マーケの引き継ぎで失われるもの

書けるものだけが引き継ぎ書に載るからです。
権限、関係、進行中の約束は、書式の外側にあるため引き渡されません。
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目次
目次
- 引き継ぎ書があるのに、引き継ぎで何かが失われるのはなぜか
- 書式に収まらないもの
- 権限とアカウントは、どこで止まるのか
- 個人名義で残るもの
- 外部との関係は、どう引き渡すのか
- 関係に含まれているもの
- 進行中の案件で、何が止まるのか
- 決まりかけの状態が消える
- 判断の理由が失われると、何が起きるのか
- 繰り返される検討
- 引き継ぎの期間は、どれだけ必要か
- 周期で考える
- 失われたものを、後から取り戻せるのか
- 回復の順番
- 引き継ぎの穴を、いつ塞ぐか
- 引き継ぎ書の様式に項目を足す
- よくある質問
- まとめ
書けるものだけが引き継ぎ書に載るからです。
権限、関係、進行中の約束は、書式の外側にあるため引き渡されません。
引き継ぎ書があるのに、引き継ぎで何かが失われるのはなぜか
書けるものだけが引き継ぎ書に載るからです。
権限、関係、進行中の約束は、書式の外側にあるため引き渡されません。
担当者の交代のとき、引き継ぎ書が作られます。
その書面は、業務の一覧と手順で構成されます。
書式に収まらないもの
誰に頼めば早いか、どの相手が何を嫌うか、過去にどんな約束をしたか。
こうした情報は、引き継ぎ書の項目に当てはまりません。
項目がないため、書かれないまま失われます。
失われたことに、すぐには気づかない
引き継ぎの直後は、通常の業務が続きます。
失われたものが必要になるのは、何か例外が起きたときです。
そのとき初めて、何も残っていないことが分かります。
引き継ぎで失われるものと、気づく時期
| 失われるもの | 気づく時期 | 気づき方 |
|---|---|---|
| 外部との関係 | 数か月後 | 対応が変わったと感じる |
| 進行中の非公式な約束 | 相手から言及されたとき | 話が食い違う |
| アカウントの権限 | 必要になったとき | 入れない |
| 過去の判断の理由 | 同じ議題が出たとき | なぜそうしたか誰も知らない |
| 試して失敗した施策 | 再び提案されたとき | 同じことを繰り返す |
失われるものを先に一覧にする
引き継ぎ書の様式に項目がないなら、項目を足します。項目があれば、書く対象として認識されます。
権限とアカウントは、どこで止まるのか
個人の名義で取得したものです。
会社として管理されていない権限は、担当者と一緒に消えます。
広告のアカウント、計測ツール、各種のサービス。
これらの権限が個人の名義で取得されていることがあります。
個人名義で残るもの
担当者が自分のアドレスで登録したツール、自分の名義で作った媒体のアカウント、個人の端末に入れた設定。
退職や異動の際に、これらへの経路が切れます。
権限の管理の状態と、引き継ぎ時の影響
| 管理の状態 | 引き継ぎ時に起きること | 事前にできること |
|---|---|---|
| 会社の共通の名義で管理 | 問題なく引き継げる | 名義の統一 |
| 担当者の名義だが記録がある | 手続きを踏めば移せる | 一覧の維持 |
| 担当者の名義で記録がない | 存在を把握できない | 定期的な棚卸し |
| 外部の名義 | 自社では移せない | 契約時に名義を決める |
| すでに退職済み | 回復が難しい | 退職前の確認手順 |
一覧を維持する
使っているサービスとアカウントの一覧を、会社として維持します。
一覧がないと、何が失われたかも分かりません。
退職や異動の手続きに、確認を組み込む
権限の移管を、退職や異動の手続きの項目に入れます。
本人が在籍しているうちにしか、確認できません。
外部が持つ権限も確認する
代理店やパートナーが持っている権限も、同じように一覧にします。担当者の交代時に、相手側の権限の状態も確認します。
外部との関係は、どう引き渡すのか
紹介するだけでは引き渡せません。
関係の内容を言語化し、一定期間は前任が同席する形を取ります。
外部のパートナーとの関係は、人と人の間に蓄積します。
担当が変わると、その蓄積がゼロに戻ります。
関係に含まれているもの
どこまで融通が利くか、急ぎの依頼をどう伝えるか、何を優先してもらえるか。
これは契約書には書かれていません。
外部との関係に含まれるものと、引き渡し方
| 含まれるもの | 引き渡し方 | できないと起きること |
|---|---|---|
| 依頼の伝え方の呼吸 | 同席して観察させる | やり取りが噛み合わない |
| 融通の範囲 | 過去の事例を共有する | 無理な依頼をする |
| 相手側の体制の把握 | 担当者の役割を共有する | 誰に頼めばよいか分からない |
| 過去の経緯 | なぜ今の形になったかを説明する | 決着した議論を蒸し返す |
| 非公式の約束 | 一覧にして相手とも確認する | 話が食い違う |
同席する期間を確保する
前任と後任が同席する期間を、一定確保します。
一度の顔合わせでは、関係は引き渡せません。
相手側にも確認する
引き継ぎの際に、相手側にも認識の確認を依頼します。
進行中の約束や合意事項を、双方で突き合わせます。
相手側の担当も変わることがある
代理店の担当者も交代します。双方が同時に変わると、関係はゼロから始まります。交代の時期をずらせるなら、ずらします。
進行中の案件で、何が止まるのか
決まりかけていた判断です。
議論の経過が残っていないと、後任は最初から検討し直します。
引き継ぎの時点で進行中の案件は、書面に残ります。
残らないのは、その案件のどこまでが決まっているかです。
決まりかけの状態が消える
社内で根回しが済んでいる、相手と合意の方向で話している、条件の詰めだけが残っている。
こうした状態は、書面では中途と表現されます。
後任は、中途がどこまでの中途かを知りません。
進行中の案件で引き継ぐべき情報
| 情報 | 書面に残りやすいか | 残らないと起きること |
|---|---|---|
| 案件の内容と金額 | 残る | なし |
| 現在の進捗の段階 | 残る | なし |
| 合意に近い条件 | 残りにくい | 条件が振り出しに戻る |
| 反対している人と理由 | 残りにくい | 同じ反対に再び当たる |
| 次に誰と話すか | 残りにくい | 進め方が分からない |
| 期限と背景 | 残りにくい | 優先順位が下がる |
反対している人と理由を書く
社内で反対している人がいるなら、その人と理由を書きます。
書かないと、後任が同じ壁に当たります。
引き継ぎの時期を、案件の区切りに合わせる
可能なら、進行中の案件が一段落する時期に引き継ぎます。案件の途中で交代すると、失われるものが増えます。
判断の理由が失われると、何が起きるのか
一度やめた施策が、再び提案されます。
やめた理由が残っていないため、同じ検討を繰り返します。
過去にやめた施策、選ばなかった選択肢、採用しなかった提案。
これらの理由は、記録されません。
繰り返される検討
同じ媒体を試して、同じ結果になる。
同じツールを検討して、同じ理由で見送る。
この繰り返しに、時間が使われます。
記録すべき判断と、記録しないと起きることを、項目ごとに見ていきます。
やめた施策については、記録することはやめた時期と理由、しないと起きることは再び提案され、同じ結果になる。
選ばなかった外部先については、記録することは見送った理由、しないと起きることは同じ候補を再び検討する。
変更した設定については、記録することは変更前の状態と理由、しないと起きることは元に戻す提案が出る。
除外した対象については、記録することは除外の理由、しないと起きることは再び含めて成果が落ちる。
見送ったツールについては、記録することは見送りの条件、しないと起きることは同じ比較をやり直す。
やめた理由には、期限を付ける
やめた理由は、時間とともに有効でなくなることがあります。
記録に、いつ時点の判断かを書きます。
条件が変わっていれば、再検討する余地があります。
記録の場所を一つにする
判断の記録が個人のファイルに散っていると、引き継がれません。会社として一つの場所に集めます。
引き継ぎの期間は、どれだけ必要か
業務の一巡が見える期間です。
月次の業務なら1か月、年次の業務があるなら記録で補います。
引き継ぎの期間は、退職や異動の日程から逆算して決まりがちです。
必要な期間は、業務の周期から決まります。
周期で考える
業務の周期と、必要な引き継ぎの形を、項目ごとに見ていきます。
日次については、必要な期間は数日、周期を満たせない場合は問題になりにくい。
週次については、必要な期間は2週間、周期を満たせない場合は記録で補える。
月次については、必要な期間は1か月以上、周期を満たせない場合は一巡を見せる。
四半期については、必要な期間は記録で補う、周期を満たせない場合は判断の理由を厚く残す。
年次については、必要な期間は記録で補う、周期を満たせない場合は年間の予定表を作る。
一巡を見せられない業務は、記録で補う
年に一度しかない業務は、引き継ぎ期間中に発生しません。
何がいつ起きるかの予定表と、前回の記録を残します。
引き継ぎ期間を確保できないとき
急な退職では、期間が取れません。その場合、優先順位をつけて権限と進行中の案件から引き継ぎます。関係と判断の理由は、後から部分的に回復するしかありません。
失われたものを、後から取り戻せるのか
一部は取り戻せます。
権限と進行中の案件は回復できますが、関係と判断の理由は時間がかかります。
引き継ぎが不十分だった場合、後任が状況を回復する作業が発生します。
回復できるものとできないものがあります。
回復の順番
失われたものの回復の可否を、項目ごとに見ていきます。
アカウントの権限については、回復の可否は回復できる、回復の方法は媒体や提供元への手続き。
進行中の案件の状況については、回復の可否は部分的に回復できる、回復の方法は関係者への聞き取り。
外部との関係については、回復の可否は時間をかければ回復する、回復の方法は定期的な接触の積み重ね。
過去の判断の理由については、回復の可否は回復しにくい、回復の方法は当時の資料から推測する。
試して失敗した施策については、回復の可否は回復しにくい、回復の方法は過去のデータから確認する。
最初の1か月で聞き取りを行う
後任が着任したら、関係者への聞き取りを行います。
社内の関係部署、外部のパートナー、前任の上司。
時間が経つほど、記憶が薄れます。
前任と連絡が取れる期間を決めておく
退職後も、一定期間は質問できる形にすることがあります。
その範囲と期間を、退職時に決めておきます。
回復の作業を、後任の仕事として見込む
着任直後の後任は、回復の作業に時間を使います。その期間の成果を求めると、回復の作業が進みません。
引き継ぎの穴を、いつ塞ぐか
交代が決まってからでは間に合いません。
平常時に、権限の一覧と判断の記録を維持しておきます。
引き継ぎの準備は、交代の話が出てから始めると遅くなります。
平常時の運用に組み込みます。
塞ぐ作業の順序を、項目ごとに見ていきます。
1については、やることは使っているサービスとアカウントの一覧を作る、期間の目安は2週間。
2については、やることは個人名義になっているものを会社名義に変える、期間の目安は1か月。
3については、やることは外部の取引先の一覧と、判断の記録の置き場所を決める、期間の目安は1週間。
4については、やることはやめた施策とその理由を書き出す、期間の目安は2週間。
5については、やることは引き継ぎ書の様式に不足の項目を足す、期間の目安は1週間。
6については、やることは手続きに権限の確認を組み込み、棚卸しの時期を決める、期間の目安は1週間。
引き継ぎ書の様式に項目を足す
業務の一覧と手順に加えて、権限、外部との関係、進行中の約束、判断の理由の欄を足します。
欄があれば、書く対象として認識されます。
数字は説明のための仮の値です。
たとえば使用中のサービスが18件で、うち個人名義が5件という状態なら、その5件から手を付けます。
棚卸しを年次の行事にする
一覧は、作っただけでは古くなります。
年に一度、確認する時期を決めます。
引き継ぎ後に確認する数字を、項目ごとに見ていきます。
個人名義になっているサービスの件数については、見る頻度は半年、何を確かめるかは会社名義に移せているか。
判断の記録が残っている件数については、見る頻度は四半期、何を確かめるかは記録の習慣が続いているか。
引き継ぎ後に権限が不足して止まった件数については、見る頻度は交代後の3か月、何を確かめるかは回収の漏れ。
引き継ぎ後に再検討された過去の施策の件数については、見る頻度は交代後の6か月、何を確かめるかは判断の理由が残っていたか。
外部からの問い合わせで食い違った件数については、見る頻度は交代後の3か月、何を確かめるかは約束の引き渡しができていたか。
交代後の3か月を観察する
引き継ぎの質は、交代後の数か月で分かります。
止まった件数と食い違った件数を記録し、次の引き継ぎの改善に使います。
引き継ぎで何を残すべきか判断がつかない場合は、無料相談で現状の管理の状態を見てもらうところから始められます。体制と記録の仕組みごと整える段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
引き継ぎ書を作っても何が足りないのですか
書式に項目のあるものだけが書かれます。アカウントの権限、外部との関係、進行中の非公式な約束、過去の判断の理由は項目がないため残りません。様式にこれらの欄を足すと、書く対象として認識されます。
アカウントの権限で注意することはありますか
担当者の個人名義で取得されたものは、退職や異動で経路が切れます。使っているサービスとアカウントの一覧を会社として維持し、退職と異動の手続きに権限の確認を組み込みます。
外部のパートナーとの関係はどう引き継ぎますか
紹介するだけでは引き渡せません。依頼の伝え方、融通の範囲、過去の経緯を言語化し、一定期間は前任が同席します。進行中の約束は一覧にして、相手側とも突き合わせます。
引き継ぎの期間はどれくらい必要ですか
業務の一巡が見える期間です。月次の業務なら1か月以上、年次の業務は期間中に発生しないため記録で補います。急な退職で期間が取れない場合は、権限と進行中の案件から優先します。
引き継ぎで失われたものは取り戻せますか
アカウントの権限は手続きで回復でき、進行中の案件は関係者への聞き取りで部分的に回復します。外部との関係は時間がかかり、過去の判断の理由は回復しにくいものです。着任直後の1か月で聞き取りを行います。
まとめ
- 書けるものだけが引き継ぎ書に載るからです。権限、関係、進行中の約束は、書式の外側にあるため引き渡されません
- 個人の名義で取得したものです。会社として管理されていない権限は、担当者と一緒に消えます
- 紹介するだけでは引き渡せません。関係の内容を言語化し、一定期間は前任が同席する形を取ります
- 決まりかけていた判断です。議論の経過が残っていないと、後任は最初から検討し直します
- 一度やめた施策が、再び提案されます。やめた理由が残っていないため、同じ検討を繰り返します
- 業務の一巡が見える期間です。月次の業務なら1か月、年次の業務があるなら記録で補います
- 一部は取り戻せます。権限と進行中の案件は回復できますが、関係と判断の理由は時間がかかります
- 交代が決まってからでは間に合いません。平常時に、権限の一覧と判断の記録を維持しておきます