
議論の対象が、施策の好き嫌いから、どの項を何割動かすかに変わります。
売上への効き方を同じ物差しで比べられるようになります。
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目次
目次
- 認知から受注までを一本の式にすると、何が変わるのか
- 部門ごとに別の式を持たない
- 式は、どの形に組むのか
- 項の定義を、先に固定する
- 掛け算と足し算を、どう混ぜるのか
- 分けすぎると、母数が足りなくなる
- どの項を動かすと、売上がいくら動くのか
- 期の残りの長さで、選ぶ項が変わる
- 項が独立でないとき、式はどう壊れるのか
- 干渉の幅を、自社の実績から出す
- 認知の項は、式にどう入れるのか
- 認知の項は、掛け算に組み込まない
- 式を会議の共通言語にするには、何が要るのか
- 式を毎回作り直さない
- 設計の順番をどう決めるか
- よくある質問
- まとめ
議論の対象が、施策の好き嫌いから、どの項を何割動かすかに変わります。
売上への効き方を同じ物差しで比べられるようになります。
認知から受注までを一本の式にすると、何が変わるのか
議論の対象が、施策の好き嫌いから、どの項を何割動かすかに変わります。
売上への効き方を同じ物差しで比べられるようになります。
マーケティングの会議では、施策の話と数字の話が別々に進みがちです。
新しい媒体を試すかどうかという議題と、売上目標に届くかどうかという議題が、つながらないまま並びます。
この2つがつながらないのは、施策と売上の間にある経路が書かれていないからです。
経路が書かれていれば、その施策が経路のどこに効くのかという形で議論できます。
一本の式は、その経路を書いたものです。
売上に至るまでの段階を、数と率の掛け算で並べたものと考えてください。
式がない状態で施策の採否を決めると、判断の根拠は前例と経験になります。
経験のある人が正しいことも多いのですが、その判断を他の人が再現できません。
再現できない判断は、担当者が代わった時点で失われます。
同じ媒体を数年おきに試しては止めるという動きが、多くの組織で繰り返されるのはこのためです。
式があると、施策はどの項を動かすものかという形に置き換わります。
動かす項が同じ施策どうしは、費用と時間で直接比べられます。
予算の増額を依頼するときも、形が変わります。
全体に対していくら欲しいという要求ではなく、どの項をどれだけ動かすためにいくら必要かという形になります。
未達の説明も同じです。
努力の量を説明する形から、どの項が想定を下回ったかを示す形に変わります。
部門間の調整でも効きます。
担当範囲の主張ではなく、どの項を誰が持つかという切り分けになります。
一方で、式に期待しすぎると失敗します。
式を作ると、来期の売上を当てにいきたくなります。
予測の精度を上げようとすると、項が増え、定義の調整が終わらなくなります。
外れることを前提に使うほうが、運用は続きます。
式の主な用途は、感度の共有です。
どの項がどれだけ売上に効くかという相場観を、部門をまたいで揃えることが目的になります。
部門ごとに別の式を持たない
広告の担当が広告の式を持ち、営業が営業の式を持つ形は、一見合理的に見えます。
実際には、足し合わせたときに数字が合いません。
合わない原因は、境界の段階の定義です。
広告側の式の出口である問い合わせと、営業側の式の入口である有効リードが、同じものを指していないことが多くあります。
境界がずれていると、両方の式が正しくても全体の売上が説明できません。
説明できない差が残ると、どちらの数字も信用されなくなります。
一本にするというのは、境界の定義を1つに決めるという意味です。
式の形を統一することより、境界を揃えることのほうが実際の作業量は多くなります。
全員が同じ地図を見ている状態を作るのが、一本にすることの効用です。
地図が2枚あると、会議の時間の大半が地図の照合に使われます。
式は予測のためではなく、どの項が売上にどれだけ効くかという感度を共有するためのものです。部門ごとに式を分けず、境界の段階の定義を1つに決めてください。
式は、どの形に組むのか
売上を、段階ごとの数と率の掛け算で書きます。
最後に受注単価を掛けると、事業の売上に着地します。
式の骨格は、事業のモデルによって変わります。
検討期間が長い事業と、その場で購入が決まる事業では、途中の段階が違います。
検討期間が長い事業では、接触した人の数から始めます。
そこに各段階の率を順に掛け、最後に平均受注単価を掛けます。
接触人数にCVRを掛けると、問い合わせの件数になります。
問い合わせに有効化率を掛けると、営業に渡せる有効リードの件数になります。
有効リードに商談化率を掛けると商談数、商談に受注率を掛けると受注件数です。
受注件数に平均受注単価を掛けたものが、売上になります。
式の基本形
| 段階 | 項の作り方 | 前の段階からの率 |
|---|---|---|
| 接触 | 接触人数 | なし |
| 問い合わせ | 接触人数に CVR を掛ける | CVR |
| 有効リード | 問い合わせに有効化率を掛ける | 有効化率 |
| 商談 | 有効リードに商談化率を掛ける | 商談化率 |
| 受注 | 商談に受注率を掛ける | 受注率 |
| 売上 | 受注に平均受注単価を掛ける | なし |
その場で購入が決まる事業では、問い合わせと商談の段階がなくなります。
接触から購入までが短いため、接触人数とCVRと平均購買単価の3項で書けます。
その代わり、購入回数と継続期間の項が入ります。
1人の顧客が年に何回買うか、何年続くかで、同じ獲得件数でも売上が変わるためです。
継続課金の事業では、初回の売上ではなく契約期間全体の売上で式を閉じます。
初回だけで閉じると、獲得にかけてよい費用が実態より小さく出ます。
式に入れる項の数は、最初は少なくしてください。
段階が多いほど精度が上がるように見えますが、率の数が増えるほど誤差が積み重なります。
5段階を超えると、各段階の率の誤差が掛け合わされて、計算結果と実績の差が大きくなります。
差が大きい式は、会議で使われなくなります。
項の定義を、先に固定する
式を作る作業の大半は、計算ではなく定義の合意です。
同じ商談という言葉でも、部門によって指すものが違います。
初回訪問を商談と数える組織と、提案書を提出した案件だけを商談と数える組織では、同じ活動でも件数が2倍近く変わります。
定義が違えば商談化率も受注率も変わるため、式の出す答えは別物になります。
そのため、式を書く前に各項の定義を1つの文書に書き出してください。
書き出す相手は営業責任者で、合意の記録は期末まで残します。
定義の合意を口頭で済ませると、担当者が交代した時点で数字の意味が変わります。
前期との比較ができなくなり、率の変化を施策の成果と取り違えます。
定義の文書には、除外する条件も書いてください。
含める条件より、外す条件のほうが解釈の幅が大きく、数字の不一致の大半はここから生じます。
接触人数から始め、段階ごとの率を掛けて受注単価で閉じます。段階は5つ程度までに抑え、書く前に各項の定義と除外条件を営業と文書で揃えてください。
掛け算と足し算を、どう混ぜるのか
段階の進行は掛け算、経路の並列は足し算です。
これを混ぜずに書くと、チャネルごとの違いが式から消えます。
一本の式にすると言っても、すべてを掛け算で書くことはできません。
チャネルは並列に存在するためです。
検索、広告、紹介、既存顧客からの再購入。
これらは順番に通過する段階ではなく、同時に走る経路です。
並列の経路を1つの式に押し込むと、出てくるのは平均値だけになります。
平均のCVRや平均の商談化率は、どのチャネルの実態も表しません。
正しい組み方は、経路ごとに同じ形の式を立てて、最後に足すことです。
検索経由の受注件数と広告経由の受注件数を別々に出し、合計します。
こうすると、チャネルごとに率が違うことが式の上に残ります。
広告のCVRが高く商談化率が低いという構造が、そのまま見えるようになります。
商材やセグメントも、足し算の側に置きます。
単価と受注率の構造が違うものを同じ式に入れると、平均受注単価が実在しない数字になります。
数字は説明のための仮の値です。
100万円の案件と3,000万円の案件が同じ母集団に入っていると、平均受注単価は両方の実態から外れた値になります。
この状態で逆算すると、必要なリード数が実態の半分にも2倍にもなります。
商材別に式を分け、最後に足し合わせる形にしてください。
掛け算の側に置くのは、段階ごとの率と、1件あたりの金額を決める項です。
購入回数と継続期間は、単価と同じく掛け算に入ります。
分けすぎると、母数が足りなくなる
チャネルを細かく分けると、それぞれの率の母数が小さくなります。
月に10件しか通らない経路の率は、1件の増減で大きく動きます。
率が安定しない粒度まで分けると、式が使えなくなります。
毎月率が動くため、計算結果と実績の差が常に大きくなるためです。
分ける基準は、率の違いです。
率がほぼ同じチャネルは、まとめて1行にしてください。
まとめてよいかどうかは、過去12か月の率を並べて判断します。
差が数ポイント以内なら、分ける意味はありません。
分ける必要があるのは、率が明確に違う経路だけです。
指名検索と一般検索は、CVRも商談化率も大きく違うため、必ず分けてください。
既存顧客からの再購入も、必ず別の行にします。
獲得の費用がかからないため、同じ行に混ぜると新規獲得の採算が実態より良く見えます。
混ぜたまま式を使うと、新規への投資が過大に見積もられます。
既存の比率が高い事業ほど、この誤差は大きくなります。
段階の進行は掛け算、チャネルと商材は足し算で書きます。分ける基準は率の違いで、率が数ポイントしか違わない経路は1行にまとめてください。
どの項を動かすと、売上がいくら動くのか
掛け算の式では、どの項を同じ割合だけ動かしても売上への効果は同じになります。
違うのは、動かすのにかかる費用と時間です。
式を作ったあと、最初にやるのは感度の確認です。
各項を一定の割合で動かしたときに、売上がどう動くかを並べます。
掛け算の構造上、答えは最初から決まっています。
CVRを10%上げても受注率を10%上げても、売上への効果は同じ10%です。
この当たり前の性質が、実務では見落とされています。
改善の議論が、動かしやすい項ではなく、目についた項に向かうためです。
比べるべきなのは、効果ではありません。
10%動かすのに何が必要かという、費用と時間のほうです。
接触人数を10%増やすのは、広告予算を増やせば短期間でできます。
その代わり、費用が比例して増えるため、売上は増えても利益は増えません。
率の項は、改善できれば費用を増やさずに売上が増えます。
率の項を先に見るのは、この非対称性があるためです。
ただし、率の項には上限があります。
すでに高い水準にある項を10%上げるのは、低い項を上げるよりはるかに難しくなります。
CVRが0.5%の事業で0.55%にするのと、4%の事業で4.4%にするのでは、必要な工数がまったく違います。
現在の水準と、同じ商材で一般に見られる水準を並べて判断してください。
各項を10%動かしたときの比較
| 項 | 売上への効果 | 動かす手段 | 効果が出るまでの時間 |
|---|---|---|---|
| 接触人数 | 10%増 | 広告予算の増額 | 短い |
| CVR | 10%増 | 導線と訴求の改善 | 中程度 |
| 商談化率 | 10%増 | リードの選別と接触の設計 | 中程度 |
| 受注率 | 10%増 | 提案内容と営業体制 | 長い |
| 平均受注単価 | 10%増 | 商材構成と価格 | 長い |
数字は説明のための仮の値です。
接触10万人、CVR1%、有効化率60%、商談化率50%、受注率25%、平均受注単価400万円の事業を考えます。
この事業の受注は75件、売上は3億円です。
CVRを1.1%にすると売上は3.3億円になります。
受注率を27.5%にした場合も、売上は同じ3.3億円です。
どちらを選ぶかは、効果ではなく、どちらが早く安く動かせるかで決まります。
期の残りの長さで、選ぶ項が変わる
同じ事業でも、期の初めと終わりでは選ぶべき項が違います。
期の初めなら、効果が出るまで時間がかかる項に着手できます。
期の残りが2か月の場合、受注率に手を入れても当期の売上には間に合いません。
提案内容を変えてから受注に反映されるまでに、商談のリードタイムがそのまま加わるためです。
残り期間が短いときに選べるのは、接触人数とCVRです。
どちらも反映が速く、当期中に結果が出ます。
ただし接触人数を増やす選択は、費用が比例して増えます。
期末に予算を追加して件数を作る動きは、翌期の採算を悪くします。
そのため、期の初めに時間のかかる項へ着手しておくことが、期末の選択肢を増やします。
式の感度表は、着手の時期を決めるための道具でもあります。
どの項を10%動かしても売上への効果は同じで、違うのは費用と時間です。期の残り期間に合わせて、反映の速い項と遅い項を使い分けてください。
項が独立でないとき、式はどう壊れるのか
一つの項を動かすと、別の項が逆方向に動くことがあります。
これを織り込まないと、式の上では増えるのに実際には増えません。
掛け算の式は、各項が独立していることを前提にしています。
実際の事業では、項どうしが干渉します。
最も頻繁に起きるのは、量を増やすと率が下がる干渉です。
広告予算を増やして接触人数を伸ばすと、検討の浅い層が入ります。
その結果、CVRか商談化率が下がります。
接触人数を2割増やしたのに、受注が1割しか増えないという形になります。
CVRを上げる施策にも、同じ構造があります。
入力項目を減らしたり資料請求の条件を緩めたりすると、CVRは上がります。
その代わり、検討段階が手前の人が増えるため、商談化率が下がります。
CVRの改善が商談化率の低下で相殺され、受注件数は変わりません。
商談数を増やす施策も同じです。
商談化の基準を緩めて件数を増やすと、見込みの薄い商談が増えて受注率が下がります。
平均受注単価を上げる施策にも干渉があります。
価格を上げると決裁の階層が1つ上がり、受注率とリードタイムの両方が悪化します。
これらはすべて、式の上では別の項です。
実際には、1つの項を動かす手段が別の項の値を決めています。
干渉を無視すると、式は常に楽観的な答えを出します。
その答えで予算を確保すると、期末に説明のつかない差が残ります。
干渉の幅を、自社の実績から出す
干渉があること自体は、式を捨てる理由になりません。
幅が分かっていれば、補正を入れて使えます。
幅を出す方法は、過去に予算を大きく動かした時期を探すことです。
予算を5割増やした月に、CVRが何ポイント落ちたかを記録から拾います。
この対応が2回か3回分あれば、増やす幅と率の低下幅の関係が概算できます。
その関係を式に入れておけば、増額の効果を過大に見積もらずに済みます。
小さな変化なら、干渉は無視して構いません。
予算を1割動かす程度なら、率の変化は誤差の範囲に収まることが多くあります。
予算を2倍にするような変化では、必ず補正を入れてください。
補正を入れずに出した数字で稟議を通すと、翌期の予算の信頼を失います。
量を増やすと率が下がり、率を上げると次の率が下がります。過去に予算を大きく動かした時期の実績から干渉の幅を出し、大きな変化には必ず補正を入れてください。
認知の項は、式にどう入れるのか
接触人数の手前に、一段だけ置きます。
測れないものを無理に数値化せず、指名検索のように結果が数字に出るものを代理に使います。
認知は、式から抜け落ちやすい部分です。
接触人数から式を始めると、その手前の投資が評価の対象から消えます。
評価されない費用は、効率の議論のたびに削減の候補になります。
削られた結果は、2年後の指名検索と直接流入の減少として現れます。
そのときには、原因が2年前の判断にあることを特定できません。
認知の項を式に接続しておく理由は、この特定を可能にするためです。
一方で、認知そのものは式に組み込めません。
想起率や好意度は、調査を実施しないと数字が出ないためです。
調査は費用と時間がかかり、実施できるのは半期か年に一度です。
毎月の運用に使う式の項としては、周期が合いません。
代わりに使うのが、認知の結果として数字に出るものです。
指名検索の件数が代表で、直接流入の件数も同じ役割を果たします。
これらは月次で取れ、認知施策の効果が数か月遅れで現れます。
完全な代理ではありませんが、運用の周期に合います。
ただし、指名検索は他の要因でも動きます。
テレビ露出、報道、競合の撤退、既存顧客の再訪のいずれでも増えます。
そのため、指名検索の件数を認知施策の成果として単独で評価しないでください。
施策の実施時期と件数の推移を並べ、時期の対応を見る使い方にとどめます。
認知の項は、掛け算に組み込まない
認知が2倍になっても、接触人数が2倍になるわけではありません。
両者の関係は比例ではなく、遅れを伴う緩やかな連動です。
そのため、認知の項を掛け算の中に入れると、式の答えが実態から外れます。
認知の項は式の外側に置き、接触人数の伸びを説明する材料として使ってください。
置き方としては、式の1段上に注記として並べる形が実務的です。
指名検索の件数の推移を、接触人数の推移と同じ表に並べます。
こうしておくと、接触人数が伸び悩んだ理由を説明するときに使えます。
指名検索が減っているなら、広告の運用ではなく上流の投資が原因だと判断できます。
半期に一度の調査を実施できる場合は、想起率も同じ場所に並べます。
毎月の運用には使えませんが、年単位の投資判断の材料になります。
認知は式の外側に置き、指名検索や直接流入の件数を代理として接触人数の手前に並べます。掛け算に組み込むと、式の答えが実態から外れます。
式を会議の共通言語にするには、何が要るのか
定義の固定と、数字の出どころの一本化です。
この2つが揃っていないと、式は作った人だけのものになります。
式を作っても、使われないまま終わることがあります。
原因は式の中身ではなく、運用の条件が揃っていないことにあります。
1つ目の条件は、項の定義が固定されていることです。
商談の定義が営業とマーケティングで違えば、掛け算の途中で数字が合いません。
数字が合わないことが一度でも起きると、その場で式の正しさが議題になります。
以後、式を開くたびに同じ確認から始まり、やがて開かれなくなります。
2つ目の条件は、数字の出どころが1か所であることです。
同じ商談数でも、案件管理の画面から取るのか、営業の報告書から取るのかで値が変わります。
出どころが分かれていると、会議ごとに違う値が出ます。
どちらが正しいかの議論に時間を使い、式を使う段階に到達しません。
3つ目は、更新の周期が決まっていることです。
率の値を更新しないまま数か月使うと、古い前提で議論することになります。
月次で率を更新し、更新した日付を式の上に残してください。
日付があれば、いつの実績に基づく計算かがその場で分かります。
4つ目は、定義変更の履歴が残っていることです。
定義を変えた月をまたいで比較すると、率の変化が施策の成果に見えます。
変更の履歴は、式の文書と同じ場所に残します。
別の資料に書くと、次の期の設計時に前提の更新を追えません。
式を毎回作り直さない
会議のたびに式を組み直すと、比較ができなくなります。
期を通して同じ式を使い、率の値だけを更新してください。
式の構造を変えてよいのは、期の切れ目だけです。
チャネルを追加したり段階を分けたりする変更も、期中は行いません。
期中に新しいチャネルを始めた場合は、既存の式の枠組みの中で扱います。
足し算の1行として追加し、構造そのものは変えないでください。
使う場面も、先に決めておくと定着します。
予算の議論、未達の説明、施策の採否の3つの場面で必ず式を開く決まりにします。
この3つに絞るのは、式を使う頻度が低すぎても高すぎても定着しないためです。
毎週開くと形骸化し、年に一度しか開かないと使い方を忘れます。
項の定義、数字の出どころ、更新の周期、変更の履歴の4つを固定します。式の構造を変えてよいのは期の切れ目だけで、期中は率の値だけを更新してください。
設計の順番をどう決めるか
主要なチャネル1つだけで、式を組んでみることからです。
全体を一度に作ろうとすると、定義の調整で止まります。
式は、完成させてから使うものではありません。
一部を作って使い始め、範囲を広げていく形が現実的です。
全チャネルを一度に組もうとすると、最初の作業が定義の全社調整になります。
調整が終わるまで何も動かないため、たいてい途中で止まります。
実行の手順
| 順番 | やること | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 主要チャネル1つで段階と率を書き出す | 1週間 |
| 2 | 項の定義と除外条件を営業と揃える | 2週間 |
| 3 | 過去12か月の率を入れて式を動かす | 1週間 |
| 4 | 各項を10%動かしたときの感度を出す | 1週間 |
| 5 | 他チャネルに同じ形の式を広げる | 1か月 |
| 6 | 予算と未達の議論で式を使う運用にする | 継続 |
工程2に2週間を置いているのは、ここが最も時間のかかる作業だからです。
定義の合意は、会議1回では終わりません。
数字は説明のための仮の値です。
接触10万人、CVR1%、有効化率60%、商談化率50%、受注率25%、平均受注単価400万円なら、受注は75件で売上は3億円になります。
このときCVRを1.1%にすると売上は3.3億円で、受注率を27.5%にしても同じ3.3億円です。
どちらが早く動かせるかで打ち手を選ぶ、という判断がこの計算から出ます。
効果を見る数字
| 数字 | 周期 | 式の中での役割 |
|---|---|---|
| 接触人数 | 週次 | 量の入口として進捗を見る |
| CVR | 月次 | 最も動かしやすい率 |
| 商談化率 | 月次 | 質の指標として見る |
| 受注率 | 四半期 | 営業と共有する項 |
| 平均受注単価 | 四半期 | 単価構成の変化を見る |
| 指名検索の件数 | 月次 | 認知の代理として並べる |
週次で見るのは接触人数だけにしてください。
率の項を週次で見ると、母数が足りず偶然の振れに反応することになります。
計算結果と実績が大きくずれた場合は、率ではなく定義を先に確認します。
実務では、率の推定が外れているより、定義がずれているほうが原因として多く見つかります。
定義のずれは、担当者の交代や案件管理の画面の変更があった月に起きやすくなります。
ずれが見つかったら、過去のデータも新しい定義で再集計してください。
役員会に持ち込むときは、式そのものではなく感度の表だけを出します。
どの項を動かすと売上がいくら増えるかという1枚があれば、議論は成立します。
式の全体は、質問が出たときに開いてください。
最初から全体を出すと、構造の説明に時間を使い、判断の議論に入れません。
主要チャネル1つで組んで使い始め、範囲を広げます。計算が合わないときは率ではなく定義を先に疑い、役員会には感度の表だけを持ち込んでください。
売上に至る経路を一本の式にまとめられない場合は、無料相談で現状の数字を一緒に並べるところから始められます。
指標の構造ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
式はどこまで細かく分けるべきですか
段階は5つ程度までに抑えてください。段階が増えるほど各段階の率の誤差が掛け合わされ、計算結果と実績の差が大きくなります。チャネルを分ける基準は率の違いで、過去12か月の率が数ポイントしか違わない経路は1行にまとめます。
どの項から改善すべきですか
掛け算の式では、どの項を同じ割合だけ動かしても売上への効果は同じです。比べるのは費用と時間で、接触人数は速い代わりに費用が比例して増え、率の項は費用を増やさずに売上が増えます。期の残りが短いときは、反映の速い接触人数とCVRしか選べません。
予算を増やしたのに式の計算どおりに売上が増えません
項どうしの干渉が起きています。接触人数を増やすと検討の浅い層が入り、CVRか商談化率が下がるためです。過去に予算を大きく動かした時期の率の変化を記録から拾い、増やす幅と率の低下幅の関係を式に補正として入れてください。
認知の施策は式に入れられますか
想起率や好意度は調査でしか測れず、運用の周期に合いません。指名検索や直接流入の件数を代理として、式の外側の1段上に並べてください。認知と接触人数の関係は比例ではないため、掛け算に組み込むと式の答えが実態から外れます。
式を作ったのに社内で使われません
項の定義、数字の出どころ、更新の周期、変更の履歴の4つを確認してください。定義が部門で違うか出どころが分かれていると、会議のたびに数字の突き合わせから始まり、やがて開かれなくなります。使う場面を予算、未達の説明、施策の採否の3つに決めておくと定着します。
まとめ
- 議論の対象が、施策の好き嫌いから、どの項を何割動かすかに変わります。売上への効き方を同じ物差しで比べられるようになります
- 売上を、段階ごとの数と率の掛け算で書きます。最後に受注単価を掛けると、事業の売上に着地します
- 段階の進行は掛け算、経路の並列は足し算です。これを混ぜずに書くと、チャネルごとの違いが式から消えます
- 掛け算の式では、どの項を同じ割合だけ動かしても売上への効果は同じになります。違うのは、動かすのにかかる費用と時間です
- 一つの項を動かすと、別の項が逆方向に動くことがあります。これを織り込まないと、式の上では増えるのに実際には増えません
- 接触人数の手前に、一段だけ置きます。測れないものを無理に数値化せず、指名検索のように結果が数字に出るものを代理に使います
- 定義の固定と、数字の出どころの一本化です。この2つが揃っていないと、式は作った人だけのものになります
- 主要なチャネル1つだけで、式を組んでみることからです。全体を一度に作ろうとすると、定義の調整で止まります