制作会社と広告代理店を分けるべきか

配信の結果を見ながら素材を直す往復が短くなるからです。
ただし、その速さは訴求の質とは別の話です。
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目次
目次
- 制作と運用を同じ会社に任せるのが当たり前になっているのはなぜか
- 一体にする利点は、往復の速さ
- 分けたときに、誰が訴求の仮説を持つのか
- 制作会社は、与えられた課題に答える
- 一体にしたときに、見えなくなるものは何か
- 制作費の内訳が見えなくなる
- 制作の質と、配信の量は、どちらが先に効くのか
- 立ち上げ期は、当たりを探す段階
- 分けるなら、どこで線を引くのか
- 工程で分けると、意図が伝わらない
- 発注側が担うことになる作業は何か
- 要件を書く作業が増える
- どちらの形でも起きる、素材の不足をどう扱うか
- 必要な本数を、先に出す
- 発注先の構成を決め直す流れ
- 社内で仮説を持てるかを、先に判断する
- よくある質問
- まとめ
配信の結果を見ながら素材を直す往復が短くなるからです。
ただし、その速さは訴求の質とは別の話です。
制作と運用を同じ会社に任せるのが当たり前になっているのはなぜか
配信の結果を見ながら素材を直す往復が短くなるからです。
ただし、その速さは訴求の質とは別の話です。
広告の制作と運用を1社にまとめる形は、現在では標準的な発注の仕方になっています。
提案の段階で制作費を含めた見積りが出てくるので、発注側も比較しやすくなります。
一体にする利点は、往復の速さ
配信して数字を見て、素材を差し替える。
この往復が同じ会社の中で閉じると、数日で回ります。
別々の会社だと、間に発注のやりとりが入ります。
速さが効く領域と、効かない領域
差し替えの速さが効くのは、訴求の方向が決まっていて、表現を試す段階です。
そもそも何を訴求するかが決まっていない段階では、速さは効きません。
制作の目的と、発注先の相性
| 制作の目的 | 求められるもの | 一体で足りるか |
|---|---|---|
| 配信中の素材の差し替え | 速さと本数 | 足りる |
| 訴求の切り口の探索 | 顧客理解と表現力 | 足りないことがある |
| ブランドの世界観の構築 | 一貫性と設計 | 足りない |
| 映像や撮影を伴う制作 | 企画と制作の体制 | 足りないことがある |
| 既存素材の展開と改変 | 作業の効率 | 足りる |
分けるかどうかは、制作の目的で決まる
会社の規模や予算の大きさで決める論点ではありません。
いま必要な制作が、どの種類かで決まります。
動画の比重が上がっている
電通デジタルの2025年インターネット広告媒体費の詳細分析では、ビデオ広告が1兆275億円で初めて1兆円を超え、構成比30%、前年比121.8%でした。
動画の制作は、静止画の差し替えとは体制も費用の構造も違います。
制作の主戦場が動画に寄るほど、一体で足りるかの検討が必要になります。
分けたときに、誰が訴求の仮説を持つのか
発注側が持つことになります。
分けた瞬間に、制作会社と運用の会社のどちらも全体を見なくなります。
分業の最大の論点は、費用でも速度でもありません。
訴求の仮説を誰が持つかです。
制作会社は、与えられた課題に答える
制作会社は、渡された要件に沿って作ります。
何を訴えるべきかを自分から提案する会社もありますが、契約の範囲外になりがちです。
運用の会社は、配信結果から逆算する
運用側は、数字が良かった素材の傾向を見ます。
ただ、その傾向が顧客の何を捉えているかまでは踏み込まないことがあります。
仮説を持つ役割の置き方
| 置き方 | 訴求を決めるのは | 向く状況 | 弱点 |
|---|---|---|---|
| 一体に任せる | 代理店 | 訴求の方向が定まっている | 方向の転換が起きにくい |
| 発注側が持つ | 自社 | 顧客理解が社内にある | 社内の負荷が大きい |
| 制作会社に持たせる | 制作会社 | ブランドの設計が必要 | 配信の結果が反映されにくい |
| 第三の立場を置く | 戦略の担当 | 規模が大きい | 費用が増える |
| 交互に持ち回る | 定まらない | 推奨しない | 責任が曖昧になる |
発注側が持てない場合は、分けないほうがよい
社内に顧客理解を持つ人がいない状態で分けると、誰も訴求を決めません。結果として、制作会社は無難な案を出し、運用側は届いた素材を配るだけになります。
一体にしたときに、見えなくなるものは何か
制作の費用と、制作物の良し悪しの判断です。
配信の成果と混ざるので、どちらの寄与かが分からなくなります。
一体に任せると、報告は配信の成果でまとまります。
制作の部分だけを取り出して評価する機会がなくなります。
制作費の内訳が見えなくなる
一括の見積りでは、制作にいくらかかっているかが分かりません。
比較の対象がないので、高いか安いかを判断できません。
素材の良し悪しを、配信の成果で判断してしまう
素材Aが素材Bより成果が良かったとします。
これは配信の条件が同じ場合にのみ言えることです。
条件が違えば、素材の差ではありません。
一体にしたときに確認すべきこと
| 確認すること | 確認しないと起きること |
|---|---|
| 制作費の内訳 | 費用の妥当性を判断できない |
| 1本あたりの制作単価 | 本数を増やす交渉ができない |
| 素材ごとの配信条件 | 素材の良し悪しを誤って判断する |
| 制作の体制 | 誰が作っているか分からない |
| 素材の権利の扱い | 他社に移すときに使えない |
内訳の開示を求めることは、不信の表明ではない
内訳を求めると関係が悪くなると考える人がいます。定例の報告様式に組み込んでおけば、毎回の交渉になりません。
制作の質と、配信の量は、どちらが先に効くのか
段階によって変わります。
立ち上げ期は本数が効き、規模が大きくなるほど質の差が効きます。
どちらに投資すべきかの判断は、いまの規模で決まります。
立ち上げ期は、当たりを探す段階
何が効くか分からない段階では、試す本数が成果を決めます。
1本にかける費用を抑えて、種類を増やします。
規模が大きくなると、1本の差が金額になる
月の出稿額が大きくなると、成果の数%の差が大きな金額になります。
この段階では、本数より1本の質に投資する価値が出ます。
規模と、制作への投資の向け方
| 段階 | 優先するもの | 発注の形 | 1本あたりの費用 |
|---|---|---|---|
| 立ち上げ期 | 本数 | 一体に任せる | 抑える |
| 拡大期 | 本数と質の両方 | 一体を基本に、要所で分ける | 中くらい |
| 安定期 | 質 | 分けることを検討 | 厚くする |
| 方向転換のとき | 訴求の設計 | 制作を分ける | 厚くする |
| 縮小期 | 既存素材の活用 | 一体に戻す | 抑える |
数字は説明のための仮の値です
上の表の段階は、月の出稿額でおおよそ区切れます。
自社の粗利率と、1件あたりの獲得費用から、成果の1%が何円になるかを出すと判断がつきます。
段階が変わったのに、発注の形が変わっていない
立ち上げ期に決めた発注の形を、規模が10倍になっても続けている会社があります。規模が変わったら、発注の形も見直します。
分けるなら、どこで線を引くのか
企画と制作の間ではなく、訴求の設計と表現の生産の間です。
工程で分けると、途中で意図が切れます。
分け方を誤ると、分業の弊害だけが出ます。
工程で分けると、意図が伝わらない
企画は制作会社、実制作は別会社という分け方があります。
この形では、企画の意図が実制作に伝わらず、修正の往復が増えます。
種類で分けるほうが、うまくいきやすい
ブランドの根幹に関わる制作と、日々の差し替えの制作を分ける形です。
前者は制作会社、後者は運用の会社が担います。
分け方の型を、項目ごとに見ていきます。
工程で分けるについては、前者の担当は企画、後者の担当は実制作、うまくいきやすさは低い。
種類で分けるについては、前者の担当は根幹の制作、後者の担当は日々の差し替え、うまくいきやすさは高い。
媒体で分けるについては、前者の担当は動画の制作、後者の担当は静止画の制作、うまくいきやすさは中くらい。
事業で分けるについては、前者の担当は事業Aの制作、後者の担当は事業Bの制作、うまくいきやすさは中くらい。
期間で分けるについては、前者の担当は新商品の立ち上げ、後者の担当は通常期の運用、うまくいきやすさは高い。
素材の元データを、双方が使える状態にする
分けた場合、制作会社が作った素材を運用側が改変する場面が出ます。
編集可能な元データを発注側が保管し、必要に応じて渡す形にします。
契約の時点で、改変の可否を決める
元データがあっても、改変が認められていないと使えません。制作会社との契約で、改変と第三者への提供の可否を確認します。
発注側が担うことになる作業は何か
要件の作成と、素材の受け渡しと、判断です。
この3つの時間を見込まずに分けると、社内が詰まります。
分けると、間の調整が発注側に戻ってきます。
要件を書く作業が増える
一体なら口頭で済んでいた依頼を、文書にする必要が出ます。
何を訴求するか、どの媒体でどう使うか、いつまでに何本要るか。
これを書く時間が、毎回発生します。
分けたときに発注側に戻る作業を、項目ごとに見ていきます。
制作の要件を書くについては、頻度は制作のたび、1回あたりの目安は数時間。
素材の受け取りと運用側への引き渡しについては、頻度は制作のたび、1回あたりの目安は1時間。
配信結果を制作会社に共有するについては、頻度は月次、1回あたりの目安は数時間。
修正の指示をまとめるについては、頻度は修正のたび、1回あたりの目安は1時間。
権利と使用範囲の管理については、頻度は随時、1回あたりの目安は継続。
配信結果を制作会社に戻す
制作会社は、自分の作った素材がどうだったかを知りません。
結果を戻さないと、次の制作が改善されません。
この共有は発注側の役割になります。
担当を1人に固定する
制作と運用の間に立つ役割を、複数人で分担すると意図がぶれます。1人に固定し、その人の稼働を見込みます。
どちらの形でも起きる、素材の不足をどう扱うか
本数の上限は、発注の形ではなく体制で決まります。
分けても一体でも、作れる本数を超える計画は成立しません。
発注の形を変えても、制作の総量は増えません。
必要な本数が体制の上限を超えている場合は、別の解が要ります。
必要な本数を、先に出す
媒体の数、配信の面の種類、差し替えの周期。
この3つから、月に必要な本数が出ます。
本数が足りないときの選択肢を、項目ごとに見ていきます。
制作会社を追加するについては、効果が出るまでは1か月、費用の増え方は比例して増える、向く状況は恒常的に足りない。
1本を複数の面に展開するについては、効果が出るまでは即時、費用の増え方はほぼ増えない、向く状況は面ごとの差が小さい。
撮影素材を増やして組み合わせるについては、効果が出るまでは2か月、費用の増え方は初期に増える、向く状況は同じ商材が続く。
差し替えの周期を延ばすについては、効果が出るまでは即時、費用の増え方は減る、向く状況は成果の劣化が緩やか。
社内で一部を作るについては、効果が出るまでは3か月、費用の増え方は人件費として増える、向く状況は軽微な改変が多い。
差し替えの周期を延ばす判断
本数が足りないとき、周期を延ばす選択があります。
成果がどれだけ劣化するかを測ってから決めます。
媒体費を増やす前に、本数を確認する
素材が足りないまま媒体費だけを増やすと、同じ素材の表示回数が増えます。成果が伸びない原因がここにあることがあります。
発注先の構成を決め直す流れ
必要な制作の種類を分類するところからです。
どの種類が足りていないかが分かれば、分けるかどうかは自然に決まります。
発注の形の議論は、会社を比べる前に、必要なものを並べることから始めます。
発注先を組み直す順序を、項目ごとに見ていきます。
1については、やることは直近1年の制作物を種類ごとに分類する、期間の目安は1週間。
2については、やることは種類ごとに、どこが足りないかを特定する、期間の目安は1週間。
3については、やることは月に必要な本数を媒体と面から算出する、期間の目安は1週間。
4については、やることは訴求の仮説を社内で持てるかを判断する、期間の目安は2週間。
5については、やることは分ける場合の線引きを決める、期間の目安は2週間。
6については、やることは制作費の内訳と1本あたりの単価を確認する、期間の目安は2週間。
7については、やることは素材の権利と改変の可否を契約で確認する、期間の目安は1か月。
8については、やることは3か月運用して、発注側の稼働を測る、期間の目安は3か月。
社内で仮説を持てるかを、先に判断する
分ける判断の前提は、訴求を決める役割が社内にあることです。
ここが埋まらないまま分けると、分業の弊害だけが残ります。
見る数字を決める
数字は説明のための仮の値です。
たとえば月の媒体費が1,000万円で、制作費が150万円、月の新規素材が20本だとします。
1本あたりの制作単価は7.5万円、媒体費に対する制作費の比率は15%です。
この数字を並べると、本数を増やすべきか、1本の質を上げるべきかの議論ができます。
分業の噛み合いを測る数字を、項目ごとに見ていきます。
月あたりの新規素材の本数については、見る頻度は月次、何が分かるかは必要な本数に届いているか。
1本あたりの制作単価については、見る頻度は四半期、何が分かるかは費用の水準が妥当か。
制作の依頼から納品までの日数については、見る頻度は制作のたび、何が分かるかは分業で遅くなっていないか。
発注側が調整に使った時間については、見る頻度は月次、何が分かるかは分けた負担が見合っているか。
素材ごとの成果の差については、見る頻度は四半期、何が分かるかは質への投資が効いているか。
納品までの日数を、必ず測る
分けると、依頼から納品までの日数が延びます。
延びた分だけ、配信の機会を失っています。
1年は同じ形で続ける
発注の形を頻繁に変えると、どの形が良かったかが分かりません。
決めたら1年は続けて、年次で見直します。
制作の発注先をどう構成するか迷う場合は、無料相談で現状の制作の状況を見てもらうところから始められます。広告の作り方ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
制作会社と広告代理店は分けるべきですか
会社の規模ではなく、いま必要な制作の種類で決まります。配信中の素材の差し替えが中心なら一体で足りますが、訴求の切り口の探索やブランドの世界観の構築が必要な段階では分けることを検討してください。
分けると何が難しくなりますか
訴求の仮説を誰が持つかが空きます。制作会社は渡された要件に答え、運用の会社は配信結果から逆算するため、どちらも全体を見ません。社内に顧客理解を持つ人がいない状態では分けないほうが安全です。
一体に任せていると、何が見えなくなりますか
制作費の内訳と、制作物そのものの良し悪しです。配信の成果と混ざるので寄与が切り分けられません。定例の報告様式に制作費の内訳と1本あたりの単価を組み込んでください。
分けるなら、どこで線を引きますか
工程ではなく種類で分けます。企画と実制作で分けると意図が伝わりませんが、ブランドの根幹に関わる制作と日々の差し替えで分ける形なら噛み合いやすくなります。
発注の形を変えれば、素材の本数は増えますか
増えません。作れる本数は体制で決まります。1本を複数の面に展開する、撮影素材を増やして組み合わせる、差し替えの周期を延ばすといった別の手を検討してください。
まとめ
- 配信の結果を見ながら素材を直す往復が短くなるからです。ただし、その速さは訴求の質とは別の話です
- 発注側が持つことになります。分けた瞬間に、制作会社と運用の会社のどちらも全体を見なくなります
- 制作の費用と、制作物の良し悪しの判断です。配信の成果と混ざるので、どちらの寄与かが分からなくなります
- 段階によって変わります。立ち上げ期は本数が効き、規模が大きくなるほど質の差が効きます
- 企画と制作の間ではなく、訴求の設計と表現の生産の間です。工程で分けると、途中で意図が切れます
- 要件の作成と、素材の受け渡しと、判断です。この3つの時間を見込まずに分けると、社内が詰まります
- 本数の上限は、発注の形ではなく体制で決まります。分けても一体でも、作れる本数を超える計画は成立しません
- 必要な制作の種類を分類するところからです。どの種類が足りていないかが分かれば、分けるかどうかは自然に決まります