
国内で効いている経路の前提が、その国では成立していないからです。
同じ構成を持ち込むと、費用だけが同じで成果が出ません。
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目次
目次
- 国をまたいだ途端にチャネルの設計が崩れるのは、なぜか
- 翻訳しただけの資料が読まれない理由
- どの国から始めるかを、何で決めるのか
- 一度に複数の国を始めない理由
- 現地のチャネル構成を、どう組み替えるのか
- 代理店や販売店を経由するときの判断
- 言語と内容を、どこまで作り分けるのか
- 現地の事例をいつ揃えるか
- 立ち上げの期間と費用を、どう見込むのか
- 撤退の条件を開始の会議で決める
- 本社と現地の役割を、どう分けるのか
- 現地に人を置かず委託先を使う場合
- 海外のチャネル設計で、何を見誤りやすいのか
- 成果が出ない国の扱いをどう決めるか
- 海外での経路づくりを、どこから始めるか
- よくある質問
- まとめ
国内で効いている経路の前提が、その国では成立していないからです。
同じ構成を持ち込むと、費用だけが同じで成果が出ません。
国をまたいだ途端にチャネルの設計が崩れるのは、なぜか
国内で効いている経路の前提が、その国では成立していないからです。
同じ構成を持ち込むと、費用だけが同じで成果が出ません。
海外展開の初年度にやることは、たいてい国内の施策の移植です。
検索広告を出し、同じ内容のサイトを翻訳して置き、問い合わせを待ちます。
反応が出ないとき、社内で最初に疑われるのは施策の質です。
広告の文言が悪い、着地ページの作りが悪い、という議論になります。
実際に崩れているのは、その手前にある前提のほうです。
国内の経路は、日本の買い手が情報を探して比べる順番に合わせて組み上がっています。
順番が違う国に同じ構成を置くと、経路そのものに人がいません。
人がいない場所に出稿しているので、文言をいくら直しても反応は戻りません。
最初に崩れるのは、検索という行動が検討のどこに位置しているかです。
国内では、課題を言葉にして検索し、出てきた会社を比べるという流れが成立します。
国によっては、業者の選定が紹介、展示会、業界団体を経由して進みます。
検索する人がいないのではなく、検索する場面が検討のかなり後ろに来ます。
この場合、検索広告に予算を置いても、すでに候補が固まった後の人にしか届きません。
金額を増やすほど、競合の顧客が最終確認のために検索した分を拾う形になります。
次に崩れるのは、購買を決める場所です。
本社が一括で決める国と、現地法人が個別に決める国では、届けるべき相手が入れ替わります。
本社決裁の国で現地の担当者にだけ接触を集めると、話は進んでも決裁の場に届きません。
現地決裁の国で本社にだけ接触すると、現場が実際に困っている内容を拾えません。
三つ目は、社名の認知の水準です。
国内では、業界のなかで名前がある程度知られている前提で経路が組まれています。
海外では、その前提がゼロから始まります。
同じ露出量に対する反応が数分の一になるのは、施策の能力の差ではなく前提の差です。
翻訳しただけの資料が読まれない理由
国内向けの資料をそのまま訳すと、前提の説明が抜けたまま残ります。
国内では説明しなくても通じることが、その国では通じません。
業界の慣習、法制度を前提にした記述、商流のなかでの自社の位置。
これらに触れないまま訳文が並ぶと、読み手にとっては話が飛んでいる文書になります。
読み手から見れば、自分に向けて書かれていない資料です。
最後まで読まれないので、その先の問い合わせにもつながりません。
この状態は、社内では翻訳の品質の問題として報告されがちです。
直すべきなのは文の精度ではなく、どの前提を補って書くかという構成の設計です。
崩れているのは施策ではなく前提です。検索の位置、決裁の場所、社名の認知の三つを、その国について先に確かめてください。
どの国から始めるかを、何で決めるのか
市場の大きさではなく、自社がすでに接点を持てる経路があるかで決めます。
大きい市場ほど、参入にかかる費用も競合の厚みも大きくなります。
進出先の検討は、市場規模の資料から始まることが多くあります。
その順番で並べると、最も難しい国が候補の先頭に来ます。
市場が大きいということは、そこですでに多くの会社が売っているということです。
買い手の側にも比較の経験があり、無名の新規参入に対する見方が厳しくなります。
一方で、自社がすでに接点を持っている国は、立ち上がりの速度が違います。
接点があるということは、その国の買い手が自社を選ぶ理由を一度は持ったということです。
接点の起点は三つの場所にあります。
既存顧客の海外拠点、すでに届いている問い合わせの発生国、取引先からの紹介が及ぶ範囲です。
問い合わせの発生地域は、社内に記録が残っているはずです。
過去2年分を国別に集計するだけで、候補の並びが変わることがあります。
この集計を先にやらないまま調査会社の資料を買うと、自社との関係が薄い情報が並びます。
資料は候補を絞った後に、その国の制度や競合を確かめるために使うほうが効きます。
次に置く軸は、既存の資料がどこまで流用できるかです。
英語圏であれば、技術資料や仕様書をほぼそのまま使える場合があります。
流用できる範囲が広いほど、立ち上げにかかる期間が短くなります。
期間が短いということは、判断に必要な材料が早く手に入るということです。
三つ目の軸は、規制と許認可です。
事業によっては、その国では提供できない、あるいは現地法人がないと提供できない場合があります。
データの取り扱い、表示の規制、資格の要件。
これらは国ごとに制度が異なるため、掲載時点の最新の公式ガイドラインで確認してください。
規制の確認を後回しにすると、経路の設計をやり直すことになります。
参入の可否そのものを左右する項目なので、候補の段階で先に潰します。
市場の大きさは、最後に確認する項目に置きます。
接点があり、資料が流用でき、制度上も提供できる国のなかで、規模の順に並べる形です。
一度に複数の国を始めない理由
複数の国を同時に始めると、どの国も検証が浅くなります。
予算が分散し、現地の状況を調べる時間も人も足りなくなります。
うまくいかなかったときに、理由を特定できないという問題も残ります。
国の選定が悪かったのか、経路の設計が悪かったのかが切り分けられません。
1か国で経路を判定する手順を作り、その手順を2か国目に移す形にします。
移すのは経路そのものではなく、どの経路が成立するかを調べる方法です。
同時に始めるかどうかは、実務としては予算の話ではなく人の話です。
現地の制度と商習慣を調べ切れる人が何人いるかで、始められる国の数が決まります。
選定の順番は、既存の接点、資料の流用範囲、規制、最後に市場規模です。この順を逆にすると、最も費用のかかる国から始めることになります。
現地のチャネル構成を、どう組み替えるのか
国内で使っている経路を一覧にして、その国で成立するかを一つずつ判定します。
成立しない経路の代わりに、その国で人が集まっている場所を置きます。
組み替えの作業は、抽象的に考えると進みません。
国内の経路を全部書き出し、判定の対象に変えるところから始めます。
書き出すのは、検索広告、自社サイトの記事、比較サイト、展示会、代理店、紹介、業界メディアといった単位です。
自社が過去2年に受注した案件の初回接点を並べると、この一覧は自動的に出てきます。
それぞれについて、その国に相当する経路があるかを調べます。
相当するものがない場合、無理に代替を探す必要はありません。
代替を探すのではなく、その国で買い手が集まっている場所に置き換えます。
置き換え先は、経路の種類ではなく人の所在で選びます。
たとえば検索の量が少ない国でも、業界団体の会員向けの媒体に人が集まっていることがあります。
そこに寄稿する形は、国内での検索広告と同じ役割を果たします。
判定の材料は、現地の代理店や商工会、既存顧客の現地担当者から集められます。
資料を読むより、その国で実際に買っている人に聞くほうが早く済みます。
国内の経路と、現地での判定のしかた
| 国内での経路 | 判定に使う問い | 置き換えの候補 |
|---|---|---|
| 検索広告 | 課題を言葉にして検索する習慣があるか | 業界団体の媒体や展示会 |
| 自社サイトの記事 | その言語で情報を探す層がいるか | 現地メディアへの寄稿 |
| 比較サイト | 同種のサイトが選定に使われているか | 業界紙の特集や年鑑 |
| 展示会 | その業界の主要な場がどこにあるか | 現地の商談会や見本市 |
| 紹介 | 既存顧客の拠点がその国にあるか | 現地パートナーの開拓 |
判定の結果、国内の主力経路が全部使えないという結論になることもあります。
その場合、その国は経路の設計ではなく体制の設計から始める国です。
現地に人がいない状態で選べるのは、オンラインで完結する経路だけになります。
展示会や訪問を含む経路は、現地の人員か委託先があることが前提になります。
つまり、チャネルの設計と人員の計画は同じ会議で決める必要があります。
人を置かない前提で展示会中心の設計を作っても、実行できません。
代理店や販売店を経由するときの判断
自社で接点を作るのが難しい国では、現地のパートナーを経由する形になります。
立ち上がりは速くなりますが、代わりに失うものがあります。
失うのは、顧客が誰で、なぜ選んだのかという情報です。
この情報が自社に残らないと、数年後に方針を変えられなくなります。
契約の段階で、顧客の情報と接点の記録が自社に残る形を決めておきます。
残らない契約で3年進めた国は、パートナーを替えると接点がゼロに戻ります。
この条件は、価格や手数料の率より優先して詰める項目です。
手数料は後から交渉できますが、記録の所有は後から取り戻せません。
経路は一覧にして一つずつ判定してください。成立しない経路の代わりは、経路の種類ではなくその国で人が集まっている場所で選びます。
言語と内容を、どこまで作り分けるのか
入口の言語は現地語、詳細の資料は英語という分け方が現実的です。
すべてを現地語で揃えようとすると、更新が止まって古い情報が残ります。
翻訳の範囲は、理想からではなく更新の負担から決めます。
最初から全部を揃える必要はありません。
判断の軸は二つです。
最初に読まれるかどうかと、内容がどれくらいの頻度で変わるかです。
最初に読まれるものは、現地語で用意します。
サービスの概要、用途の説明、問い合わせの導線がこれにあたります。
言語が違うだけで離脱する層は、想像より厚くあります。
入口で落ちた人は、その先にどれだけ良い資料があっても読みません。
変わる頻度が高いものは、翻訳版が古くなりやすい部分です。
料金、仕様、対応範囲。ここを現地語にすると、更新のたびに翻訳の作業が発生します。
作業が発生するということは、いずれ更新が遅れるということです。
遅れた翻訳版は、間違った情報を出している状態になります。
そのため、変わる部分は英語で一本化するか、更新の手順を先に作ってから翻訳します。
手順とは、誰が更新を検知し、誰が訳し、誰が公開するかを決めた流れのことです。
この手順がないまま翻訳の範囲を広げると、半年後に社内の誰も把握していないページが残ります。
把握していないページは、問い合わせの内容が噛み合わない原因になります。
技術資料は、英語で読む層が一定数います。
機械翻訳に人が手を入れる形でも通ることが多く、費用の掛け方を下げられます。
一方で、概要のページは現地の話者による確認が必要です。
用途を説明する文の不自然さは、そのまま会社の印象になります。
すべてに同じ品質を求めると費用が膨らみ、結果として範囲を狭めることになります。
用途ごとに品質の水準を分けるほうが、広い範囲を現地語にできます。
現地の事例をいつ揃えるか
国内の事例をそのまま訳しても、現地の読み手には距離があります。
掲載されている企業名が知られていないので、規模感も業種の近さも伝わりません。
そのため、初期の数社から掲載の許諾を取ることを、立ち上げ期の目標の一つに置きます。
受注の件数より先に、掲載できる事例の本数を目標にする形です。
許諾は、契約の段階で話しておくと取りやすくなります。
納品後に依頼すると、担当者が交代していて話が最初からになります。
事例が1本もない期間は、代わりに何を出すかを決めておきます。
自社の実績が使えない期間は、業界全体の課題の整理や、選定の観点をまとめた資料が代わりになります。
現地語にするのは入口と問い合わせの導線です。更新の頻度が高い部分は、翻訳の手順を作ってからでないと広げないでください。
立ち上げの期間と費用を、どう見込むのか
国内の立ち上げの2倍から3倍の期間を見込みます。
初年度に獲得の成果を求めると、判断材料が出る前に打ち切りの議論になります。
海外展開の予算は、金額より期間の設定で成否が分かれます。
期間を短く置くと、判断に必要な材料が出ないうちに終わります。
初年度に受注の件数を目標にすると、ほぼ確実に未達になります。
未達の報告が2回続くと、3回目の報告の前に縮小の議論が始まります。
初年度の目標は、どの経路から接点が生まれるかを特定することに置きます。
接点の発生件数と、商談に至った経路の名前を成果として報告します。
この置き方にすると、未達ではなく「まだ特定できていない」という報告になります。
同じ状況でも、社内での扱いが変わります。
期間の見込みは、調査、立ち上げ、検証、拡大、判断の段階で分けます。
それぞれの段階で何が分かっていれば次に進むのかを、開始時に決めます。
段階ごとに置く目標と期間の目安
| 段階 | 期間の目安 | この期間に出す結論 |
|---|---|---|
| 調査 | 3か月 | 経路の候補と規制の確認 |
| 立ち上げ | 6か月から12か月 | 接点が生まれる経路の特定 |
| 検証 | 12か月から24か月 | 商談化する経路の絞り込み |
| 拡大 | 24か月以降 | 受注の件数と単価の改善 |
| 判断 | 36か月 | 継続するか縮小するかの決定 |
費用の見込みで漏れやすいのは、広告費以外の項目です。
翻訳、現地の人員か委託先、法務と税務の確認、渡航と滞在。
広告費だけを見積もると、実際の総額の半分以下になります。
半分で稟議を通すと、途中で追加の申請が必要になり、そこで計画全体が疑われます。
特に法務と税務の確認は、事業の内容によって金額が大きく変わります。
データを扱う事業、資格が要る事業では、確認だけで数百万円になる場合があります。
数字は説明のための仮の値です。
初年度の広告費を1,200万円と置いても、翻訳300万円、委託先600万円、法務と税務の確認400万円、渡航200万円を足すと総額は2,700万円になります。
撤退の条件を開始の会議で決める
何年で何が達成できなければ縮小するのかを、開始の時点で決めます。
決めていないと、成果が出ないまま費用だけが続きます。
撤退の判断を後から議論しようとすると、それまでに使った費用が判断を歪めます。
すでに投じた分を回収したいという動機が働き、追加の投資を選びやすくなります。
そのため、撤退の条件は開始を承認する同じ会議で合意し、議事録に残します。
書くのは、判定の時期と、そのとき達成されているべき状態の二つです。
条件は受注の件数ではなく、経路が特定できたかどうかで書くほうが機能します。
件数で書くと、市場の状況にかかわらず未達になり、判断の材料になりません。
初年度は経路の特定を成果にしてください。撤退の条件は、開始を承認する会議で同時に決めて記録します。
本社と現地の役割を、どう分けるのか
経路の選定と予算の枠は本社、内容と接触は現地に置きます。
どちらも本社が持つと実態が反映されず、どちらも現地だと国ごとの比較ができません。
組織の設計は、チャネルの設計と同じ重みを持ちます。
分け方を先に決めないまま始めると、実行の速度と統制のどちらかが失われます。
本社が持つべきなのは、比較ができる形を保つ役割です。
各国の接点の単価と商談化率を、同じ形式で集計できる状態にします。
形式が国ごとに違うと、どの国に追加の予算を置くかを判断できません。
判断できないと、声の大きい国に配分が寄ります。
そのため、集計の様式は本社が決めて各国に配ります。
様式を現地に任せると、半年後には5か国で5通りの報告が並びます。
現地が持つべきなのは、内容と接触です。
どの文言が通じるか、どの場に人がいるかは、現地でしか判断できません。
本社が内容まで決めると、現地の実態と合わない素材が使われます。
合わない素材の成果が悪かったとき、原因が経路なのか素材なのかが分かりません。
項目ごとに分けると、境目がはっきりします。
経路の選定は、本社が方針と枠を決め、現地が候補を調べて提案する形になります。
予算の配分は、本社が国ごとの枠を決め、現地がその枠の内側で配分します。
枠の額を現地に決めさせると、国をまたいだ優先順位がつけられなくなります。
内容の制作は、本社が型と素材の元を提供し、現地が現地向けに作り直します。
型とは、どの順で何を説明するかという構成のことで、文言そのものではありません。
接触と商談は、現地が全面的に担います。
本社が同席すると意思決定が遅くなり、現地の担当者が権限を持っていないと見られます。
数字の集計は、本社が様式を決めて統合し、現地がその様式に沿って報告します。
様式の変更は本社の側からしか行わない、という運用も同時に決めておきます。
分け方で失敗しやすいのは、承認の範囲です。
すべての施策に本社の承認を求めると、実行の速度が落ちます。
速度が落ちると、現地で見つけた機会に間に合いません。
展示会の枠も、媒体の掲載枠も、判断が1か月遅れると埋まります。
そのため、金額の上限を決めて、その範囲では現地の判断に任せます。
上限の設定が、速度と統制を両立させる要になります。
上限は、月次の枠の何割という形で置くと運用しやすくなります。
金額の絶対値で置くと、国ごとの物価の差で意味が変わります。
現地に人を置かず委託先を使う場合
現地に自社の人員を置かず、委託先で進める形もあります。
初期の費用は抑えられますが、確認しておく項目が増えます。
最も重要なのは、顧客の情報と接点の記録がどちらに残るかです。
委託先に残る形にすると、委託を切り替えるときに接点がゼロに戻ります。
次に確認するのは、報告の様式を本社の形式に合わせられるかです。
合わせられない委託先を選ぶと、その国だけ比較の外に出ます。
三つ目は、誰が現地の制度の変更を追うかです。
広告の表示規制やデータの扱いは変わることがあるため、追う担当を契約に書いておきます。
本社は枠と様式、現地は内容と接触です。金額の上限を決めて現地の裁量を作らないと、実行の速度が落ちて機会を逃します。
海外のチャネル設計で、何を見誤りやすいのか
国内で効いた施策の順番を、そのまま持ち込むことです。
効く順番は国ごとに違い、国内での成功体験が大きいほど判断を狂わせます。
この領域の失敗は、能力ではなく前提の置き方から生まれます。
最も多いのは、国内で機能した順番を再現しようとすることです。
国内では、検索からの獲得を先に作り、その後で認知に広げた会社が多くあります。
この順番が成立したのは、業界内で社名がある程度知られていたからです。
海外では社名が未知なので、検索に出ても選択肢に入りません。
同じ順番を持ち込むと、最初の段階で反応が出ず、そこで打ち切りになります。
国によっては、信頼の材料を先に作る必要があります。
業界団体への加入、現地メディアでの掲載、既存顧客の推薦。
これらは獲得の施策ではないため、成果の報告に載りにくい項目です。
載らないまま費用だけが計上されるので、社内で削られやすくなります。
二つ目の見誤りは、数字を国内と直接比べることです。
立ち上げ期の海外の数字は、国内の成熟した数字より必ず悪くなります。
並べて比較すると、どの国も撤退の結論しか出ません。
比べるなら、国内の立ち上げ期の数字と比べる形にします。
国内の立ち上げ期の数字が残っていない会社も多くあります。
その場合は、最初の6か月を基準期間として記録し、以後はそこと比べます。
見誤りやすい前提を、実際の見方と並べて確認しておきます。
国内と同じ順番で立ち上がるという前提に対しては、効く順番は国ごとに違うという見方を置きます。
訳せば同じ内容が通じるという前提に対しては、前提の説明が抜けたまま残るという見方を置きます。
市場が大きい国から入るべきという前提に対しては、接点を持てる国から入るという見方を置きます。
初年度から受注を求められるという前提に対しては、初年度は経路の特定に充てるという見方を置きます。
現地に任せれば回るという前提に対しては、集計の様式と枠は本社が持つという見方を置きます。
この置き換えは、稟議の文面に書いておくと機能します。
口頭で共有しただけだと、成果が出ない時期に元の前提へ戻ります。
三つ目は、為替と価格の設定を後回しにすることです。
現地通貨で価格を固定するか、為替に連動させるか。
この決定は、収益の見え方を大きく変えます。
固定にすると為替の変動が利益に直撃し、連動にすると現地での価格が動いて比較されにくくなります。
どちらを選ぶかは経理と営業の合意が要るため、決定に時間がかかります。
チャネルの設計と同じ時期に着手しないと、出稿を始めた後で価格が変わります。
成果が出ない国の扱いをどう決めるか
成果が出ない国について、続けるか止めるかの判断が先送りされることがあります。
先送りされる理由は、判断の基準がないことです。
基準は、受注の件数ではなく経路の特定が進んだかで置きます。
接点が生まれた経路の名前が増えていれば、まだ探索の途中です。
18か月経っても経路の名前が一つも増えていないなら、前提の置き方が違っています。
その場合は予算を増やすのではなく、調査の段階に戻します。
戻す判断を「失敗」として扱うと、誰も提案しなくなります。
探索の結果として記録する扱いにしておくと、判断が早く出るようになります。
国内で効いた順番は、その国では効きません。数字も国内の成熟期ではなく、自社の立ち上げ期と比べてください。
海外での経路づくりを、どこから始めるか
過去2年の海外からの問い合わせを、国別に集計するところからです。
すでに接点がある国が、最初の候補になります。
調査会社の資料から始めると、自社との関係が薄い情報が並びます。
自社の記録から始めるほうが、候補が早く絞れます。
集計するのは、問い合わせの発生国、既存顧客の海外拠点、取引先からの紹介が届いた国の三つです。
どれも社内にあるデータなので、費用をかけずに出せます。
海外での経路づくりの段取り
| 順番 | やること | 関わる人 | 期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 過去2年の海外からの問い合わせを国別に集計する | マーケティング | 3週間 |
| 2 | 既存顧客の海外拠点を営業の記録から洗い出す | 営業 | 3週間 |
| 3 | 候補国の規制と許認可を確認する | 法務・経営 | 6週間 |
| 4 | 国内の経路を一覧にして成立可否を判定する | マーケ・現地 | 4週間 |
| 5 | 概要と問い合わせの導線だけを現地語にする | マーケティング | 8週間 |
| 6 | 初年度の目標を経路の特定に置いて合意する | 経営・マーケ | 2週間 |
この6工程は、着手から合意までで4か月から5か月が目安になります。
期初に出稿を始めるには、前の期の後半のうちに1から3を終えておく必要があります。
最初の12か月で集めるのは、件数ではなく経路の名前です。
どこから接点が生まれたかを記録し続けると、次の投資先が決まります。
件数だけを追うと、記録が残らない経路が見落とされます。
紹介や展示会での立ち話は、記録の様式がないと集計に入りません。
そのため、問い合わせを受けた時点で経路を聞く手順を最初に作ります。
後から思い出して入力する形にすると、精度が落ちて使えなくなります。
進出の初期に確認する数字
| 数字 | 見る頻度 | 判断に使うところ |
|---|---|---|
| 経路別の接点の件数 | 毎月 | その国のどこに人がいるか |
| 商談に至った経路の名前 | 四半期 | 次に配分する先 |
| 接点1件あたりの費用 | 四半期 | 国内との構造の違い |
| 現地語の資料の更新の遅れ | 四半期 | 翻訳の範囲が適切か |
| 撤退の条件までの距離 | 半年 | 継続するかどうかの判断 |
撤退の条件との距離は、最終年ではなく半年ごとに確認します。
最終年に確認しても、その時点では手の打ちようがありません。
途中で軌道修正するための数字として使うと、判断の質が変わります。
条件に近づいているなら、予算を増やすのではなく設計を変える判断ができます。
2か国目に進むときは、1か国目の経路そのものではなく判定の手順を移します。
どの経路が成立するかは、その国で改めて判定します。
移せるのは、経路を一覧にする形式、判定に使う問い、集計の様式の三つです。
この三つが揃っていれば、2か国目の調査は半分の期間で終わります。
着手点は資料の購入ではなく、自社の記録の集計です。過去2年の問い合わせを国別に並べるだけで、候補の順番が変わります。
海外でのチャネル設計に迷いがある場合は、無料相談で現状を見てもらうところから始められます。
獲得の経路ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
進出先はどう選べばいいですか
市場の大きさではなく、自社がすでに接点を持てる国から選びます。既存顧客の海外拠点、問い合わせが届いている国、取引先の紹介が及ぶ範囲の三つを集計してください。大きい市場ほど参入の費用と競合の厚みが大きくなり、立ち上げに必要な期間も延びます。
国内で効いている広告をそのまま出せばいいですか
国によっては課題を検索する習慣が薄く、紹介や展示会、業界団体が主な経路になります。国内の経路を一覧にして、その国で成立するかを一つずつ判定してから配分を決めてください。成立しない経路の代替は、経路の種類ではなく人が集まっている場所で選びます。
資料はすべて現地語にすべきですか
概要と問い合わせの導線は現地語、料金や仕様や技術資料は英語という分け方が現実的です。すべてを現地語で揃えると更新のたびに作業が発生し、翻訳版だけが古い情報のまま残ります。更新の手順を決めてから範囲を広げてください。
初年度にどれくらいの成果を見込めますか
初年度は受注ではなく、どの経路から接点が生まれるかの特定を目標に置きます。受注の件数を目標にすると未達の報告が続き、判断材料が出る前に撤退の議論が始まります。接点の発生と商談に至った経路の名前を成果として報告してください。
現地に人を置かずに進められますか
オンラインで完結する経路に限られます。展示会や訪問を含む経路は現地の人員か委託先が前提です。委託する場合は、顧客の情報と接点の記録が自社に残る契約にしてください。記録が残らない形で数年進めると、委託先を替えた時点で接点がゼロに戻ります。
まとめ
- 国内で効いている経路の前提が、その国では成立していないからです。同じ構成を持ち込むと、費用だけが同じで成果が出ません
- 市場の大きさではなく、自社がすでに接点を持てる経路があるかで決めます。大きい市場ほど、参入にかかる費用も競合の厚みも大きくなります
- 国内で使っている経路を一覧にして、その国で成立するかを一つずつ判定します。成立しない経路の代わりに、その国で人が集まっている場所を置きます
- 入口の言語は現地語、詳細の資料は英語という分け方が現実的です。すべてを現地語で揃えようとすると、更新が止まって古い情報が残ります
- 国内の立ち上げの2倍から3倍の期間を見込みます。初年度に獲得の成果を求めると、判断材料が出る前に打ち切りの議論になります
- 経路の選定と予算の枠は本社、内容と接触は現地に置きます。どちらも本社が持つと実態が反映されず、どちらも現地だと国ごとの比較ができません
- 国内で効いた施策の順番を、そのまま持ち込むことです。効く順番は国ごとに違い、国内での成功体験が大きいほど判断を狂わせます
- 過去2年の海外からの問い合わせを、国別に集計するところからです。すでに接点がある国が、最初の候補になります