万円になり、実売上を超えます。
同じ購入を複数の媒体が成果として計測している可能性があるためです。
会社全体の広告採算を見る場合は、広告媒体の管理画面だけでなく、受注データやアクセス解析などの基準となるデータも確認する必要があります。
ROASを見るデータごとの特徴
| データ | 把握しやすい内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 広告媒体の管理画面 | 各媒体内での広告成果 | 媒体ごとにアトリビューション条件が異なる |
| アクセス解析 | 複数流入経路の比較 | 計測方式によって広告媒体の数字と一致しない |
| 受注データ | 実際に発生した注文と売上 | 広告がどの程度貢献したかを単独では判断しにくい |
| 会計や基幹データ | 確定した会社売上 | 広告単位まで直接紐づかない場合がある |
広告運用の改善では媒体ROASが役立ちます。
経営として広告投資全体を判断するときは、実売上と広告費の関係も合わせて見る必要があります。
返品やキャンセルがある場合ROASはどう扱いますか
返品やキャンセルが発生する事業では、注文時点のROASだけでなく確定売上ベースでも確認します。
広告媒体に購入時の売上だけが残ると、実際には成立していない売上まで成果として評価することになります。
ECや予約型サービスでは、コンバージョンが発生した時点では売上が確定していないことがあります。
商品を注文した後にキャンセルされるケースや、発送後に返品されるケースがあります。
予約サービスであれば、予約後に来店せず売上が発生しない場合もあります。
広告媒体では購入完了ページが表示された時点でコンバージョンと売上を記録することがあります。
その後キャンセルされても、広告管理画面から自動的に成果が消えるとは限りません。
この場合、媒体上のROASと実際の売上ベースのROASに差が生まれます。
キャンセル率が広告ごとに違うことがあります
キャンセルを一律の割合で考えるだけでは不十分な場合があります。
例えば値引き訴求の広告では購入数が多くても、その後のキャンセル率が高い可能性があります。
別の広告では購入件数は少なくても、購入意思の強いユーザーが集まりキャンセル率が低い場合があります。
媒体上の購入ROASだけを見ると、前者の広告が高く評価されることがあります。
しかし確定売上で見ると順位が逆転する可能性があります。
そのため広告クリエイティブやキャンペーンを比較するときには、購入後の質まで追える状態が望ましいです。
売上が確定するタイミングを決めます
事業によって確定売上の基準は異なります。
注文時点でほぼキャンセルが起きない商品であれば、購入時売上でも十分に判断できる場合があります。
一方で、返品やキャンセルが多い事業では、発送完了、返品期間終了、サービス提供完了など別の基準が必要になります。
毎日の広告運用で確定売上を待つと判断が遅くなるため、速報値として注文ROASを使い、一定期間後に確定ROASを確認する方法もあります。
ここでも、速報値と確定値を混同しないことが重要です。
広告担当者がROAS600%と報告し、経営側が確定売上ベースの数字だと受け取っている状態では、同じ数値を見ても認識が異なります。
ROASを社内指標にするなら、キャンセルや返品をどの段階で反映するかまで定義しておく必要があります。
LTVや定期購入がある事業ではROASをどう見ますか
LTVや定期購入がある事業では、初回売上ROASと継続売上を含むROASを分けて管理します。
将来売上を初回から確定値として扱うと、継続率が悪化した際に実際の採算と大きくずれるためです。
定期購入やリピート購入がある事業では、初回購入だけで広告採算を判断すると広告価値を過小評価することがあります。
説明のための仮の値として、初回購入5,000円の商品を獲得するために広告費4,000円を使った場合、初回ROASは125%です。
初回だけを見ると採算が悪く見えるかもしれません。
しかし顧客がその後何度も購入し、一定期間で平均20,000円の売上になるのであれば、顧客獲得に4,000円を使う判断が合理的な場合があります。
ただし、将来の20,000円を広告配信直後から確定売上として扱うのは危険です。
実績LTVと予測LTVを区別します
LTVには、すでに発生した売上から計算する方法と、過去の継続率から将来の売上を予測する方法があります。
予測LTVを使えば早い段階で広告投資の判断ができます。
一方で、予測に使った継続率が崩れれば採算も変わります。
広告で獲得する顧客層が変わると、過去の既存顧客と同じ継続率になるとは限りません。
例えば広告費を拡大した結果、購入意欲の低い層まで獲得が広がれば、初回CPAは許容範囲でも継続率が下がる可能性があります。
そのため、予測LTVだけで広告費を増やすのではなく、獲得月ごとの継続実績を確認する必要があります。
初回ROASを捨ててよいわけではありません
LTVを重視する事業でも、初回ROASは有用です。
初回売上に対する広告費の回収率が分かれば、資金回収までの期間を把握できるからです。
将来的に利益が出る事業でも、広告費を先に大量投入し、売上回収まで半年かかるのであればキャッシュフローへの負担が大きくなります。
したがって、定期購入型の事業では初回ROAS、一定期間の累積ROAS、継続率を分けて確認する方法が適しています。
説明のための仮の値として、30日ROAS、90日ROAS、180日ROASのように顧客獲得後の期間を固定して比較すると、獲得月ごとの顧客価値を追いやすくなります。
同じ期間条件で比較すれば、最近獲得した顧客は初回購入は多いが継続が弱いといった変化も把握できます。
目標ROASはどのように決めますか
目標ROASは他社の相場ではなく、自社の商品粗利、変動費、顧客の継続価値、許容利益から逆算して決めます。
媒体の最適化目標として使う場合も、事業上の損益分岐点と切り離さないことが必要です。
目標ROASを決めるとき、一般的に何%なら良いのかから考えると判断を誤りやすくなります。
必要なROASは商品の利益構造によって変わるためです。
粗利率が80%の商品と粗利率30%の商品では、同じ広告費を使っても残る利益が違います。
まず確認するのは、売上から広告費以外にどの費用が差し引かれるかです。
商品原価、仕入れ原価、物流費、販売手数料、決済手数料など、売上に連動して増える費用を整理します。
その上で、広告費としてどこまで使えるかを決めます。
損益分岐となるROASを把握します
説明のための仮の値として、売上10,000円に対して、広告費を除く変動費が6,000円かかる商品を考えます。
広告費に使える金額が最大4,000円なら、10,000円の売上を4,000円の広告費で獲得した時点が広告費を含めた損益分岐の一つになります。
この場合のROASは250%です。
10,000÷4,000×100=250%となります。
ただし250%を目標にすると、広告以外の固定費や利益を十分に確保できない場合があります。
そのため実際の目標ROASは、会社として残したい利益まで考慮して設定します。
新規顧客獲得ではLTVも反映します
新規顧客が継続購入する事業では、初回注文だけで目標ROASを設定すると広告投資を抑えすぎることがあります。
一方、将来LTVをすべて広告費に使えるわけでもありません。
継続購入には商品原価や発送費などが発生します。
将来利益の一部を顧客獲得費としてどこまで先行投資するかを決める必要があります。
初回購入の採算、継続後の採算、資金回収期間の3つを分けて考えると判断しやすくなります。
目標ROASは固定値とは限りません
事業の局面によって、許容ROASを変える場合があります。
利益確保を優先する時期には高めのROASを求め、新規顧客数を増やしたい時期には一定範囲でROASを下げて広告費を拡大する考え方があります。
ただし、ROASを下げること自体が目的ではありません。
広告費を増やした結果として、顧客数や粗利額がどれだけ増えたかを確認します。
ROASを経営指標として使うなら、目標ROASを守ったかだけで評価するより、広告費、売上、粗利、顧客数を合わせて判断した方が実態を捉えやすくなります。
ROASを広告運用の判断に使うとき何を確認しますか
ROASを広告運用に使うときは、数値そのものより計測条件が揃っているかを先に確認します。
売上定義、期間、アトリビューション、返品、顧客区分が違う状態では、広告や媒体を正しく比較できません。
ROASは広告運用で非常に使いやすい指標です。
売上と広告費という経営に近い数字を使うため、クリック率やクリック単価より事業成果との関係を説明しやすいからです。
一方で、使いやすい数字だからこそ、異なる条件のROASをそのまま比較しやすいという問題があります。
媒体AのROASが500%、媒体Bが350%だから、媒体Aへ予算を移すという判断をする前に確認すべきことがあります。
両媒体で売上の計測方法が同じか、アトリビューション期間が同じか、新規と既存の割合が同じか、表示後成果が含まれているかなどです。
これらが異なれば、500%と350%をそのまま比較できません。
ROASの変化を分解して確認します
ROASが下がった場合、広告の成果が悪化したと一括りにしない方が原因を見つけやすくなります。
ROASは広告費と売上の関係です。
売上は購入件数と平均購入単価に分解できます。
さらに購入件数は、広告流入数と購入率の影響を受けます。
そのためROAS悪化の原因には、広告単価の上昇、クリック率の低下、サイトの購入率低下、平均購入単価の低下など複数の可能性があります。
ROASだけを見て広告を停止すると、実際にはサイト側の不具合や在庫切れが原因だったということも起こります。
予算を増やすほどROASが下がる場合があります
広告費を増やしても、同じROASを維持できるとは限りません。
少額配信では購入確率の高いユーザーへ広告を集中できます。
配信量を増やすと、対象ユーザーが広がり、追加で獲得する顧客の効率が低下する場合があります。
これを考えると、最高ROASのキャンペーンだけへ予算を集める方法が必ずしも売上や利益の最大化につながるとは限りません。
説明のための仮の値として、広告費50万円まではROAS600%を維持できても、100万円まで増やすとROAS450%になるケースを考えます。
ROASだけなら悪化しています。
しかし追加50万円によって十分な粗利が増えるのであれば、事業としては広告費を増やした方が利益額を増やせる可能性があります。
広告運用の目的はROASという割合を最大にすることではありません。
事業が求める売上、利益、顧客獲得を実現するために、どこまで広告投資を増やせるかを判断するための材料としてROASを使います。
社内でROASの定義を固定します
広告代理店、マーケティング担当者、EC担当者、経営者がそれぞれ異なるROASを見ている状態は避ける必要があります。
広告媒体上のROASなのか、受注データを基準にしたROASなのか、初回売上ROASなのか、継続売上まで含むROASなのかを明示します。
レポートにもROASという数字だけを書くのではなく、計測期間や売上の基準が分かる状態にしておくと認識のずれを減らせます。
ROASは計算式自体は単純です。
実務では、その計算式に入れる数字の定義を揃える作業の方が重要です。
売上の範囲、粗利との違い、計測期間、アトリビューション、返品やキャンセル、LTVを整理した上で使えば、広告費を増やすか、維持するか、抑えるかを判断するための有効な指標になります。
よくある質問
ROASとは簡単にいうと何ですか
広告費に対して、広告経由でどれだけの売上を得たかを見る指標です。広告経由売上を広告費で割り、100を掛けて算出します。
ROASが100%なら黒字ですか
必ずしも黒字ではありません。ROASは売上を基準にしているため、商品原価、物流費、決済手数料などを差し引くと赤字になる場合があります。
ROASは何%あれば良いですか
一律の基準はありません。必要なROASは粗利率や変動費、継続購入によるLTV、会社が確保したい利益によって変わります。
ROASとROIは何が違いますか
ROASは広告費に対する売上を見る指標で、ROIは投資に対してどれだけ利益を得たかを見る考え方です。ROASが高くても利益率が低ければ、ROIも高いとは限りません。
広告媒体ごとのROASをそのまま比較してもよいですか
計測条件が同じでなければ単純比較はできません。アトリビューション期間、表示後成果、新規と既存の扱い、売上定義などを確認した上で比較する必要があります。
まとめ
- ROASとは、広告費に対して広告経由でどれだけの売上を得たかを示す指標です。ただし、売上の定義や計測期間が揃っていなければ、数値が高くても広告の採算性を正しく判断できません
- ROASの売上には、事前に定めた広告成果として帰属させる売上だけを含めます。新規購入、既存顧客の再購入、セット商品などの扱いを統一しないと、期間や媒体をまたいだ比較が崩れます
- ROASが高いだけでは、広告が黒字とは判断できません。ROASは売上を基準にするため、商品原価や物流費、決済手数料などを差し引いた後に広告費を回収できるかを別途確認する必要があります
- ROASの計測期間は、広告接触から購入までにかかる時間と事業の意思決定周期に合わせて決めます。日次や月次だけで機械的に区切ると、検討期間の長い商品では広告成果を過小評価することがあります
- ROASは、どの広告接触に売上を帰属させるかによって大きく変わります。クリック後だけを見るのか、広告表示後の購入も含めるのか、複数媒体の接触をどう扱うかを確認してから比較する必要があります
- 返品やキャンセルが発生する事業では、注文時点のROASだけでなく確定売上ベースでも確認します。広告媒体に購入時の売上だけが残ると、実際には成立していない売上まで成果として評価することになります
- LTVや定期購入がある事業では、初回売上ROASと継続売上を含むROASを分けて管理します。将来売上を初回から確定値として扱うと、継続率が悪化した際に実際の採算と大きくずれるためです
- 目標ROASは他社の相場ではなく、自社の商品粗利、変動費、顧客の継続価値、許容利益から逆算して決めます。媒体の最適化目標として使う場合も、事業上の損益分岐点と切り離さないことが必要です
- ROASを広告運用に使うときは、数値そのものより計測条件が揃っているかを先に確認します。売上定義、期間、アトリビューション、返品、顧客区分が違う状態では、広告や媒体を正しく比較できません