
成立するかどうかは、商材ではなくキャッシュと顧客の利用頻度で決まるからです。
提供できる形かどうかを先に議論すると、判断の材料が揃いません。
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目次
目次
- サブスク化の議論が、なぜ商材の話から始まると詰まるのか
- 決めるべき3つの問い
- 継続して使う理由が、顧客の側にあるかどうか
- 頻度で分ける
- 移行期のキャッシュの谷を、どう見積もるのか
- 谷の形
- 既存の売り切り顧客を、どう扱うのか
- 扱いの選択肢
- 価格は、どう決めるのか
- 継続によって増えるコスト
- サブスクにすると、組織の何が変わるのか
- 変わる役割
- サブスク化に向かない場合の代わりの選択肢
- 継続的な取引の形
- 検討を進めるときの順序
- 見る数字を決める
- よくある質問
- まとめ
成立するかどうかは、商材ではなくキャッシュと顧客の利用頻度で決まるからです。
提供できる形かどうかを先に議論すると、判断の材料が揃いません。
サブスク化の議論が、なぜ商材の話から始まると詰まるのか
成立するかどうかは、商材ではなくキャッシュと顧客の利用頻度で決まるからです。
提供できる形かどうかを先に議論すると、判断の材料が揃いません。
サブスク化の検討は、この商材を月額にできるか、という問いから始まることが多くあります。
技術的には、たいていの商材は月額にできます。
できるかどうかではなく、そうしたときに事業が成立するかが問題です。
決めるべき3つの問い
顧客が継続して使う理由があるか。
売り切りからの移行期のキャッシュを持ちこたえられるか。
継続を支える体制を作れるか。
この3つに答えが出れば判断できます。
サブスク化の判断に必要な材料
| 問い | 確かめること | 材料がない場合 |
|---|---|---|
| 継続して使う理由 | 顧客の利用の頻度と周期 | 利用実態の調査が必要 |
| 移行期のキャッシュ | 売上が落ちる期間と深さ | 資金計画の作成が必要 |
| 継続の体制 | 解約を防ぐ運用ができるか | 体制の設計が必要 |
| 既存顧客の扱い | 売り切りの顧客をどうするか | 方針の決定が必要 |
| 価格の設計 | 月額と売り切りの関係 | 原価と利用頻度の把握が必要 |
商材の話を後回しにする理由
商材の形は、上の3つが決まれば自動的に決まります。
先に商材の形を決めると、成立しない設計になります。
サブスク化しない判断もある
売り切りのままが適している事業もあります。検討の結果として、しないと決めることは失敗ではありません。むしろ、条件を満たさないまま移行するほうが損失が大きくなります。
継続して使う理由が、顧客の側にあるかどうか
利用の頻度が低い商材は、サブスクにすると解約されます。
使っていないのに払い続けることに、顧客は耐えられません。
サブスクの継続は、顧客が価値を感じ続けるかどうかで決まります。
使う頻度が低い商材では、毎月の請求が疑問の対象になります。
頻度で分ける
利用頻度とサブスクの適合
| 利用の頻度 | サブスクの適合 | 補う方法 |
|---|---|---|
| 毎日から週次 | 適する | そのまま設計できる |
| 月次 | 条件付きで適する | 月次の価値を明示する |
| 四半期に1回 | 適さない | 利用単位での課金が向く |
| 年に1回程度 | 適さない | 保守や保証の形にする |
| 不定期だが緊急時に必要 | 適する | 備えとしての価値を設計する |
使わない月をどう扱うか
利用頻度が不規則な商材では、使わない月が続くと解約されます。
使っていない顧客を把握し、利用を促す運用が要ります。
この運用ができない体制では、サブスクは維持できません。
備えとしての価値がある場合
普段は使わないが、必要になったときに確実に使えることに価値がある商材があります。
保守や監視や緊急対応がこれに当たります。
この場合は、頻度が低くてもサブスクが成立します。
現在の利用実態を調べる
売り切りで提供している場合、顧客がどれだけ使っているかを把握していないことがあります。サブスク化の検討の前に、利用の実態を調べます。推測で設計すると、解約率の見積もりが外れます。
移行期のキャッシュの谷を、どう見積もるのか
売り切りの一括収入が月額に分かれるため、移行の期間は売上が大きく落ちます。
落ちる深さと期間を計算し、持ちこたえられるかを先に確かめます。
サブスク化で最も多い失敗が、移行期の資金不足です。
事業としては正しい方向でも、途中で資金が尽きます。
谷の形
売り切りで100万円入っていた取引が、月額10万円になると、初月の収入は10分の1になります。
回収に10か月かかります。
その間、コストは先に出ます。
移行期に起きる収入の変化
| 時期 | 売り切りの収入 | サブスクの収入 | 差 |
|---|---|---|---|
| 移行開始直後 | ゼロになる | 少額から始まる | 大きく落ちる |
| 数か月後 | ゼロ | 積み上がる | まだ落ちている |
| 回収期間の到達時 | ゼロ | 売り切りと同水準 | 差が消える |
| その後 | ゼロ | 継続して積み上がる | 上回る |
| 解約が出た場合 | ーー | 積み上がりが鈍る | 回収が遅れる |
谷の深さを計算する
現在の月次の売上と、移行後の月次の売上の見込みを並べます。
差の累計が、必要な運転資金です。
解約率の見込みを入れると、回収の時期が後ろにずれます。
段階的に移行する方法
全商材を一度にサブスクに変えず、一部から始める方法があります。
谷が浅くなり、運用の確認もできます。
ただし、2つの形を同時に運用する負担が発生します。
資金計画を先に作る
谷の深さと期間が分かれば、資金計画が作れます。この計画がないまま移行を始めると、途中で売り切りに戻すことになります。一度戻すと、顧客の信頼を失います。
既存の売り切り顧客を、どう扱うのか
強制的に移行させないことと、移行の動機を用意することの両立が必要です。
既存顧客の扱いを間違えると、移行前に離反が起きます。
すでに売り切りで購入している顧客は、サブスクへの移行に抵抗します。
買い切ったものに、なぜ月額を払うのかという反応になります。
扱いの選択肢
既存の売り切り顧客への対応
| 対応 | 中身 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| そのまま維持する | 既存の条件を続ける | 顧客数が少なく負担が小さい |
| 期限を決めて移行してもらう | 一定期間後に移行 | 保守や更新が必要な商材 |
| 移行の動機を用意する | 移行時の条件を優遇する | 移行を早めたい場合 |
| 新規のみサブスクにする | 既存は売り切りのまま | 谷を浅くしたい場合 |
| 選択させる | どちらかを選べる形 | 顧客の状況が多様な場合 |
新規から始める方法の利点
既存を触らず、新規の契約からサブスクにする方法があります。
谷は浅くなり、既存顧客の離反も起きません。
そのかわり、全体がサブスクに切り替わるまでに時間がかかります。
移行の説明の内容
移行の説明では、顧客にとっての利点を示します。
初期費用が下がる、常に最新の状態が使える、サポートが継続する。
自社の都合だけを理由にすると、反発が起きます。
維持する顧客のコストを計算する
売り切りの顧客を維持し続けると、2つの提供形態を並行して運用することになります。このコストが、移行の遅れによる損失を上回ることがあります。維持の期限を決めておきます。
価格は、どう決めるのか
売り切りの価格を利用期間で割るのではなく、継続することで増える提供コストから積み上げます。
単純な割り算では、利益が出ません。
サブスクの価格設計で多い誤りが、売り切りの価格を分割することです。
売り切りでは発生しなかったコストが、継続によって発生します。
継続によって増えるコスト
顧客ごとのサポート、継続的な更新、利用状況の管理、請求の処理。
これらは売り切りでは1回で終わるものが、毎月発生します。
価格に織り込むものを、項目ごとに見ていきます。
提供の原価については、売り切りの場合は初回のみ、サブスクの場合は継続して発生。
サポートについては、売り切りの場合は保証期間のみ、サブスクの場合は契約期間中ずっと。
更新と改善については、売り切りの場合は別途課金、サブスクの場合は価格に含まれる。
請求と管理については、売り切りの場合は1回、サブスクの場合は毎月。
解約への対応については、売り切りの場合はなし、サブスクの場合は必要。
獲得費用の回収については、売り切りの場合は1回で回収、サブスクの場合は期間をかけて回収。
回収期間を決める
獲得にかけた費用を何か月で回収するかを決めます。
この期間より平均の継続期間が短いと、獲得するほど損失が出ます。
回収期間の目安を先に置き、獲得費用の上限を決めます。
価格の段階を作るかどうか
複数の価格帯を作ると、選びやすくなる一方で、運用が複雑になります。
立ち上げ期は1つか2つに絞り、利用の実態が見えてから増やします。
値上げの余地を残す
サブスクは、後から価格を上げるのが難しい形態です。最初の価格を低く設定しすぎると、採算が合わないまま固定されます。見直しの条件を契約に入れておきます。
サブスクにすると、組織の何が変わるのか
売った後の体制が、売上に直接影響するようになります。
獲得の部門だけでは、事業が維持できません。
売り切りでは、納品が終われば取引が完了します。
サブスクでは、継続してもらうことが売上の維持になります。
変わる役割
サブスク化で変わる部門の役割を、項目ごとに見ていきます。
営業については、売り切りでの役割は受注まで、サブスクでの役割は受注と、継続の初期の関与。
納品については、売り切りでの役割は提供して完了、サブスクでの役割は提供と、定着の確認。
サポートについては、売り切りでの役割は問い合わせ対応、サブスクでの役割は利用状況の把握と働きかけ。
マーケティングについては、売り切りでの役割は新規獲得、サブスクでの役割は新規獲得と、既存への情報提供。
経理については、売り切りでの役割は請求と入金、サブスクでの役割は継続課金の管理と解約の処理。
利用状況を把握する仕組み
継続を維持するには、誰が使っていないかが分かる必要があります。
把握の仕組みがないと、解約の連絡が来てから気づきます。
移行の前に、この仕組みを用意します。
評価の指標を変える
受注件数や受注額だけで評価していると、解約が放置されます。
継続率や、累計の契約額といった指標を評価に加えます。
体制の準備ができていない場合
継続を支える体制を作るには、人と時間がかかります。体制ができる前に移行すると、解約が積み上がります。体制の準備を移行の条件に含めます。
サブスク化に向かない場合の代わりの選択肢
継続課金の形は、月額のサブスクだけではありません。
保守契約、使った分だけの課金、年間の契約といった形があります。
サブスクが成立しない事業でも、単発の取引から抜ける方法はあります。
目的が収入の安定であれば、他の形でも達成できます。
継続的な取引の形
単発の取引から抜ける形の比較を、項目ごとに見ていきます。
月額のサブスクについては、向いている条件は利用頻度が高い、利点は収入が安定する、難しいところは移行期の谷が深い。
保守と保証の契約については、向いている条件は故障や更新が発生する、利点は頻度が低くても成立、難しいところは価値が見えにくい。
使った分だけの課金については、向いている条件は利用量が変動する、利点は顧客の納得を得やすい、難しいところは収入が読みにくい。
年間の一括契約については、向いている条件は年度単位で予算が動く、利点は谷が浅い、難しいところは毎年の更新交渉が要る。
消耗品や補充の継続については、向いている条件は継続的に消費する、利点は自然に繰り返す、難しいところは単価が小さい。
年間契約という中間の形
月額に分割せず、年間で一括して契約する形があります。
キャッシュの谷が浅く、継続の関係も作れます。
毎年の更新交渉という負担は残ります。
目的から逆算する
収入の安定が目的なのか、顧客との関係の継続が目的なのか、単価を上げることが目的なのか。
目的によって、適した形が変わります。
サブスクという手段を先に決めると、目的に合わない設計になります。
組み合わせる形もある
基本の部分を年間契約にし、追加の利用を従量課金にする形があります。収入の安定と、利用に応じた課金の両立ができます。
検討を進めるときの順序
利用実態の調査、キャッシュの谷の計算、体制の設計の順に進めます。
価格と商材の形は、この3つが出た後に決まります。
サブスク化の検討は、調べる作業が大半を占めます。
調べずに設計すると、移行の途中で前提が崩れます。
検討から移行までの進め方を、項目ごとに見ていきます。
1については、やることは既存顧客の利用の頻度と周期を調べる、期間の目安は1か月、担当は営業とサポート。
2については、やることは移行後の収入の推移を月次で見積もる、期間の目安は2週間、担当は経理と事業責任者。
3については、やることはキャッシュの谷の深さと必要な資金を出す、期間の目安は2週間、担当は経理。
4については、やることは継続を支える体制の設計と必要な人員を出す、期間の目安は1か月、担当は事業責任者。
5については、やることは既存顧客の扱いの方針を決める、期間の目安は2週間、担当は決裁者。
6については、やることは価格を提供コストから積み上げて決める、期間の目安は2週間、担当は事業責任者と経理。
7については、やることは新規の一部から試験的に開始する、期間の目安は3か月、担当は営業とマーケ。
見る数字を決める
数字は説明のための仮の値です。
たとえば売り切りの平均単価が120万円、月額を12万円に設定すると、回収に10か月かかります。
年間の取引が50件なら、移行の初年度は売上が大きく落ちます。
この落ち込みの累計が、必要な運転資金になります。
移行の途中で確認する項目を、項目ごとに見ていきます。
新規契約の月額の合計については、見る頻度は月次、判断の目安は積み上がっているか。
解約率については、見る頻度は月次、判断の目安は回収期間より継続が長いか。
平均の継続期間については、見る頻度は四半期、判断の目安は獲得費用を回収できているか。
利用のない顧客の割合については、見る頻度は月次、判断の目安は解約の予兆。
キャッシュの残高の推移については、見る頻度は月次、判断の目安は計画通りに推移しているか。
売り切りと月額の売上構成については、見る頻度は四半期、判断の目安は移行の進捗。
1契約あたりの提供コストについては、見る頻度は四半期、判断の目安は価格が成立しているか。
試験的な開始から始める
全面的な移行の前に、新規の一部で試します。
解約率、提供コスト、運用の負担が想定通りかを確かめます。
ここで想定と大きく違えば、設計を直します。
後戻りの条件を決めておく
試験の段階で、どうなったら移行を見送るかを決めます。
移行を始めてから戻すのは困難なので、試験の段階で判断します。
サブスク化の条件が自社に当てはまるか判断がつかない場合は、無料相談で現状の取引構造を整理するところから始められます。提供の形ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
自社の商材はサブスクにできますか
技術的にはたいていの商材が月額にできます。判断すべきなのは、顧客が継続して使う理由があるか、移行期の資金を持ちこたえられるか、継続を支える体制を作れるかの3つです。この順で確かめてください。
利用頻度が低い商材はサブスクに向きませんか
毎日や週次で使うものは適し、四半期や年に1回の利用は適しません。ただし、普段は使わないが必要なときに確実に使えることに価値がある商材は、備えとしての価値で成立します。
移行期に売上が落ちるのが不安です
売り切りの一括収入が月額に分かれるため、必ず落ちます。現在の月次売上と移行後の見込みを並べ、差の累計を出してください。それが必要な運転資金です。解約率の見込みを入れると回収時期が後ろにずれます。
既存の売り切り顧客は、どう扱えばいいですか
強制的な移行は離反を招きます。既存はそのまま維持し新規からサブスクにする方法が、谷も浅く離反も起きません。維持を続けると2つの形態を並行運用する負担が残るため、期限は決めてください。
価格は売り切りの金額を利用期間で割ればいいですか
単純な割り算では利益が出ません。サポート、更新、請求処理といった継続によって毎月発生するコストを積み上げてください。あわせて獲得費用の回収期間を決め、平均の継続期間がそれより長いかを確かめてください。
まとめ
- 成立するかどうかは、商材ではなくキャッシュと顧客の利用頻度で決まるからです。提供できる形かどうかを先に議論すると、判断の材料が揃いません
- 利用の頻度が低い商材は、サブスクにすると解約されます。使っていないのに払い続けることに、顧客は耐えられません
- 売り切りの一括収入が月額に分かれるため、移行の期間は売上が大きく落ちます。落ちる深さと期間を計算し、持ちこたえられるかを先に確かめます
- 強制的に移行させないことと、移行の動機を用意することの両立が必要です。既存顧客の扱いを間違えると、移行前に離反が起きます
- 売り切りの価格を利用期間で割るのではなく、継続することで増える提供コストから積み上げます。単純な割り算では、利益が出ません
- 売った後の体制が、売上に直接影響するようになります。獲得の部門だけでは、事業が維持できません
- 継続課金の形は、月額のサブスクだけではありません。保守契約、使った分だけの課金、年間の契約といった形があります
- 利用実態の調査、キャッシュの谷の計算、体制の設計の順に進めます。価格と商材の形は、この3つが出た後に決まります