経営がマーケを理解していない会社での進め方

判断に必要な情報が経営に届いていない状態です。
知識の不足ではなく、届け方の不足であることがほとんどです。
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目次
目次
- 経営がマーケティングを理解していないとは、どういう状態か
- 3つに分けて見る
- 無関心と不信は、同じ扱いにしてよいのか
- 無関心に、詳しい説明は効かない
- 言葉が通じていないだけの場合、何を変えるのか
- 置き換える先は、財務と事業の言葉
- 理解を得る前に、何を先に出すのか
- 合意を取る単位を小さくする
- 経営の関心が向く数字は、どれか
- 比率から、金額と期間に直す
- 小さく試すときの、規模と期間の決め方
- 小さすぎる検証は、逆効果になる
- 理解を求めすぎると、何が起きるのか
- 説明の手間には、上限を決める
- 理解を待たずに動き出すには
- 過去の総括は、不信がある場合だけ
- よくある質問
- まとめ
判断に必要な情報が経営に届いていない状態です。
知識の不足ではなく、届け方の不足であることがほとんどです。
経営がマーケティングを理解していないとは、どういう状態か
判断に必要な情報が経営に届いていない状態です。
知識の不足ではなく、届け方の不足であることがほとんどです。
経営がマーケを分かっていないという言い方は、社内でよく使われます。
ただ、この一言の中には性質の違う3つの状態が混ざっています。
混ざったまま対処すると、どれにも効きません。
3つに分けて見る
関心が向いていないのか。
過去の経験から信用していないのか。
言葉が噛み合っていないだけなのか。
この3つは、取るべき手が違います。
理解されていない状態の分け方
| 状態 | 現れ方 | 背景にあるもの |
|---|---|---|
| 関心がない | 会議で議題に上がらない | 事業の主戦場が別にある |
| 信用していない | 数字を示しても判断が保留される | 過去に投資して成果が出なかった |
| 言葉が通じない | 説明のたびに質問が繰り返される | 使っている指標が財務と接続していない |
| 判断の軸がない | 決裁の基準が人によって変わる | 投資回収の考え方が社内で定まっていない |
| 期待が過大 | 短期で成果を求められる | 営業活動との違いが共有されていない |
自社がどれかを、どう見分けるか
過去2年の決裁の履歴を並べます。
提案が通らなかったときの理由が記録されていれば、そこに傾向が出ます。
記録がない場合は、直近の会議で出た質問を書き出します。
質問の内容が、状態を示す
いくらかかるのかだけを聞かれるなら、関心が費用に限られています。前回はどうだったのかを聞かれるなら、信用の問題です。その数字は何を意味するのかを聞かれるなら、言葉の問題です。
無関心と不信は、同じ扱いにしてよいのか
分けて扱います。
無関心には接触の回数が効き、不信には過去の総括が効きます。
どちらも話を聞いてもらえないという同じ見え方をします。
だが原因が逆なので、同じ手を打つと悪化します。
無関心に、詳しい説明は効かない
関心が向いていない相手に資料を厚くすると、読まれる量がさらに減ります。
必要なのは、短い接触を増やすことです。
月に1回の詳細な報告より、週に1行の進捗のほうが届きます。
不信に、新しい提案は効かない
過去に投資して成果が出なかった記憶がある場合、新しい提案は同じ話に聞こえます。
先にやるのは、前回何が起きたかの総括です。
自分が担当していなかった時期の話でも、経緯を整理して出します。
状態ごとの初手
| 状態 | 効く手 | 効かない手 |
|---|---|---|
| 関心がない | 短く頻繁な接触 | 詳細な資料 |
| 信用していない | 過去の投資の総括 | 新しい提案 |
| 言葉が通じない | 指標の対応表 | 指標の解説 |
| 判断の軸がない | 回収期間の基準づくり | 個別案件の説得 |
| 期待が過大 | 時間軸の共有 | 成果の前倒し |
総括は、責任追及にしない
過去の失敗を整理する作業は、誰かの評価に直結します。当時の担当者を特定する形になると、社内の協力が止まります。何が起きたかと、いま同じことが起きない理由の2点に絞ります。
言葉が通じていないだけの場合、何を変えるのか
指標そのものを、経営が使っている言葉に置き換えます。
解説を足すのではなく、並べる数字を入れ替えます。
マーケティングの指標は、部門の外では意味が伝わりません。
CPA、ROAS、CVR。
これらは社内の共通言語ではなく、部門の専門用語です。
置き換える先は、財務と事業の言葉
経営が日常的に見ているのは、売上、粗利、キャッシュ、回収の期間です。
マーケティングの数字を、この4つのどれかに接続します。
指標の言い換え
| 部門の指標 | 経営に出すときの形 | 接続する先 |
|---|---|---|
| CPA | 1件の顧客を得るのにかかった費用 | 粗利との比較 |
| ROAS | 投じた額が売上として戻った倍率 | 売上 |
| CVR | 接点1,000件あたりの商談数 | 営業の工数 |
| LTV | 1顧客から回収できる粗利の累計 | 回収期間 |
| リード数 | 営業が今期取り組める案件の数 | 受注見込み |
解説を足すという対処は、効かない
用語の解説を資料の末尾に付けても読まれません。
読む側は、解説を読む前に判断を保留します。
最初から相手の言葉で書くほうが早く進みます。
単位を揃える
部門の中では件数と率で話し、経営の前では金額で話します。同じ内容でも、単位が違うと別の話に聞こえます。金額に直せない指標は、経営向けの資料からは外します。
理解を得る前に、何を先に出すのか
小さな成果を1つ、経営が使える形で出します。
全体の計画への合意は、その後です。
理解を得てから動くという順番は、理解が得られない会社では永久に始まりません。
順番を入れ替えます。
合意を取る単位を小さくする
年間計画の承認を取ろうとすると、議論が長くなります。
承認を取る対象を、1つの施策、1四半期、限られた金額に絞ります。
小さい単位なら、判断の負荷が下がります。
出す成果は、事業側が使えるものにする
マーケティング部門の中で完結する成果は、経営から見ると成果ではありません。
営業が使える案件、既存顧客の継続、問い合わせの質。
事業の側で誰かが助かったと言う状態を作ります。
最初に出す成果の選び方
| 条件 | 該当する例 | 該当しない例 |
|---|---|---|
| 期間が短い | 四半期で結果が出る | 通年で積み上げる施策 |
| 金額が小さい | 既存予算の枠内で収まる | 追加の稟議が要る |
| 結果が数えられる | 案件数や受注額で出る | 認知度の変化 |
| 事業側に受け手がいる | 営業が使う | 部門内で完結する |
| 再現の見込みがある | 同じやり方を広げられる | 一度限りの機会 |
出す相手を絞る
経営全体に説明するより、事業を持っている1人に届けるほうが早く進みます。その1人が会議で言及すれば、部門の説明より効きます。
経営の関心が向く数字は、どれか
投じた金額が、いつ、いくらになって戻るかです。
効率の比率だけを示しても、判断の材料になりません。
マーケティングの報告は、比率で構成されがちです。
比率は、分母が動くと意味が変わります。
経営の側から見ると、判断に使いにくい形です。
比率から、金額と期間に直す
ROASが300%という報告は、いくら使っていくら戻ったかを隠します。
同じ300%でも、月100万円と月3,000万円では判断が違います。
金額と期間をそろえて出します。
回収の時期を明示する
支出は今期、回収は来期以降という構造は、マーケティング投資では普通に起きます。
この時間のずれを説明しないと、今期の費用としてだけ見られます。
報告の形の違いを、項目ごとに見ていきます。
CPAが15%改善については、受け取られ方は部門内の改善報告、判断できるかはできない。
1件あたりの獲得費用が3万円から2.5万円にについては、受け取られ方は費用の変化、判断できるかは一部できる。
今期1,000万円を投じ、18か月で1,800万円の粗利については、受け取られ方は投資と回収、判断できるかはできる。
昨対で配分を変更については、受け取られ方は活動の報告、判断できるかはできない。
来期の見込み受注に何件つながるかについては、受け取られ方は事業計画への寄与、判断できるかはできる。
数字は説明のための仮の値です
上の表に出した金額は、形を示すためのものです。
自社の数字に置き換えるときは、粗利率と平均の受注単価を先に確定させます。
未達のときの見え方も、先に出す
達成した場合の数字だけを出すと、未達のときに説明がつきません。どの前提が崩れると未達になるかを、あらかじめ1行で添えます。
小さく試すときの、規模と期間の決め方
判断がつく最小の規模を選びます。
小さくしすぎると結果が読めず、次の説明ができません。
理解のない環境では、予算が下りにくくなります。
そこで規模を小さくしすぎると、結果が振れて何も言えなくなります。
小さすぎる検証は、逆効果になる
件数が少ないと、成果が出ても偶然と区別がつきません。
たまたまではと言われると、次の稟議が通らなくなります。
判断がつく件数を先に見積もってから、必要な金額を出します。
期間は、回収の周期に合わせる
商材によって、接点から受注までの期間は大きく違います。
その期間より短く区切ると、途中経過しか見えません。
検証の規模を決める順番を、項目ごとに見ていきます。
1については、決めることは判断に必要な件数、考え方は結果が振れない最小の件数。
2については、決めることは接点から受注までの期間、考え方は過去の実績の中央値。
3については、決めることは必要な期間、考え方は上の期間に、結果を見る時間を足す。
4については、決めることは必要な金額、考え方は件数に1件あたりの想定費用をかける。
5については、決めることは打ち切る条件、考え方はどの数字が出たらやめるか。
打ち切る条件を、先に伝える
止める条件を先に示すと、稟議は通りやすくなります。判断を保留する側が恐れているのは、止まらないことだからです。
理解を求めすぎると、何が起きるのか
説明の作業が増え、実行の時間が減ります。
理解は目的ではなく、判断を早くするための手段です。
理解を得る努力は、途中から目的にすり替わります。
資料の作成に時間を使い、施策が進まなくなる状態です。
説明の手間には、上限を決める
月次の説明資料に使う時間の上限を、あらかじめ決めます。
上限を超えるなら、報告の項目を減らします。
経営が見ない項目を減らしても、判断は変わりません。
全員の理解を目標にしない
役職によって、知りたい内容は違います。
Testifyが2026年5月に実施した調査では、代理店への不満の内容が役職で分かれていました。
経営層は費用が成果に見合わないが56.3%、マーケティング責任者は成果不振の説明不足が53.1%、運用担当はレスポンスが遅いが50.8%です。
同じ組織の中でも、見ている場所が違います。
全員に同じ資料で同じ理解を求めると、どの層にも届きません。
相手ごとに用意するものを、項目ごとに見ていきます。
経営については、知りたいことは投じた額と戻る額、出すものは金額と回収期間。
事業責任者については、知りたいことは自分の事業への寄与、出すものは案件数と受注見込み。
財務については、知りたいことは今期の支出と来期の見込み、出すものは支出の時期と契約の解約条件。
営業については、知りたいことは使える案件がいつ来るか、出すものは見込みの件数と時期。
自部門については、知りたいことは次に何をするか、出すものは施策ごとの状況。
理解がないまま進む期間を、許容する
理解が揃うのを待つと、市場の変化に間に合いません。決裁が下りる範囲で動きながら、実績を積むほうが早く進みます。
理解を待たずに動き出すには
経営が使っている言葉に指標を置き換え、小さな成果を1つ出します。
順番はこの2つが先で、計画の合意は後です。
最初の四半期でやることは限られています。
経営に届けるまでの段取りを、項目ごとに見ていきます。
1については、やることは理解されていない状態を3つのどれかに分類する、期間の目安は1週間。
2については、やることは過去2年の決裁の履歴と質問内容を整理する、期間の目安は1週間。
3については、やることは部門の指標を金額と期間の形に置き換える、期間の目安は2週間。
4については、やることは事業側に受け手がいる施策を1つ選ぶ、期間の目安は1週間。
5については、やることは判断がつく規模と、打ち切る条件を決める、期間の目安は1週間。
6については、やることは四半期の枠で実行する、期間の目安は3か月。
7については、やることは結果を金額と回収期間の形で出す、期間の目安は2週間。
8については、やることは同じ形を次の施策に広げる、期間の目安は継続。
過去の総括は、不信がある場合だけ
不信がない相手に過去の話をすると、時間の無駄になります。
分類の結果に応じて、やることを変えます。
見る数字を決める
数字は説明のための仮の値です。
たとえば四半期に300万円を投じ、営業に渡る案件が40件、そのうち受注が6件という形で結果を置きます。
平均受注単価が200万円なら受注額は1,200万円で、粗利率40%なら粗利は480万円です。
説明の効き目を測る数字を、項目ごとに見ていきます。
投じた金額については、見る頻度は月次、経営に示す意味は支出の実績。
事業側に渡った案件数については、見る頻度は月次、経営に示す意味は営業が使えた量。
受注に至った件数と金額については、見る頻度は四半期、経営に示す意味は投資が戻った額。
回収までの期間については、見る頻度は四半期、経営に示す意味はいつ戻るか。
決裁にかかった日数については、見る頻度は案件ごと、経営に示す意味は判断の速さが変わったか。
決裁にかかる日数を、自分で測る
理解が進んだかどうかは、感触では分かりません。
同じ規模の提案が通るまでの日数を記録すると、変化が見えます。
1年で見る
理解の変化は四半期では現れません。
同じ形の報告を4回繰り返したあたりから、質問の内容が変わります。
経営との距離をどう詰めるか分からない場合は、無料相談で現状の説明の仕方を見てもらうところから始められます。社内への示し方ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
経営がマーケティングに関心を持ってくれません
詳しい資料を作るより、短い接触の回数を増やすほうが効きます。月1回の詳細な報告ではなく、週に1行の進捗を届ける形に変えてください。
過去の失敗があり、新しい提案が通りません
不信が原因なので、先に過去の投資の総括を出します。誰の責任かを特定する形にすると社内の協力が止まるので、何が起きたかと、いま同じことが起きない理由の2点に絞ってください。
指標を説明しても伝わりません
解説を足すのではなく、並べる数字を入れ替えます。CPAやROASではなく、投じた金額と、いつ、いくらの粗利になって戻るかという形にしてください。
予算が下りないので、小さく試すしかありません
小さくしすぎると結果が振れて、次の説明ができなくなります。判断がつく最小の件数を先に見積もり、そこから必要な金額を出し、打ち切る条件をあわせて示してください。
理解を得るまで待つべきですか
待つと市場の変化に間に合いません。決裁が下りる範囲で動いて実績を積み、その結果を経営の言葉で出すほうが早く進みます。
まとめ
- 判断に必要な情報が経営に届いていない状態です。知識の不足ではなく、届け方の不足であることがほとんどです
- 分けて扱います。無関心には接触の回数が効き、不信には過去の総括が効きます
- 指標そのものを、経営が使っている言葉に置き換えます。解説を足すのではなく、並べる数字を入れ替えます
- 小さな成果を1つ、経営が使える形で出します。全体の計画への合意は、その後です
- 投じた金額が、いつ、いくらになって戻るかです。効率の比率だけを示しても、判断の材料になりません
- 判断がつく最小の規模を選びます。小さくしすぎると結果が読めず、次の説明ができません
- 説明の作業が増え、実行の時間が減ります。理解は目的ではなく、判断を早くするための手段です
- 経営が使っている言葉に指標を置き換え、小さな成果を1つ出します。順番はこの2つが先で、計画の合意は後です