
検討を進めている担当者に、社内を通す材料がないからです。
提案書は自社が説明するための資料であって、相手が社内で回すための資料ではありません。
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目次
目次
- 提案が良くても、相手の社内で止まるのはなぜか
- 相手の担当者は、社内では提案する側に回る
- 相手の承認の道筋を、どこまで把握するのか
- 聞いて構わない範囲
- 社内で回せる資料には、何が入っているのか
- 自社の良さは、あまり必要とされない
- 資料を渡すだけで足りるのか
- 同席できる場合と、できない場合
- 検討期間の長い商材では、何が追加で要るのか
- 交代で案件が消える
- どこまで支援するかは、誰が決めるのか
- 個人の工夫のままだと、再現しない
- 支援のやり方で、避けるべきこと
- 迂回は、短期的に効いても後で崩れる
- 稟議の支援を、どう立ち上げるか
- 聞き取りは、営業の評価と切り離す
- よくある質問
- まとめ
検討を進めている担当者に、社内を通す材料がないからです。
提案書は自社が説明するための資料であって、相手が社内で回すための資料ではありません。
提案が良くても、相手の社内で止まるのはなぜか
検討を進めている担当者に、社内を通す材料がないからです。
提案書は自社が説明するための資料であって、相手が社内で回すための資料ではありません。
商談が進み、担当者の反応も良い。
それでも数か月動かない案件があります。
止まっている場所は、自社と相手の間ではありません。
相手の社内です。
相手の担当者は、社内では提案する側に回る
自社にとっての顧客は、社内では申請者です。
上長、経理、法務、情報システム。
それぞれの関門を、自分の言葉で通さなければなりません。
このとき手元にあるのが、自社向けに作られた提案書だけだと、担当者は資料を作り直す作業を負います。
その作業の分だけ、案件は遅れます。
案件が止まる場所と、止まる理由
| 止まる場所 | 止めている人 | 止まる理由 |
|---|---|---|
| 上長の承認 | 直属の上長 | 投資の必要性が伝わらない |
| 予算の確保 | 経理や企画 | 期の枠に入っていない |
| 契約の確認 | 法務 | 条件の読み合わせに時間がかかる |
| システムの確認 | 情報システム | 既存環境との整合が不明 |
| 最終決裁 | 役員 | 他の投資案件との優先順位 |
通らない理由は、商品の良し悪しではない
比較の結果で負けたのではなく、社内の優先順位で後回しになっている場合があります。
この状態は、失注としても記録されません。
検討中のまま、静かに消えます。
支援できる余地は、想像より大きい
相手の社内事情には介入できません。ただし、通すための材料を用意することはできます。ここは自社が完全に制御できる領域です。
相手の承認の道筋を、どこまで把握するのか
承認の段数と、各段で見られる観点を把握します。
金額の閾値で決裁者が変わるため、提示額によって道筋が変わることも確認します。
支援の前に、相手の社内で何段の承認があるかを知る必要があります。
聞いて構わない範囲
承認の段数、金額の閾値、稟議に要する期間。
これらは相手にとって秘密の情報ではありません。
商談の中で自然に聞けます。
聞きにくいのは、誰が反対しそうかという情報です。
これは関係ができてからになります。
金額で道筋が変わる
多くの組織では、金額の段階で決裁者が変わります。
閾値の直下に収めるか、上の枠を取りにいくかで、必要な材料が変わります。
提示の仕方を決める前に、この閾値を確認します。
承認の段ごとに見られる観点
| 承認する人 | 主に見る観点 | 必要になる材料 |
|---|---|---|
| 直属の上長 | 部門の目標への貢献 | 数字での見込み |
| 経理や企画 | 予算の枠と支払い条件 | 費用の内訳と時期 |
| 法務 | 契約条件とリスク | 契約書の雛形 |
| 情報システム | 既存環境との整合とデータの扱い | 運用と情報の取り扱い方針 |
| 役員 | 他の投資案件との比較 | 事業への効き方の説明 |
期の区切りを確認する
予算の枠は期で切られます。期末に近い提案は、翌期の枠に回されることがあります。相手の期の区切りを知らないまま進めると、時期の選択を誤ります。
社内で回せる資料には、何が入っているのか
費用の内訳、比較した他社、やらなかった場合の見込みの3点です。
自社の良さの説明より、この3点が欠けていることのほうが多くあります。
相手が社内で回す資料と、自社が商談で使う資料は、目的が違います。
自社の良さは、あまり必要とされない
社内の承認者は、その分野に詳しくありません。
機能の優位性を並べても、判断の材料になりません。
判断に使われるのは、いくらかかり、何と比べ、やらないとどうなるかです。
比較した他社の情報を、自社が出す
自社の資料に他社との比較を載せるのは、抵抗があるかもしれません。
しかし承認者は必ず他は見たのかと聞きます。
担当者が自分で作ると、時間がかかるうえに精度が落ちます。
比較の軸は、自社が有利な軸だけにしません。
不利な軸も入れたほうが、資料としての信用が上がります。
社内向け資料に入れる項目
| 項目 | 書く内容 | なぜ必要か |
|---|---|---|
| 費用の内訳 | 初期と継続、期ごとの支払い | 予算の枠に当てるため |
| 比較した候補 | 複数社と比較の軸 | 検討の妥当性を示すため |
| 導入しない場合 | 現状のまま続けたときの見込み | 投資の必要性を示すため |
| 社内で必要な作業 | 相手側の工数と担当 | 実行可能性を示すため |
| 効果が出る時期 | いつから何が変わるか | 評価の時期を合わせるため |
数字は、相手の事業の言葉に置き換える
自社の指標で書いても、承認者には伝わりません。相手の売上、件数、人件費のどれに効くのかに翻訳します。翻訳できない場合は、その投資の説明が弱いという合図です。
資料を渡すだけで足りるのか
足りません。
担当者が説明する場に同席するか、想定質問への答えをあらかじめ渡す必要があります。
資料を渡しても、説明するのは担当者です。
その場で出る質問に答えられなければ、差し戻されます。
同席できる場合と、できない場合
社外の人間を社内会議に入れる会社と、入れない会社があります。
入れない場合は、想定質問と答えを文書で渡します。
入れる場合でも、担当者の顔を立てる立ち回りが要ります。
差し戻しの理由を聞き直す
一度差し戻された案件は、理由を聞かないと同じ形で再提出されます。
どの承認者が、何を理由に止めたのか。
ここを聞いて、材料を足します。
差し戻しの理由と、足す材料
| 差し戻しの理由 | 止めた人 | 足す材料 |
|---|---|---|
| 効果が読めない | 上長や役員 | 同種の事例と測り方 |
| 費用が高い | 経理 | 段階的な導入の案 |
| 今期の枠がない | 経理や企画 | 翌期の枠取りの段取り |
| リスクが不明 | 法務 | 契約条件と解約の条件 |
| 運用できるか不安 | 現場の責任者 | 相手側の作業量の見積もり |
通らなかった場合の次の一手を、先に決めておく
一度で通らないことは珍しくありません。次はいつ、どの形で出し直すのかを担当者と決めておきます。決めておかないと、担当者の関心が薄れて案件が消えます。
検討期間の長い商材では、何が追加で要るのか
担当者が交代しても引き継がれる形で、材料を残す必要があります。
口頭で伝えた内容は、担当者が変わった時点で失われます。
検討が半年を超えると、相手の担当者が変わる可能性が出てきます。
交代で案件が消える
新しい担当者は、前任が何を検討していたかを完全には引き継ぎません。
引き継ぎ資料に残っている範囲しか伝わりません。
だから、渡す材料は文書の形にしておきます。
複数の人に接点を持つ
窓口が一人だけの案件は、その一人の異動で止まります。
上長や、関連部署の担当者にも接点を作っておきます。
検討が長期化する案件で残しておくものを、項目ごとに見ていきます。
費用と条件の一覧については、形式は文書、誰に渡すかは窓口と上長。
比較の軸と候補については、形式は文書、誰に渡すかは窓口。
過去のやり取りの要点については、形式は文書、誰に渡すかは窓口。
社内での検討の経緯については、形式は担当者が作る、誰に渡すかは担当者自身。
次の確認時期については、形式は双方の記録、誰に渡すかは両方。
追いかける頻度を決めておく
止まっている案件に毎週連絡すると、関係が悪くなります。連絡しないと忘れられます。次に話す時期を、その場で相手と決めるのが確実です。
どこまで支援するかは、誰が決めるのか
営業だけで決めると、案件ごとにばらつきます。
標準の支援内容をマーケティング側で作り、案件ごとの追加は営業が判断する形にします。
社内稟議の支援は、営業個人の工夫で行われていることが多くあります。
個人の工夫のままだと、再現しない
成績の良い営業が、独自に資料を作って通しているとします。
その工夫は、本人が異動すれば失われます。
組織として持つには、標準の形にする必要があります。
標準と例外を分ける
すべての案件に手厚い支援をすると、費用が合いません。
金額の規模や、相手の組織の複雑さで線を引きます。
支援の水準の分け方を、項目ごとに見ていきます。
小規模については、標準の支援は費用一覧と比較表、追加でやることはなし。
中規模については、標準の支援は標準に加えて想定質問集、追加でやることは上長向けの説明の場。
大規模については、標準の支援は中規模に加えて運用の設計案、追加でやることは複数部署への個別説明。
長期案件については、標準の支援は中規模に加えて引き継ぎ用の文書、追加でやることは定期的な状況確認。
費用として見積もる
支援の工数は、営業活動の費用です。
案件単価に対して割に合っているかを、年に一度は点検します。
代理店に任せている場合
広告の運用を代理店に委託していても、稟議の支援材料は自社で作ります。相手の事業の言葉に翻訳する作業は、自社しかできません。
支援のやり方で、避けるべきこと
相手の社内政治に踏み込むことです。
誰が反対しているかを探り、その人を迂回する動きは、発覚したときに案件ごと失います。
支援と介入の境目を、あらかじめ決めておきます。
迂回は、短期的に効いても後で崩れる
窓口担当者を飛ばして上長に直接当たる。
反対している部署を通さずに話を進める。
これらは一時的に前に進むことがありますが、飛ばされた側が後から止めにきます。
急がせる材料を作らない
期限を切って決断を迫る手法は、相手の社内の事情と噛み合いません。
値引きの期限を理由に急がせると、相手の承認者から見て不自然な稟議になります。
支援でやってよいことと、やらないことを、項目ごとに見ていきます。
比較資料の提供については、扱いはやってよい、理由は承認者が必ず求める。
想定質問への回答の用意については、扱いはやってよい、理由は担当者の負担が減る。
上長への同席については、扱いは条件付き、理由は担当者の同意が前提。
反対者の特定と迂回については、扱いはやらない、理由は発覚時に案件ごと失う。
期限を理由にした催促については、扱いはやらない、理由は稟議として不自然になる。
情報の取り扱いに注意する
相手の社内体制や決裁の仕組みは、相手の内部情報です。共有する範囲を社内で決め、記録の保管方法も揃えておきます。個人情報を含む場合は、掲載時点の最新の公式ガイドラインで確認してください。
稟議の支援を、どう立ち上げるか
止まっている案件の理由を集めるところからです。
理由が集まれば、足りない材料が特定できます。
最初から資料を作り始めません。
何が足りないのかを先に確かめます。
稟議支援を形にする段取りを、項目ごとに見ていきます。
1については、やることは過去1年の停滞案件を洗い出す、期間の目安は2週間。
2については、やることは止まった段と理由を営業から聞く、期間の目安は2週間。
3については、やることは承認の段数と金額の閾値を案件ごとに記録する、期間の目安は4週間。
4については、やることは不足している材料を3点に絞る、期間の目安は1週間。
5については、やることは標準の資料の雛形を作る、期間の目安は3週間。
6については、やることは案件で使い、差し戻しの理由を記録する、期間の目安は継続。
聞き取りは、営業の評価と切り離す
止まった理由を聞くと、営業は自分の責任を問われていると受け取ります。
案件の状態を知るための聞き取りであると、先に伝えます。
見る数字を決める
数字は説明のための仮の値です。
商談から受注までの日数が平均120日で、うち60日が相手の社内調整だったとすれば、短縮の余地はそこにあります。
稟議支援の効き方を見る数字を、項目ごとに見ていきます。
商談から受注までの日数については、見る頻度は毎月、使いどころは支援の効果。
停滞のまま消えた案件の件数については、見る頻度は四半期、使いどころは取りこぼしの量。
差し戻しの理由の内訳については、見る頻度は四半期、使いどころは不足材料の特定。
標準資料を使った案件の割合については、見る頻度は毎月、使いどころは運用の定着。
案件あたりの支援工数については、見る頻度は半期、使いどころは費用対効果。
雛形は使われなければ意味がない
作った資料が営業に使われないなら、形式が合っていません。
使いにくい理由を聞き、作り直します。
成功した稟議の内容を集める
通った案件で、どの資料が効いたのかを記録します。
この記録が、次の雛形の材料になります。
顧客の社内で案件が止まる理由が分からない場合は、無料相談で現状の商談記録を一緒に見てもらうところから始められます。提案から受注までの流れごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
相手の社内の承認プロセスは、どこまで聞いてよいですか
承認の段数、金額の閾値、稟議に要する期間までは商談の中で自然に聞けます。誰が反対しそうかという情報は、関係ができてからになります。金額の閾値で決裁者が変わるため、提示の仕方を決める前に確認しておきます。
社内向けの資料には何を入れればよいですか
費用の内訳、比較した他社、導入しなかった場合の見込みの3点です。自社の機能の優位性を並べても、その分野に詳しくない承認者の判断材料にはなりません。
他社との比較を自社の資料に載せてよいのでしょうか
承認者は必ず他の候補を見たかを確認します。担当者が自分で作ると時間がかかり精度も落ちます。不利な軸も入れたほうが、資料としての信用が上がります。
案件が差し戻されたときは、どうすればよいですか
どの承認者が何を理由に止めたのかを聞き直します。理由を聞かずに再提出すると、同じ形で再び止まります。次に出し直す時期も、その場で担当者と決めておきます。
支援の範囲は誰が決めますか
標準の支援内容はマーケティング側で作り、案件ごとの追加は営業が判断する形が扱いやすくなります。営業個人の工夫のままにすると、その人の異動で失われます。
まとめ
- 検討を進めている担当者に、社内を通す材料がないからです。提案書は自社が説明するための資料であって、相手が社内で回すための資料ではありません
- 承認の段数と、各段で見られる観点を把握します。金額の閾値で決裁者が変わるため、提示額によって道筋が変わることも確認します
- 費用の内訳、比較した他社、やらなかった場合の見込みの3点です。自社の良さの説明より、この3点が欠けていることのほうが多くあります
- 足りません。担当者が説明する場に同席するか、想定質問への答えをあらかじめ渡す必要があります
- 担当者が交代しても引き継がれる形で、材料を残す必要があります。口頭で伝えた内容は、担当者が変わった時点で失われます
- 営業だけで決めると、案件ごとにばらつきます。標準の支援内容をマーケティング側で作り、案件ごとの追加は営業が判断する形にします
- 相手の社内政治に踏み込むことです。誰が反対しているかを探り、その人を迂回する動きは、発覚したときに案件ごと失います
- 止まっている案件の理由を集めるところからです。理由が集まれば、足りない材料が特定できます