マーケティングの意思決定を誰がするか

決める人が決まっていないからです。
関係者が多い判断ほど全員の合意を待つ形になり、誰も決めないまま時間が過ぎます。
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目次
目次
- マーケティングの意思決定は、なぜ止まるのか
- 決めない状態にも、費用がかかる
- 決める内容は、どう分類するのか
- 分類は一度作れば使い回せる
- 決裁の階層は、何を基準に決めるのか
- 試行の枠を、別に確保する
- 経営が決めるべきことと、決めるべきでないことは何か
- 権限を渡した記録を残す
- 他部署が関わる判断は、誰が最終決定するのか
- 合議の場を、定例にしておく
- 決めたことを、どう記録し、どう覆すのか
- 記録の場所を一つにする
- 権限を渡すときに、どんな問題が起きやすいのか
- 権限は、使われて初めて機能する
- 決裁の設計は、どこから手をつけるのか
- 止まった判断を、誰が書き出すか
- よくある質問
- まとめ
決める人が決まっていないからです。
関係者が多い判断ほど全員の合意を待つ形になり、誰も決めないまま時間が過ぎます。
マーケティングの意思決定は、なぜ止まるのか
決める人が決まっていないからです。
関係者が多い判断ほど全員の合意を待つ形になり、誰も決めないまま時間が過ぎます。
施策が動かない理由を尋ねると、予算がない、人がいない、という答えが返ることがあります。
どちらも事実である場合が多くあります。
ただし、予算と人が足りている組織でも施策は止まります。
止まる原因が、決裁の設計にある場合です。
意見を集めることと、決めることは別の作業です。
この二つを同じ会議で同時に行おうとすると、合意が形成されるまで決定が保留されます。
関係者全員が納得するまで待つ形にすると、決定の時期が読めなくなります。
一人でも留保を続ければ、そのぶん先送りになります。
誰が最終的に決めるかを先に決めておけば、意見は決定の材料として扱えます。
反対意見が出ても、決定そのものは予定どおり行われます。
止まる場所は、判断の種類でほぼ決まっています。
日々の入札の調整や広告文の差し替えは止まりません。
止まるのは、予算の配分を変える判断と、他部署に影響する判断です。
この二つは、決める人が曖昧なまま運用されていることが多くあります。
媒体間の予算移動は、稟議に時間がかかるという理由で止まります。
実際には、裁量で動かせる範囲が定義されていないことが原因です。
施策の中止も止まります。
関係者が多いことが理由に挙がりますが、止める権限が誰にあるかが決まっていません。
新しい施策の開始は、前例がないという理由で止まります。
試行に使える予算の枠がないことが、実際の原因です。
指標の定義の変更も止まります。
影響範囲が広いことが理由になりますが、定義の責任者が決まっていません。
外部への発注も、金額が大きいという理由で止まります。
金額別の決裁基準がないと、そのつど経営の判断を仰ぐことになります。
これらに共通しているのは、止まる理由として語られる言葉が表面的であることです。
稟議に時間がかかるという説明の下に、範囲が定義されていないという実態があります。
決めない状態にも、費用がかかる
判断が二か月止まれば、その間の配信は従来のまま続きます。
止めるべき施策が動き続ける費用は、決定の遅れの費用です。
この費用は、どの帳簿にも決定の遅れとしては現れません。
広告費として計上されるため、遅れの代償だと認識されません。
数字は説明のための仮の値です。
月200万円の配信のうち、止めるべきだった40万円分が二か月続けば、80万円が決定の遅れの費用になります。
決裁の設計は、速度の問題であると同時に費用の問題です。
速度だけの話として扱うと、経営の議題として優先順位が上がりません。
止まるのは、予算の配分を変える判断と他部署に影響する判断です。意見を集めることと決めることを分け、決める人を先に決めてください。
決める内容は、どう分類するのか
何を決めるかではなく、どれくらい元に戻せるかで分類します。
戻せる判断は現場に、戻しにくい判断は上位に置きます。
決裁の設計でよく使われるのは、金額による区分です。
一定額までは担当者、それ以上は責任者、さらに上は経営という形です。
金額による区分は分かりやすく、他の支出の決裁とも整合します。
ただし、金額だけで区切ると重要な判断が漏れます。
漏れるのは、金額は小さいが影響の大きい判断です。
指標の定義の変更が、その代表になります。
入札の調整は、金額が動きますが翌日に元へ戻せます。
指標の定義を変えると、過去との比較ができなくなります。
定義の変更には費用が発生しません。
それでも、元に戻せないという点では最も重い判断です。
そのため、金額に加えて可逆性という軸を置いてください。
戻せる、戻しにくい、戻せないの三段階で足ります。
もう一つ必要なのが、影響範囲の軸です。
マーケティング部門の中で完結する判断と、営業や商品部門に影響する判断があります。
部門をまたぐ判断は、決める前に関係部署との合意が要ります。
合意の手続きを飛ばすと、実行の段階で止まります。
この二つの軸を組み合わせると、決める場所が決まります。
戻せて部門内なら担当者、戻せて部門をまたぐなら責任者という形です。
部門をまたぐ場合に責任者へ上げるのは、金額の大きさが理由ではありません。
他部署の業務に影響が出る判断を、担当者個人が背負う形にしないためです。
戻しにくくて部門内なら責任者、戻しにくくて部門をまたぐなら部門長の合議になります。
戻せない判断で全社に影響するものは、経営が決めます。
分類は一度作れば使い回せる
判断のたびに誰が決めるかを考えていると、そこで時間を使います。
考える時間そのものが、決定の遅れになります。
分類の表を一度作っておけば、新しい判断も表に当てはめて振り分けられます。
当てはまらない判断が出たときだけ、責任者が判断します。
表を作る作業は二週間で終わります。
一度作れば、体制が変わるまで使い続けられます。
表に載っていない判断が出た場合は、その都度追記してください。
追記を続けると、一年ほどで実務のほとんどが表に収まります。
金額だけで区分すると、費用がかからず元に戻せない判断が漏れます。可逆性と影響範囲の二軸で分類し、表として一度作ってください。
決裁の階層は、何を基準に決めるのか
金額は月次予算からの比率で置き、階層は三つか四つに収めます。
階層を増やすほど正確になりますが、運用されなくなります。
分類を実務で使える形にします。
使える形とは、迷わず振り分けられる形です。
階層は少ないほうが守られます。
担当者が決める範囲、責任者が決める範囲、経営が決める範囲の三つで大半は収まります。
部門をまたぐ判断が多い組織では、部門長の合議を一つ足してください。
それでも四つです。
五つ以上にすると、どの階層に属するかを判断する時間が発生します。
判断の時間を減らすために作った仕組みが、判断の時間を増やすことになります。
金額の基準は、固定額ではなく月次予算からの比率で置いてください。
固定額で決めると、予算が変わったときに合わなくなります。
予算が倍になっても基準が据え置かれると、担当者の裁量が実質的に半分になります。
比率で置いておけば、予算規模の変化に自動的に追随します。
数字は説明のための仮の値です。
月次予算の一割までを担当者、三割までを責任者、それ以上を経営という形になります。
月次予算が200万円なら、担当者は20万円まで、責任者は60万円までです。
予算が400万円に増えれば、自動的に40万円と120万円になります。
可逆性の軸は、金額とは別に扱ってください。
指標の定義、計測の仕様、契約の締結は、金額によらず上位で決めます。
この三つは、金額がゼロでも元に戻せません。
金額の表の中に混ぜると、小額として担当者に落ちてしまいます。
試行の枠を、別に確保する
新しい施策は、前例がないため判断が保守的になります。
成果の見込みを示せないため、稟議で止まりやすくなります。
月次予算の一定割合を、試行の枠として先に確保してください。
枠の範囲内であれば、個別の稟議なしで検証できます。
枠の大きさは、月次予算の一割前後が目安です。
これより小さいと、意味のある検証ができません。
枠の範囲内であれば、失敗も想定のうちとして扱います。
失敗のたびに説明を求めると、枠があっても使われなくなります。
枠の消化率を四半期で見てください。
消化されていないなら、枠があっても使えない運用になっています。
使えない理由は、失敗の扱いが決まっていないことにあります。
枠内の失敗を説明させる運用にすると、担当者は確実に成果が出る施策にしか使いません。
決裁の階層と、対象になる判断の例
| 階層 | 金額の目安 | 対象になる判断の例 |
|---|---|---|
| 担当者 | 月次予算の1割まで | 媒体内の配分調整、広告文の差し替え |
| マーケティング責任者 | 月次予算の3割まで | 媒体間の予算移動、新媒体の試行 |
| 部門長の合議 | 月次予算を超える | リードの定義変更、営業への引き渡し条件 |
| 経営 | 年間予算に影響する | 年間予算の増減、新規事業への投資 |
| 可逆性で上位に置くもの | 金額によらない | 指標の定義、計測の仕様、契約の締結 |
階層は三つか四つに収め、金額は月次予算からの比率で置いてください。試行の枠を月次予算の一割前後で確保し、枠内は結果を問わない扱いにします。
経営が決めるべきことと、決めるべきでないことは何か
経営が決めるのは、予算の総額と、何をやらないかです。
媒体の選択や広告の表現に経営が入ると、判断の速度と責任の所在が同時に失われます。
経営の関与は、多すぎても少なすぎても機能しません。
関与する場面を限定することが、設計の要点になります。
経営が決めるべきことは三つです。
年間の予算総額、事業として狙う市場と狙わない市場、そしてマーケティング責任者に渡す権限の範囲です。
年間の予算総額は、事業計画に直結します。
他の投資との配分を決める作業であり、マーケティング部門だけでは決められません。
狙う市場の選択も同様です。
どの市場を取りに行き、どの市場を捨てるかは事業戦略そのものです。
権限の範囲も経営が決めます。
組織設計の一部であり、渡す側が決めるべき項目です。
決めるべきでないのは、どの媒体に出すか、どの広告表現を使うかです。
これらは専門性が必要で、判断の速度も求められます。
経営が個別に関与すると、責任者の判断が形骸化します。
責任者が決めた配分に経営が口を出す状態が続けば、責任者は決めなくなります。
成果が出なかったときに、誰の判断だったかも分からなくなります。
責任者は経営の指示だと言い、経営は提案を承認しただけだと言う状態になります。
個別の入札調整に至っては、事業判断ではありません。
経営が関与する領域ではないという線引きを、明文化してください。
関与しない代わりに、報告の形を決めてください。
何が起きているかが分かる報告があれば、経営は個別に口を出す必要がなくなります。
報告の項目と頻度を先に決めておくと、双方にとって予測が立ちます。
報告が来ないと、経営は不安から個別の判断に入ろうとします。
報告に載せるのは、事業計画に対する進捗と、配分を変えた理由です。
媒体別の細かい数字は、経営の判断には使われません。
進捗が計画から離れている月は、離れた理由と次の手を添えてください。
数字だけを出すと、経営は個別の指示を出したくなります。
権限を渡した記録を残す
誰に、どこまでの判断を委ねたか。
これを文書にしておかないと、成果が出なかったときに解釈が割れます。
委ねた側は、そこまでは任せていないと言います。
委ねられた側は、任されていたと言います。
文書には、金額の範囲、対象となる判断の種類、報告の頻度を書いてください。
この三つがあれば、解釈の余地は小さくなります。
権限を渡した記録は、期初に更新してください。
体制が変われば、適した範囲も変わります。
経営が決めるのは、予算総額、狙う市場、権限の範囲の三つです。媒体と表現には個別に関与せず、代わりに報告の項目と頻度を決めてください。
他部署が関わる判断は、誰が最終決定するのか
関係部署の数だけ拒否権があると、何も決まりません。
意見を出す部署と決める部署を、判断の種類ごとに一つに定めます。
マーケティングの判断には、他部署の協力が要るものが多くあります。
協力が要ることと、決定権があることは別です。
この二つを区別していないと、関係するすべての部署が拒否権を持つ状態になります。
一つの部署が留保すれば、判断は止まります。
リードの定義を変えるとき、営業部門の意見は不可欠です。
定義を変えれば、営業が受け取る件数と質が変わるからです。
一方で、最終的に決めるのはどちらかを、先に定めておく必要があります。
両方に決定権があると、合意できない項目が放置されます。
放置された項目は、四半期ごとに議題として再浮上します。
そのたびに同じ議論が繰り返されます。
繰り返しの議論は、参加者の時間だけを消費します。
決める側が定まっていないかぎり、何度議論しても結論は出ません。
判断の種類ごとに、意見を出す部署と決める側を決めてください。
リードの定義は、双方の部門長の合議が現実的です。
商品の訴求内容は、商品部門が意見を出し、マーケティングが決めます。
新商品の告知時期は、商品部門が決めます。
計測の実装は、情報システムが意見を出し、マーケティングが要件を決めます。
広告表現の適正性の確認は、法務の判断に従います。
販促費の計上区分は、経理の判断に従います。
この二つは、専門の判断であり、マーケティング側に決定権がありません。
決定権がない領域については、早い段階で相談に入ってください。
制作や配信の準備が進んだ後に差し戻されると、費用と時間の両方が無駄になります。
決めきれない場合の上位の場も、先に決めておいてください。
この場が決まっていないと、議論が何度も繰り返されます。
合議の場を、定例にしておく
部門をまたぐ判断が発生するたびに会議を設定すると、日程調整で時間が消えます。
関係者が四人いれば、日程が合うまでに二週間かかることがあります。
月次で場を用意しておき、そこに議題を持ち込む形にしてください。
場が既にあれば、日程調整の時間はゼロになります。
議題がない月は、開催を取りやめて構いません。
場を維持しておくことが目的で、毎月開くことが目的ではありません。
この場に持ち込む議題には、期限を付けてください。
期限のない議題は、次回に持ち越され続けます。
判断の種類ごとに、意見を出す部署と決める側を一つに定めてください。合議の場は月次で確保し、議題には期限を付けます。
決めたことを、どう記録し、どう覆すのか
決定と、その前提を一緒に記録します。
前提が変わったときだけ覆せるようにすると、蒸し返しの議論が減ります。
一度決めたことが、数か月後に再び議論になる。
この繰り返しは、決定の記録の仕方で減らせます。
何を決めたかだけが残っていると、納得していなかった人が時期を置いて再提起します。
再提起の理由は、そのときの状況や個人の判断です。
何を前提にその決定をしたかまで残しておくと、議論の焦点が前提の変化に絞られます。
前提が変わっていないなら、再提起の根拠がありません。
記録に含める項目は五つです。
決定の内容、前提、決めた人、反対意見、見直しの条件です。
決定の内容は、何をどうするかを書きます。
実行の指示として、そのまま使える粒度にしてください。
前提は、何を根拠にしたかを書きます。
再検討の判断は、この前提が変わったかどうかで行います。
決めた人の氏名も残します。
責任の所在が曖昧だと、後から誰も説明できなくなります。
反対意見も記録してください。
出た懸念とその対応を残しておくと、後からその懸念が現実になったときに検証できます。
見直しの条件は、決定と同時に決めます。
この数字がここまで動いたら再検討する、この前提が崩れたら見直す、という形です。
条件を書いておくと、再検討が個人の不満ではなく手続きになります。
手続きであれば、提起する側も受ける側も感情的になりません。
覆すときも、同じ手続きを踏んでください。
前提のどこが変わったかを示したうえで、決定を変えます。
記録の場所を一つにする
決定の記録が会議ごとに散っていると、探せません。
探せない記録は、参照されず、参照されない記録は蒸し返しを防げません。
判断の分類の表と同じ場所に置いてください。
どの階層で決まった判断かが分かる形にしておくと、検索の手がかりになります。
記録の様式は、五項目が一枚に収まる形で足ります。
長い議事録は、必要な情報を探すのに時間がかかります。
議事録とは別に、決定だけを抜き出した一覧を持つ方法もあります。
一覧を見れば、直近の決定が時系列で追えます。
決定の記録に含める項目
| 項目 | 書く内容 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 決定の内容 | 何をどうするか | 実行の指示として使う |
| 前提 | 何を根拠にしたか | 再検討するかの判断 |
| 決めた人 | 決裁者の氏名 | 責任の所在の確認 |
| 反対意見 | 出た懸念とその対応 | 後から検証するとき |
| 見直しの条件 | 再検討する数字と時期 | 前提が変わったとき |
決定だけでなく、前提と見直しの条件を同時に記録してください。条件を書いておくと、再検討が個人の不満ではなく手続きとして扱えます。
権限を渡すときに、どんな問題が起きやすいのか
権限だけを渡して、情報を渡さないことがあります。
判断に必要な数字と事業の前提が届いていないと、委ねられた側は決められません。
決裁の階層を作っても、機能しない場合があります。
原因の多くは、権限と情報の不一致です。
媒体間の予算移動を任されても、事業として今期どこを取りに行くかを知らなければ判断できません。
数字の良し悪しだけでは、配分の根拠になりません。
権限を渡すときは、判断に必要な情報の共有も同時に設計してください。
共有すべきなのは、事業の方針、各段階の歩留まり、許容できる獲得単価です。
この三つがないと、委ねられた側は保留を選びます。
保留は、権限がない状態と同じ結果になります。
二つ目の問題が、失敗の扱いが決まっていないことです。
委ねた判断が外れたとき、どう扱うかを決めていない組織が多くあります。
失敗のたびに権限が引き上げられると、委ねられた側は決めなくなります。
決めなければ失敗もしないためです。
試行の枠の範囲内であれば結果を問わない、といった扱いを先に決めてください。
決めておかないと、枠があっても使われません。
三つ目が、形だけの権限になっていることです。
決裁権はあるが、実行の前に上長へ相談する慣行が残っている状態です。
この状態では、速度は変わりません。
決裁の階層を作った意味がなくなります。
慣行を変えるには、上長の側が相談を受けない姿勢を明確にする必要があります。
相談を受けてしまうと、権限は形式だけのものになります。
四つ目が、範囲が曖昧なことです。
どこまでが自分の判断で進めてよいかが分からないと、毎回確認が発生します。
確認の回数が多いと、権限を渡した側にも負担が戻ります。
結果として、渡さないほうが早いという判断になり、階層が形骸化します。
範囲は、金額と対象を文書で明示してください。
口頭で伝えた範囲は、数か月で双方の記憶がずれます。
五つ目が、記録がないことです。
委ねた判断の結果が記録に残っていないと、後から覆されます。
権限は、使われて初めて機能する
決裁の範囲を広げても、実際に使われなければ何も変わりません。
制度の有無ではなく、使用の実績を見てください。
担当者の裁量で実行された件数を、月次で数えます。
件数がゼロに近いなら、制度は動いていません。
ゼロに近い理由は、情報の不足、失敗の扱いの不明、慣行の残存のいずれかです。
どれが原因かは、担当者に直接聞けば分かります。
聞く場は、評価の面談とは別に設けてください。
評価の場で聞くと、使えていないことを問題として報告しにくくなります。
権限とあわせて、事業の方針、歩留まり、許容できる獲得単価を渡してください。失敗の扱いを先に決め、裁量で実行された件数を月次で数えます。
決裁の設計は、どこから手をつけるのか
直近三か月に止まった判断を書き出すことからです。
止まった箇所に、決裁の設計の穴があります。
決裁の設計は、理想の形から作ると運用されません。
実際に止まった事例から作ってください。
書き出す対象は三種類です。
会議で議題に上がったが決まらなかった件、稟議を出してから実行までに一か月以上かかった件、実行しないまま消えた提案です。
この三つを拾うと、止まっている箇所が具体的に見えます。
抽象的な決裁が遅いという認識が、件数と場所に変わります。
次に、止まった理由を分けます。
決裁の不在が理由か、情報の不足が理由かの二つです。
決裁の不在であれば、分類の表に追加します。
情報の不足であれば、共有の設計を変えます。
三番目に、判断を可逆性と影響範囲で分類します。
戻せるかどうか、部門をまたぐかどうかの二軸です。
四番目に、金額の基準を月次予算からの比率で決めます。
固定額ではなく比率にしておくと、予算の変化に追随します。
五番目に、経営と権限の範囲を合意します。
ここに三週間を見込んでください。
最後に、決定の記録の型と置き場所を決めます。
五項目の一枚に収まる型で足ります。
決裁の設計を組み直す順序
| 順番 | やること | 関わる人 | 期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 直近3か月で止まった判断を書き出す | マーケ責任者・運用担当 | 1週間 |
| 2 | 止まった理由を決裁の不在か情報の不足かで分ける | マーケ責任者 | 1週間 |
| 3 | 判断を可逆性と影響範囲で分類する | マーケ責任者 | 2週間 |
| 4 | 金額の基準を月次予算からの比率で決める | マーケ責任者・経営 | 1週間 |
| 5 | 経営と権限の範囲を合意する | 経営・マーケ責任者 | 3週間 |
| 6 | 決定の記録の型と置き場所を決める | マーケ責任者 | 1週間 |
数字は説明のための仮の値です。
直近三か月で止まった判断が18件、そのうち決裁の不在が12件、情報の不足が6件なら、先に手を入れるのは分類の表です。
情報の不足が多い場合は、分類の表を作っても効きません。
事業の方針と歩留まりの共有を先に設計してください。
意思決定の速さを測る数字
| 数字 | 見る頻度 | 目安の考え方 |
|---|---|---|
| 提案から実行までの日数 | 毎月 | 決裁の階層が機能しているか |
| 担当者の裁量で実行された件数 | 毎月 | 権限が実際に使われているか |
| 決まらずに持ち越された議題の数 | 毎月 | 決定の所在が曖昧な領域 |
| 再議論になった決定の件数 | 四半期 | 前提の記録ができているか |
| 試行枠の消化率 | 四半期 | 新しい施策が試されているか |
年に一度、階層を見直してください。
体制が変われば、適した階層も変わります。
人が増えたのに階層が昔のままだと、責任者に判断が集中します。
期初に見直す機会を設け、権限を渡した記録も同時に更新します。
見直しの際に見るのは、持ち越された議題の数です。
特定の種類の判断が繰り返し持ち越されているなら、その領域の決定の所在が決まっていません。
止まった判断を、誰が書き出すか
書き出しの作業は、責任者だけで行わないでください。
責任者の視点では、自分が決められなかった件が見落とされます。
運用担当と一緒に書き出すと、日々の作業で止まっている件が出てきます。
承認を待っているあいだの作業の中断は、責任者からは見えません。
書き出した件は、判断の種類でまとめてください。
同じ種類が複数出ていれば、そこが優先して手を入れる領域です。
書き出した一覧は、設計を変えた後の比較にも使えます。
三か月後に同じ作業を行い、件数が減っているかを見てください。
着手点は、直近三か月で止まった判断を書き出すことです。決裁の不在か情報の不足かで分け、情報の不足が多いなら共有の設計から手を入れてください。
マーケティングの意思決定の設計で判断に迷う場合は、無料相談で現状を見てもらうところから始められます。
決裁の仕組みごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
マーケティングの意思決定が遅い原因は何ですか
決める人が決まっていないことが多くあります。関係者が多い判断ほど全員の合意を待つ形になり、誰も決めないまま時間が過ぎます。意見を集めることと決めることを分け、決める人を先に決めてください。
決裁の基準は金額だけで決めてよいですか
金額だけでは、費用がかからず元に戻せない判断が漏れます。指標の定義の変更は費用がゼロでも過去との比較を失います。可逆性と影響範囲の二つの軸を組み合わせ、金額は月次予算からの比率で置いてください。
経営はどこまで関与すべきですか
年間予算の総額、狙う市場の選択、責任者に渡す権限の範囲の三つです。媒体の選択や広告表現に個別に関与すると、責任者の判断が形骸化し、成果が出なかったときに誰の判断だったか分からなくなります。
他部署と合意できない判断はどう決めますか
判断の種類ごとに、意見を出す部署と決める側を一つに定めてください。関係部署の数だけ拒否権があると決まりません。合議の場は月次で確保し、持ち込む議題には期限を付けます。
一度決めたことが何度も議論になります
決定だけでなく、何を前提にその決定をしたかを記録してください。あわせて、どの数字がどこまで動いたら再検討するかを決定と同時に決めておくと、再議論が個人の不満ではなく手続きとして扱えます。
まとめ
- 決める人が決まっていないからです。関係者が多い判断ほど全員の合意を待つ形になり、誰も決めないまま時間が過ぎます
- 何を決めるかではなく、どれくらい元に戻せるかで分類します。戻せる判断は現場に、戻しにくい判断は上位に置きます
- 金額は月次予算からの比率で置き、階層は三つか四つに収めます。階層を増やすほど正確になりますが、運用されなくなります
- 経営が決めるのは、予算の総額と、何をやらないかです。媒体の選択や広告の表現に経営が入ると、判断の速度と責任の所在が同時に失われます
- 関係部署の数だけ拒否権があると、何も決まりません。意見を出す部署と決める部署を、判断の種類ごとに一つに定めます
- 決定と、その前提を一緒に記録します。前提が変わったときだけ覆せるようにすると、蒸し返しの議論が減ります
- 権限だけを渡して、情報を渡さないことがあります。判断に必要な数字と事業の前提が届いていないと、委ねられた側は決められません
- 直近三か月に止まった判断を書き出すことからです。止まった箇所に、決裁の設計の穴があります