
両者を比べる物差しが揃っていないからです。
新規は獲得単価で語られ、既存は工数で語られるため、同じ土俵に乗りません。
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目次
目次
- 新規と既存の配分が、なぜ毎年決まらないのか
- 語られ方が非対称になっている
- 同じ物差しに乗せるには、何を揃えるのか
- 既存維持の投入を、金額にする
- 事業のフェーズで、配分はどう変わるのか
- 顧客数が少ない時期
- 解約率が、配分の判断をどう変えるのか
- 流出が成長を打ち消す
- 追加の1円は、どちらに投じるべきなのか
- 平均ではなく、追加分で比べる
- 配分を決めたあと、組織はどう変わるのか
- 指標を先に変える
- 配分は、どのタイミングで見直すのか
- 効果が出るまでの時間を待つ
- 立ち上げはどこから手をつけるか
- 見る数字を決める
- よくある質問
- まとめ
両者を比べる物差しが揃っていないからです。
新規は獲得単価で語られ、既存は工数で語られるため、同じ土俵に乗りません。
新規と既存の配分が、なぜ毎年決まらないのか
両者を比べる物差しが揃っていないからです。
新規は獲得単価で語られ、既存は工数で語られるため、同じ土俵に乗りません。
予算の配分を議論すると、新規獲得の話は数字で進み、既存維持の話は必要性の主張で進みます。
数字がある側に予算が寄るのは自然な結果です。
配分が決まらないのではなく、比べられていないというのが実態です。
語られ方が非対称になっている
新規獲得は、投下金額と獲得件数から単価が出ます。
既存維持は、担当者の工数やフォローの回数で語られます。
金額に換算されていない側は、削減の議論で不利になります。
新規と既存が比べられない理由
| 論点 | 新規獲得 | 既存維持 |
|---|---|---|
| 投下する資源 | 広告費として計上 | 人件費に埋もれる |
| 成果の計上 | 獲得件数で出る | 継続した事実は記録されにくい |
| 効果の時期 | 当期に出る | 翌期以降に出る |
| 失敗の可視性 | 未達として見える | 失われた売上として見えにくい |
削減の対象になりやすい
Macbee Planetが2025年12月に実施した調査では、削減の対象として顧客維持の施策を挙げた企業がBtoCで40.7%ありました。
効果が数字で示されていない領域から削られる傾向が出ています。
比較の前提を作る作業が先
配分の会議を開く前に、両方を同じ単位に換算する作業を済ませます。これをやらないまま議論すると、声の大きさで決まります。
同じ物差しに乗せるには、何を揃えるのか
投じた1円あたりの粗利と、回収までの期間を揃えます。
この2つで比べれば、新規と既存は同じ表に並べられます。
比較のために必要なのは、複雑な計算ではありません。
既存側の投入と成果を、金額で書き出すことです。
既存維持の投入を、金額にする
担当者の工数を人件費に換算し、ツールの費用と施策の費用を足します。
これが既存維持への投下額です。
既存維持の成果を、金額にする
継続した顧客の売上ではなく、施策によって継続した分を成果とします。
施策がなかった場合の解約率との差から出します。
物差しの揃え方
| 項目 | 新規獲得 | 既存維持 |
|---|---|---|
| 投下額 | 広告費と制作費 | 工数の人件費とツール費 |
| 成果 | 新規受注の粗利 | 解約を防いだ分の粗利 |
| 効率 | 粗利 ÷ 投下額 | 粗利 ÷ 投下額 |
| 回収期間 | 初回取引から何か月 | 施策実施から何か月 |
防いだ分の見積もりは、粗くてよい
何件の解約を防いだかを正確に出すことはできません。
施策を実施した群と実施していない群の解約率の差から、幅をもって見積もります。
精度より、桁が合っていることが要点です。
回収期間の違いを明示する
新規獲得は投下から回収まで時間がかかります。既存維持は、比較的早く効きます。資金繰りに余裕がない時期は、この差が判断に影響します。
事業のフェーズで、配分はどう変わるのか
市場を取りにいく時期は新規へ、顧客基盤ができた時期は既存へ寄せます。
どのフェーズでも、既存をゼロにはしません。
配分に唯一の正解はありません。
事業のフェーズによって、投じるべき先が変わります。
顧客数が少ない時期
既存に投じても、母数が小さく効果が限られます。
新規に寄せるのが合理的です。
顧客基盤が積み上がった時期
既存からの売上が全体の過半を占めるようになると、維持への投資の効きが大きくなります。
同じ1円でも、既存に投じたほうが粗利が出ます。
フェーズ別の配分の考え方
| フェーズ | 既存売上の比率 | 寄せる先 | 既存への最低限 |
|---|---|---|---|
| 立ち上げ | 2割未満 | 新規 | 解約理由の記録 |
| 拡大 | 2割から5割 | 新規寄り | 初期の定着支援 |
| 安定 | 5割以上 | 既存寄り | 定着支援と拡大提案 |
| 縮小 | 5割以上 | 既存 | 流出の抑制 |
市場が動いているときの例外
市場が拡大している局面では、安定期でも新規に寄せる判断があります。
シェアを取れる時期は限られるためです。
フェーズの判定は、比率で行う
感覚ではなく、既存売上の比率と顧客数の推移で判定します。比率を毎年出しておけば、フェーズの移行に気づけます。
解約率が、配分の判断をどう変えるのか
解約率が高い状態で新規に投じても、入れた分だけ抜けていきます。
一定の水準を超えたら、既存を先に直します。
新規獲得と既存維持は、独立した選択肢ではありません。
既存の流出が大きいと、新規への投資の効率そのものが落ちます。
流出が成長を打ち消す
年間の解約率が20%なら、顧客基盤は5年でほぼ入れ替わります。
同じ売上を保つだけで、毎年2割の新規が要ります。
解約率と、成長に必要な新規の量
| 年間の解約率 | 横ばいに必要な新規 | 1割成長に必要な新規 |
|---|---|---|
| 5% | 既存の5%分 | 既存の15%分 |
| 10% | 既存の10%分 | 既存の20%分 |
| 20% | 既存の20%分 | 既存の30%分 |
| 30% | 既存の30%分 | 既存の40%分 |
数字は説明のための仮の値です。
先に穴を塞ぐ判断
解約率が高いほど、新規に投じた金額の回収が難しくなります。
獲得単価の回収に12か月かかる事業で、平均継続が10か月なら、獲得するほど損失が出ます。
解約の内訳を見てから決める
解約には、事業の都合による避けられないものと、対処できるものが混ざります。対処できる部分の比率が小さければ、既存に寄せても効きません。
追加の1円は、どちらに投じるべきなのか
限界の効率で比べます。
現在の配分から1割足したときに、どちらが多くの粗利を生むかで決めます。
配分の議論は、全体をどう割るかの話になりがちです。
実際に決めるのは、追加分をどちらに入れるかです。
平均ではなく、追加分で比べる
これまでの平均効率が高い側に寄せると、その側の効率が下がっていることに気づけません。
直近で増やした分がどれだけ効いたかを見ます。
追加投資の効き方の比較を、項目ごとに見ていきます。
新規獲得については、追加1割で増える粗利は逓減する、効果が出るまでは3か月から6か月、上限の有無は媒体の在庫と単価。
既存維持については、追加1割で増える粗利は対象数に比例、効果が出るまでは1か月から3か月、上限の有無は顧客数が上限。
上位顧客の拡大については、追加1割で増える粗利は案件により大きい、効果が出るまでは3か月、上限の有無は対象が限られる。
新規側の逓減を測る
広告予算を増やした過去の時期に、獲得単価がどれだけ上がったかを見ます。
予算を2割増やして単価が3割上がっていれば、限界の効率は明確に落ちています。
既存側の上限を見る
既存への投資は、顧客数が上限です。すべての顧客に手が回っている状態なら、追加しても効きません。
配分を決めたあと、組織はどう変わるのか
予算だけ動かしても、担当と評価指標が変わらなければ実態は動きません。
配分の変更は、人と指標の変更とセットにします。
既存に寄せると決めても、マーケティング部門の指標が新規獲得件数のままなら、現場は新規を追い続けます。
指標を先に変える
既存に寄せるなら、継続率や既存からの売上を指標に入れます。
入れないまま予算だけ移すと、成果が誰の手柄にもなりません。
配分と、組織の対応を、項目ごとに見ていきます。
新規に寄せるについては、変える指標は新規獲得件数と有効リード、担当の置き方は獲得の専任を置く。
既存に寄せるについては、変える指標は継続率と既存売上、担当の置き方は既存の専任を置く。
両方を維持については、変える指標は両方を並べて持つ、担当の置き方は兼務にすると新規に寄る。
兼務は、新規に寄る
同じ担当者が両方を持つと、数字が見えやすい新規に時間が寄ります。
両方に投資するなら、担当を分けます。
営業との役割の重複を整理する
既存への働きかけは、営業が担っていることが多い領域です。マーケティングが入るなら、どこまでを担当するかを先に決めます。
配分は、どのタイミングで見直すのか
年に一度、期首に決めます。
期中に何度も動かすと、どちらの施策も効果が出る前に止まります。
配分の変更は、効果が出るまでに時間がかかります。
短い周期で動かすと、判断の材料が揃いません。
効果が出るまでの時間を待つ
新規への投資は3か月から6か月、既存への投資は1か月から3か月で効き始めます。
どちらも、1か月で判断できるものではありません。
配分の見直しの周期を、項目ごとに見ていきます。
全体の配分については、周期は年次、判断の材料はフェーズと解約率。
四半期の実行配分については、周期は四半期、判断の材料は限界効率の実績。
月次の調整については、周期は月次、判断の材料は大きくは動かさない。
期中に動かすのは、前提が崩れたとき
解約率が想定を大きく超えた、予算が削られた、主力商材が変わった。
こうした場合に限り、期中に配分を見直します。
元に戻す判断も記録する
配分を変えて効果が出なかった場合、なぜ効かなかったかを記録します。記録がないと、数年後に同じ配分変更が提案されます。
立ち上げはどこから手をつけるか
既存維持への投入を金額に換算することからです。
金額になっていないものは、配分の議論の土俵に上がりません。
配分を決める作業の大半は、既存側の数字を作ることです。
調整の並びを、項目ごとに見ていきます。
1については、やることは既存売上の比率と解約率を出す、期間の目安は1週間。
2については、やることは既存維持にかかっている工数を金額にする、期間の目安は2週間。
3については、やることは防いだ解約の分を粗利で見積もる、期間の目安は2週間。
4については、やることは新規側の限界効率を過去の実績から出す、期間の目安は1週間。
5については、やることはフェーズを判定して配分の方向を決める、期間の目安は1週間。
6については、やることは指標と担当を配分に合わせて変える、期間の目安は1か月。
見る数字を決める
数字は説明のための仮の値です。
既存売上が全体の6割、年間解約率が15%なら、横ばいを保つだけで既存の15%分の新規が要ります。
この状態で新規にだけ投じても、翌年の伸びは限られます。
定着を見る目安を、項目ごとに見ていきます。
既存売上の比率については、周期は四半期、配分との関係はフェーズの判定。
年間解約率については、周期は四半期、配分との関係は穴の大きさ。
新規の獲得単価の推移については、周期は月次、配分との関係は限界効率の低下。
既存維持への投下額については、周期は四半期、配分との関係は比較の土俵に乗せる。
継続率の推移については、周期は四半期、配分との関係は既存投資の効き。
上位顧客の構成比については、周期は四半期、配分との関係は流出の影響度。
最初の一歩は、既存の数字を出すこと
新規側の数字は、たいてい既に揃っています。
既存側を金額にした時点で、配分の議論の形が変わります。
一度で正確にしない
防いだ解約の見積もりは、初年度は粗くて構いません。
毎年更新するうちに精度が上がります。
新規と既存のどちらに投資すべきか判断に迷う場合は、無料相談で現状の売上構成を見てもらうところから始められます。獲得と維持の設計ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
新規と既存の配分に目安はありますか
既存売上の比率で判断します。2割未満なら新規寄り、5割以上なら既存寄りが基本ですが、市場が拡大している局面では安定期でも新規に寄せる判断があります。
既存維持の効果をどう数字にしますか
施策を実施した群と実施していない群の解約率の差から、防いだ解約の分を粗利で見積もります。精度より桁が合っていることが要点です。
解約率が高い状態で新規に投資してもいいですか
獲得単価の回収にかかる期間より平均継続期間が短いなら、獲得するほど損失が出ます。まず解約の内訳を見て、対処できる部分の比率を確認してください。
予算を既存に寄せたのに実態が変わりません
指標と担当が新規のままになっている可能性があります。継続率や既存売上を指標に入れ、担当を分けてください。兼務にすると時間は新規に寄ります。
配分は期中に変えてもいいですか
効果が出るまでに新規で3か月から6か月かかるため、基本は年次で決めます。解約率が想定を大きく超えた場合や予算が削られた場合に限り、期中に見直します。
まとめ
- 両者を比べる物差しが揃っていないからです。新規は獲得単価で語られ、既存は工数で語られるため、同じ土俵に乗りません
- 投じた1円あたりの粗利と、回収までの期間を揃えます。この2つで比べれば、新規と既存は同じ表に並べられます
- 市場を取りにいく時期は新規へ、顧客基盤ができた時期は既存へ寄せます。どのフェーズでも、既存をゼロにはしません
- 解約率が高い状態で新規に投じても、入れた分だけ抜けていきます。一定の水準を超えたら、既存を先に直します
- 限界の効率で比べます。現在の配分から1割足したときに、どちらが多くの粗利を生むかで決めます
- 予算だけ動かしても、担当と評価指標が変わらなければ実態は動きません。配分の変更は、人と指標の変更とセットにします
- 年に一度、期首に決めます。期中に何度も動かすと、どちらの施策も効果が出る前に止まります
- 既存維持への投入を金額に換算することからです。金額になっていないものは、配分の議論の土俵に上がりません