
失う顧客の数が見えないからです。
見えないものは最悪を想定するため、実際より大きな離反を恐れて決断が止まります。
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目次
目次
- 値上げの判断が、なぜ先送りされ続けるのか
- 見えないものが判断を止める
- どこまでの離反なら、許容できるのか
- 境目の考え方
- 離れる顧客と残る顧客は、どこで分かれるのか
- 層ごとの動きの違い
- 値上げの幅は、どう決めるのか
- 上げ幅を決める要素
- 誰に、どの順で、どう伝えるのか
- 順番を決める
- 値上げ後の数字を、どう見るのか
- 3つを同時に見る
- 値上げを機に、やってはいけないこと
- 例外が生む問題
- 値上げを実行するまでの段取り
- 見る数字を決める
- よくある質問
- まとめ
失う顧客の数が見えないからです。
見えないものは最悪を想定するため、実際より大きな離反を恐れて決断が止まります。
値上げの判断が、なぜ先送りされ続けるのか
失う顧客の数が見えないからです。
見えないものは最悪を想定するため、実際より大きな離反を恐れて決断が止まります。
値上げの議論は、必要性では止まりません。
コストが上がっている事実は誰も否定しません。
止まるのは、いくら失うかが分からないからです。
見えないものが判断を止める
値上げによる離反は、事前に正確には分かりません。
分からないものを、社内では大きく見積もります。
一方で値上げしない場合の損失は、毎月少しずつ出るため小さく見えます。
比べるべきは2つの損失
値上げをする場合としない場合の比較
| 項目 | 値上げする | 値上げしない |
|---|---|---|
| 単価 | 上がる | 据え置き |
| 顧客数 | 一部減る | 維持される |
| 粗利 | 離反が一定以下なら増える | コスト上昇分だけ減り続ける |
| 見えやすさ | 離反がすぐ見える | 悪化が少しずつ進む |
| 戻せるか | 下げるのは難しい | いつでも上げられるわけではない |
先送りの本当のコスト
値上げを1年先送りすると、その1年分の粗利が失われます。
さらに、上げ幅が大きくなり、離反も大きくなります。
先送りは、判断を避けているのではなく、より難しい判断を将来に渡しているだけです。
決めるべきは上げるかどうかではない
上げるかどうかを議論すると決着しません。どこまでの離反なら許容できるかを先に決めると、議論が計算になります。
どこまでの離反なら、許容できるのか
値上げ後の粗利が、値上げ前の粗利を下回らない範囲です。
この境目は計算で出せます。
許容できる離反率は、感覚ではなく計算で出ます。
値上げ幅と現在の粗利率が分かれば求められます。
境目の考え方
値上げによって単価が上がり、顧客数が減ります。
粗利の総額が減らない範囲が、許容できる離反です。
粗利率が低い事業ほど、許容できる離反は大きくなります。
数字は説明のための仮の値です。
値上げ幅|粗利率30%の場合|粗利率60%の場合
5%|約14%まで|約8%まで
10%|約25%まで|約14%まで
15%|約33%まで|約20%まで
20%|約40%まで|約25%まで
粗利率が低い事業ほど、値上げは効く
粗利率が低いということは、単価の上昇分がほぼそのまま粗利になるということです。
このため、多少の離反があっても粗利は増えます。
粗利率が高い事業では、顧客1件を失う痛みが大きくなります。
計算に入れ忘れやすいもの
離反した顧客の分、供給の余力が生まれます。
その余力で新規を取れるなら、実質的な損失はさらに小さくなります。
逆に、固定費の配賦が残る場合は、損失が計算より大きくなります。
計算結果を先に共有する
許容できる離反率を経営と共有してから実行すると、実行後の会議の性質が変わります。離反が出たことではなく、許容範囲内かどうかが議題になります。
離れる顧客と残る顧客は、どこで分かれるのか
価格で選んでいた顧客が離れ、それ以外の理由で選んでいた顧客が残ります。
自社がどちらの層を多く抱えているかで、離反の量が変わります。
値上げの影響は、顧客全体に均一には出ません。
離れやすい層と、ほとんど動かない層に分かれます。
層ごとの動きの違い
顧客の層と、値上げへの反応
| 層 | 値上げへの反応 | 事前にできること |
|---|---|---|
| 価格で選んでいる | 離れやすい | 離反を織り込む |
| 切り替えの手間が大きい | 残りやすい | 通常通り通知する |
| 自社の対応に依存している | 残りやすい | 関係を維持する |
| 取引が惰性で続いている | 条件次第 | 見直しの機会にする |
| 最近取引を始めた | 判断が分かれる | 値上げ前に関係を作る |
どの層が多いかを事前に知る
既存顧客を、購入理由と切り替えの難しさで分類します。
過去の見積の交渉履歴や、値引きを求められた回数が手がかりになります。
値引き交渉が多かった顧客は、価格で選んでいる層に近くなります。
離れてよい顧客がいる
すべての顧客を残す必要はありません。
値引きを重ねて粗利がほとんど残っていない顧客は、離れても損失が小さいことがあります。
値上げは、取引の構成を整理する機会にもなります。
離れてほしくない顧客への対応を先に決める
売上の上位を占める顧客が離れると、計算が崩れます。上位の顧客については、通知の方法と時期を個別に設計します。一律の通知で済ませると、交渉の余地を失います。
値上げの幅は、どう決めるのか
コストの上昇分だけでは足りません。
次に上げるまでの期間を見込んで、上げ幅を決めます。
値上げの幅をコストの上昇分ちょうどに合わせると、翌年また上げることになります。
値上げは実施のたびに離反を生むため、回数を減らすほうが総損失は小さくなります。
上げ幅を決める要素
上げ幅を決めるときに入れる要素
| 要素 | 内容 | 見落とすとどうなるか |
|---|---|---|
| 現在のコスト上昇分 | 原価と人件費の増加 | すぐに利益が消える |
| 次回までの期間の見込み分 | 今後2年から3年の上昇見込み | 翌年また上げることになる |
| 提供内容の変更分 | 内容を追加する場合の分 | 値上げと見えにくくなる |
| 競合との価格差 | 上げた後の相対的な位置 | 突出すると離反が増える |
| 許容できる離反率 | 計算で出した境目 | 上げ幅を決められない |
一度に上げるか、分けるか
小刻みに上げると、そのたびに通知と説明が必要になります。
顧客にとっても、毎年上がる取引先という印象が残ります。
回数を減らし、一度に必要な幅を上げるほうが、結果として摩擦が小さいことが多いです。
内容を変えて上げる方法
同じ商材の価格を上げるのではなく、提供内容を変えて価格帯を変える方法があります。
顧客にとっては値上げではなく、選択肢の変更として受け取られます。
ただし、内容を増やすコストが上げ幅を超えないかを確かめます。
新規と既存で時期を分ける
新規の価格を先に上げ、既存は後から段階的に上げる方法があります。新規は比較の対象が市場全体なので、既存より離反の影響を見やすくなります。
誰に、どの順で、どう伝えるのか
売上の上位から個別に、それ以外は一斉に伝えます。
通知の順番を間違えると、上位顧客が他の経路から先に知ることになります。
値上げの通知は、内容より順番と方法で結果が変わります。
同じ値上げでも、伝え方によって離反の量が変わります。
順番を決める
通知の順番と方法を、項目ごとに見ていきます。
売上上位の顧客については、時期は最も早く、方法は個別の訪問か面談、伝える人は営業責任者。
契約更新が近い顧客については、時期は早め、方法は個別の連絡、伝える人は担当営業。
取引が長い顧客については、時期は中間、方法は個別の書面と連絡、伝える人は担当営業。
その他の既存顧客については、時期は一斉、方法は書面と案内、伝える人は会社として。
新規の見込み客については、時期は価格改定日から、方法は通常の案内、伝える人はマーケ。
伝える内容の順序
値上げの事実を先に言います。
理由を先に長く説明すると、言い訳に聞こえます。
事実、実施時期、理由、今後の提供内容の順で伝えます。
社内への共有を先に済ませる
営業やカスタマーサポートが、顧客より後に知る状態を作らないようにします。
顧客から聞かれて答えられないと、信頼が落ちます。
想定される質問と回答を、通知の前に全員に配ります。
広告と公開情報の整合を取る
サイトの価格表示、資料、広告の文言が古いままだと、問い合わせの段階で矛盾が出ます。価格改定日に合わせて、外部に出ている情報を一斉に直します。直す対象の一覧を、通知の準備と同時に作ります。
値上げ後の数字を、どう見るのか
離反率、単価、粗利の3つを月次で並べます。
離反率だけを見ると、許容範囲内でも失敗に見えます。
値上げ後の数か月は、社内の空気が悪くなりやすい期間です。
離反の報告が目立ち、増えた粗利は見えにくいからです。
3つを同時に見る
値上げ後に並べる数字を、項目ごとに見ていきます。
離反率については、見る頻度は月次、判断の基準は事前に計算した許容範囲の内か。
平均単価については、見る頻度は月次、判断の基準は想定した幅で上がっているか。
粗利の総額については、見る頻度は月次、判断の基準は値上げ前を下回っていないか。
新規の獲得数については、見る頻度は月次、判断の基準は価格が障害になっていないか。
失注理由の価格の割合については、見る頻度は月次、判断の基準は新規側での影響。
離反が許容範囲を超えたとき
すぐに価格を戻す判断は避けます。
一度下げると、次に上げるのが極めて難しくなります。
まず、離れているのがどの層かを確かめます。
価格で選んでいた層なら想定内、そうでないなら伝え方に問題があります。
新規側の影響を見落とさない
既存顧客の離反に注意が向きますが、新規の獲得への影響も出ます。
問い合わせ数、商談化率、失注理由の構成を、値上げ前の3か月と比べます。
効果の判定は半年で行う
値上げの影響は、契約の更新のタイミングによって遅れて出ます。月次で追いながら、成否の判定は半年後に行います。3か月で判定すると、まだ更新が来ていない顧客の動きが入りません。
値上げを機に、やってはいけないこと
個別の例外を認めることです。
例外を1件認めると、その情報が広がり、価格そのものが信用されなくなります。
値上げの実行で最も崩れやすいのが、交渉での例外です。
現場は目の前の顧客を失いたくないため、例外を求めます。
例外が生む問題
値上げ時にやってしまいがちな対応を、項目ごとに見ていきます。
交渉で個別に据え置くについては、その場の効果は顧客を失わない、後で起きることは他の顧客に伝わり不公平になる。
一部だけ値上げ幅を小さくするについては、その場の効果は摩擦が減る、後で起きることは基準がないため際限なく広がる。
値上げと同時に値引きを出すについては、その場の効果は通しやすくなる、後で起きることは実質的に値上げになっていない。
通知を遅らせて様子を見るについては、その場の効果は混乱を避けられる、後で起きることは顧客が別経路で知り不信になる。
理由をコスト増だけにするについては、その場の効果は説明しやすい、後で起きることは提供価値の議論ができない。
例外を作るなら、基準を先に決める
例外をまったく認めない運用が難しい場合もあります。
その場合は、どういう条件なら猶予を認めるかを先に文書にします。
条件に該当すれば認め、しなければ認めない。
現場の裁量で決めさせないことが要点です。
値上げの理由をコストだけにしない
コスト上昇だけを理由にすると、コストが下がったら下げるのかという話になります。
提供している内容や体制の変化も併せて説明します。
値上げを繰り返す予定があるなら、先に言う
今後も定期的に見直す方針があるなら、最初の通知でその旨を伝えます。後から伝えると、毎回不意打ちになります。
値上げを実行するまでの段取り
許容できる離反率を計算し、顧客を層に分け、通知の順番を決めます。
この3つが揃ってから、実施日を決めます。
値上げの準備で最も時間がかかるのは、価格を決める作業ではありません。
顧客の層を把握し、社内の運用を揃える作業です。
値上げまでの作業の並びを、項目ごとに見ていきます。
1については、やることは粗利率から許容できる離反率を計算する、期間の目安は1週間、担当は経理とマーケ。
2については、やることは既存顧客を購入理由と切り替えの難しさで分類する、期間の目安は3週間、担当は営業。
3については、やることは上げ幅を決めて経営の承認を取る、期間の目安は2週間、担当は決裁者。
4については、やることは通知の順番と担当と文面を決める、期間の目安は2週間、担当は営業とマーケ。
5については、やることは社内向けの想定質問と回答を配る、期間の目安は1週間、担当は営業責任者。
6については、やることは外部に出ている価格情報の修正箇所を洗い出す、期間の目安は2週間、担当はマーケ。
7については、やることは上位顧客から順に通知を始める、期間の目安は1か月、担当は営業。
見る数字を決める
数字は説明のための仮の値です。
たとえば粗利率が40%、値上げ幅が10%なら、粗利の総額を維持できる離反の上限は約20%です。
現在の顧客のうち価格で選んでいる層が15%なら、計算上は実行できる範囲に入ります。
値上げの前後で追う項目を、項目ごとに見ていきます。
価格で選んでいる顧客の割合については、時期は実施前、確認することは離反の見込み。
上位顧客の反応については、時期は通知直後、確認することは計算の前提が崩れていないか。
解約と契約終了の件数については、時期は実施後の月次、確認することは許容範囲の内か。
平均単価と粗利の総額については、時期は実施後の月次、確認することは値上げが成立しているか。
新規の問い合わせ数については、時期は実施後の月次、確認することは新規側への影響。
例外を認めた件数については、時期は実施後の月次、確認することは運用が崩れていないか。
実施日を決めるのは最後
準備が終わる前に実施日を先に決めると、準備が間に合わないまま通知が始まります。
特に、外部に出ている価格情報の修正は漏れが出やすい作業です。
次回の見直し時期を同時に決める
今回の値上げを決めるときに、次に見直す時期も決めます。
決めておくと、次回はコスト上昇が積み上がる前に判断できます。
値上げでどこまでの離反を許容できるか分からない場合は、無料相談で現状の数字を整理するところから始められます。価格と提供内容ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
値上げでどれくらい顧客が離れるか分かりません
正確な予測はできませんが、許容できる離反率は計算で出ます。粗利率と値上げ幅から、粗利の総額が減らない境目を求めてください。粗利率が低い事業ほど、許容できる離反は大きくなります。
値上げ幅はコストの上昇分に合わせればいいですか
それだけでは翌年また上げることになります。今後2年から3年の上昇見込みを含めて決めてください。値上げは実施のたびに離反を生むため、回数を減らすほうが総損失は小さくなります。
値上げの通知はいつ、どの順で出せばいいですか
売上上位の顧客から個別に、最も早く伝えてください。上位顧客が一斉通知や別経路で先に知ると、交渉の余地を失います。社内への共有も顧客への通知より前に済ませてください。
交渉で据え置きを求められた場合はどうすればいいですか
個別の例外を現場の裁量で認めないでください。1件認めると情報が広がり、価格そのものが信用されなくなります。猶予を認めるなら、条件を先に文書にして、該当するかどうかで機械的に判断してください。
値上げの成否はいつ判断すればいいですか
月次で離反率、平均単価、粗利の総額を並べながら、成否の判定は半年後に行ってください。契約の更新時期によって影響が遅れて出るため、3か月では動いていない顧客が含まれません。
まとめ
- 失う顧客の数が見えないからです。見えないものは最悪を想定するため、実際より大きな離反を恐れて決断が止まります
- 値上げ後の粗利が、値上げ前の粗利を下回らない範囲です。この境目は計算で出せます
- 価格で選んでいた顧客が離れ、それ以外の理由で選んでいた顧客が残ります。自社がどちらの層を多く抱えているかで、離反の量が変わります
- コストの上昇分だけでは足りません。次に上げるまでの期間を見込んで、上げ幅を決めます
- 売上の上位から個別に、それ以外は一斉に伝えます。通知の順番を間違えると、上位顧客が他の経路から先に知ることになります
- 離反率、単価、粗利の3つを月次で並べます。離反率だけを見ると、許容範囲内でも失敗に見えます
- 個別の例外を認めることです。例外を1件認めると、その情報が広がり、価格そのものが信用されなくなります
- 許容できる離反率を計算し、顧客を層に分け、通知の順番を決めます。この3つが揃ってから、実施日を決めます