代理店とインハウスの役割分担

契約書に書かれているのは作業の範囲で、判断の範囲ではないからです。
作業を分けても、誰が決めるかを決めないと、同じ仕事を二人で見ることになります。
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目次
目次
- 併用しているのに、分担が決まっていないのはなぜか
- 分担を決める目的を、間違えない
- 分担は、どの単位で決めるのか
- 実務では、二つの軸を重ねる
- 判断の境界は、どこに引くのか
- 境界は、年に一度見直す
- アカウントとデータの持ち主は、どう決めるのか
- 制作物の権利と、個人情報の扱い
- 制作と訴求の分担は、どう分けるのか
- 表現の確認の責任は、社内に残る
- 会議と報告の設計で、分担はどう運用に乗るのか
- 議事録に、決定と担当を残す
- 分担が崩れる兆候は、どこに出るのか
- 直すときは、人ではなく区分から見る
- 分担の立て直しは、どこから手をつけるのか
- よくある質問
- まとめ
契約書に書かれているのは作業の範囲で、判断の範囲ではないからです。
作業を分けても、誰が決めるかを決めないと、同じ仕事を二人で見ることになります。
併用しているのに、分担が決まっていないのはなぜか
契約書に書かれているのは作業の範囲で、判断の範囲ではないからです。
作業を分けても、誰が決めるかを決めないと、同じ仕事を二人で見ることになります。
社内にマーケティング担当を置きながら、代理店も使う。
この形は珍しくありません。
Testifyが2026年5月に実施した調査では、代理店を活用している企業のうち、社内と併用しているのが54.4%、全面委託が37.2%でした。
併用が多数派である一方、分担の設計が明文化されている会社は多くありません。
委託契約に書かれるのは、運用する媒体、レポートの頻度、手数料の率です。
どの判断を代理店が決めてよく、どの判断を社内が決めるかは、たいてい書かれていません。
書かれていない部分は、担当者同士の暗黙の了解で運用されます。
了解が成立しているあいだは、問題は表に出ません。
表に出るのは、人が変わったときです。
社内の担当者が異動する、代理店の担当者が交代する。
どちらか一方が起きるだけで、それまでの前提が失われます。
引き継ぎ資料に書かれているのは作業手順で、判断の基準ではありません。
新しい担当者は、どこまで自分で決めてよいかが分かりません。
分からないので、すべてを確認に回します。
確認が増えると、社内側も対応に時間がかかります。
その結果、代理店のレスポンスが遅いという評価になります。
実際に遅くなっているのは、承認の経路です。
経路の長さは、分担の設計が決まっていないことから生じています。
同じ分析を二重にやる状態も、よく見られます。
念のため社内でも見ている、という説明がされます。
実際に欠けているのは、数字の一次情報をどちらが持つかの合意です。
合意がなければ、どちらも自分の数字を作ります。
代理店からの提案が採用されない状態も、分担の問題です。
提案してよい範囲が共有されていないため、的を外した提案が出ます。
分担を決める目的を、間違えない
分担の目的は、作業を公平に割ることではありません。
公平さを基準にすると、どちらも納得しない配分になります。
目的は二つです。
判断を遅らせないことと、責任の所在を一つにすること。
この二つが達成されていれば、作業の分け方は柔軟で構いません。
片方に作業が偏っていても、問題ありません。
判断を遅らせないためには、承認が要らない範囲を広げます。
責任の所在を一つにするためには、同じ判断を二人が持たない形にします。
この二つは、同時に達成できます。
判断の種類ごとに、決める人を一人に決めればよいためです。
決める人を一人にすることへの抵抗は、必ず出ます。
念のため両方が見る、という運用が安心に見えるためです。
安心のための重複は、費用と速度の両方を犠牲にします。
重複させるなら、その分の費用を認識したうえで決めてください。
契約書に書かれているのは作業の範囲だけです。分担の目的は公平な配分ではなく、判断を遅らせないことと責任の所在を一つにすることです。
分担は、どの単位で決めるのか
媒体ごとではなく、意思決定の種類ごとに決めます。
媒体で分けると、媒体をまたぐ配分の判断が宙に浮きます。
分担の単位には、複数のやり方があります。
どれを選ぶかで、判断が止まる場所が変わります。
最も多いのが、媒体で分ける形です。
検索広告は代理店、SNS広告は社内、という分け方です。
この分け方には、担当が明確になる利点があります。
誰に聞けばよいかが、すぐに分かります。
一方で、検索からSNSに予算を移すべきかという判断を、どちらも持ちません。
それぞれが自分の媒体の成果を主張するため、判断の材料も歪みます。
媒体間の予算配分は、最も事業への影響が大きい判断です。
その判断が宙に浮く設計は、避けてください。
次に多いのが、工程で分ける形です。
戦略は社内、実行は代理店、という分け方です。
よく使われますが、戦略と実行の境界があいまいになります。
配信の設定を変えることが戦略の変更にあたるのか、判断が分かれます。
境界が曖昧だと、境界にある判断が毎回議論になります。
議論のたびに、実行が止まります。
三つ目が、意思決定の種類で分ける形です。
予算を動かす判断、指標の定義を変える判断、訴求の方向を変える判断。
こうした判断の種類ごとに、誰が決め、誰に事後報告するかを決めます。
作業がどちらにあっても、判断の所在が一つに定まります。
金額の大小で分ける形もあります。
決裁の速度は上がりますが、金額が小さくても影響の大きい方針変更が漏れます。
期間で分ける形もあります。
短期は代理店、中期は社内という分け方ですが、期をまたぐ施策の継続が宙に浮きます。
分担の単位と、宙に浮きやすい判断
| 分担の単位 | 決めやすいこと | 宙に浮きやすい判断 |
|---|---|---|
| 媒体別 | 日々の運用の担当 | 媒体間の予算配分 |
| 工程別 | 作業の流れ | 工程をまたぐ変更 |
| 意思決定の種類別 | 判断の所在 | 作業の細かい割り当て |
| 金額の大小別 | 決裁の速度 | 金額が小さい方針変更 |
| 期間別 | 短期と中期の役割 | 期をまたぐ施策の継続 |
実務では、二つの軸を重ねる
意思決定の種類だけで分けると、作業の割り当てが決まりません。
そこで、二つ目の軸を重ねます。
意思決定の種類で大枠を決め、そのうえで金額の大小で決裁の速度を変えます。
少額で元に戻せる判断は代理店に委ね、大きく元に戻しにくい判断は社内に残します。
この重ね方にすると、日々の運用は止まりません。
同時に、影響の大きい判断は社内に残ります。
金額の線は、月次予算の一定割合で引いてください。
固定の金額で引くと、予算が変わったときに合わなくなります。
線の位置は、年に一度見直します。
社内の体制が変われば、社内に残せる判断の量も変わります。
見直しの時期は、契約の更新に合わせると忘れません。
媒体で分けると媒体間の予算配分が宙に浮きます。意思決定の種類で大枠を決め、金額の大小で決裁の速度を変えてください。
判断の境界は、どこに引くのか
元に戻せるかどうかで引きます。
戻せる判断は現場に置き、戻せない判断は社内に残すと、速度と安全の両立ができます。
境界を金額だけで引くと、金額は小さいが影響の大きい判断が漏れます。
もう一つの軸が必要になります。
その軸が、可逆性です。
元に戻せるかどうかで判定します。
入札の調整は、翌日に戻せます。
戻した後の影響も、数日で消えます。
一方で、コンバージョンの定義を変えると、過去との比較ができなくなります。
金額はゼロですが、後者は社内の判断です。
計測の仕様も同じです。
変更した瞬間から、前の期間との比較が成立しなくなります。
この二つを金額で判定すると、どちらも代理店に委ねられます。
可逆性で判定すれば、社内に残ります。
判断の区分は、三つに分けてください。
代理店が決めて実行し、月次でまとめて報告するもの。
代理店が提案し、社内が承認してから実行するもの。
社内が決めて、代理店に実行を依頼するもの。
この三つに、すべての判断を振り分けます。
振り分けられない判断が出てきたら、双方の合意が必要な四つ目の区分に入れます。
即実行と事後報告の区分には、日次の入札調整と配信面の除外が入ります。
どちらも翌日に戻せる判断です。
提案と承認の区分には、新しい広告の型の導入と媒体の追加が入ります。
戻せますが、戻すのに時間がかかります。
社内決定と実行依頼の区分には、四半期の予算配分と訴求の方向の変更が入ります。
事業の前提を知らないと決められません。
社内決定のみの区分には、指標の定義と計測の仕様が入ります。
実行も社内で行うため、代理店には結果だけを共有します。
双方の合意が必要な区分には、目標値の設定と契約範囲の変更が入ります。
片方だけでは決められません。
境界は、年に一度見直す
社内の体制が変われば、社内に残せる判断の量も変わります。
担当者が増えたのに境界が昔のままだと、代理店の裁量が過大に見えます。
逆に、社内の担当者が減ったのに境界が変わっていないと、承認待ちが増えます。
どちらも、体制の変化に境界が追いついていない状態です。
契約の更新に合わせて、区分の表を更新してください。
更新の場には、社内と代理店の両方が出ます。
更新の際に確認するのは、二つです。
この一年で、承認待ちが発生した判断はどれか。
もう一つが、代理店の裁量で実行して問題が起きた判断はどれか。
前者は区分を緩め、後者は区分を厳しくする対象になります。
この二つを記録しておかないと、更新の場で議論の材料がありません。
記録は、月次の報告に一行加える形で足ります。
境界は金額ではなく可逆性で引きます。判断を三つの区分に振り分け、承認待ちが起きた判断と問題が起きた判断を記録して年に一度見直してください。
アカウントとデータの持ち主は、どう決めるのか
広告アカウントと計測環境の所有は、社内に置きます。
所有が外にあると、委託先を変えるときに過去のデータごと失います。
分担の議論で後回しにされやすいのが、アカウントとデータの所有です。
日々の運用には影響しないため、優先度が下がります。
影響が出るのは、委託先を変えるときです。
そのときには、もう手遅れになっています。
所有と運用は、別のことです。
アカウントを社内が所有していても、日々の運用を代理店が行うことはできます。
所有を社内に置く目的は、運用を取り上げることではありません。
過去の配信履歴と学習の蓄積を、自社に残すことです。
所有が外にある状態で委託先を変えると、新しいアカウントで一からやり直しになります。
過去の入札の学習、除外の設定、配信の履歴が引き継げません。
切り替えの前後で、成果が落ちる期間が生まれます。
落ちる期間は、媒体と規模によりますが、数か月に及ぶことがあります。
この期間の損失は、委託先を変える判断そのものを難しくします。
変えたくても変えられない状態になります。
計測タグと解析環境も、社内に置いてください。
定義の一貫性を保つためです。
代理店ごとに計測の定義が変わると、期をまたいだ比較ができません。
比較ができなければ、委託先を変えた効果も検証できません。
顧客データは、当然に社内です。
取り扱いの責任が社内にあるためです。
制作物の元データも、社内に置きます。
再利用と改変に必要になります。
運用の手順書は、両方で共有してください。
引き継ぎのときに、最も使う資料になります。
資産の種類と、所有の置き場所
| 資産 | 所有の置き場所 | そう決める理由 |
|---|---|---|
| 広告アカウント | 社内 | 履歴と学習を自社に残すため |
| 計測タグと解析環境 | 社内 | 定義の一貫性を保つため |
| 顧客データ | 社内 | 取り扱いの責任が社内にあるため |
| 制作物の元データ | 社内 | 再利用と改変に必要なため |
| 運用の手順書 | 両方で共有 | 引き継ぎに使うため |
制作物の権利と、個人情報の扱い
広告の画像や動画は、契約でどこまで使えるかが変わります。
他媒体への転用、契約終了後の使用、二次利用の可否。
発注の時点で確認しておかないと、作り直しの費用が発生します。
特に、契約終了後の使用は見落とされやすい項目です。
委託先を変えた翌月に、これまでの広告が使えないと分かる。
この事態を避けるには、発注の時点で確認するしかありません。
確認する内容は、三つです。
どの媒体で使えるか、いつまで使えるか、改変してよいか。
この三つを発注書に書いておけば、後の議論がなくなります。
書いていない場合は、次の更新のときに追加してください。
顧客データを外部と共有する場面では、取り扱いの範囲と保管の期間を契約で定めます。
関連する規制は改定されることがあるため、掲載時点の最新の公式ガイドラインで確認してください。
所有と運用は別です。アカウントと計測環境は社内に置き、制作物はどの媒体でいつまで改変してよいかを発注の時点で確認してください。
制作と訴求の分担は、どう分けるのか
何を言うかは社内、どう見せるかは外部という分け方が機能します。
訴求の方向まで外に出すと、事業の前提から離れます。
広告の成果は、運用の設定よりも訴求の内容で決まる場面が増えています。
配信の自動化が進み、設定で差がつく余地が狭まっているためです。
だからこそ、ここの分担は慎重に決めてください。
運用の分担より、事業への影響が大きくなります。
訴求の元になる情報は、社内にしかありません。
顧客が実際に何に困っていたか。
営業がどの言葉で受注してきたか。
競合との比較でどこを選ばれているか。
こうした情報は、代理店からは取りにいけません。
取りにいくには、営業への同行や商談の記録へのアクセスが必要になります。
社内でも、マーケティング部門が営業から集めていなければ存在しません。
まず、社内で集める仕組みを作ってください。
一方で、表現の技術は外部のほうが蓄積があります。
同じ訴求でも、見せ方で反応は変わります。
多くの案件を見ている外部のほうが、型の蓄積があります。
自社だけで試せる数には、限りがあります。
社内が訴求を決め、外部が表現に落とす。
この分担が、双方の強みに合います。
工程ごとに見ると、顧客理解と訴求の決定は社内が担います。
社内が必ず関与するのは、営業からの情報の集約です。
表現の案出しは外部が担いますが、社内は事業上の前提を共有します。
共有がなければ、前提から外れた案が出てきます。
制作の実作業は外部が担い、社内は素材と権利を確認します。
表現の確認は社内が担い、事実と表現の適正性を見ます。
検証と改善は両方で行い、次に試す訴求は社内が決めます。
表現の確認の責任は、社内に残る
広告の表現に関する責任は、発注した側にも及びます。
外部に作らせたから責任がない、という整理にはなりません。
扱う商材によって確認すべき範囲が変わるため、掲載時点の最新の公式ガイドラインで確認してください。
規制のある領域では、確認の工程を必ず設けます。
確認の手順と、確認にかかる日数を、分担の表に含めておいてください。
含めていないと、入稿の直前に確認が必要だと気づきます。
確認する人も決めます。
法務が確認するのか、社内の担当者が一次確認をするのか。
一次確認の基準を作っておくと、法務に回す件数が減ります。
基準は、過去に指摘を受けた表現の一覧で足ります。
この一覧は、外部にも共有してください。
共有していれば、最初から避けた案が出てきます。
何を言うかは社内、どう見せるかは外部という分け方が機能します。表現の確認の責任は社内に残るため、確認の手順と日数を分担の表に含めてください。
会議と報告の設計で、分担はどう運用に乗るのか
分担の表を作っただけでは運用されません。
定例の場で、決めた区分に沿って議題を並べると、運用に乗ります。
分担が形骸化する理由の多くは、確認する場がないことです。
表は作られたものの、誰も見返しません。
会議の設計まで含めて、分担です。
表と会議は、同時に設計してください。
定例の議題を、区分に合わせて並べます。
事後報告の区分は、一覧で流します。
説明は不要で、確認だけです。
質問があればその場で聞き、なければ次に進みます。
承認が必要な区分は、資料を事前に共有して会議で決めます。
その場で資料を読む形にすると、時間が足りません。
社内決定の区分は、会議の前に社内で決めておきます。
会議は、決めた内容を共有する場になります。
この並べ方にすると、会議の時間が承認の議論に使えます。
事後報告に時間を使う形では、承認まで到達しません。
レスポンスの速度も、分担の問題として扱ってください。
Testifyの2026年5月の調査では、運用担当者が代理店に感じる不満の上位が、レスポンスが遅いことで50.8%でした。
遅さの一部は、代理店側の体制ではなく、承認の経路が長いことに起因します。
即実行の区分を広げると、この不満は減ります。
会議の頻度も、扱う内容で分けます。
運用の定例は隔週で、事後報告の確認と直近の調整を行います。
方針の会議は月次で、承認が必要な提案と予算の配分を扱います。
四半期の振り返りでは、分担の区分そのものを見直します。
期初の合意では、目標値と契約範囲を確定します。
臨時の連絡は随時で、障害と緊急の停止だけを扱います。
場ごとの参加者も、頻度に応じて変えてください。
運用の定例は双方の担当者だけで足り、責任者が出ると報告の時間が生まれます。
方針の会議には、双方の責任者が出ます。
承認の判断をその場で下すためです。
四半期の振り返りには、社内の経営が入る形が機能します。
分担の区分の見直しは、体制の話につながるためです。
期初の合意には、契約の決裁権を持つ人が出ます。
目標値と契約範囲を同時に確定するためです。
臨時の連絡は、関係者だけで短く行ってください。
全員に連絡する運用にすると、緊急の判断が遅れます。
議事録に、決定と担当を残す
決めたことと、誰が実行するかを一行ずつ残してください。
この記録が、担当者が交代したときの引き継ぎ資料になります。
記録する項目は、三つで足ります。
決めたこと、担当、期日。
議論の経緯は記録しません。
残すと、記録の作成に時間がかかり、実際には作られなくなります。
記録は、会議の中でその場で書きます。
画面に映しながら書くと、認識のずれもその場で解消できます。
記録の保管場所は、社内と代理店の双方が見られる場所にしてください。
片方だけが持つと、内容が食い違います。
前回の決定の実施状況は、会議の冒頭で確認します。
確認の場がないと、決めることだけが増えていきます。
定例の議題を区分に合わせて並べると、分担が運用に乗ります。レスポンスの遅さは承認の経路の長さから来るため、即実行の範囲を広げてください。
分担が崩れる兆候は、どこに出るのか
社内が細部を確認し始めたときが兆候です。
確認の範囲が広がるのは、信頼の問題ではなく、区分が現状に合わなくなった合図です。
分担は、一度決めれば終わりではありません。
崩れ始める兆候を知っておくと、早めに直せます。
一つ目の兆候が、社内の確認が細かくなることです。
以前は月次でまとめて見ていた項目を、週次で確認し始める。
これは、区分の前提が崩れているときに起きます。
成果が落ちている、体制が変わった、といった変化が背景にあります。
代理店への不信として解釈されがちですが、不信が原因とは限りません。
社内側に説明を求められる場面が増えただけの場合もあります。
確認すべきなのは、区分が現状に合っているかです。
合っていないなら、区分を直します。
二つ目が、代理店からの提案が減ることです。
提案しても通らない期間が続くと、提案は出なくなります。
通らない理由が社内の事情であれば、それを伝えないと関係は冷えます。
予算が確定していない、他の施策を優先している、といった事情です。
提案してよい範囲と、通らなかった理由の共有を、運用に含めてください。
理由を伝えるだけで、次の提案の的が合います。
三つ目が、同じ論点が毎月出ることです。
判断の所在が決まっていないため、毎回議論になります。
四つ目が、窓口が複数になることです。
連携の強化として説明されますが、実際には指示が割れます。
指示が割れると、代理店側は最後に言われた指示に従います。
その結果、社内の意図と違う運用になります。
五つ目が、社内の担当者が実務に入ることです。
人手の補填として始まりますが、内製の範囲が変わったことを意味します。
直すときは、人ではなく区分から見る
崩れたときに、担当者を替える判断を先に取りがちです。
社内側も代理店側も、人を替えれば変わると考えます。
先に見るのは、判断の区分が現状の体制と合っているかです。
体制が変わったのに区分が古いままなら、人を替えても同じことが起きます。
区分を見るときに確認するのは、二つです。
社内の担当者の人数と経験は、区分を決めた時点から変わっていないか。
代理店側の担当者の人数と経験は、変わっていないか。
どちらかが変わっていれば、区分も変える必要があります。
社内の担当者が増えたなら、社内決定の区分を広げます。
減ったなら、即実行の区分を広げます。
代理店側の担当者が交代したなら、しばらくは提案と承認の区分を広げます。
新しい担当者の判断の精度が分かるまでの期間です。
この調整は、四半期の振り返りで行ってください。
随時で変えると、どちらも混乱します。
社内の確認が細かくなるのは、信頼ではなく区分が合っていない合図です。担当者を替える前に、両者の体制の変化と区分の対応を確認してください。
分担の立て直しは、どこから手をつけるのか
直近三か月に発生した判断を、実際に誰が決めたかで並べることからです。
理想の分担より、今の実態を先に見ます。
分担の設計は、あるべき論から始めると机上のものになります。
実際に起きた判断の記録から始めてください。
最初にやるのは、直近三か月の判断の一覧化です。
会議の議事録、承認の記録、媒体の変更履歴から拾います。
拾う単位は、後から振り返って判断だったと分かるものです。
入札の微調整まで拾うと、件数が多くなりすぎます。
一覧ができたら、実際に誰が決めたかを記入します。
社内の誰か、代理店の誰か、両者の合意か。
記入すると、契約や口頭の了解と実態のずれが見えます。
ずれている項目が、直す対象になります。
次に、判断を可逆性と金額で区分します。
戻せるかどうかと、月次予算に対する割合の二つです。
区分したら、三つの区分に振り分けて代理店と合意します。
合意の場には、双方の責任者が出てください。
並行して、アカウントとデータの所有を確認します。
所有が外にある場合、移管の交渉が必要になります。
最後に、定例の議題を区分に合わせて組み直します。
ここまでで、分担が運用に乗ります。
分担の立て直しを進める順番
| 順番 | やること | 関わる人 | 期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 直近三か月の判断を一覧にする | 社内の担当 | 1週間 |
| 2 | 実際に誰が決めたかを記入する | 社内の担当 | 1週間 |
| 3 | 判断を可逆性と金額で区分する | 社内の責任者 | 1週間 |
| 4 | 三つの区分に振り分けて代理店と合意する | 双方の責任者 | 2週間 |
| 5 | アカウントとデータの所有を確認する | 社内と情報システム | 2週間 |
| 6 | 定例の議題を区分に合わせて組み直す | 双方の担当 | 1週間 |
数字は説明のための仮の値です。
三か月で判断が60件あり、そのうち45件に社内の承認が入っていたとします。
この割合なら、承認の負荷が速度を決めています。
45件のうち、可逆性の高い判断が何件あるかを数えてください。
可逆性の高い判断が20件あれば、その20件は即実行の区分に移せます。
移すだけで、承認待ちの件数が半分近く減ります。
逆に、承認が入っていた判断が10件しかなければ、社内の関与が薄すぎます。
代理店の提案をそのまま採用している状態かもしれません。
立て直しの後に追う項目
| 数字 | 見る頻度 | 目安の考え方 |
|---|---|---|
| 社内承認が必要な判断の件数 | 毎月 | 承認待ちが速度を落としていないか |
| 提案から実行までの日数 | 毎月 | 区分が現状に合っているか |
| 代理店からの提案件数 | 毎月 | 提案が出る関係を保てているか |
| 二重に行っている作業の件数 | 四半期 | 費用が重なっていないか |
| 区分の表の最終更新日 | 四半期 | 運用が形骸化していないか |
合意した内容は、一枚にまとめて共有してください。
判断の区分、所有の所在、定例の設計の三つです。
社内と代理店の双方が、同じものを持ちます。
別々に持つと、半年後には内容が食い違います。
契約書の別紙にしておくと、更新のたびに見直す機会ができます。
別紙にしていないと、契約だけが更新され、分担は古いまま残ります。
担当者が交代するときに渡すのは、作業手順ではなくこの一枚です。
社内でも代理店でも、担当が替わる場面は必ず来ます。
作業手順は、新しい担当者が自分で覚えられます。
判断の区分は、渡されなければ分かりません。
着手点は、直近三か月の判断を誰が決めたかで並べることです。可逆性の高い判断を即実行の区分に移すだけで、承認待ちが大きく減ります。
インハウスと代理店の分担で判断に迷う場合は、無料相談で現状を見てもらうところから始められます。
委託の範囲ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
代理店との分担は契約書に書いてあれば十分ですか
契約書に書かれるのは作業の範囲で、判断の範囲はたいてい書かれていません。どの判断を代理店が決めてよいかを別紙で定めないと、暗黙の了解で運用され、担当者が交代した時点で失われます。
媒体ごとに社内と代理店で分けるのは良い方法ですか
媒体間の予算配分という判断が宙に浮きます。意思決定の種類で大枠を分け、そのうえで金額の大小で決裁の速度を変えるほうが、判断の所在が定まります。
どの判断を代理店に任せてよいか、線引きの基準はありますか
元に戻せるかどうかで引いてください。入札の調整は翌日に戻せますが、コンバージョンの定義変更は過去との比較ができなくなります。金額が小さくても後者は社内の判断です。
広告アカウントは代理店の所有のままでも問題ありませんか
委託先を変えるときに、過去の配信履歴と学習の蓄積を引き継げません。切り替えの前後で成果が落ちる期間が生まれ、変える判断自体が難しくなります。所有は社内に置き、運用は代理店が行う形にしてください。
代理店のレスポンスが遅いのですが、どうすればいいですか
承認の経路の長さが原因である場合があります。Testifyの2026年5月の調査でも運用担当者の不満の上位がレスポンスの遅さでした。可逆性の高い判断を即実行と事後報告の区分に移すと、改善することがあります。
まとめ
- 契約書に書かれているのは作業の範囲で、判断の範囲ではないからです。作業を分けても、誰が決めるかを決めないと、同じ仕事を二人で見ることになります
- 媒体ごとではなく、意思決定の種類ごとに決めます。媒体で分けると、媒体をまたぐ配分の判断が宙に浮きます
- 元に戻せるかどうかで引きます。戻せる判断は現場に置き、戻せない判断は社内に残すと、速度と安全の両立ができます
- 広告アカウントと計測環境の所有は、社内に置きます。所有が外にあると、委託先を変えるときに過去のデータごと失います
- 何を言うかは社内、どう見せるかは外部という分け方が機能します。訴求の方向まで外に出すと、事業の前提から離れます
- 分担の表を作っただけでは運用されません。定例の場で、決めた区分に沿って議題を並べると、運用に乗ります
- 社内が細部を確認し始めたときが兆候です。確認の範囲が広がるのは、信頼の問題ではなく、区分が現状に合わなくなった合図です
- 直近三か月に発生した判断を、実際に誰が決めたかで並べることからです。理想の分担より、今の実態を先に見ます