
獲得単価の議論が行き詰まったときです。
単価の上限を上げる根拠として、顧客が生涯で生む金額が持ち出されます。
動機が根拠探しにあるときは、置き方を誤ります。
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目次
目次
- LTVを指標に置きたくなるのは、どんな局面か
- 上限を上げる根拠として持ち出される
- 実績のLTVは、いつ確定するのか
- 確定した実績は、過去の顧客のものだけ
- 予測のLTVは、どの前提に依存しているのか
- 継続率の置き方で結果が変わる
- 定義が部門で食い違うのは、どこか
- 売上か、粗利か
- LTVを目標にすると、現場の行動はどう変わるのか
- 狙う層が変わる
- 目標に置くなら、どの代理指標と組むのか
- 代理指標の条件
- 評価の指標として使ってよいのは、どこまでか
- 評価に使うと何が起きるか
- LTVを目標に置くまでの準備
- 過去の群を並べると分かること
- よくある質問
- まとめ
獲得単価の議論が行き詰まったときです。
単価の上限を上げる根拠として、顧客が生涯で生む金額が持ち出されます。
動機が根拠探しにあるときは、置き方を誤ります。
LTVを指標に置きたくなるのは、どんな局面か
獲得単価の議論が行き詰まったときです。
単価の上限を上げる根拠として、顧客が生涯で生む金額が持ち出されます。
動機が根拠探しにあるときは、置き方を誤ります。
LTVという言葉が社内で急に増える時期があります。
たいていは、獲得の単価が上がって投資の判断が止まったときです。
上限を上げる根拠として持ち出される
単価が上限に達したとき、上限そのものを上げる議論が始まります。
そのときに、一件の顧客が長期で生む金額を持ち出せば、上限は上がります。
この持ち出し方には問題があります。
長期で生む金額が本当にその水準かは、まだ確かめられていないからです。
他社が使っているから、という理由
経営から、他社はLTVで見ていると言われることがあります。
事業の型が違えば、LTVの意味も計算の方法も変わります。
LTVを指標に置きたくなる局面
| 局面 | そのときの期待 | 見落としがちなこと |
|---|---|---|
| 獲得単価が上限に達した | 上限を上げる根拠にしたい | 長期の金額が確かめられていない |
| 新規獲得が鈍化した | 既存顧客の価値で補いたい | 既存の価値は新規の代わりにならない |
| 投資の回収を説明したい | 長期の回収で正当化したい | 資金の出入りは短期で起きる |
| 経営から指示があった | 全社の共通指標にしたい | 事業の型で意味が変わる |
| 解約が増えている | 維持の投資を正当化したい | 解約の原因が特定されていない |
動機を先に確認する
なぜLTVを見たいのかを、最初に言葉にします。動機が根拠探しなら、別の指標で説明したほうが早く進みます。
実績のLTVは、いつ確定するのか
顧客との取引が終わったときです。
取引が続いている顧客の実績値は、まだ確定していません。
確定を待つと、目標として使える時期を過ぎます。
LTVには、実績と予測の二つがあります。
この区別が曖昧なまま議論が進みます。
確定した実績は、過去の顧客のものだけ
今年獲得した顧客のLTVは、何年も先まで確定しません。
確定している実績値は、既に取引が終わった顧客のものです。
取引が終わった顧客は、続いている顧客とは性質が違います。
終わった顧客の平均を、これから獲得する顧客に当てはめると、低めに出ます。
目標として使うには遅すぎる
今期の目標として置いた数字が、三年後にしか答え合わせできない。
この状態では、期中の判断に使えません。
実績が確定するまでの期間
| 事業の型 | 平均の取引期間 | 実績が確定するまで |
|---|---|---|
| 単品の通販 | 数か月から一年 | 一年以上 |
| 継続課金の消費者向け | 一年から三年 | 三年以上 |
| 継続課金の法人向け | 三年から五年 | 五年以上 |
| 高額商材の買い替え型 | 五年以上 | 五年以上 |
| 法人の取引口座 | 継続する限り無期限 | 確定しない |
途中の実績で代用する場合
獲得から十二か月時点の累計売上を使う方法があります。
確定は早くなりますが、それはLTVではなく十二か月の累計値です。
名前を分けて呼ばないと、社内で意味が混ざります。
予測のLTVは、どの前提に依存しているのか
継続率と、単価の推移と、割引率の三つです。
どれか一つの置き方を変えると、結果は大きく動きます。
予測のLTVは、計算の結果ではなく前提の集まりです。
継続率の置き方で結果が変わる
継続率を一定と置くか、期間が長くなるほど高くなると置くかで、計算結果が変わります。
実際には、長く続いた顧客ほど続きやすい傾向があります。
一定と置くと低めに、改善すると置くと高めに出ます。
将来の金額を割り引くかどうか
三年後に入る一万円と、今月入る一万円は同じ価値ではありません。
割引率を置くかどうかで、長期の事業ほど結果が変わります。
前提を変えたときの幅を示す
一つの数字だけを出すと、その数字が確定値のように扱われます。
前提を変えた場合の幅を併せて出します。
予測LTVが依存している前提
| 前提 | 置き方の違い | 結果への影響 |
|---|---|---|
| 継続率 | 一定か、期間で変化するか | 長期の事業ほど大きい |
| 単価の推移 | 横ばいか、上がるか | 追加購入のある事業で大きい |
| 割引率 | 置くか置かないか | 三年以上の事業で大きい |
| 粗利率 | 売上で見るか粗利で見るか | 原価率の高い事業で大きい |
| 対象期間 | 何年で区切るか | 区切り方で倍近く変わる |
前提は文書に残す
計算に使った前提を残さないと、数字だけが独り歩きします。
資料には、前提を必ず添えます。
数字は説明のための仮の値です。月額一万円、継続率が毎月九十五パーセントなら、期待継続月数は二十か月で予測は二十万円です。継続率を九十パーセントに置くと十か月となり、予測は半分になります。
定義が部門で食い違うのは、どこか
売上で見るか粗利で見るか、そして誰を一人と数えるかです。
この二点が揃っていないと、部門間で数字が二倍以上違います。
LTVの議論が噛み合わない原因の大半は、定義の食い違いです。
売上か、粗利か
マーケティング部門は売上で計算し、財務は粗利で計算することがあります。
原価率が四割の事業なら、両者の数字は倍近く違います。
獲得の投資判断に使うなら、粗利で見ます。
誰を一人と数えるか
法人向けの事業では、契約の単位と組織の単位が違います。
同じ会社の別部署との契約を、一人と数えるか二人と数えるかで結果が変わります。
解約後に戻ってきた顧客の扱い
一度解約した顧客が再契約した場合、同一の顧客として通算するか、別の顧客として数えるか。
ここも決めておきます。
部門で食い違うLTVの定義
| 論点 | マーケティングの見方 | 財務の見方 | 決めておくこと |
|---|---|---|---|
| 金額の基準 | 売上 | 粗利 | どちらを使うか |
| 顧客の単位 | 契約単位 | 取引先単位 | 数える単位 |
| 解約後の再契約 | 同一顧客 | 別顧客 | 通算するかどうか |
| 期間の区切り | 無期限 | 会計期間に合わせる | 何年で区切るか |
| 値引きの扱い | 定価で計算 | 実売価格 | 実売で計算するか |
定義は一つに決めて文書にする
複数の定義を並存させると、資料ごとに数字が違う状態になります。一つに決めて、他の見方は内訳として扱います。
LTVを目標にすると、現場の行動はどう変わるのか
獲得の対象が絞られます。
長く続く見込みの層だけを狙うようになり、短期の件数が落ちます。
指標を変えると、行動が変わります。
LTVを目標に置いたときの変化を、先に見込んでおきます。
狙う層が変わる
長く続く見込みの高い層に、獲得の投資が集中します。
その層は、たいてい獲得の単価が高い層です。
件数は落ち、単価は上がります。
この変化を事前に共有していないと、他の指標の未達として問題になります。
短期の売上が落ちる期間が出る
質の高い層に絞ると、獲得できる件数が減ります。
減った分の売上は、長期で回収されます。
回収されるまでの期間、短期の数字は悪化します。
LTVを目標にしたときの行動の変化を、項目ごとに見ていきます。
狙う層については、起きることは長く続く層に集中する、同時に見ておく指標は新規獲得件数。
獲得の単価については、起きることは上がる、同時に見ておく指標は回収期間。
獲得の件数については、起きることは減る、同時に見ておく指標はパイプラインの量。
訴求の内容については、起きることは継続前提の訴求に寄る、同時に見ておく指標は初回転換率。
既存顧客への投資については、起きることは増える、同時に見ておく指標は維持にかかる費用。
変化を織り込んだ目標を同時に置く
LTVだけを置くと、件数の減少が誰の責任か分からなくなります。件数の下限を制約条件として同時に置きます。
目標に置くなら、どの代理指標と組むのか
早い段階で確定し、LTVとの関係が確かめられている指標です。
初期の継続状況や、一定期間内の追加購入がこれにあたります。
LTVそのものは、期中の判断に使えません。
手前に置く指標が要ります。
代理指標の条件
獲得から数か月以内に確定すること。
過去のデータで、LTVとの関係が確かめられていること。
現場の施策で動かせること。
この三つを満たす指標を探します。
関係を確かめる手順
過去に獲得した顧客を、代理指標の値で分けます。
分けた群ごとに、その後のLTVの実績を比べます。
差が出るなら、代理指標として使えます。
差が出ないなら、その指標はLTVを予測していません。
LTVと組み合わせる代理指標を、項目ごとに見ていきます。
初回から三か月時点の継続率については、確定までの期間は三か月、確かめることは群ごとのLTVの差。
初回購入後の追加購入の有無については、確定までの期間は一か月から三か月、確かめることは追加購入層のLTVの高さ。
導入後の利用の深さについては、確定までの期間は一か月から三か月、確かめることは利用量とLTVの関係。
契約時の規模や業種については、確定までの期間は即時、確かめることは属性ごとのLTVの差。
獲得の経路については、確定までの期間は即時、確かめることは経路ごとのLTVの差。
代理指標を主指標として運用する
期中に追うのは代理指標にします。LTVは、半期や年次で答え合わせをする指標として置きます。
評価の指標として使ってよいのは、どこまでか
部門の評価には向きません。
確定が遅く、前提の置き方で動くため、評価の基準としての公平さが保てません。
KPIとして置くことと、人事評価の基準にすることは別です。
評価に使うと何が起きるか
前提の置き方で数字が動く指標を評価に使うと、前提の設定そのものが交渉の対象になります。
継続率をどう置くかで、達成か未達かが決まる状態になります。
投資判断には使える
事業としてどこまで獲得に投じるかの判断には、予測LTVが使えます。
判断に使うことと、達成を評価することを分けます。
評価に使える範囲を、項目ごとに見ていきます。
獲得投資の上限の設定については、使えるかは使える、理由は事業の判断であり評価ではない。
新規事業の成立性の検討については、使えるかは使える、理由は幅を持たせて判断できる。
部門の達成評価については、使えるかは使えない、理由は前提の置き方で結果が動く。
担当者の人事評価については、使えるかは使えない、理由は確定が遅く公平さを保てない。
施策間の比較については、使えるかは条件つきで使える、理由は同じ前提で計算した場合のみ。
施策の比較に使う場合の条件
複数の施策をLTVで比べるときは、すべて同じ前提で計算します。施策ごとに前提を変えると、比較になりません。
LTVを目標に置くまでの準備
過去のコホートの実績を並べることからです。
実績がないまま予測の式を作ると、前提の妥当性を確かめられません。
準備の中心は、計算式ではなくデータの整備です。
目標として置くまでの工程を、項目ごとに見ていきます。
1については、やることは顧客の単位と金額の基準を部門間で決める、担当はマーケティングと財務、期間の目安は三週間。
2については、やることは過去に獲得した顧客を獲得時期ごとに分ける、担当はデータ担当、期間の目安は三週間。
3については、やることは各群の累計売上と継続の推移を並べる、担当はデータ担当、期間の目安は三週間。
4については、やることは予測の前提を置き、実績と突き合わせる、担当はマーケティング責任者、期間の目安は二週間。
5については、やることは代理指標の候補を検証する、担当はマーケティング責任者、期間の目安は四週間。
6については、やることは代理指標を期中の指標、LTVを年次の指標として設計する、担当はマーケティング責任者、期間の目安は二週間。
過去の群を並べると分かること
獲得した時期ごとに顧客を分けて、その後の推移を並べます。
時期によって継続率がはっきり違う場合、獲得の方法が結果に影響していることが分かります。
この差が見えないと、予測の前提を一つに固定してしまいます。
置いたあとに点検する数字を、項目ごとに見ていきます。
代理指標の水準については、見る頻度は月次、確かめることは質が落ちていないか。
獲得時期ごとの継続率については、見る頻度は四半期、確かめることは前提が崩れていないか。
予測と実績の差については、見る頻度は半期、確かめることは予測の前提を見直す必要があるか。
獲得件数については、見る頻度は月次、確かめることは絞りすぎていないか。
回収期間の実績については、見る頻度は四半期、確かめることは資金の前提が成立しているか。
予測を更新する周期を決める
前提を置き直す時期を決めておきます。
決めていないと、古い前提の数字が使われ続けます。
経営への説明では幅を出す
一つの数字を出すと、確定値として扱われます。
前提を変えた場合の幅を添えて出します。
目標に置かない選択も残す
自社の事業でLTVが目標として機能しないと分かったら、置かない判断をします。
無理に置くと、確かめられない数字を追う期が一つ消えます。
LTVを指標に置くかどうかで判断に迷う場合は、無料相談で現状のデータから見てもらうところから始められます。指標の設計ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
LTVをKPIに置くときの最大の注意点は何ですか
確定が遅いことです。今期に獲得した顧客のLTVは何年も先まで確定せず、期中の判断に使えません。早い段階で確定する代理指標と組み合わせ、LTVは年次の答え合わせに使ってください。
予測のLTVはどこまで信用できますか
前提の集まりであり、継続率、単価の推移、割引率の置き方で結果が大きく動きます。一つの数字だけを出すと確定値のように扱われるため、前提を変えた場合の幅を併せて示してください。
売上と粗利のどちらでLTVを計算すべきですか
獲得の投資判断に使うなら粗利です。原価率が四割の事業では、売上で計算した数字と粗利で計算した数字が倍近く違います。部門間でこの基準が揃っていないと議論が噛み合いません。
LTVを目標にすると何が変わりますか
長く続く見込みの層に獲得が集中し、件数が減って単価が上がります。この変化を事前に共有していないと他の指標の未達として問題になるため、件数の下限を制約条件として同時に置いてください。
LTVを部門の評価指標にしてよいですか
向きません。前提の置き方で結果が動くため、前提の設定そのものが交渉の対象になります。獲得投資の上限を決める事業判断には使えますが、達成を評価する基準とは分けてください。
まとめ
- 獲得単価の議論が行き詰まったときです。単価の上限を上げる根拠として、顧客が生涯で生む金額が持ち出されます。動機が根拠探しにあるときは、置き方を誤ります
- 顧客との取引が終わったときです。取引が続いている顧客の実績値は、まだ確定していません。確定を待つと、目標として使える時期を過ぎます
- 継続率と、単価の推移と、割引率の三つです。どれか一つの置き方を変えると、結果は大きく動きます
- 売上で見るか粗利で見るか、そして誰を一人と数えるかです。この二点が揃っていないと、部門間で数字が二倍以上違います
- 獲得の対象が絞られます。長く続く見込みの層だけを狙うようになり、短期の件数が落ちます
- 早い段階で確定し、LTVとの関係が確かめられている指標です。初期の継続状況や、一定期間内の追加購入がこれにあたります
- 部門の評価には向きません。確定が遅く、前提の置き方で動くため、評価の基準としての公平さが保てません
- 過去のコホートの実績を並べることからです。実績がないまま予測の式を作ると、前提の妥当性を確かめられません