
想定どおりの顧客を数える仕組みしかないからです。
狙っていない層からの受注は例外として処理され、記録の中で見えなくなります。
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目次
目次
- 新しい市場が既存顧客の中に埋もれるのは、なぜか
- 見過ごした場合、どこで差がつくのか
- 想定していなかった顧客を、どう見つけるのか
- 件数が少ない層を、どう扱うか
- 想定と違う使われ方を、どう拾うのか
- 用途のずれが、別の商品の入口になることもある
- 見つけた芽が市場になるかを、どう見極めるのか
- 提供の負担は、拡大したときの姿で見る
- 市場の大きさは、どう見積もるのか
- 見積もりを誰と作るか
- 小さく試して確かめるには、何をするのか
- 反応が無かったときに、何を疑うのか
- 既存事業との関係を、どう整理するのか
- 外部に依頼する場合に確認すること
- 既存顧客の見直しは、何から始めるのか
- よくある質問
- まとめ
想定どおりの顧客を数える仕組みしかないからです。
狙っていない層からの受注は例外として処理され、記録の中で見えなくなります。
新しい市場が既存顧客の中に埋もれるのは、なぜか
想定どおりの顧客を数える仕組みしかないからです。
狙っていない層からの受注は例外として処理され、記録の中で見えなくなります。
新しい市場を探すとき、外部の市場データを集めるところから始める企業が多くあります。
一方で、すでに自社から買っている顧客の中に、想定していなかった層が含まれていることがあります。
この層が見えないのは、データが無いからではありません。
集計の軸が、すでにある事業に合わせて作られているからです。
ターゲット外からの問い合わせは、その場ではたまたまの案件として扱われます。
1件ずつ見れば例外ですが、四半期で束ねると傾向になっていることがあります。
束ねる仕組みが無いと、この傾向には気づけません。
月次の報告に出てくるのは、想定した層の達成率だけです。
業種や規模の分類も、既存の事業に合わせて作られています。
その枠に収まらない顧客は、その他に入ります。
その他の中身を開く習慣が無いと、そこに何があるかは分かりません。
分類の一覧を眺めているだけでは、その他は一行の数字にしか見えません。
3つ目の経路が、営業の個別対応です。
想定外の顧客には、営業がその場で工夫して対応します。
その工夫は個人の中に残り、組織の知見になりません。
同じ層から2件目が来ても、また一から工夫することになります。
4つ目が、導入後の使われ方を確認していないことです。
売った時点の用途と、実際の用途は時間とともに変わります。
用途が変わった顧客は、売上の記録の上では既存顧客のままです。
そこに別の市場があっても、記録からは見えません。
5つ目は、件数だけで判断することです。
新しい層からの受注は、最初は数件です。
数件という理由で議論の対象から外すと、伸び率も単価も確認されません。
既存の主力と同じ物差しで測っている限り、芽の段階では必ず切り捨てられます。
見過ごした場合、どこで差がつくのか
芽の段階で気づけなかった層は、数年後に競合が先に取っていることがあります。
そのときには、その層に特化した訴求と体制を持つ相手と競うことになります。
自社にはその層の受注実績があるにもかかわらず、後から参入する側に回ります。
実績が記録の中で例外として処理されていたためです。
気づく時期の差は、投資の大きさの差として出ます。
芽の段階なら広告の限定配信で試せますが、市場が確立した後では認知の獲得から始めることになります。
この差を生むのは分析の技術ではありません。
想定と実績を照らし合わせる作業を、四半期に一度やるかどうかの違いです。
新市場が見えないのは、集計の軸が既存事業に固定されているからです。想定外の受注を例外として処理せず、四半期で束ねてください。
想定していなかった顧客を、どう見つけるのか
受注顧客を、期初に想定していた層と照らし合わせます。
一致しない顧客を集めて眺めると、新しい塊が見えることがあります。
作業そのものは単純です。
想定と実績を並べるだけで、多くの企業では初めて見る景色になります。
ただし前提が1つあります。
想定していた層が文書になっていないと、照合ができません。
期初に決めたターゲットを、具体的な条件として残しておいてください。
業種、規模、抱えている課題の3つが条件として書かれていれば、照合は機械的に進みます。
条件が「中堅企業のマーケティング部門」のような抽象的な形だと、照合の判断が人によって変わります。
その場合は、まず条件を数字の入った形に直すところから始めます。
照合ができたら、一致しない顧客を集めます。
ここで見るのは件数と比率で、件数が少なくても比率の推移は意味を持ちます。
次に開くのが、その他に分類された顧客です。
分類から漏れている層が、ここにまとまっていることがあります。
企業規模の分布も見てください。
想定より小さい企業や大きい企業が固まっている場合、そこに別の需要があります。
規模が違う層を見るときは、単価と工数を併せて確認します。
小さい企業が増えていても、対応の工数が同じなら採算は別の話になります。
地域の分布も同じ見方をします。
想定していない商圏に受注が広がっている場合、対応体制の制約を先に確認してください。
流入経路別に顧客を見ると、経路と層の組み合わせが見えます。
特定の経路からだけ想定外の層が来ているなら、その経路に何かが起きています。
最後が、紹介の連鎖です。
ある顧客からの紹介が、同じ業種の中で連鎖していることがあります。
これは、その業種の中で課題が共有されている合図です。
紹介元の業種を記録しておかないと、この連鎖は追えません。
件数が少ない層を、どう扱うか
新しい市場の芽は、最初は数件です。
件数だけで判断すると、必ず見逃します。
代わりに見るのが、前年同期と比べた伸び率です。
3件から9件に増えていれば、件数は少なくても動きは起きています。
平均単価も併せて見てください。
件数が少なくても単価が既存より高いなら、その層の優先度は上がります。
この2つを見る前提として、四半期ごとの記録が要ります。
年に一度しか集計していないと、伸び率の判断が1年遅れます。
想定した層の条件を文書にしてから、受注顧客と照合してください。件数が少ない層は、前年同期比の伸び率と平均単価で判断します。
想定と違う使われ方を、どう拾うのか
同じ商材でも、顧客によって使う目的が違います。
想定していない用途が広がっているなら、そこに別の市場があります。
顧客が何に使っているかを導入後に確認していない企業は、多くあります。
売った時点の用途と、実際の用途は変わっていきます。
用途のずれを拾う場所は、いくつかあります。
新しい調査を立てなくても、既存の接点の中に材料があります。
最も確実なのが、契約更新時の確認です。
更新面談の項目に、現在の用途と利用範囲を入れてください。
このとき、想定した使い方と違う場合は理由を掘ります。
なぜその使い方になったのかが、新しい需要の説明になります。
2つ目が、サポートへの問い合わせ内容です。
想定外の使い方をしている顧客は、想定外の質問をします。
問い合わせを内容で分類すると、そこに用途のずれが現れます。
分類が対応の緊急度だけになっていると、この情報は失われます。
3つ目が、利用データの偏りです。
よく使われている機能と、想定していた中心機能がずれている場合があります。
機能別の利用状況を、顧客の属性と掛け合わせて見てください。
特定の業種だけが特定の機能に偏っているなら、そこに用途の違いがあります。
4つ目が、導入事例の取材です。
顧客自身の言葉で用途が語られるため、社内の想定と比べやすくなります。
取材を広報の作業として扱っていると、この情報は事例記事にしか残りません。
取材時の発言を、マーケティング側でも読める形で残してください。
5つ目が、顧客からの機能の要望です。
要望そのものより、その背景に別の用途が現れます。
要望を受け取る窓口が、要望の内容だけを記録している場合は変えてください。
なぜそれが必要なのかを1行足すだけで、用途の情報になります。
用途が違えば、刺さる言葉も変わります。
既存の訴求をそのまま新しい層に当てても届きません。
用途のずれが、別の商品の入口になることもある
現在の商材を別の用途に使っている顧客が一定数いる場合、選択肢は2つあります。
その用途に向けた訴求を作るか、その用途に特化した提供の形を作るかです。
前者は、既存の商材のまま新しい層に届ける方法です。
費用が小さく、数週間で試せます。
後者は、機能や提供範囲を変える判断になります。
開発や体制の話になるため、判断する人がマーケティング部門の外に移ります。
順序としては、必ず前者から試してください。
訴求を変えただけで取れるなら、商品を変える必要はありません。
訴求を変えても反応が薄い場合に、初めて提供の形の議論に進みます。
この順序を逆にすると、市場の確認が終わる前に開発の費用が発生します。
用途のずれは、更新面談、問い合わせの分類、利用データ、取材、要望の5か所に現れます。訴求の変更で試してから、提供の形の議論に進んでください。
見つけた芽が市場になるかを、どう見極めるのか
偶然の集まりと、構造的な需要は違います。
同じ理由で買っているかを確認すると、区別がつきます。
想定外の顧客が数件集まっただけでは、市場とは言えません。
そこに共通する背景があるかを確認する段階が要ります。
最初に見るのが、買った理由です。
同じ業種の顧客が3社あっても、買った理由がばらばらなら偶然の集まりです。
同じ背景から同じ課題が生まれているなら、構造的な需要です。
この場合、まだ買っていない同じ業種の企業にも同じ課題があります。
理由を確かめる方法は、該当する顧客に直接聞くことです。
受注から時間が経っていても、なぜ検討を始めたかは覚えています。
2つ目に見るのが、きっかけです。
複数社が同じ外部要因を挙げるなら、その業界に共通の変化が起きています。
法改正、業界の再編、技術の変化のいずれかであることが多くなります。
個別の事情ばかりが挙がる場合は、市場としての広がりは期待できません。
3つ目が、増え方です。
継続的に増えているのか、一時期に集中しているのかを見ます。
一時期に集中している場合は、単発の外部要因である可能性があります。
その要因が終われば、需要も止まります。
4つ目が、紹介の有無です。
同業種内で紹介が連鎖しているなら、その業界の中で課題が共有されています。
5つ目が、単価と継続です。
新しい層の単価が既存より大幅に低い場合、獲得の費用が見合わないことがあります。
獲得できるかどうかと、採算が合うかどうかは別の問題です。
反応があることだけを根拠に進めると、件数は増えて利益が減る形になります。
6つ目が、提供の負担です。
受注はできても、対応に個別の工夫が必要な層は、拡大すると採算が悪化します。
見つけた芽が市場かどうかを見分ける観点
| 観点 | 市場である兆候 | 偶然である兆候 | 確かめ方 |
|---|---|---|---|
| 買った理由 | 複数社で共通している | 1社ずつ違う | 該当顧客に検討の経緯を聞く |
| きっかけ | 同じ外部要因を挙げる | 個別の事情が並ぶ | きっかけの時期を揃えて比べる |
| 増え方 | 継続的に増えている | 一時期に集中している | 四半期ごとの件数を並べる |
| 紹介の有無 | 同業種内で連鎖している | 単発で終わっている | 紹介元の業種を記録する |
| 単価と継続 | 既存顧客と同等以上 | 大きく下回る | 獲得費用と並べて見る |
| 提供の負担 | 既存の体制で対応できる | 案件ごとに個別対応が要る | 対応工数を案件別に集計する |
提供の負担は、拡大したときの姿で見る
現時点で対応できているかどうかは、判断の材料になりません。
数件だから個別対応で吸収できているだけ、という状態が多いためです。
見るべきは、その層が10倍になったときに同じ体制で回るかどうかです。
回らないなら、拡大の前に体制の設計が必要になります。
この確認は、マーケティング部門だけではできません。
提供側の責任者を入れて、対応工数を案件別に出してもらってください。
負担が大きいと分かった場合でも、そこで止める必要はありません。
提供の範囲を絞った形で出すという選択肢が残ります。
数が集まったことではなく、買った理由が共通しているかで判断してください。提供の負担は、その層が10倍になったときの姿で見ます。
市場の大きさは、どう見積もるのか
外部の統計だけに頼りません。
自社の実績から、該当する企業の数と、そのうち何割が買いうるかを積み上げます。
新市場への投資を社内で通すには、規模の見積もりが要ります。
このとき見られるのは精度ではなく、前提が明示されているかです。
精度の高い見積もりは、新しい市場では作れません。
実績が無いためです。
代わりに求められるのが、どの前提を置いたかの説明です。
前提が書かれていれば、決裁の場で前提のほうを議論できます。
積み上げの出発点は、対象となる企業の数です。
条件に該当する企業数は、公的な統計や業界団体の公表値から取ります。
次に、そのうち課題を持つ割合を置きます。
ここで使うのが、既存顧客での比率です。
既存市場で同じ課題を持っていた企業の割合が分かれば、新しい層にも当てられます。
自社の実績が、最も確かな前提になります。
3つ目が、獲得できる割合です。
既存市場での獲得率をそのまま当てると、見積もりが過大になります。
既存市場には認知があり、実績もあります。
新しい層には、どちらもありません。
同じ率を当てず、低めに置いてください。
どれだけ低く置いたかを明記しておくと、後で検証できます。
4つ目が、想定される単価です。
既存の実績から出しますが、個別対応の分を差し引きます。
5つ目が、必要な獲得の費用です。
既存のCACを当てたうえで、認知がない分だけ高めに見ます。
新しい市場の規模を積み上げる順番
| 段階 | 出す数字 | 根拠の置き方 | 置き方を誤ると起きること |
|---|---|---|---|
| 1 | 条件に該当する企業数 | 公的な統計や業界団体の公表値 | 桁が合わずに議論が止まる |
| 2 | そのうち課題を持つ割合 | 既存顧客での比率を当てる | 需要の大きさを読み違える |
| 3 | 獲得できる割合 | 既存市場の実績より低めに置く | 必要な予算が過小になる |
| 4 | 想定される単価 | 既存の実績から個別対応分を引く | 採算の判断が甘くなる |
| 5 | 必要な獲得の費用 | 既存のCACに認知不足分を上乗せする | 投資額の見積もりが不足する |
外部の統計は、桁が合っているかの確認に使ってください。
統計上の市場規模を、そのまま自社の売上見込みにはできません。
最後に、どの前提が崩れると成立しないかを書き添えます。
決裁の場で最も見られるのは、数字そのものではなく前提のほうです。
見積もりを誰と作るか
この積み上げをマーケティング部門だけで作ると、獲得の部分に偏ります。
単価と提供の負担は、提供側の責任者でないと置けません。
作る場に入れるのは、マーケティング責任者、営業責任者、提供側の責任者の3者です。
この3者が揃っていない見積もりは、決裁の場で前提を問い直されます。
作る時期は、芽の見極めが終わった直後です。
見極めの前に規模を出すと、市場かどうかの判断が数字に引きずられます。
見積もりの有効期間も決めておいてください。
半年を超えた前提は、外部環境が変わっている可能性があります。
該当企業数に自社の実績から置いた率を掛けて積み上げ、新しい層では率を低めに置きます。決裁で見られるのは数字ではなく前提です。
小さく試して確かめるには、何をするのか
全社の方針にする前に、限定した範囲で試します。
広告で当てるのが最も早く、数週間で反応が分かります。
新市場への展開は、組織を動かす前に検証の段階を置いてください。
検証を飛ばすと、体制を作った後で需要が無いことが分かります。
最も早い検証の方法が、広告です。
新しい層に向けた訴求を作り、限定した予算で配信します。
反応の有無は、市場の存在を確かめる最初の材料になります。
反応が無い場合は、市場が無いのか訴求が合っていないのかを切り分けます。
対象は、見つけた層の条件を具体的に定義してください。
定義が曖昧だと、配信先が既存の層と重なります。
訴求は、既存のものを流用しないでください。
同じ商材でも用途が違えば、課題の言葉が違います。
その層の顧客に聞いた検討の経緯が、訴求の材料になります。
聞いていない場合は、配信の前に数社に聞くところから始めてください。
予算の上限は、判断に足る反応が得られる最小額です。
少なすぎると、反応が無いのか母数が足りないのかが分かりません。
期間は、その層の検討期間を考慮して置きます。
検討に3か月かかる商材で、4週間の配信結果で判断することはできません。
判断の基準は、始める前に決めてください。
後から基準を決めると、出た結果に合わせた解釈になります。
記録は、既存の獲得と分けて集計します。
既存のキャンペーンに混ぜると、結果が分離できません。
分けた記録は、問い合わせの件数だけでなく商談化まで追ってください。
新しい層は問い合わせの段階では反応が良く、商談で条件が合わないことがあります。
この場合に見えているのは需要ではなく、訴求と提供内容のずれです。
問い合わせの件数だけで合否を判定すると、このずれが本格展開の後まで残ります。
配信の前に確認すべきことが、もう1つあります。
問い合わせが来たときに、営業が対応できる状態かどうかです。
誰が対応するかを先に決めておかないと、反応があっても検証になりません。
対応が遅れた結果として取れなかった案件を、需要が無かったと記録してしまいます。
反応が無かったときに、何を疑うのか
反応が無い結果から、すぐに市場が無いと判断しないでください。
確かめる順序があります。
最初に見るのが、配信が届いていたかどうかです。
表示回数が想定を大きく下回っている場合は、対象の定義が狭すぎます。
次が、訴求です。
表示はされているのにクリックが伸びない場合、言葉がその層の課題に届いていません。
3つ目が、着地したページです。
クリックはあるのに問い合わせが無い場合、ページが既存の層向けのままである可能性があります。
この3つを確認しても反応が無い場合に、初めて需要の有無の議論になります。
確認の順序を決めておかないと、検証のたびに判断が担当者の印象で変わります。
対象、訴求、上限、期間、判断基準、記録の6つを配信前に決めてください。反応が無い場合は、配信量、訴求、着地ページの順に確認します。
既存事業との関係を、どう整理するのか
新しい市場は、既存の顧客層と競合することがあります。
価格や提供の形が違うと、既存の顧客から説明を求められます。
新市場への展開は、マーケティング部門だけの判断では進みません。
既存事業への影響を整理する必要があります。
最初の論点が、価格です。
新しい層に合わせて価格を下げると、既存顧客との間に差が生まれます。
既存顧客がその価格を知ったときに、説明できる状態にしておいてください。
提供の範囲が違うことを明示していれば、差そのものは問題になりません。
同じ範囲で価格だけが違う形にすると、既存顧客からの値下げ要求につながります。
この確認は、配信を始める前に終えておく必要があります。
2つ目が、提供体制です。
新しい層への対応に人を割くと、既存顧客への対応が薄くなります。
割り当てる人員の範囲を、先に決めてください。
決めていないと、繁忙期に既存側から人を引き抜く形になります。
3つ目が、ブランドです。
既存の顧客層から見て、新しい層への展開がどう見えるかを確認します。
同じ名前で出すかどうかは、ここで決まります。
既存顧客が自社を選んだ理由と矛盾する場合は、別の名前で出す判断もあります。
4つ目が、営業の配分です。
新市場は成約までの時間が長く、確度も読めません。
そこに営業の時間を寄せすぎると、既存の獲得が細ります。
新市場に割く比率の上限を、期初に決めてください。
5つ目が、撤退です。
始めるときに、撤退の判断時期と条件を決めておきます。
決めていないと、成果が出ないまま続きます。
続いている間、既存の獲得からは人と予算が抜けたままになります。
外部に依頼する場合に確認すること
新市場の調査を外部に依頼する場合、一般的な市場データの収集で終わっていないかを確認してください。
自社の顧客記録の読み込みが含まれているかが、分かれ目になります。
公表された市場データだけを集めた報告は、桁の確認には使えますが、買う理由は出てきません。
買う理由は、自社の受注顧客の中にしかありません。
顧客データを渡す場合は、取り扱いの範囲を契約で取り決めてください。
掲載時点の最新の公式ガイドラインで確認してください。
納品物には、該当顧客への聞き取りの発言を原文で含めることを取り決めます。
分類された集計だけでは、訴求の材料になりません。
価格、提供体制、ブランド、営業の配分、撤退の5つを配信の前に整理してください。撤退の条件を決めていない取り組みは、成果が出ないまま続きます。
既存顧客の見直しは、何から始めるのか
新しい調査を始める前に、直近2年の受注顧客を想定と照合します。
その他に分類された顧客を開くところから始まります。
手元のデータだけで、最初の輪郭は掴めます。
外部の調査を発注する判断は、その後で構いません。
最初にやるのは、期初に想定していた顧客像を文書として確認することです。
これが無いと、照合の基準が作れません。
既存顧客の見直しに着手する順番
| 順番 | やること | 関わる人 | 期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 期初に想定していた顧客像を文書として確認する | マーケティング | 1週間 |
| 2 | 直近2年の受注顧客を想定と照合する | マーケティング | 2週間 |
| 3 | 一致しない顧客を集め、共通点を探す | マーケ・営業 | 2週間 |
| 4 | 該当する顧客数社に、買った理由を聞く | マーケティング | 3週間 |
| 5 | 市場としての規模と採算を見積もる | マーケ・営業・提供側 | 2週間 |
| 6 | 限定した範囲で広告を当てて反応を見る | マーケティング | 8週間 |
この順番で進める理由は、4の聞き取りが3の共通点の仮説を前提にしているからです。
共通点の仮説が無いまま聞くと、質問が一般的になり、何も確かめられません。
数字は説明のための仮の値です。
直近2年の受注が150件、そのうち想定した層が120件、想定外が30件だったとします。
その30件のうち12件が同じ業種で、うち9件が同じ外部要因をきっかけに挙げていた、という形になります。
この9件は、偶然ではなく構造的な需要の可能性があります。
同じ30件でも、業種がばらばらで理由も1社ずつ違うなら、読み方は変わります。
その場合に見直すのは市場ではなく、ターゲットの定義の粗さのほうです。
想定外が30件も出ているという事実自体が、想定の条件が実態と合っていない可能性を示すからです。
新市場の探索と、ターゲット定義の更新は、同じ照合作業から分かれます。
新しい市場の芽を判断する数字
| 数字 | 見る頻度 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 想定外の層からの受注件数と比率 | 四半期 | 増えていれば市場が動いている |
| その層の前年同期比の伸び率 | 四半期 | 件数が少なくても伸びを見る |
| その層の平均単価 | 四半期 | 既存と比べて採算が合うか |
| 同業種内での紹介の連鎖の件数 | 半期 | 連鎖があれば課題が共有されている |
| 試験配信での反応 | 試験の期間中 | 事前に決めた基準と照合する |
その他の分類は、四半期ごとに開いてください。
放置すると肥大し、何が入っているか誰も分からなくなります。
読むときは、営業と一緒に読んでください。
記録だけを見ても、なぜ買われたかは分かりません。
想定外の案件の経緯を最もよく知っているのは、対応した営業です。
記録に残っていない背景が、この場で出てきます。
読む場は、四半期の振り返りに含めてください。
別の会議として立てると、繁忙期に最初に消えます。
着手点は外部調査ではなく、想定した顧客像の文書化と受注実績との照合です。その他の分類を四半期ごとに開き、営業と一緒に読んでください。
新しい市場の芽がどこにあるか分からない場合は、無料相談で既存顧客のデータを見てもらうところから始められます。
市場の取り方ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
新しい市場は外部の調査から探すものではないのですか
外部のデータは規模の桁を確認するには使えますが、実際に買う理由は分かりません。すでに買っている想定外の顧客のほうが確かな手がかりになります。外部に調査を依頼する場合も、自社の顧客記録の読み込みが含まれているかを確認してください。
想定外の顧客が数件しかありません
件数だけで判断しないでください。前年同期と比べた伸び率、平均単価、同業種内での紹介の連鎖を併せて見ると、偶然か構造的な需要かが見分けられます。新しい市場の芽は、最初は必ず数件です。
市場かどうかはどう判断しますか
複数社が同じ理由で買っているかを確認してください。法改正や業界の再編など、同じ外部要因をきっかけに挙げているなら、その業界に共通の変化が起きています。理由が1社ずつ違うなら偶然の集まりです。
市場規模はどう見積もればいいですか
該当する企業数に、自社の既存市場での実績から置いた率を掛けて積み上げます。新しい層には認知も実績もないため、獲得できる割合は既存より低めに置いてください。決裁の場で見られるのは数字の精度ではなく、どの前提を置いたかです。
新市場に投資すると既存の獲得が細りませんか
割く人員と予算の比率に上限を先に決めてください。あわせて、撤退の判断時期と条件も始める前に決めておくと、成果が出ないまま人と予算が抜けた状態が続く事態を避けられます。
まとめ
- 想定どおりの顧客を数える仕組みしかないからです。狙っていない層からの受注は例外として処理され、記録の中で見えなくなります
- 受注顧客を、期初に想定していた層と照らし合わせます。一致しない顧客を集めて眺めると、新しい塊が見えることがあります
- 同じ商材でも、顧客によって使う目的が違います。想定していない用途が広がっているなら、そこに別の市場があります
- 偶然の集まりと、構造的な需要は違います。同じ理由で買っているかを確認すると、区別がつきます
- 外部の統計だけに頼りません。自社の実績から、該当する企業の数と、そのうち何割が買いうるかを積み上げます
- 全社の方針にする前に、限定した範囲で試します。広告で当てるのが最も早く、数週間で反応が分かります
- 新しい市場は、既存の顧客層と競合することがあります。価格や提供の形が違うと、既存の顧客から説明を求められます
- 新しい調査を始める前に、直近2年の受注顧客を想定と照合します。その他に分類された顧客を開くところから始まります