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目次
目次
- 広告費の上限を決めていないと、何が起きるのか
- 総額の枠と、1件あたりの上限は別の話
- 上限は、売上と粗利のどちらから出すのか
- 商材が複数あるなら、上限も複数になる
- 粗利のどこまでを広告費に回せるのか
- 販管費の按分は、厳密にやりすぎない
- 継続する商材では、上限はどう変わるのか
- 継続率は、獲得した経路によって違う
- 新規と既存で、上限を分けるのか
- 分けた結果を、報告の様式に反映する
- 上限は一つでよいのか
- 見直しの周期と、共有の方法を決める
- 上限を超えた出稿を、なぜ止められないのか
- 一時的な超過を認める条件を決める
- 立て直しをどこから始めるか
- よくある質問
- まとめ
高いか安いかの判断が、感覚と前月比だけになります。
1件いくらまでなら払ってよいかが決まっていないため、単価が上がっても止める根拠がありません。
広告費の上限を決めていないと、何が起きるのか
高いか安いかの判断が、感覚と前月比だけになります。
1件いくらまでなら払ってよいかが決まっていないため、単価が上がっても止める根拠がありません。
獲得単価の議論で、上がった下がったという話だけが続く会社があります。
この状態は、基準の線が引かれていないために起きます。
先月より下がったから良い、上がったから悪い。
この判断では、そもそも最初の水準が適正だったかが分かりません。
最初から採算に合わない単価で回していると、改善しても赤字のままです。
前月比で2割改善したという報告が、赤字幅が少し縮んだだけという場合があります。
この状態が1年続くと、累計の損失が事業計画を大きく外します。
外れた時点で初めて、単価の水準そのものが問われます。
原因を分けて考えてください。
目標単価と上限単価は、別のものです。
目標単価は、達成したい水準です。
超えたら、原因を確認して改善に入ります。
上限単価は、これを超えたら事業として成立しない水準です。
超えたら、出稿を止めます。
この2つを分けていない会社が多くあります。
分けていないと、目標を超えた時点で止めるべきか改善すべきかの判断ができません。
さらに手前には、実績単価があります。
いま出ている水準で、他の3つと比べて位置を確認するための数字です。
目標と上限の間には、許容単価を置く考え方もあります。
利益を確保できる上限で、これを超えたら配分の見直しに入る水準です。
上限が決まっていれば、担当者の判断で止められます。
決まっていないと、毎回上に確認することになり、その間も費用が出ていきます。
確認に3日かかる事業で日予算が50万円なら、確認の間に150万円が出ます。
上限を決めておくことの価値は、この額で測れます。
総額の枠と、1件あたりの上限は別の話
予算の総額をどう決めるかと、1件にいくらまで払うかは、別の問題です。
総額の枠のなかで、1件あたりの上限を決める形になります。
総額だけを管理していると、枠の中であれば単価が高くても止まりません。
枠を使い切った時点で出稿が止まり、採算を割った獲得だけが積み上がります。
逆に、1件あたりの上限だけを管理していると、総額が超過します。
単価が上限の内側に収まっていても、件数が増えれば総額は増えるためです。
2つは、両方を同時に管理してください。
総額は月次、1件あたりの単価は週次で見る形が実務的です。
週次で単価を見るのは、上限を超えた状態が長く続くのを防ぐためです。
月次で気づくと、1か月分の超過が確定しています。
週次で見る数字は、実績単価と上限との差だけで足ります。
差が縮んでいれば、翌週に上限へ達する見込みが立ちます。
実績単価、目標単価、許容単価、上限単価の4つを分けます。総額の枠は月次、1件あたりの単価は週次で管理し、上限を超えたら担当者の判断で止められる形にしてください。
上限は、売上と粗利のどちらから出すのか
売上を基準にすると、原価の重い商材で必ず赤字になります。
1件の粗利額が、広告費に回せる原資の全体です。
広告の目標を売上に対する比率で置いている会社は多くあります。
商材ごとに原価率が違う場合、この置き方は機能しません。
同じ売上でも、残る額が違うためです。
売上10万円の商品でも、原価率が3割の商品と7割の商品では、残る粗利が違います。
数字は説明のための仮の値です。
原価率30%なら粗利は7万円、70%なら3万円です。
粗利の半分を広告に回すとすれば、前者は3万5千円、後者は1万5千円になります。
売上比率で同じ基準を置くと、後者では必ず赤字が出ます。
原価率85%の商材なら、粗利は1万5千円しかありません。
粗利の半分でも7,500円で、売上比率の基準とは桁が変わります。
広告費に回せるのは、残った粗利のなかからです。
売上はその手前にある数字で、広告費の原資ではありません。
さらに、粗利の全額を広告費に回せるわけでもありません。
配送費、決済手数料、カスタマーサポートの費用を引く必要があります。
返品や解約の見込みも引いてください。
見込みを引かずに計算すると、実際の粗利より高い数字で上限を出すことになります。
引いた後の額が、広告費と利益で分け合う原資になります。
この原資の大きさが、商材ごとにまったく違います。
商材が複数あるなら、上限も複数になる
粗利の構造が違う商材を、1つの上限で管理することはできません。
1つに束ねると、粗利の高い商材で機会を逃し、低い商材で赤字が出ます。
商材ごと、あるいは粗利帯ごとに上限を持ってください。
粗利帯でまとめる場合は、粗利額が近いものを同じ帯に入れます。
分ける基準は、原価率が10ポイント以上違うかどうかです。
数ポイントの差なら、1つにまとめたほうが運用が回ります。
商材が多い事業では、上位の数商材だけ個別に上限を持つ形もあります。
売上の8割を占める商材に個別の上限を置けば、残りは共通の上限で足ります。
分けた結果は、1枚の表にしてください。
担当者の頭のなかにあるだけでは、運用されません。
表に入れるのは、商材名、1件あたりの粗利、上限単価の3列です。
根拠となる粗利額を同じ行に置くと、上限の意味が伝わります。
粗利額を伏せる必要がある場合は、上限だけを配る形でも構いません。
その場合は、根拠を説明する場を別に設けてください。
広告費の原資は売上ではなく、直接費を引いた後の粗利です。原価率が10ポイント以上違う商材は上限を分け、1枚の表にして共有してください。
粗利のどこまでを広告費に回せるのか
残したい営業利益を先に決めて、そこから逆に置きます。
広告費の比率を先に決めると、利益がその残りになります。
広告費を粗利の何割まで、という決め方をするとき、その割合の根拠が曖昧になりがちです。
順番を変えると、根拠が出ます。
先に確保するのは、利益です。
1件あたりに残したい営業利益を決めてください。
粗利からその利益と、広告以外の販管費の按分を引いた残りが、広告費の上限になります。
この順番なら、上限の根拠は事業計画の利益目標になります。
逆の順番にすると、広告費の比率が先に決まり、利益がその残りになります。
残りが目標利益を下回っても、計算の上では気づけません。
計算は5段階です。
売上から原価を引いて粗利を出し、そこから直接費を引きます。
直接費には、返品、決済手数料、配送費が入ります。
次に、販管費の按分を引きます。
そこから目標営業利益を引いた残りが、広告費の上限です。
最後に、想定成約率で割り戻すと、見込み客1件あたりの上限が出ます。
1件あたりの上限単価の計算
| 段階 | 計算の内容 | 補足 |
|---|---|---|
| 1 | 売上から原価を引く | 粗利が出る |
| 2 | 粗利から直接費を引く | 返品、決済、配送などを引く |
| 3 | 販管費の按分を引く | 人件費や固定費の割り当てを引く |
| 4 | 目標営業利益を引く | 残りが広告費の上限になる |
| 5 | 想定成約率で割り戻す | 見込み客1件あたりの上限が出る |
数字は説明のための仮の値です。
受注1件の粗利が8万円、直接費と販管費で3万円、目標営業利益が2万円とします。
残る3万円が、受注1件あたりの広告費の上限です。
成約率が20%なら、問い合わせ1件あたりの上限は6,000円になります。
この割り戻しを忘れると、上限が5倍になります。
商談や見積もりを挟む商材では、この誤りが最も多く起きます。
販管費の按分は、厳密にやりすぎない
厳密に配賦しようとすると、計算が終わりません。
配賦の基準をめぐる議論が部門間で始まり、上限が決まらないまま四半期が過ぎます。
売上に対する販管費率で按分する程度で足ります。
重要なのは精度ではなく、上限の線が引かれていることです。
線が引かれていれば、超えたかどうかの判断ができます。
線がなければ、どれだけ精密に計算しても判断はできません。
按分の精度を上げるのは、運用が回り始めてからで足ります。
最初の1期は、簡便な方法で線を引いて運用することを優先してください。
按分の方法は、財務と合わせてください。
マーケティング部門が独自に出した数字では、経営との議論になりません。
目標利益をゼロに置く判断もあり得ます。
新規参入の局面や、シェアを取りにいく局面での判断です。
その場合は、いつまでその状態を続けるかを同時に決めてください。
期限を決めずにゼロを置くと、赤字の獲得が恒常化します。
目標営業利益を先に確保し、残りを広告費の上限にします。成約率で割り戻すのを忘れず、販管費の按分は財務と合わせた簡便な方法で足ります。
継続する商材では、上限はどう変わるのか
初回の粗利ではなく、継続期間全体の粗利で上限を出します。
そのぶん上限は上がりますが、資金の回収は遅れます。
定期購入や契約更新のある商材では、1回の取引だけで上限を出すと、出せる額が小さくなりすぎます。
小さすぎる上限では、必要な件数が取れません。
理論上は解約するまでの全期間で計算できます。
実務で全期間を見込むのは危険です。
見込むのは、実績として確認できている継続期間までにしてください。
確認できていない期間を見込むと、上限が実態より高く出ます。
数字は説明のための仮の値です。
初回のみで粗利5,000円の商材があるとします。
6か月分を見込めば累計2万8,000円、12か月分なら5万2,000円になります。
24か月分まで見込めば9万2,000円です。
粗利の半分を広告に回すとすれば、上限は2,500円から4万6,000円まで変わります。
見込む期間だけで、18倍の差が出ます。
長く見込むほど、資金の負担が重くなります。
24か月分を見込んで上限を上げると、獲得の瞬間には大きな赤字が出ます。
その赤字を埋める資金が手元にあるかは、別の問題です。
どこまで見込むかは、資金の余裕で決まります。
この判断は、マーケティング部門では決められません。
財務と経営の判断になります。
持ち込む際は、見込む期間ごとの上限と、必要な運転資金を並べてください。
並べておけば、資金の制約からどこまで見込めるかがその場で決まります。
継続率は、獲得した経路によって違う
同じ商材でも、獲得した媒体や訴求によって継続率が変わります。
割引で獲得した顧客の継続率は、通常価格で獲得した顧客より低くなります。
全体平均の継続率で上限を出すと、継続率の低い経路で赤字が出ます。
平均の内側で採算が合っていても、経路ごとに見ると割れています。
経路ごとに継続率を出せるなら、上限も経路ごとに持ってください。
出せない場合は、全体平均より低い継続率を前提に上限を設定します。
継続率を経路別に出すには、獲得月と経路を顧客の属性として記録する必要があります。
記録がない場合は、記録を始めることが最初の作業になります。
記録が始まって継続期間分のデータが揃うまでには、時間がかかります。
12か月分を見込むなら、12か月の観測が要ります。
その間は、確認できている期間までで上限を出してください。
6か月分しか確認できていないなら、6か月分で運用します。
確認できる期間が延びたら、その時点で上限を上げます。
上げる判断は、年2回の見直しの場で行ってください。
継続率の前提が崩れたら、上限もその場で下げます。
上限は一度決めたら固定ではありません。
見込むのは実績として確認できている継続期間までです。見込む期間だけで上限は何倍も変わるため、どこまで見込むかは資金の余裕から財務と決めてください。
新規と既存で、上限を分けるのか
分けます。
既存顧客への再訪を促す出稿は、獲得済みの顧客に費用をかけているため、新規と同じ上限では採算が合いません。
広告の成果を1つの数字で見ていると、新規と既存が混ざります。
混ざった数字は、実態より良く見えます。
社名や商品名で検索している人の多くは、すでに自社を知っています。
ここへの出稿は、獲得ではなく取りこぼしの防止です。
新規獲得より単価は低く出ますが、増やしても新規は増えません。
指名検索の在庫は、認知の量で決まっているためです。
この2つを全体平均に混ぜると、新規獲得の単価が実際より低く見えます。
その結果、採算の合っていない新規の出稿が続きます。
数字は説明のための仮の値です。
新規の単価が1万2,000円、指名検索が3,000円で、件数の比率が半々だとします。
全体平均は7,500円になり、上限が1万円なら内側に収まって見えます。
実際には、新規の単価は上限を2,000円超えています。
既存顧客の再購入への出稿も、別の上限が要ります。
再購入の粗利で上限を出す形です。
休眠顧客の掘り起こしは、新規より低い上限になります。
一度離れた顧客の継続率は、新規より低くなることが多いためです。
解約防止の出稿は、解約による損失額から上限を出します。
獲得の費用ではなく、失う粗利を基準にする計算になります。
この計算では、解約を防げる確率も掛けてください。
すべての解約が防げるわけではないため、期待値で置く必要があります。
対象別の上限の考え方
| 対象 | 上限の基準 | 全体の数字に混ぜてよいか |
|---|---|---|
| 新規の見込み客 | 粗利からの逆算をそのまま適用する | 基準になる |
| 指名検索 | 取りこぼし防止の費用として別枠にする | 混ぜない |
| 既存顧客の再購入 | 再購入の粗利から上限を出す | 混ぜない |
| 休眠顧客の掘り起こし | 新規より低い上限を置く | 混ぜない |
| 既存顧客の解約防止 | 解約による損失額から出す | 混ぜない |
分けるだけでは足りません。
それぞれに上限を置いて、超えたら止める運用にしてください。
分けた結果を、報告の様式に反映する
分けても、報告が全体平均のままなら意味がありません。
月次の報告に、新規と既存を分けた行を作ってください。
報告の様式を変えないかぎり、会議での議論は全体平均で進みます。
全体平均で進む議論では、新規の採算割れに誰も気づきません。
様式を変えるときは、過去の数字も分けて並べ直します。
並べ直さないと、前月との比較ができません。
並べ直しが難しい場合は、切り替えの時期を明記してください。
その時期より前の数字とは比較しないという運用にします。
代理店に運用を任せている場合は、報告の様式を指定してください。
標準の様式は、たいてい媒体単位で組まれています。
媒体単位の報告では、新規と既存が同じ行に入ります。
自社の区分に合わせた様式を指定すると、突き合わせの手間もなくなります。
新規、指名検索、再購入、休眠、解約防止で上限を分けます。分けただけで報告の様式が全体平均のままなら、会議の議論は変わりません。
上限は一つでよいのか
一つでは足りません。
商材、顧客の種類、獲得の段階で粗利の構造が違うため、上限も分かれます。
全社で1つの上限を置くと、粗利の高い商材で機会を逃します。
同時に、粗利の低い商材で赤字が出ます。
一方で、分けすぎると管理が回りません。
上限が20も並ぶと、担当者がどれを見ればよいか分からなくなります。
分ける基準は、粗利の構造が明確に違うかどうかです。
構造が同じものは、分けても判断が変わりません。
商材は、原価率が10ポイント以上違うなら分けてください。
粗利額の差が、上限の差に直結します。
顧客の規模は、受注単価が数倍違うなら分けます。
大企業向けと中小企業向けでは、1件の粗利が桁で変わります。
新規と既存は、必ず分けてください。
獲得済みかどうかという、最も構造の違う区分です。
地域は、配送費が大きく違うなら分けます。
直接費の差が粗利に効く事業では、地域が上限を変えます。
媒体では、分けないでください。
媒体によって単価は違いますが、粗利の構造は変わりません。
媒体ごとに上限を設けると、高い媒体に甘い基準を許すことになります。
媒体ごとの単価の差は、配分の判断で扱う論点です。
単価の高い媒体を使う理由は、そこでしか届かない層があるからです。
その層の粗利が高いなら、顧客の規模で上限を分ければ説明がつきます。
見直しの周期と、共有の方法を決める
原価や継続率が動けば、上限も動きます。
期初と期の折り返しの年2回で見直してください。
四半期ごとに見直すと、細かい変動に反応することになります。
年1回だと、期の後半に実態と合わなくなります。
見直しの材料は、1件あたりの粗利と継続率の2つです。
この2つが動いていなければ、上限は据え置きます。
分けた上限の一覧は、1枚の表にしてください。
担当者の頭のなかにあるだけでは運用されません。
表には、上限の数字だけでなく根拠も1行添えます。
根拠が分かっていないと、守る理由が伝わりません。
配る相手は、運用の担当者と代理店の両方です。
どちらか一方だけに配ると、もう一方の運用が上限を超えます。
商材、顧客規模、新規と既存、地域で分け、媒体では分けません。年2回の見直しとし、上限の一覧を根拠つきで運用担当者と代理店の両方に配ってください。
上限を超えた出稿を、なぜ止められないのか
止める権限と、止める条件が決まっていないからです。
止めた場合に件数が減ることへの責任だけが担当者に残ると、誰も止めません。
上限を決めても、超えた出稿が続いている会社があります。
原因は計算ではなく、運用の設計にあります。
最も多いのが、件数目標だけが課されている場合です。
上限を守ると件数が未達になるため、担当者は超えてでも件数を取りにいきます。
この行動は、担当者の判断としては合理的です。
評価が件数で決まる以上、確実に件数が積める選択をします。
件数と単価の両方を目標にしないと、この矛盾は解けません。
量の目標には、必ず効率の目標を対にして置いてください。
2つ目の原因は、止める権限がないことです。
上への確認を待つ間に費用が出ていきます。
担当者に停止の権限を渡してください。
上限を超えた場合の停止は、判断ではなく手順として扱います。
3つ目は、上限が共有されていないことです。
担当者が上限を知らなければ、守りようがありません。
4つ目は、超えた判断が記録されないことです。
記録されないと、例外が常態になります。
5つ目は、上限の根拠が説明されていないことです。
粗利からの計算を共有していないと、守る理由が伝わりません。
根拠を共有する場は、期初の目標を配る場と同じで足ります。
上限の数字と、粗利からの計算の流れを1枚で説明してください。
一時的な超過を認める条件を決める
繁忙期や新商品の立ち上げで、一時的に上限を超える判断はあり得ます。
この判断そのものを禁止する必要はありません。
認める場合は、期間と上限額を区切ってください。
3か月間、上限の1.2倍までという形で承認します。
条件を付けずに認めると、恒常的な超過になります。
一度認めた例外は、次の月にも同じ理由で持ち出されます。
承認した内容は、記録に残してください。
記録があれば、例外の頻度が月次で確認できます。
例外の頻度が高い場合は、上限の水準そのものを疑ってください。
毎月例外が出るなら、上限が実態に合っていません。
代理店に運用を任せている場合は、上限を契約や運用方針の文書に書き込みます。
上限を伝えずに件数目標だけを渡すと、上限を超える運用になります。
件数と単価を両方目標に置き、担当者に停止の権限を渡します。例外は期間と金額を区切って承認し、例外の頻度が高い場合は上限の水準そのものを疑ってください。
立て直しをどこから始めるか
主要な商材の1件あたり粗利を出すことからです。
粗利額が出ていないと、上限の計算そのものが始まりません。
上限の算出は、財務の数字とマーケティングの数字をつなぐ作業です。
片方だけでは終わりません。
そのため、最初の工程から財務を巻き込んでください。
粗利の定義を後から合わせると、計算をやり直すことになります。
見直しの運び
| 順番 | やること | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 主要商材の1件あたり粗利を出す | 1週間 |
| 2 | 直接費と販管費の按分を財務と決める | 1週間 |
| 3 | 目標営業利益を経営と合意する | 1週間 |
| 4 | 受注1件あたりの上限を計算し成約率で割り戻す | 1週間 |
| 5 | 新規と既存で分けて上限表を作る | 1週間 |
| 6 | 停止の権限と例外の条件を決める | 1週間 |
この6工程で、着手から運用開始まで6週間前後が目安になります。
継続率を経路別に出す必要がある場合は、記録の整備に数か月が加わります。
数字は説明のための仮の値です。
受注1件の粗利が8万円、直接費と販管費で3万円、目標営業利益が2万円なら、広告費の上限は3万円です。
成約率が20%なら、問い合わせ1件あたりの上限は6,000円になります。
この6,000円が、日々の運用で見る基準になります。
途中で見る数字
| 数字 | 見る頻度 | 目的 |
|---|---|---|
| 1件あたりの粗利 | 四半期 | 上限の前提が動いていないか |
| 新規の獲得単価 | 週次 | 上限に近づいていないか |
| 上限超過の日数 | 月次 | 例外が常態化していないか |
| 新規と既存の構成比 | 月次 | 全体平均が実態とずれていないか |
| 成約率 | 月次 | 割り戻しの前提が崩れていないか |
新規の獲得単価だけを週次に置いているのは、ここが最も早く動くためです。
入札の競争が激しくなれば、単価は数日で動きます。
上限超過の日数を月次で見るのは、例外の頻度を把握するためです。
月の3分の1を超えていれば、上限か運用のどちらかに問題があります。
成約率を月次で見るのは、割り戻しの前提が崩れていないかを確認するためです。
成約率が20%から15%に落ちれば、問い合わせ1件あたりの上限は4,500円に下がります。
財務と同じ数字を使ってください。
マーケティング部門が独自に出した粗利では、経営との議論になりません。
上限に達したときの動きも、事前に決めておきます。
達してから何をするかを考え始めると、その間も費用が出ます。
止めるのか、訴求を変えるのか、対象を絞るのかを先に決めてください。
決めておけば、達した日のうちに手が打てます。
決め方の目安は、上限に達した理由によって変わります。
競争の激化なら対象を絞り、訴求の劣化なら訴求を変え、季節要因なら一時的に止める形になります。
主要商材の1件あたり粗利を財務と一緒に出すところから始めます。新規の獲得単価は週次で見て、上限に達したときの動きを事前に決めておいてください。
1件あたりいくらまで払ってよいかが分からない場合は、無料相談で現状の数字を見てもらうところから始められます。
採算の設計ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
広告費の上限は売上の何%にすべきですか
売上比率では決められません。原価率が違えば同じ売上でも残る粗利が違うためです。1件あたりの粗利から返品や配送などの直接費、販管費の按分、目標営業利益を引いた残りが上限で、それを想定成約率で割り戻すと見込み客1件あたりの上限が出ます。
目標単価と上限単価は同じものですか
違います。目標単価は計画上の水準で、超えたら原因を確認して改善します。上限単価はこれを超えると赤字になる水準で、超えたら出稿を止めます。2つを分けていないと、超えた時点で止めるべきか改善すべきかの判断ができません。
継続課金の商材では何か月分を見込めばいいですか
実績として確認できている継続期間までです。見込む期間だけで上限は何倍も変わります。長く見込むほど獲得の瞬間の赤字が大きくなり資金の負担が重くなるため、どこまで見込むかは資金の余裕から財務と決めてください。
指名検索の広告も同じ上限でいいですか
分けます。指名検索は獲得ではなく取りこぼしの防止で、単価が低く出ます。全体平均に混ぜると新規獲得の単価が実際より低く見え、採算の合わない新規出稿が続くことになります。分けたあとは、月次の報告の様式にも新規と既存の行を作ってください。
上限を決めても守られません
件数目標だけを課していると、上限を超えてでも件数を取りにいくことになります。件数と単価を両方目標に置き、担当者に停止の権限を渡してください。例外を認める場合は期間と金額を区切って記録に残し、例外の頻度が高い場合は上限の水準そのものを疑います。
まとめ
- 高いか安いかの判断が、感覚と前月比だけになります。1件いくらまでなら払ってよいかが決まっていないため、単価が上がっても止める根拠がありません
- 売上を基準にすると、原価の重い商材で必ず赤字になります。1件の粗利額が、広告費に回せる原資の全体です
- 残したい営業利益を先に決めて、そこから逆に置きます。広告費の比率を先に決めると、利益がその残りになります
- 初回の粗利ではなく、継続期間全体の粗利で上限を出します。そのぶん上限は上がりますが、資金の回収は遅れます
- 分けます。既存顧客への再訪を促す出稿は、獲得済みの顧客に費用をかけているため、新規と同じ上限では採算が合いません
- 一つでは足りません。商材、顧客の種類、獲得の段階で粗利の構造が違うため、上限も分かれます
- 止める権限と、止める条件が決まっていないからです。止めた場合に件数が減ることへの責任だけが担当者に残ると、誰も止めません
- 主要な商材の1件あたり粗利を出すことからです。粗利額が出ていないと、上限の計算そのものが始まりません