アカウントの所有権はどちらが持つべきか

代理店を変えるときと、内製に切り替えるときです。
平常時は誰が持っていても運用は回るので、問題が表に出ません。
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目次
目次
- アカウントの所有権が論点になるのは、どんなときか
- 変更を決めてから気づく
- 所有していることと、運用できることは何が違うのか
- 名義は誰か
- 自社で持つと、何を引き受けることになるのか
- 支払いの方法が変わる
- 代理店が持つ形には、どんな理由があるのか
- 開設と与信の手間を引き受けている
- 媒体や計測の基盤によって、事情はどう変わるのか
- 主力の媒体から、自社名義にする
- 自社で持てない場合、次善の策は何か
- 閲覧権限を求める
- 所有権を移すときに、何が起きるのか
- 移せるものと、移せないものがある
- 所有の形を整えるまでの段取り
- 一覧には、通知の宛先も入れる
- よくある質問
- まとめ
代理店を変えるときと、内製に切り替えるときです。
平常時は誰が持っていても運用は回るので、問題が表に出ません。
アカウントの所有権が論点になるのは、どんなときか
代理店を変えるときと、内製に切り替えるときです。
平常時は誰が持っていても運用は回るので、問題が表に出ません。
広告アカウントを誰が持つかは、取引を始めるときにはあまり議論されません。
代理店が用意し、そのまま数年が過ぎるのが一般的な流れです。
論点になるのは、関係を変えようとした瞬間です。
変更を決めてから気づく
別の代理店に移そうとして、アカウントが移せないと分かる。
内製に切り替えようとして、過去のデータが持ち出せないと分かる。
この段階で気づくと、選択肢が狭まります。
失うのは、アカウントそのものではない
新しいアカウントを作ること自体は難しくありません。
失うのは、蓄積された配信の履歴と、それをもとにした自動化の学習です。
アカウントを作り直すと失われるもの
| 失われるもの | 影響 | 回復の見込み |
|---|---|---|
| 過去の配信実績 | 前年比較ができない | 戻らない |
| 自動入札の学習 | 立ち上げ直後の効率が落ちる | 数か月で回復する |
| 蓄積された顧客リスト | 再構築が必要になる | 条件次第 |
| 過去の審査の履歴 | 審査が再度必要になる | 数週間 |
| 設定の細かい経緯 | なぜその設定かが分からない | 記録があれば残る |
効率の低下は、移行の費用に含める
作り直した直後は、同じ予算でも成果が落ちる期間があります。
代理店を変える判断をするときは、この期間の損失を見込みます。
運用型の比重が高いほど、影響が大きい
電通デジタルの2025年インターネット広告媒体費の詳細分析では、運用型広告が2兆9,352億円で構成比88.7%を占めていました。配信の履歴と学習に依存する領域が、予算の大半を占めています。
所有していることと、運用できることは何が違うのか
所有は契約の名義、運用は権限の付与です。
名義が自社でも、権限を全部外に出していれば中は見えません。
所有権の議論は、この2つを分けないと噛み合いません。
名義は誰か
媒体との契約の名義、請求の宛先、支払いの主体。
これが自社であれば、アカウントは自社のものです。
権限は誰に渡しているか
名義が自社でも、管理の権限を代理店の1つのアカウントにだけ渡している場合があります。
この状態では、自社の誰も中身を見られません。
名義と権限の組み合わせ
| 名義 | 自社の閲覧権限 | 状態 | 変更時の負担 |
|---|---|---|---|
| 自社 | 管理権限あり | 望ましい | 小さい |
| 自社 | 閲覧権限のみ | 実務上は問題ない | 小さい |
| 自社 | 権限なし | 名義だけの所有 | 中くらい |
| 代理店 | 閲覧権限あり | 中身は見える | 大きい |
| 代理店 | 権限なし | 何も見えない | 最も大きい |
閲覧権限だけでも、大きな差がある
日々の運用を代理店に任せる場合でも、自社に閲覧権限があれば報告の数字を検証できます。
権限を持つことと、自分で運用することは別です。
権限の管理を、個人に紐づけない
自社側の権限が担当者個人のアカウントに紐づいていると、その人が異動したときに触れなくなります。組織の単位で管理する形にします。
自社で持つと、何を引き受けることになるのか
請求と支払い、媒体側の審査への対応、権限の管理です。
持つこと自体に費用はかかりませんが、事務の負担は発生します。
自社で持つほうがよい、という結論だけでは判断になりません。
引き受ける作業を把握したうえで決めます。
支払いの方法が変わる
代理店が名義を持っている場合、媒体費は代理店経由で請求されます。
自社名義にすると、媒体への直接の支払いが発生することがあります。
与信の手続きや、支払い方法の設定が要ります。
自社で持つときに発生する作業
| 作業 | 頻度 | 担当の目安 |
|---|---|---|
| 媒体との契約と与信の手続き | 開設時 | 経理と連携 |
| 支払い方法の設定と管理 | 開設時と変更時 | 経理 |
| 権限の付与と削除 | 担当変更のたび | マーケティング |
| 媒体側の審査や確認への対応 | 随時 | マーケティング |
| 媒体からの通知の確認 | 随時 | マーケティング |
| 複数媒体の請求の突合 | 月次 | 経理 |
通知の受け取り先を、個人にしない
媒体からの重要な通知は、登録されたアドレスに届きます。
個人のアドレスにしていると、担当が変わったときに届かなくなります。
部門の共有アドレスを登録します。
媒体側の変更に、自社で追随することになる
媒体の仕様や管理の方法は変わります。
LINEヤフーは2025年9月25日に統合を発表し、2026年4月1日にリリースしました。
LINE広告のみを利用していた企業は、Yahoo!の計測タグの新規設置が必須となり、移行ツールの利用にはビジネスIDが必要です。
こうした移行の作業は、名義を持つ側に通知が来ます。対応する体制があるかを、事前に確認します。
代理店が持つ形には、どんな理由があるのか
開設の手間と、与信と、媒体側の管理体制です。
代理店の都合だけでなく、発注側の負担を減らす面もあります。
代理店が名義を持つ形を、一律に悪いものとは扱えません。
理由を理解したうえで判断します。
開設と与信の手間を引き受けている
媒体との契約、与信、支払い方法の設定。
代理店が名義を持つことで、発注側はこれらを行わずに済みます。
媒体側の管理単位の事情
媒体によっては、代理店向けの管理の仕組みが用意されています。
複数の顧客のアカウントをまとめて管理する形です。
この仕組みを前提にした運用体制を組んでいる代理店があります。
名義の置き方と、利害
| 置き方 | 発注側の利点 | 発注側の不利 |
|---|---|---|
| 自社名義 | 移行が容易、実績が残る | 事務の負担が増える |
| 代理店名義 | 事務の負担がない | 移行時にデータが残らない |
| 自社名義で権限を委譲 | 両方の利点を得られる | 権限管理の手間が残る |
| 媒体ごとに使い分ける | 事情に合わせられる | 管理が複雑になる |
| 移行を見越した二重の体制 | 切り替えが容易 | 費用が二重になる |
代理店専用の管理の仕組みがない媒体もある
新しく出てきた配信面では、代理店向けの管理の仕組みが整っていない場合があります。
OpenAIのChatGPT広告は、2026年6月19日に日本での表示が始まり、6月29日ごろにセルフサーブが開放されましたが、代理店専用のコンソールは提供されていません。
この種の媒体では、名義を自社で持つ以外の選択肢が実質的にありません。
媒体や計測の基盤によって、事情はどう変わるのか
移行のしやすさが媒体ごとに違います。
自社サイト側の計測は、最初から自社のものとして扱います。
すべての媒体で同じ判断をする必要はありません。
主力の媒体から、自社名義にする
出稿額の大きい媒体ほど、失われる履歴の価値が大きくなります。
全媒体を一度に移すのではなく、主力から順に整えます。
対象ごとの扱いの目安を、項目ごとに見ていきます。
出稿額の大きい媒体については、自社で持つ優先度は高い、理由は履歴の価値が大きい。
検証段階の新しい媒体については、自社で持つ優先度は低い、理由は履歴の蓄積が少ない。
自社サイトの計測環境については、自社で持つ優先度は最も高い、理由は自社の資産そのもの。
顧客データを扱う基盤については、自社で持つ優先度は最も高い、理由は取り扱いの責任が自社にある。
制作物の保管先については、自社で持つ優先度は高い、理由は素材の再利用に必要。
自社サイト側の計測は、議論の余地がない
サイトに設置する計測の仕組みは、自社の環境の一部です。
代理店の名義で設定されている場合は、早期に自社名義へ移します。
計測の条件は、外部の方針で変わる
GA4では、2026年6月15日より広告データ共有の可否が同意モードのad_storageのみで決まる形になりました。
同意モードを実装していない場合、ad_storageはgrantedが既定として扱われます。
こうした条件の変更に対応するには、設定の内容を自社で把握している必要があります。個人に関わるデータの取り扱いは、掲載時点の最新の公式ガイドラインで確認してください。
自社で持てない場合、次善の策は何か
閲覧権限の確保と、データの定期的な引き出しです。
名義を移せなくても、この2つがあれば移行時の損失を小さくできます。
既存の取引で名義が代理店にある場合、すぐに移せないことがあります。
その場合にやることを決めます。
閲覧権限を求める
名義はそのままで、自社に閲覧の権限を付与してもらう形です。
運用に介入しない前提なら、断られる理由は多くありません。
実績データを、定期的に受け取る
月次で、集計前の実績データを受け取る取り決めをします。
報告書のかたちではなく、集計の元になる粒度で受け取ります。
名義を移せない場合にやることを、項目ごとに見ていきます。
閲覧権限の付与を求めるについては、得られるものは中身を確認できる、交渉のしやすさはやりやすい。
実績データの定期的な受領については、得られるものは過去の数字が手元に残る、交渉のしやすさはやりやすい。
制作物の元データの受領については、得られるものは素材を再利用できる、交渉のしやすさはやりやすい。
設定内容の文書での提出については、得られるものは移行時に再現できる、交渉のしやすさは交渉が要る。
新規の媒体は自社名義で開設については、得られるものは徐々に自社側に寄せられる、交渉のしやすさはやりやすい。
新しく始める媒体から、自社名義にする
既存のアカウントを移すのは負担が大きい作業です。
新しく始める媒体を自社名義で開設していけば、数年で構成が変わります。
契約更新の機会に、条項として入れる
次の契約更新のときに、アカウントとデータの帰属を条項に加えます。更新時なら、交渉の場として自然です。
所有権を移すときに、何が起きるのか
移行の作業と、一時的な成果の低下です。
媒体によって移せる範囲が違うので、事前に確認します。
名義の変更は、手続きだけで終わらないことがあります。
移せるものと、移せないものがある
媒体によっては、アカウントの所有者を変更する仕組みがあります。
一方で、作り直しが必要な場合もあります。
どちらになるかで、作業量が大きく変わります。
移行のときに確認することを、項目ごとに見ていきます。
所有者の変更が可能かについては、確認しないと起きることは作り直しになり履歴が消える。
移行に必要な手続きと期間については、確認しないと起きることは想定より長くかかる。
移行中に配信を止める必要があるかについては、確認しないと起きることは出稿が途切れる。
過去のデータがどこまで移るかについては、確認しないと起きることは前年比較ができなくなる。
計測の設定を作り直す必要があるかについては、確認しないと起きることは数字が途切れる。
配信を止めずに移す段取りを組む
移行のあいだ出稿が止まると、その期間の機会を失います。
新旧を並行させる期間を設ける形が取れるかを確認します。
移行の直後は、数字が振れる
自動入札を使っている場合、移行後しばらくは学習の期間になります。この期間の数字で施策の良し悪しを判断しないようにします。
所有の形を整えるまでの段取り
いま何を誰が持っているかの一覧を作るところからです。
把握していない状態では、交渉も計画も組めません。
棚卸しから始めます。
名義を整える順序を、項目ごとに見ていきます。
1については、やることは媒体とツールごとに名義と権限の一覧を作る、期間の目安は2週間。
2については、やることは自社に閲覧権限がないものを特定する、期間の目安は1週間。
3については、やることは出稿額の大きい順に優先度をつける、期間の目安は1週間。
4については、やることは閲覧権限の付与を代理店に依頼する、期間の目安は2週間。
5については、やることは実績データを定期的に受け取る取り決めをする、期間の目安は2週間。
6については、やることは新規の媒体は自社名義で開設する運用にする、期間の目安は即時。
7については、やることは契約更新時に帰属の条項を追加する、期間の目安は更新時。
8については、やることは主力媒体の名義移行を計画する、期間の目安は半年から1年。
一覧には、通知の宛先も入れる
名義と権限に加えて、媒体からの通知がどこに届いているかを記録します。
個人のアドレスになっているものは、共有のアドレスに変更します。
見る数字を決める
数字は説明のための仮の値です。
たとえば年間の媒体費が1億2,000万円で、そのうち自社名義のアカウントで動いている額が3,000万円だとします。
残る9,000万円が、代理店を変えるときに履歴を失う対象です。
この金額を出すと、優先して移す媒体が決まります。
所有と権限の定点確認を、項目ごとに見ていきます。
自社名義で動いている媒体費の割合については、確認の頻度は四半期、見ることは自社側に寄っているか。
閲覧権限がないアカウントの数については、確認の頻度は四半期、見ることは見えない範囲が残っていないか。
通知の宛先が個人になっている件数については、確認の頻度は半年、見ることは担当交代で通知が途切れないか。
実績データの受領の有無については、確認の頻度は月次、見ることは取り決めが守られているか。
計測環境の名義については、確認の頻度は年1回、見ることは自社名義になっているか。
割合で管理する
すべてを一度に自社名義にするのは現実的ではありません。
自社名義で動いている媒体費の割合を指標にして、年単位で上げていきます。
担当が変わるたびに、権限を見直す
権限の付与は増える一方になりがちです。
自社側も代理店側も、担当が変わったときに不要な権限を削除します。
アカウントの持ち方が整理できていない場合は、無料相談で現状の名義と権限を洗い出すところから始められます。運用の体制ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
広告アカウントは自社で持つべきですか
主力の媒体は自社名義が望ましいですが、支払いや審査対応、権限管理といった事務の負担が発生します。出稿額の大きい媒体から順に整え、検証段階の媒体は無理に移さなくて構いません。
名義が自社なら安心ですか
名義と権限は別です。名義が自社でも管理権限を代理店側だけに渡していれば、自社の誰も中身を見られません。閲覧権限を自社側に確保してください。
代理店が名義を持つのは問題ですか
開設や与信の手間を代理店が引き受けている面があるため、一律に悪いとは言えません。ただし代理店を変えるときに配信の履歴と自動入札の学習が失われるので、その損失を見込んで判断してください。
名義を移せない場合はどうすればよいですか
閲覧権限の付与と、集計前の粒度の実績データを月次で受け取る取り決めをしてください。あわせて、新しく始める媒体から自社名義で開設していくと数年で構成が変わります。
名義を移すと成果は落ちますか
所有者の変更が可能な媒体では履歴が残りますが、作り直しになる場合は自動入札の学習がやり直しになり、数か月は効率が落ちます。移行前に、所有者の変更が可能かを媒体ごとに確認してください。
まとめ
- 代理店を変えるときと、内製に切り替えるときです。平常時は誰が持っていても運用は回るので、問題が表に出ません
- 所有は契約の名義、運用は権限の付与です。名義が自社でも、権限を全部外に出していれば中は見えません
- 請求と支払い、媒体側の審査への対応、権限の管理です。持つこと自体に費用はかかりませんが、事務の負担は発生します
- 開設の手間と、与信と、媒体側の管理体制です。代理店の都合だけでなく、発注側の負担を減らす面もあります
- 移行のしやすさが媒体ごとに違います。自社サイト側の計測は、最初から自社のものとして扱います
- 閲覧権限の確保と、データの定期的な引き出しです。名義を移せなくても、この2つがあれば移行時の損失を小さくできます
- 移行の作業と、一時的な成果の低下です。媒体によって移せる範囲が違うので、事前に確認します
- いま何を誰が持っているかの一覧を作るところからです。把握していない状態では、交渉も計画も組めません