
市場の伸びと自社の伸びが別物だからです。
広告市場が伸びていても、自社の商材が需要の伸びている領域になければ、予算は増えません。
外部の数字は、自社の判断の材料であって答えではありません。
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目次
目次
- 同じ年に、予算を増やす会社と削る会社に分かれるのはなぜか
- 市場の平均は、どの会社の実態でもない
- 増えているのは、広告費のどの部分なのか
- 新しい配信面の情報を、どう扱うか
- 削られているのは、どこなのか
- 削減の順番が説明しやすさで決まる危うさ
- 横ばいが過半数であることは、何を示しているのか
- 横ばいを選ぶなら、何を記録するか
- 市場の伸びを、自社の予算にどう翻訳するか
- 稟議に外部データを載せるときの形
- 外部データと自社の配分が食い違うとき、どう扱うか
- 説明できない食い違いを、先に潰す
- 外部データの使い方を誤ると、何が起きるのか
- 外部データを使わないという選択
- 来期の予算に、この流れをどう反映するか
- よくある質問
- まとめ
市場の伸びと自社の伸びが別物だからです。
広告市場が伸びていても、自社の商材が需要の伸びている領域になければ、予算は増えません。
外部の数字は、自社の判断の材料であって答えではありません。
同じ年に、予算を増やす会社と削る会社に分かれるのはなぜか
市場の伸びと自社の伸びが別物だからです。
広告市場が伸びていても、自社の商材が需要の伸びている領域になければ、予算は増えません。
外部の数字は、自社の判断の材料であって答えではありません。
広告市場の統計は、毎年まとまった形で公表されます。
電通が2026年3月5日に発表した2025年の日本の広告費では、総広告費が8兆623億円で前年比105.1%でした。
同じ発表で、インターネット広告費は4兆459億円、前年比110.8%です。
構成比は50.2%となり、初めて過半数を超えました。
マスコミ四媒体は2兆2,980億円で前年比98.4%です。
数字だけを見れば、インターネット広告に予算を移す動きが続いていることが分かります。
ところが、同じ年に自社の予算を削っている会社も多くあります。
Comexposium Japanが2025年12月5日から19日に実施した調査では、2026年の予算を増やすと答えた企業が38.5%、横ばいが50.5%でした。
増やすと答えた企業は前年比で6.2ポイント増えていますが、過半数は横ばいです。
市場全体が伸びているのに、半数の会社は金額を動かしていません。
この食い違いは、統計の誤りではありません。
市場の伸びは全社の合計であり、どの会社の実態でもないからです。
伸びの中身が特定の領域に偏っていれば、その領域にいない会社の予算は増えません。
平均は、参加している全社の数字を足して割った値にすぎません。
増減を分けているのは、主に三つの条件です。
自社の商材が需要の伸びている領域にあるか、獲得の効率がまだ維持できているか、そして資金の余裕があるかです。
三つのうち一つでも欠けていれば、市場が伸びていても予算は増えません。
逆に、市場が横ばいでも三つがそろっていれば増やす判断になります。
つまり、外部の数字は増減の方向を示すものではありません。
示すのは、自社に対して問うべき質問のほうです。
市場が伸びているという事実からは、自社の顧客が接している面も伸びているかという問いが出ます。
この問いに答えられなければ、増額の根拠としては使えません。
市場の平均は、どの会社の実態でもない
平均値には、大きく伸びた少数と、横ばいの多数が同じ重みで入っていません。
金額の大きい会社の動きが、平均を押し上げます。
そのため、自社の規模と近い会社の動きは、平均からは読み取れません。
平均を自社の基準として扱うと、規模の違う会社の判断を真似ることになります。
もう一つの注意は、集計の単位です。
市場の統計は暦年で集計されることが多く、多くの会社の会計年度とはずれています。
暦年の数字を自社の期の予算に当てはめるときは、この半期分のずれを意識してください。
ずれを無視すると、すでに起きた変化を来期の予測として扱うことになります。
平均を使ってよいのは、自社の数字が桁として妥当かを確かめるときだけです。
自社の伸び率が市場の3倍あるなら、その理由を説明できるかを確認します。
市場の伸びは全社の合計であり、自社の増減の根拠にはなりません。外部の数字からは、自社に対して問うべき質問を取り出してください。
増えているのは、広告費のどの部分なのか
運用型とビデオ、ソーシャルに寄っています。
総額の伸びよりも、この三つの内側での伸びのほうが大きくなっています。
インターネット広告費が伸びているという情報だけでは、予算の判断には使えません。
必要なのは、その内側のどこが伸びているかです。
電通デジタルが2026年3月5日に公表した2025年のインターネット広告媒体費の詳細分析では、媒体費が3兆3,093億円、前年比111.8%でした。
このうち運用型が2兆9,352億円で、構成比は88.7%です。
ビデオ広告は1兆275億円で構成比30%、前年比121.8%となり、初めて1兆円を超えました。
ソーシャル広告は1兆3,067億円で、構成比は39.5%です。
総額の伸びが111.8%であるのに対し、ビデオ広告は121.8%です。
つまり、全体の伸びの多くをこの領域が作っていることになります。
この数字から読み取れるのは、市場の重心が動いているという事実です。
読み取れないのは、自社がその重心に合わせるべきかどうかです。
伸びている領域に出すこと自体は、目的になりません。
その面に自社の顧客がいるかどうかが、判断の分かれ目です。
ビデオ広告が伸びているのは、その面で成果が出ている業種が多いからです。
成果が出ていない業種の会社が同じ面に出しても、伸びは再現されません。
判断のために作るのは、自社の構成比と市場の構成比を並べた表ではなく、差分の理由の一覧です。
自社のビデオ広告の比率が市場より20ポイント低いなら、その理由を一行で書けるかを確認します。
書ける理由があるなら、差分はそのままで構いません。
書けないなら、その領域を試していないだけという可能性があります。
もう一つ確認するのは、伸びている領域の供給の制約です。
面が伸びていても、自社の商材で使える在庫が増えているとは限りません。
新しい配信面の情報を、どう扱うか
新しい配信面が出ると、市場の構成は変わります。
OpenAIはChatGPT広告を2026年2月9日に米国でテスト開始し、2026年8月11日に本格稼働としています。
日本では2026年6月19日に表示が始まり、セルフサーブの開放は6月29日ごろです。
表示対象はFreeとGoプランの成人ログインユーザーのみとされています。
条件も公表されています。
CPMのデフォルトは約60ドル、CPCの推奨は3から5ドル、日本の配信は都道府県単位で、カスタムオーディエンスには25,000件以上のマッチが必要です。
日予算は7日平均で最大2倍まで変動し、代理店専用のコンソールはありません。
これらは、運用の負荷と最低限必要な規模を規定する条件です。
新しい面の情報は、予算の総額を動かす根拠にはなりません。
使えるのは、検証の枠のなかで試すかどうかの判断材料としてです。
総額を増やす根拠にするには、自社の顧客がその面にいるという確認が先に要ります。
確認の前に総額を動かすと、稟議の場で根拠を問われます。
伸びているのは運用型とビデオとソーシャルです。ただし伸びている領域に出すこと自体は目的にならず、自社の顧客がその面にいるかを先に確認してください。
削られているのは、どこなのか
効果が遅れて出る施策と、効果の帰属が示しにくい施策からです。
削減の理由は効果の不在ではなく、説明のしにくさであることが多くあります。
削減の対象は、効果の低い順に決まっているわけではありません。
実際に削られているのは、説明がしにくい費目です。
Macbee Planetが2025年12月5日から12日に実施した調査では、削減対象として挙がった項目はBtoCでイベント・展示会・セミナーが42.9%、CRMとリテンションが40.7%でした。
同じ調査では、予算を増やすと答えた企業がBtoCで61.3%、BtoBで52.3%となっています。
増やす会社が過半数を占めるなかで、この二つが削減候補の上位に来ています。
総額を増やしながら、特定の費目を削る動きが同時に起きていることになります。
この二つに共通しているのは、金額がまとまっていることと、効果の発現が遅いことです。
一件あたりの成果に紐づけにくいため、削減の提案がしやすい費目になります。
イベントや展示会は、支出の時期が一点に集中します。
一回の中止で数百万円から数千万円が浮くため、削減の効果が金額として大きく見えます。
CRMとリテンションは、削っても翌月の数字が動きません。
動くのは、再購入の周期を過ぎた数か月後です。
この時間差が、削減の判断を容易にしています。
判断した人が、その影響を自分の評価期間内に見ることがありません。
削る前に確認するのは、その費用で何を得ているかです。
イベントであれば、対面でしか取れない情報と、検討の初期にいる層への接点が該当します。
もう一つ確認するのが、再開にかかる費用です。
止めた出展枠は翌年に同じ条件で戻れるとは限らず、既存顧客との接点は一度切れると復旧に時間がかかります。
この二つを一行ずつ書き出すと、削減の順番は変わります。
金額の大きさで並べたときとは、違う順序になります。
削られやすい項目と、その理由
| 項目 | 削られやすい理由 | 止めた影響が出る時期 | 再開にかかるもの |
|---|---|---|---|
| イベント・展示会 | 金額がまとまっていて効果の帰属が示しにくい | 半年から1年 | 出展枠の確保と社内の再調整 |
| CRMとリテンション | 止めても翌月の数字が動かない | 3か月から6か月 | 配信設計と顧客データの再整備 |
| ブランドの認知施策 | 当期の獲得件数に直接現れない | 1年程度 | 積み上げがゼロに戻る |
| 検索対策と記事制作 | 成果が出るまでの期間が長い | 3か月から6か月 | 順位の回復に数か月 |
| データ基盤とツール | 効果が費目として説明しにくい | 半年以降 | 契約の再締結と過去データの欠損 |
削減の順番が説明しやすさで決まる危うさ
説明しやすさで削る順番が決まると、測定の整っていない領域から先に消えます。
測定が整っていないことと、効果がないことは別の問題です。
この構造が続くと、測定が整っている領域だけが残ります。
残った領域は、いずれも刈り取りに近い施策です。
刈り取りだけが残った状態では、翌期以降に刈り取る対象が増えません。
数年単位で見ると、獲得単価が上がり続ける形になります。
削減の議論では、説明のしやすさと効果の大きさを分けて扱ってください。
説明しにくい費目については、何を得ているかを先に文書化します。
文書化しておけば、次の削減の局面で同じ議論をやり直さずに済みます。
書かないまま削ると、翌年もまた同じ順番で候補に挙がります。
削られているのは効果の低い費目ではなく、説明のしにくい費目です。削る前に、何を得ているかと再開にかかる費用を一行ずつ書き出してください。
横ばいが過半数であることは、何を示しているのか
増減の判断を保留した会社が多いということです。
横ばいは安定ではなく、配分の見直しが先送りされた状態を指すことがあります。
Comexposium Japanの調査で、2026年の予算が横ばいと答えた企業は50.5%でした。
増やすが38.5%であることを考えると、判断としては横ばいが最も多い選択です。
横ばいという回答は、総額を前年と同じにするという意味でしかありません。
中身まで同じであることを意味しません。
実際には、総額が同じでも内訳は毎年動いています。
効率の落ちた媒体から効率の良い媒体へ、金額が移っているためです。
問題になるのは、総額も内訳も動いていない場合です。
この状態は、安定ではなく判断の保留を表しています。
保留が起きる理由は、増やす根拠も削る根拠も出せないことにあります。
どちらの根拠も出せないのは、たいてい成果の測定が整っていないためです。
測定が整っていれば、増やすか削るかのどちらかに結論が出ます。
結論が出ない状態が続いているなら、手をつけるのは金額ではなく測定のほうです。
同じ調査では、AIの導入について導入済みまたは準備中と答えた企業が80.7%でした。
導入は進む一方で、予算の判断は保留されているという組み合わせになっています。
保留は、翌期に持ち越されます。
前年と同じ総額を置いた期の実績は、また翌期の基準値になります。
この繰り返しが数年続くと、配分は当初の設計のまま固定されます。
外部環境だけが変わっていくため、効率は静かに落ち続けます。
横ばいを選ぶこと自体が誤りではありません。
誤りになるのは、横ばいを選んだ理由を記録していない場合です。
横ばいを選ぶなら、何を記録するか
記録するのは、増やさなかった理由と削らなかった理由の両方です。
どちらか一方だけでは、翌期に判断を引き継げません。
増やさなかった理由としてよく出るのは、受け入れ側の体制が足りないというものです。
リードを増やしても営業が追えないのであれば、それは予算ではなく体制の課題になります。
体制の課題として記録しておけば、翌期の議論は人員の話から始められます。
記録がないと、翌期もまた予算の議論として同じ場所を回ります。
削らなかった理由としては、効果が測れていないため判断できないという形が多くなります。
この場合は、測定を整える期限を同時に決めてください。
期限を決めないと、測れないという理由は何年でも使えます。
横ばいが続く会社では、この理由が毎年繰り返されています。
横ばいは安定ではなく、増やす根拠も削る根拠も出せない状態を指すことがあります。横ばいを選ぶなら、増やさなかった理由と削らなかった理由の両方を記録してください。
市場の伸びを、自社の予算にどう翻訳するか
市場の伸び率をそのまま自社の増加率にはしません。
伸びている領域に自社の顧客がいるかを確かめ、その領域だけに翻訳します。
市場の統計を予算に翻訳する作業は、三つの段階を踏みます。
領域の特定、供給の確認、そして単価への反映です。
最初の段階は、伸びている領域のうち自社に関係するものを特定することです。
インターネット広告費全体が110.8%だったという数字は、この段階では使いません。
使うのは、ビデオ広告が121.8%、ソーシャル広告が構成比39.5%といった内訳の数字です。
このうち自社の顧客が接している面だけを抜き出します。
抜き出した領域について、次に供給の制約を確認します。
面が伸びていても、自社の商材で配信できる在庫が増えているとは限りません。
在庫が増えていない領域に金額だけを増やすと、単価が上がって件数は増えません。
確認の方法は、直近の増額の前後で表示回数がどれだけ増えたかを見ることです。
三つ目が、単価への反映です。
市場が伸びている局面では、同じ面への出稿が増えるため、単価は上がります。
この上昇分を、期初の目標に先に織り込んでください。
織り込まずに前年と同じ獲得単価で目標を置くと、期の途中で必ず未達になります。
織り込む幅は、直近12か月の単価の推移から出します。
市場の伸び率をそのまま単価の上昇率に使うことはできません。
翻訳できない項目は、翻訳しないという判断も必要です。
自社が出していない面の伸びは、自社の予算には関係しません。
無理に翻訳すると、根拠のない増額の提案になります。
稟議の場では、その部分から先に崩されます。
稟議に外部データを載せるときの形
外部データを稟議に載せるとき、市場の伸び率をそのまま増額率にすると必ず問われます。
問われるのは、なぜ自社にも同じ伸びが当てはまるのかという点です。
この問いに答えられる形は一つしかありません。
自社の顧客がその領域に接しているという自社の数字を、並べて出すことです。
自社の数字が先にあり、外部データはその補強として置く形にしてください。
順序が逆になると、結論を先に決めて数字を後から付けた資料に見えます。
載せるときは、調査の実施時期と対象も併記します。
時期を書かないと、いつの市場の話をしているのかが分かりません。
外部データを使わずに稟議を通す選択もあります。
自社の逆算と供給の確認だけで説明がつくなら、そのほうが議論は短く済みます。
翻訳は、領域の特定、供給の確認、単価への反映の三段階で行ってください。自社の数字を先に置き、外部データはその補強として使います。
外部データと自社の配分が食い違うとき、どう扱うか
食い違い自体を直す必要はありません。
違う理由を一行で説明できるかどうかだけを確認します。
自社の媒体構成を市場の構成と並べると、必ず差が出ます。
この差を埋めることが目的ではありません。
差が出る理由は、業種、商材の単価、顧客の年齢構成、商圏の広さなど複数あります。
理由が説明できる差であれば、そのままで構いません。
問題になるのは、理由を説明できない差です。
説明できない差は、その領域を試していないだけという可能性があります。
食い違いには、いくつかの型があります。
自社の比率が市場より低い、高い、そもそも出していない、の三つが基本です。
比率が低い場合は、試したうえで成果が出なかったのか、試していないのかを分けます。
この二つは、次に取る行動がまったく違います。
比率が高い場合は、その領域への依存度を確認します。
一つの面に依存していると、その面の仕様変更で予算全体が影響を受けます。
そもそも出していない場合は、出さない理由が現在も有効かを見ます。
数年前に試して成果が出なかった面は、仕様が変わって条件が違っていることがあります。
食い違いの型と、確かめること
| 食い違いの型 | 確かめること | 次に取る行動 |
|---|---|---|
| 市場より比率が低い | 試して駄目だったのか、試していないのか | 試していないなら検証の枠で扱う |
| 市場より比率が高い | その面への依存度と仕様変更の予定 | 代替となる面を検証の枠で育てる |
| まったく出していない | 出さない理由がいまも有効か | 理由が古ければ条件を再確認する |
| 市場にない面に出している | 自社固有の理由が説明できるか | 説明できるなら記録して維持する |
説明できない食い違いを、先に潰す
食い違いの一覧を作ったら、説明できるものと説明できないものに分けてください。
分けた時点で、議論すべき範囲が数項目まで絞られます。
説明できないものは、たいてい担当者が代わったあとに残った配分です。
なぜその比率なのかを知っている人が、社内にいない状態になっています。
この場合は、比率を変える前に、その配分の成果を出すところから始めます。
成果が出ていないことを確認せずに動かすと、動かした影響が評価できません。
説明できる食い違いは、その理由を配分表に一行で残してください。
残しておけば、翌期に同じ議論が起きません。
外部データとの比較は、期初に一度行えば足ります。
期中に何度も比べると、自社の数字ではなく市場の数字で判断する癖がつきます。
食い違いを埋める必要はありません。説明できる差は理由を配分表に残し、説明できない差だけを議論の対象にしてください。
外部データの使い方を誤ると、何が起きるのか
数字が判断の根拠ではなく、結論の後付けになります。
そうなった資料は、決裁の場で最初に崩されます。
外部データの誤用には、決まった形があります。
最も多いのが、すでに決めた結論を補強するために数字を探す使い方です。
予算を増やしたいという結論が先にあり、市場が伸びているという数字を後から付ける形です。
この順序で作られた資料は、決裁の場で最初に問われます。
問われるのは、その数字が自社にどう当てはまるかという点です。
結論が先にあると、この問いに用意がありません。
二つ目の誤用は、対象と時期を書かずに引用することです。
調査の対象が誰で、いつ実施されたものかが書かれていないと、数字の意味が確認できません。
たとえばTestifyが2026年5月14日から18日に実施した調査は、n=1,016で経営層336、マーケティング責任者338、運用担当342という構成です。
この構成を書かずに数字だけを引くと、誰の回答なのかが分かりません。
同じ調査では、9割超が代理店を活用し、全面委託が37.2%、併用が54.4%でした。
満足度は82.6%で、約2割が不満を持っています。
不満の内訳は役職で分かれており、経営層は費用が成果に見合わないが56.3%、マーケティング責任者は成果不振の説明不足が53.1%、運用担当はレスポンスが遅いが50.8%です。
役職を書かずに不満の比率だけを引くと、まったく違う話になります。
三つ目の誤用は、母数の小さい調査を市場全体の傾向として扱うことです。
回答者が百人規模の調査は、傾向の把握には使えても、増減の根拠にはなりません。
四つ目は、時点の古い数字を現在の状況として扱うことです。
配信面の状況は年単位で変わるため、2年前の構成比は現在の判断には使えません。
外部データを使わないという選択
外部データを使わずに予算を説明することは可能です。
自社の逆算と、供給の確認と、単価の推移だけでも稟議は通ります。
むしろ、自社の数字だけで説明できる資料のほうが、議論は短く済みます。
外部データを入れると、その数字の妥当性についての質問が追加で発生します。
外部データを使うのは、自社にデータがない領域を扱うときに限ってください。
新しい配信面の規模感や、業界全体の方向を示す場面です。
使うときは、出典と実施時期と対象を必ず併記します。
併記した時点で、読み手はその数字の限界も同時に受け取れます。
自社の数字と外部の数字が矛盾した場合は、自社の数字を採ります。
外部の平均より自社の実績のほうが、自社の判断には常に近い数字です。
結論を先に決めて数字を後から付けると、決裁の場で最初に崩されます。出典と実施時期と対象を併記し、自社の数字と矛盾したら自社を採ってください。
来期の予算に、この流れをどう反映するか
自社の媒体構成を書き出し、市場の構成と並べるところからです。
差分の理由が書ける項目と書けない項目に分けると、議論すべき範囲が絞られます。
来期の予算を組む作業は、市場の数字を眺めるところからは始まりません。
始まりは、自社の構成を書き出すことです。
書き出したうえで市場の構成と並べ、差分の理由を一行ずつ書きます。
書けない項目だけが、来期に議論すべき対象になります。
来期予算への反映の手順
| 順番 | やること | 関わる人 | 期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 自社の媒体構成と金額を書き出す | マーケティング | 数日 |
| 2 | 市場の構成と並べ、差分の理由を一行で書く | マーケティング | 1週間 |
| 3 | 理由が書けない項目を抜き出す | マーケ責任者 | 数日 |
| 4 | 増やす領域の供給の制約を確認する | マーケ・代理店 | 2週間 |
| 5 | 単価の上昇分を目標に織り込む | マーケ・経営 | 1週間 |
| 6 | 増やさない理由と削らない理由を記録する | マーケ責任者 | 数日 |
数字は説明のための仮の値です。
年間予算1億8,000万円のうち、検索に9,000万円、ソーシャルに5,400万円、ビデオに1,800万円、その他に1,800万円という構成だとします。
ビデオの比率は10%で、市場の構成比30%とは20ポイントの差があります。
この差の理由が書けるなら、そのままで構いません。
書けない場合は、来期に検証の枠で試す対象として扱います。
いきなり市場の構成比に合わせて5,400万円まで増やすのではなく、検証として1,800万円を追加する形です。
増やす領域については、供給の制約を先に確認してください。
表示回数が増えない面に金額だけを積むと、単価が上がって件数は変わりません。
削る領域については、復旧の費用も併せて書きます。
止めた費目を再開するときの費用が分かっていないと、翌期に戻す判断ができません。
期中に照らし合わせる数字
| 数字 | 見る頻度 | 見るときの観点 |
|---|---|---|
| 獲得単価の推移 | 毎月 | 期初に織り込んだ上昇幅の内側か |
| 媒体ごとの表示回数 | 毎月 | 供給の制約が想定どおりか |
| 自社の媒体構成比 | 四半期 | 期初に決めた配分から離れていないか |
| 指名検索と直接流入 | 毎月 | 削った費目の影響が出ていないか |
| 検証枠で結論が出た本数 | 四半期 | 差分の項目が解消に向かっているか |
期中に見るのは、自社の数字だけにしてください。
市場のデータを使うのは、期初の設計のときに一度で足ります。
期中に外部データを参照し始めると、自社の実績ではなく市場の動きで配分を動かすことになります。
市場の数字が更新されるのは年に一度であり、期中の判断には粒度が合いません。
獲得単価の推移だけは、毎月確認してください。
期初に織り込んだ上昇幅を超えた時点で、目標か配分のどちらかを見直す必要があります。
期を通した記録は、翌期の設計の出発点になります。
差分の理由を書けなかった項目が、翌期にどうなったかを残してください。
着手点は自社の媒体構成を書き出し、市場の構成との差分の理由を一行ずつ書くことです。外部データを使うのは期初の設計時に限り、期中は自社の数字で判断します。
来期の予算の増減をどちらに倒すべきか迷う場合は、無料相談で現状の配分を見てもらうところから始められます。
媒体構成ごと組み直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
市場が伸びているなら予算も増やすべきですか
市場の伸びは全社の合計であり、自社の増額の根拠にはなりません。伸びている領域に自社の顧客が接しているかを確かめてから、その領域だけに翻訳します。総額の成長率をそのまま自社の増加率にすると、稟議で根拠を問われます。
削減対象にイベントとCRMが挙がりやすいのはなぜですか
金額がまとまっていて効果の帰属が示しにくく、止めても翌月の数字が動かないためです。効果が低いから削られているのではありません。削る前に、その費用で何を得ているかと再開にいくらかかるかを一行ずつ書き出してください。
横ばいで予算を据え置くのは問題がありますか
総額と内訳の両方が動いていない場合は、増やす根拠も削る根拠も出せない状態を指します。原因はたいてい測定の不足です。横ばいを選ぶなら、増やさなかった理由と削らなかった理由の両方と、測定を整える期限を記録してください。
稟議書に外部の調査データを載せても効果がありますか
自社の数字を先に置き、外部データをその補強として使う順序であれば効果があります。結論を先に決めて数字を後から付けた資料は、決裁の場で最初に崩されます。載せるときは出典と実施時期と対象を必ず併記してください。
自社の媒体構成が市場平均とずれています
ずれを埋める必要はありません。差の理由を一行で書けるかどうかだけを確認し、書ける差は配分表に理由を残してください。書けない差は、その領域を試していないだけである可能性が高く、検証の枠で扱う対象になります。
まとめ
- 市場の伸びと自社の伸びが別物だからです。広告市場が伸びていても、自社の商材が需要の伸びている領域になければ、予算は増えません。外部の数字は、自社の判断の材料であって答えではありません
- 運用型とビデオ、ソーシャルに寄っています。総額の伸びよりも、この三つの内側での伸びのほうが大きくなっています
- 効果が遅れて出る施策と、効果の帰属が示しにくい施策からです。削減の理由は効果の不在ではなく、説明のしにくさであることが多くあります
- 増減の判断を保留した会社が多いということです。横ばいは安定ではなく、配分の見直しが先送りされた状態を指すことがあります
- 市場の伸び率をそのまま自社の増加率にはしません。伸びている領域に自社の顧客がいるかを確かめ、その領域だけに翻訳します
- 食い違い自体を直す必要はありません。違う理由を一行で説明できるかどうかだけを確認します
- 数字が判断の根拠ではなく、結論の後付けになります。そうなった資料は、決裁の場で最初に崩されます
- 自社の媒体構成を書き出し、市場の構成と並べるところからです。差分の理由が書ける項目と書けない項目に分けると、議論すべき範囲が絞られます