
受注した案件は、振り返りの対象になりにくいからです。
負けた案件は原因を探されますが、勝った案件は成功として処理され、理由は確認されません。
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目次
目次
- 勝った理由を聞けていないのは、なぜか
- 勝因は、聞かなくても分かっていると思われている
- 語られる理由と、実際の決め手はずれる
- 後から筋の通った物語になる
- いつ聞くかで、精度が変わる
- 時間が経つほど記憶が変わる
- 決め手を引き出す聞き方
- 時系列でたどる
- 選ばれなかった相手のことを聞く
- 受注顧客は競合の情報源になる
- 聞いた内容を、再現できる形にする
- 行動に分解する
- 事例取材との違いを整理する
- 公開前提だと話す内容が変わる
- 受注理由を聞き始めるまで
- 質問は7項目以内に絞る
- よくある質問
- まとめ
受注した案件は、振り返りの対象になりにくいからです。
負けた案件は原因を探されますが、勝った案件は成功として処理され、理由は確認されません。
勝った理由を聞けていないのは、なぜか
受注した案件は、振り返りの対象になりにくいからです。
負けた案件は原因を探されますが、勝った案件は成功として処理され、理由は確認されません。
失注のレビューを行っている企業は多くあります。
一方で、受注した案件についてなぜ選ばれたかを本人に確認している企業は少数です。
勝因は、聞かなくても分かっていると思われている
営業は、自分の提案が良かったから受注したと考えます。
その認識が正しいかを確かめる機会がありません。
実際には、顧客が重視していた点が別のところにある場合があります。
再現の材料にする発想がない
受注は結果として集計され、金額と件数で管理されます。
なぜ勝てたかを言語化しないと、次の案件で同じことができません。
営業個人の感覚として残るだけになります。
聞く場面がない
受注後はすぐに納品や導入の準備が始まります。
その流れの中で、検討の経緯を聞く時間は取られません。
仕組みとして組み込まない限り、実施されません。
受注理由が集まらない理由
| 背景 | 起きていること | 対処 |
|---|---|---|
| 成功として処理される | 振り返りの対象にならない | 受注後の確認を工程に組み込む |
| 営業が理由を知っていると考える | 認識が検証されない | 顧客本人の言葉と突き合わせる |
| 聞く場面がない | 納品の準備に流れる | キックオフの場に組み込む |
| 用途が決まっていない | 聞いても使われない | 使う部署と反映先を先に決める |
| 記録の置き場がない | 個人の記憶に残る | 商談記録に紐づけて残す |
語られる理由と、実際の決め手はずれる
顧客は、後から説明しやすい理由を選びます。
対応が丁寧だった、信頼できた。
こうした言葉の裏に、具体的な分かれ目があります。
なぜ選んだかと聞くと、多くの場合、抽象的な答えが返ってきます。
その答えをそのまま記録しても、次の案件では使えません。
後から筋の通った物語になる
人は、決定の後にその決定を正当化する理由を組み立てます。
実際には迷った末の判断でも、振り返ると必然だったように語られます。
これは意図的な嘘ではなく、記憶の性質です。
抽象的な言葉の裏を見る
対応が早かった、という言葉には具体的な場面があります。
その場面を聞き出せれば、再現できる行動になります。
語られる理由と、実際の決め手のずれ
| 語られる理由 | そのまま受け取ると | 確かめるべきこと |
|---|---|---|
| 対応が丁寧だった | 接客の姿勢の問題とする | どの場面での対応を指すか |
| 信頼できた | 人柄の問題とする | 何を見て信頼したか |
| 提案内容が良かった | 資料の質の問題とする | どの部分が判断を変えたか |
| 価格が合っていた | 価格競争力の問題とする | 他社との差はどの程度だったか |
| 実績があった | 規模の問題とする | どの事例が参考になったか |
| タイミングが合った | 運の問題とする | 何が決断の引き金になったか |
場面を聞くと、再現できる行動になる
対応が早かったという答えに対し、どの場面での対応を指すかを聞きます。
初回の問い合わせへの返信か、見積もりの提示か、質問への回答か。
場面が特定できれば、そこを標準の運用にできます。
運やタイミングも掘り下げる
タイミングが合ったという答えの裏には、社内での何らかの出来事があります。その出来事が分かれば、同じ状況の企業を探せます。
いつ聞くかで、精度が変わる
受注が決まってから1か月以内が適しています。
導入が進むと、検討時の記憶が導入後の体験に上書きされます。
聞く時期によって、得られる内容の性質が変わります。
時間が経つほど記憶が変わる
導入後の満足や不満が、検討時の記憶に混ざります。
うまくいっていれば選んだ理由が美化され、うまくいっていなければ後悔が混ざります。
検討時の判断を知りたいなら、早い時期に聞きます。
聞く時期による違い
| 時期 | 得られること | 注意 |
|---|---|---|
| 受注の直後 | 検討時の記憶が鮮明 | 導入の準備で時間が取りにくい |
| 受注から1か月以内 | 検討の経緯を順に追える | 最も適した時期 |
| 導入から3か月 | 使ってみての評価が混ざる | 検討時の判断とは分けて聞く |
| 導入から半年以降 | 成果に基づく評価 | 事例取材に向く |
| 契約更新の時期 | 継続の理由 | 選んだ理由とは別の情報 |
キックオフの場に組み込む
受注後のキックオフでは、担当者が集まります。
その場の冒頭で、検討の経緯を確認する時間を15分ほど取ります。
別途の依頼が不要になり、実施率が上がります。
担当営業以外も同席する
営業が単独で聞くと、自分に都合の良い部分が記録されます。マーケティングの担当者が同席すると、別の観点の質問が出ます。
決め手を引き出す聞き方
理由を聞かず、経緯を聞きます。
最初に探し始めた時期から順に追うと、判断が変わった箇所が具体的に出てきます。
聞き方の設計次第で、同じ相手から得られる情報が変わります。
時系列でたどる
いつ探し始めたか、最初に何を見たか、いつ候補が絞られたか。
順に追うと、記憶が呼び出されます。
決め手を引き出す質問
| 聞くこと | 引き出せること |
|---|---|
| 探し始めたきっかけと時期 | 検討が始まる状況 |
| 候補が何社になった時点があるか | 絞り込みの段階 |
| どの時点で自社が有力になったか | 判断が動いた場面 |
| 最後まで迷った点 | 分かれ目の論点 |
| 社内で誰が何を言ったか | 関与者と、通った論理 |
| 決断の引き金になった出来事 | 背中を押した要素 |
いつ有力になったかを聞く
検討の途中で、候補としての順位が変わる瞬間があります。
その時点で何があったかを聞くと、決め手が特定できます。
提案の内容か、対応の速さか、資料の一部か。
社内でどう説明されたかを聞く
担当者が社内で自社を推した際の説明を聞きます。
その言葉が、決裁の場で通用した表現です。
広告や資料にそのまま使えます。
迷った点を必ず聞く
迷いがなかった案件はほとんどありません。迷った点は、他社が強い領域か、自社の説明が足りなかった領域です。どちらも改善の材料になります。
選ばれなかった相手のことを聞く
比較した他社と、その評価を聞きます。
受注した顧客のほうが、競合について率直に話します。
競合の情報は、失注した相手からは取りにくいものです。
一方で、自社を選んだ顧客は、他社の話を気兼ねなくします。
受注顧客は競合の情報源になる
自社を選んだ理由を説明する過程で、他社をどう評価したかが語られます。
ここは、失注ヒアリングでは得にくい情報です。
競合について聞くことを、項目ごとに見ていきます。
検討の対象にした会社については、分かることは比較される相手の範囲。
最後まで残った会社については、分かることは実質的な競合。
他社の提案で良かった点については、分かることは自社に足りない部分。
他社を外した理由については、分かることは顧客が避ける条件。
自社と他社の差が一番大きかった点については、分かることは自社の強みの実態。
他社の価格の印象については、分かることは価格の位置づけ。
他社の良かった点を必ず聞く
自社を選んだ顧客でも、他社に良い点があったと感じています。
そこを聞かないと、自社に都合の良い情報だけが集まります。
外した理由が、自社の条件を教える
他社を外した理由には、顧客が避けたい条件が現れます。
自社が同じ条件を持っていないかを確認する材料になります。
競合の情報は定期的に更新する
比較される相手は変わります。四半期ごとに受注顧客から聞くと、競合の入れ替わりが見えます。
聞いた内容を、再現できる形にする
感想としてではなく、行動として記録します。
どの場面で何をしたことが評価されたかまで分解すると、標準の運用に落とせます。
受注理由の聞き取りは、記録の形で価値が決まります。
行動に分解する
対応が早かったという評価を、初回の問い合わせに何時間で返信したかという行動に分解します。
行動に落ちれば、全案件で再現できます。
受注理由の反映先を、項目ごとに見ていきます。
判断が動いた場面については、反映先は営業の進め方、反映の仕方はその場面での対応を標準化する。
社内で説明に使われた言葉については、反映先は広告と資料、反映の仕方はそのままの表現で使う。
参考になった事例については、反映先は事例コンテンツ、反映の仕方は近い条件の事例を増やす。
最後まで迷った点については、反映先は比較コンテンツ、反映の仕方はその論点を正面から扱う。
決断の引き金については、反映先はターゲティング、反映の仕方は同じ状況の企業を探す。
他社の良かった点については、反映先は商品と提案、反映の仕方は不足を埋めるか、扱わないかを決める。
顧客の言葉をそのまま使う
社内で説明に使われた言葉は、決裁の場で通用した表現です。
自社の用語に書き換えると、効果が落ちます。
複数件で共通するものを標準にする
1件の発言で運用を変えると、例外に合わせた対応になります。
四半期でまとめ、複数件に共通して出た内容を標準化します。
営業に返す
聞いた内容は、営業にとって最も直接的に使えます。どの場面の対応が評価されたかを共有すると、次の案件で再現されます。
事例取材との違いを整理する
事例取材は公開が目的で、受注理由の聞き取りは社内の判断が目的です。
一緒にすると、どちらも中途半端になります。
既に事例取材を行っている企業では、そこで受注理由も聞けると考えがちです。
ただし、両者は目的も聞く内容も違います。
公開前提だと話す内容が変わる
公開されると分かっている場で、他社との比較の詳細は語られません。
前向きな内容に寄ります。
事例取材と受注理由の聞き取りの違いを、項目ごとに見ていきます。
目的については、事例取材は外部への公開、受注理由の聞き取りは社内での判断と再現。
時期については、事例取材は導入から半年以降、受注理由の聞き取りは受注から1か月以内。
聞く内容については、事例取材は導入後の成果と体験、受注理由の聞き取りは検討時の判断の経緯。
競合の話については、事例取材はほとんど出ない、受注理由の聞き取りは中心の論点になる。
公開については、事例取材は前提、受注理由の聞き取りはしない。
承諾の得やすさについては、事例取材は調整が必要、受注理由の聞き取りは比較的容易。
聞き取りの後に事例取材を依頼する
受注直後に検討の経緯を聞いておき、半年後に成果が出た時点で事例取材を依頼します。
経緯を把握しているため、取材の設計が精密になります。
社内利用であることを伝える
公開しないことを明示すると、他社との比較について率直に話されます。
どこまでを社内で使うかを先に伝えます。
外部に依頼する場合の確認事項
聞き取りを外部に委託する場合、事例取材の形式で進められていないかを確認します。競合との比較と、判断が動いた場面が含まれているかが分かれ目です。
受注理由を聞き始めるまで
受注後の工程に、確認の時間を組み込むところからです。
別途の依頼にすると実施されません。
実施率を上げる鍵は、既存の工程に埋め込むことにあります。
聞き始めるまでの準備を、項目ごとに見ていきます。
1については、やることは聞いた内容を誰が何に使うかを決める、期間の目安は1週間。
2については、やることは質問を7項目以内に絞って作る、期間の目安は1週間。
3については、やることはキックオフの工程に確認の時間を組み込む、期間の目安は2週間。
4については、やることは営業に趣旨を説明し、同席の形を決める、期間の目安は1週間。
5については、やることは3か月分を実施して記録を積む、期間の目安は12週間。
6については、やることは共通する内容を抽出し、反映先に返す、期間の目安は2週間。
質問は7項目以内に絞る
聞きたいことは多くありますが、15分から20分で終える必要があります。
絞らないと、キックオフの工程に入りません。
受注理由の蓄積を測る数字を、項目ごとに見ていきます。
受注案件に対する実施率については、見る頻度は毎月、判断の目安は低いなら工程に組み込めていない。
営業の想定と一致した割合については、見る頻度は四半期、判断の目安は低いほど聞く価値が大きい。
比較された競合の顔ぶれの変化については、見る頻度は四半期、判断の目安は入れ替わりがあれば市場が動いている。
聞いた内容が施策に反映された件数については、見る頻度は四半期、判断の目安はゼロなら用途が決まっていない。
複数件で共通して出た決め手の数については、見る頻度は四半期、判断の目安は標準化の候補になる。
営業の想定との一致を見る
営業が記録した受注理由と、顧客本人の話を並べます。
一致しない案件が多いほど、この取り組みの価値が大きいことになります。
実施率を指標にする
件数ではなく、受注案件のうち何%で実施できたかを見ます。
実施率が上がらない場合、工程への組み込み方を見直します。
記録の場所を1つにする
営業の記録、マーケティングの記録と分かれると、後から見返せません。
商談記録に紐づけて1か所に残します。
なぜ選ばれているのかが社内で共有されていない場合は、無料相談で現状を見てもらうところから始められます。獲得の型ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
受注理由はいつ聞くのがいいですか
受注が決まってから1か月以内です。導入が進むと検討時の記憶が導入後の体験に上書きされます。キックオフの冒頭に15分ほど組み込むと実施率が上がります。
決め手は何と聞けば引き出せますか
理由ではなく経緯を聞いてください。いつ探し始めたか、どの時点で自社が有力になったか、最後まで迷った点は何かを順に追うと、判断が動いた場面が具体的に出てきます。
対応が丁寧だったという答えをどう扱いますか
どの場面での対応を指すかを聞いてください。初回の返信か、見積もりの提示か、質問への回答か。場面が特定できれば、そこを標準の運用にできます。
競合の話は聞けますか
自社を選んだ顧客は他社について率直に話します。検討した会社、最後まで残った会社、他社の提案で良かった点を必ず聞いてください。失注側からは取りにくい情報です。
事例取材で一緒に聞けばよいのではありませんか
公開前提の場では他社との比較の詳細は語られません。受注直後に社内利用として経緯を聞き、成果が出た半年後に事例取材を別に依頼する形が適しています。
まとめ
- 受注した案件は、振り返りの対象になりにくいからです。負けた案件は原因を探されますが、勝った案件は成功として処理され、理由は確認されません
- 顧客は、後から説明しやすい理由を選びます。対応が丁寧だった、信頼できた。こうした言葉の裏に、具体的な分かれ目があります
- 受注が決まってから1か月以内が適しています。導入が進むと、検討時の記憶が導入後の体験に上書きされます
- 理由を聞かず、経緯を聞きます。最初に探し始めた時期から順に追うと、判断が変わった箇所が具体的に出てきます
- 比較した他社と、その評価を聞きます。受注した顧客のほうが、競合について率直に話します
- 感想としてではなく、行動として記録します。どの場面で何をしたことが評価されたかまで分解すると、標準の運用に落とせます
- 事例取材は公開が目的で、受注理由の聞き取りは社内の判断が目的です。一緒にすると、どちらも中途半端になります
- 受注後の工程に、確認の時間を組み込むところからです。別途の依頼にすると実施されません