
増やす理由は毎回あり、減らす理由は誰も持たないからです。
見落としへの不安、部門の追加、新しい施策の導入が、そのたびに指標を1つずつ足していきます。
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目次
目次
- KPIは、なぜ放っておくと増えていくのか
- 増えた指標が減らない構造を先に壊す
- 指標が多い組織の現場では、何が起きているのか
- 指標が多い組織で、会議はどう変わるか
- 指標を残すか外すかは、どの基準で判断するのか
- 判定に迷う指標の扱い方
- 3つの枠は、それぞれ何で埋めるのか
- 枠を3つより減らしてはいけない理由
- KPIから外した指標は、その後どう扱うのか
- KPIとモニタリング指標の、未達時の扱いの違い
- 部門ごとにKPIを持つと、全社ではなぜ増えるのか
- 部門をまたぐ指標は、どちらの階層に置くか
- 絞ったあとに指標を足したくなったら、どうするのか
- 期中に例外を認めてよい場面
- KPIの整理は、どこから手をつければいいのか
- よくある質問
- まとめ
増やす理由は毎回あり、減らす理由は誰も持たないからです。
見落としへの不安、部門の追加、新しい施策の導入が、そのたびに指標を1つずつ足していきます。
KPIは、なぜ放っておくと増えていくのか
増やす理由は毎回あり、減らす理由は誰も持たないからです。
見落としへの不安、部門の追加、新しい施策の導入が、そのたびに指標を1つずつ足していきます。
KPIが10個ある組織で、最初から10個だったところはほとんどありません。
たいていは3つか4つで始まり、数年かけて増えています。
増える経路は決まっています。
1つ目が、見落としへの不安です。
ある月に想定外の数字の悪化が起きると、次の会議で「この数字も見ておこう」という提案が出ます。
提案には根拠があり、反対する理由も見当たらないため、そのまま指標が1つ増えます。
2つ目が、部門や担当の追加です。
新しい担当者が配属されると、その担当の成果を測る数字が必要になります。
3つ目が、新しい施策の導入です。
動画広告を始めれば視聴完了率が、ウェビナーを始めれば申込数と参加率が候補に挙がります。
4つ目が、経営や他部門からの要望です。
要望として出た数字は、断る理由を説明しにくいため、そのまま追加されます。
どの経路にも共通するのは、増やす側に明確な理由があることです。
一方で、減らす側には理由がありません。
外す提案は「この数字は見なくてよい」という主張になり、見落としの責任を引き受ける形になります。
誰も引き受けたがらないため、いったん載った指標は残り続けます。
KPIが増えていく典型的な経路
| きっかけ | 増える指標の例 | 提案する側 | 外れにくい理由 |
|---|---|---|---|
| 想定外の悪化が起きた | 離脱率、直帰率 | 現場の担当者 | 外すと再発時に責任が問われる |
| 担当や部門が増えた | 担当ごとの件数 | 部門の責任者 | 評価の根拠が無くなる |
| 新しい施策を始めた | 視聴完了率、参加率 | 施策の推進者 | 施策の成果を示せなくなる |
| 経営や他部門の要望 | 認知率、指名検索数 | 部門外 | 断る理由を説明しにくい |
増えた指標が減らない構造を先に壊す
指標を減らす作業は、個別に外す議論をしても進みません。
1つずつ外す提案をすれば、1つずつ反対の理由が出るためです。
進める方法は、先に枠の数を決めることです。
KPIは3つという制約を先に置き、そのうえでどれを入れるかを議論します。
この順番にすると、議論が「外すかどうか」から「3つに何を入れるか」に変わります。
外す側が責任を引き受ける構図が消えます。
枠の数を決める合意は、現場ではなく決裁者の場で取ってください。
現場で決めた枠は、経営から要望が出た時点で崩れます。
あわせて、外した指標の扱いも同じ場で決めます。
扱いが決まっていないと、外すこと自体が見ないことを意味してしまいます。
枠の数を決めるときは、数そのものより、枠を破る手続きを決めるほうが効きます。
3つと決めても、破る手続きが無ければ次の要望で崩れるからです。
手続きは、入れ替えの提案を誰が受け、いつ判断するかという2点で足ります。
この2点が決まっていれば、要望を断らずに枠を守れます。
現在の指標がいくつあるかを数えたことがない組織は少なくありません。
数えるだけで議論の出発点が変わるため、整理を始める前に一度数えてください。
指標は増やす理由だけがあり、減らす理由がないため増え続けます。個別に外すのではなく、先に枠の数を決裁者の場で決めてください。
指標が多い組織の現場では、何が起きているのか
指標どうしが矛盾し、どれを優先するかが現場の判断に委ねられます。
判断が担当者ごとに分かれるため、施策の方向が月ごとに揺れます。
KPIが多いこと自体は、作業量の問題としては大きくありません。
集計は自動化できますし、資料が1枚増えるだけです。
実際に問題になるのは、指標どうしが逆方向を向いていることです。
件数を増やす動きは単価を上げ、単価を下げる動きは件数を減らします。
この2つを同時に目標として置くと、現場は片方を選ぶしかありません。
どちらを選ぶかは、その月の会議で誰の声が大きかったかで決まります。
翌月に別の指標が話題になれば、方向が逆になります。
施策の方向が月ごとに揺れると、媒体側の学習も安定しません。
矛盾は、件数と単価の組み合わせだけではありません。
リードの質を上げる動きは件数を減らし、新規市場の開拓は短期の効率を下げます。
指標が3つであれば、矛盾は当事者の間で調整できます。
10個あると、どの2つが矛盾しているのかを把握すること自体が難しくなります。
もう1つ起きるのが、未達時の優先順位がつかないことです。
4つの指標が未達のとき、どれから手をつけるかを決める根拠がありません。
根拠が無いため、最も改善しやすい指標から手がつきます。
改善しやすい指標は、たいてい事業への影響が小さい指標です。
指標が多い組織で、会議はどう変わるか
指標が多い組織の月次会議は、報告の時間が長くなります。
10個の指標を説明するだけで、30分から40分が消えます。
説明が終わった時点で会議の時間も終わるため、決定の時間が残りません。
決定が無い会議は、翌月に同じ報告を繰り返します。
さらに、指標が多いと未達の指標が必ず存在します。
毎月どこかが未達であるため、未達そのものへの緊張感が失われます。
緊張感が失われると、指標が本当に悪化したときの反応も遅れます。
指標を増やすことで見落としを防ごうとした結果、見落としが起きやすくなります。
この状態は、資料の作り方では直りません。
指標の数を減らさないかぎり、会議の構造は変わりません。
矛盾が起きていることは、現場に聞けばすぐに分かります。
今月どの数字を優先したかを担当者に尋ね、答えが人によって違えば、その2つが矛盾しています。
聞き取りは、指標を外す議論の材料としても使えます。
現場が実際に判断に使っていない指標が、この場で見つかります。
指標の数と会議の長さには、はっきりした関係があります。
報告に使う時間が会議の半分を超えているなら、指標が多すぎる状態です。
指標が多いと矛盾の調整と未達の優先順位づけができなくなります。会議は報告で埋まり、結果として見落としが起きやすくなります。
指標を残すか外すかは、どの基準で判断するのか
事業計画から降ろせているか、自部門で動かせるか、未達のときに打ち手があるかの3点で判断します。
3つとも満たす指標だけがKPIとして残ります。
判定の基準は3つで足ります。
どれも、その指標を目標として置く意味があるかを問う形になっています。
1つ目は、事業計画から降ろせているかです。
売上目標から逆算した経路の上にある数字かどうかを見ます。
経路の上に無い指標は、達成しても事業が動きません。
動画の視聴完了率やメールの開封率は、この基準で外れます。
2つ目は、自部門の判断で動かせるかです。
他部門の動きに依存する数字は、目標にしても打ち手が出てきません。
3つ目は、未達のときに具体的な打ち手があるかです。
打ち手が「頑張る」しか出てこない指標は、目標として機能していません。
指標を残すか外すかの判定
| 指標の例 | 事業計画から降ろせるか | 自部門で動かせるか | 未達時に打ち手があるか | 扱い |
|---|---|---|---|---|
| 有効リード数 | 降ろせる | 動かせる | ある | KPIに残す |
| 商談化率 | 降ろせる | 一部動かせる | ある | 共有指標として残す |
| CAC | 降ろせる | 動かせる | ある | KPIに残す |
| セッション数 | 降ろせる | 動かせる | あるが事業への距離が遠い | モニタリングに回す |
| 直帰率 | 降ろせない | 動かせる | 限定的 | モニタリングに回す |
| 動画の視聴完了率 | 降ろせない | 動かせる | ある | 施策の評価指標に回す |
| 指名検索数 | 降ろせない | 一部動かせる | 限定的 | 四半期の参考値に回す |
この判定を行うと、たいていの組織で残るのは3つから4つです。
残った指標の数が5つを超える場合は、1つ目の基準の当てはめが緩くなっています。
判定に迷う指標の扱い方
判定に迷うのは、事業計画から降ろせるが自部門では動かしにくい指標です。
商談化率や受注率がここに入ります。
この種の指標は、KPIから外すのではなく、共有指標として残してください。
外すと部門間の連携が測れなくなり、残すと自部門の評価が他部門に左右されます。
共有指標は、両部門が同じ値を持ち、どちらの評価にも入る形にします。
3つの枠とは別枠として扱うと、枠の数は守れます。
もう1つ迷うのが、新しい施策の評価に使う指標です。
これはKPIではなく、施策ごとの評価指標として期間を区切って使ってください。
期間を区切らないと、施策が終わったあとも指標だけが残ります。
残った指標が、翌期のKPI候補として持ち込まれます。
判定の作業は、責任者が1人で行うほうが早く終わります。
複数人で合議にすると、各人が担当する指標を守る議論になります。
責任者が判定したあとで、外す指標の一覧を関係者に共有してください。
共有の場で異議が出た指標だけを、あらためて議論します。
この進め方であれば、判定にかかる時間は1週間で収まります。
全部を合議で進めると、同じ作業に2か月かかります。
判定は事業計画から降ろせるか、自部門で動かせるか、打ち手があるかの3点です。迷う指標は共有指標か、期間を区切った施策の評価指標に回してください。
3つの枠は、それぞれ何で埋めるのか
量、質、効率の3つで埋めます。
どれか1つを外すと、残りの指標を達成する過程で外した側が必ず崩れます。
3つの枠の中身は、量と質と効率です。
この組み合わせが機能するのは、3つが互いに歯止めになっているからです。
量の枠に入るのは、有効リード数です。
逆算で出した必要数をそのまま目標にします。
総リード数ではなく有効リード数を使う理由は、定義によって質の最低ラインを担保できるためです。
総リード数を量の指標にすると、軽いCVを増やす動きが止まりません。
質の枠に入るのは、商談化率です。
量を追う動きが質を落としたときに、この数字が先に反応します。
商談化率が営業側に依存しすぎる場合は、有効リードの中で決裁者が含まれる比率など、自部門で測れる代替を置く方法もあります。
ただし代替を使う場合は、それが商談化率と連動しているかを事前に確認してください。
効率の枠に入るのは、CACか、許容CPAに対する実績の比率です。
CACは、広告費だけでなく人件費や制作費を含めた顧客獲得の総費用を受注件数で割った数字です。
CPAではなくCACを使う理由は、CPAではCV地点の定義に引きずられるためです。
CV地点を軽くすればCPAは下がりますが、CACは変わりません。
枠を3つより減らしてはいけない理由
量だけを置くと、配信を広げてCVを軽くする動きが合理的になります。
件数は達成し、商談は増えないという結果になります。
効率だけを置くと、確実に取れる層にしか出さなくなります。
指名検索と既存顧客に寄り、新規市場を試す動きが止まります。
質だけを置くと、母数を絞れば数字が上がります。
件数が伸びず、事業計画に必要な供給が確保できません。
2つに減らした場合も、外した側が崩れます。
量と効率だけを置けば質が落ち、量と質だけを置けば費用が膨らみます。
3つを同時に置くことで、どの方向にも寄せられなくなります。
これが、3つという数の実質的な根拠です。
3つの枠に入れる指標は、事業の段階によって変わります。
立ち上げ期であれば量を優先し、効率の枠には緩い水準を置く形になります。
成熟した事業では、量よりも効率の枠が先に効きます。
枠の構成は同じでも、どこに厳しい水準を置くかは事業の段階で決めてください。
効率の枠にCACを置けない事業もあります。
人件費の配賦が部門単位で出せない場合は、当面は広告費と制作費だけの獲得単価で代用してください。
代用する場合は、それがCACではないことを資料に明記します。
明記しないと、経営側が持つ全社の獲得費用と比較されて数字が合いません。
枠は量に有効リード数、質に商談化率、効率にCACを置きます。1つ減らすと、外した側が必ず崩れます。
KPIから外した指標は、その後どう扱うのか
しきい値を付けたモニタリング指標に回します。
目標値は置かず、決めた幅を超えて動いたときだけ報告する運用にします。
外した指標を見なくなるわけではありません。
見る目的が、達成の判定から異常の検知に変わります。
異常の検知に使う指標には、目標値ではなくしきい値を置きます。
前月比で2割動いたら報告する、といった線です。
しきい値を置かないと、モニタリング指標は数か月で見られなくなります。
毎月の資料に数字が並ぶだけで、誰も判断に使わない状態になります。
しきい値の水準は、過去12か月の変動幅から決めます。
通常の月次変動が1割以内であれば、2割を超えた時点で異常と判断できます。
変動が大きい指標では、しきい値を広げてください。
広げすぎると検知できませんが、狭すぎると毎月の報告が発生して形骸化します。
報告の宛先も決めておきます。
しきい値を超えたときに誰に知らせ、誰が確認するかが決まっていないと、報告が資料の1行で終わります。
モニタリング指標の数には制限を設けなくて構いません。
目標として追わないため、数が増えても現場の判断は揺れないからです。
KPIとモニタリング指標の、未達時の扱いの違い
この2つの違いは、動いたときの対応で明確になります。
KPIが未達であれば、原因の特定と打ち手の提示まで求められます。
モニタリング指標がしきい値を超えた場合は、共有と確認までです。
確認の結果、事業に影響があると判断されたときだけ打ち手の検討に進みます。
この違いを文書にしておくと、指標を増やしたいという要望を受けやすくなります。
要望はモニタリング指標として受ければよく、KPIの枠を崩さずに済みます。
要望の受け方を決めていない組織では、断るか枠を崩すかの二択になります。
結果として枠が崩れ、元の状態に戻ります。
文書には、KPIとモニタリング指標のそれぞれについて、誰が見るか、いつ見るか、動いたときに何をするかを書いてください。
この3つが書かれていれば、運用は担当者が交代しても続きます。
しきい値の設定は、指標ごとに1回決めれば済みます。
決めた値は年に一度、過去12か月の変動幅で見直してください。
見直しをしないと、事業の規模が変わったときにしきい値が合わなくなります。
規模が大きくなるほど変動幅は小さくなるため、しきい値は狭めるほうに動きます。
しきい値を超えた指標の数そのものも、四半期に一度は確認してください。
毎月どれかが超えている状態なら、しきい値が狭すぎるか、集計に問題があります。
外した指標はしきい値付きのモニタリングに回します。KPIは原因特定と打ち手まで、モニタリングは共有と確認までと、扱いを文書で分けてください。
部門ごとにKPIを持つと、全社ではなぜ増えるのか
各部門が3つずつ持てば、部門の数だけ指標が積み上がるからです。
全社で見るのは事業の指標だけにし、部門の指標はその下の階層に置きます。
KPIを3つに絞ったはずなのに、全社では20個あるという状態が起きます。
部門ごとに3つずつ持っているためです。
部門が3つあれば9個、6つあれば18個になります。
それぞれの部門の中では絞られていても、全社の会議では全部が並びます。
この状態を直すには、階層を分けます。
全社の会議で見るのは事業の指標だけ、部門の指標は部門の会議で見る形です。
全社の会議で見る指標は、売上、受注件数、そして獲得の総費用の3つで足ります。
この3つがあれば、事業として順調かどうかは判断できます。
部門の指標は、この3つのどれかに接続している必要があります。
接続していない部門指標は、その時点で見直しの対象になります。
接続を確認する方法は、部門の指標が達成されたときに全社の3つがどう動くかを説明できるかです。
説明できない指標は、事業計画から降ろせていません。
階層を分けると、全社の会議の時間も短くなります。
3つの指標の確認であれば、報告は10分で終わります。
部門をまたぐ指標は、どちらの階層に置くか
商談化率のように部門をまたぐ指標は、階層の中間に置きます。
全社の指標ではありませんが、1つの部門の指標でもありません。
置き場所は、マーケティングと営業が同席する会議です。
この会議を月に一度持てば、中間の階層が機能します。
中間の会議を作らずに、全社の会議で部門間の調整をしようとすると、時間が足りません。
全社の会議は、経営の判断に使う場として残してください。
階層を3つに分けると、それぞれの会議の議題も自動的に決まります。
全社は事業の判断、中間は部門間の調整、部門は施策の実行です。
この分け方を期初に決めておくと、指標が増えたときに置き場所がすぐ決まります。
置き場所が決まらない指標は、そもそも必要ない指標であることが多くなります。
階層を分けたあとも、各会議の資料は同じ出所の数字から作ってください。
部門ごとに別々の集計をすると、同じ指標の値が会議によって違う状態になります。
出所を1つにするには、集計の担当を1か所に決める必要があります。
担当を決めずに階層だけ分けると、数字の不一致の確認に時間が取られます。
階層ごとの会議の頻度も、期初に決めておきます。
全社は月次、中間は月次、部門は週次という構成が、実務では多く見られる形です。
部門ごとに3つ持てば全社では積み上がります。全社は事業の3指標、中間は部門間の共有指標、部門は自部門の3つという階層に分けてください。
絞ったあとに指標を足したくなったら、どうするのか
入れ替えの手続きを通します。
足すのではなく、枠の中のどれと入れ替えるかを議論し、入れ替えは期初に限定します。
絞ったあとも、指標を足したいという要望は必ず出ます。
新しい施策を始めたとき、想定外の悪化が起きたときが典型です。
このとき、足す判断をしてしまうと枠が崩れます。
崩れた枠は、次の要望でさらに崩れます。
対応は2つです。
モニタリング指標として受けるか、枠の中の指標と入れ替えるかになります。
多くの要望は、モニタリング指標として受ければ満たされます。
要望の実態が「見ておきたい」であって「目標にしたい」ではないためです。
目標にしたいという要望であれば、入れ替えの議論に進みます。
議論するのは、枠の中の3つのうちどれを外すかです。
この形にすると、要望を出す側が外す指標を提案することになります。
提案できない場合、その要望はKPIの水準に達していません。
入れ替えの実施は、期初に限定してください。
期中に入れ替えると、期を通した比較ができなくなります。
期中に例外を認めてよい場面
期中の入れ替えを認めるのは、事業方針が変わったときだけです。
主力商材の変更、事業の売却や買収、価格体系の変更がこれにあたります。
この場合は、KPIだけでなく事業計画そのものが置き直されます。
計画が変われば、そこから降ろした指標も変わるのが自然です。
例外を認めるときは、変更の理由と、変更前後の指標の対応関係を記録してください。
記録が無いと、期末の評価で前半と後半の比較ができません。
市場環境の変化は、例外の理由になりません。
市場が変わっても、事業計画が変わっていなければ、指標は同じままで構いません。
Comexposium Japanが2025年12月に実施した調査では、2026年の予算を増やす企業が38.5%で前年から6.2ポイント増え、横ばいが50.5%でした。
予算が動く局面でも、事業計画が変わらないかぎり、指標の枠は動かさないでください。
要望を受けた記録も残してください。
四半期ごとに要望の件数と内容を見ると、現在の3つが実態に合っているかが分かります。
同じ指標の要望が繰り返し出る場合は、次の期初の入れ替え候補になります。
1回の要望では動かさず、繰り返しの有無で判断するほうが枠は安定します。
足すのではなく入れ替えます。要望の多くはモニタリングで満たされ、入れ替えは期初に限定し、期中の例外は事業方針の変更のときだけです。
KPIの整理は、どこから手をつければいいのか
現在見ている指標を全部書き出すところからです。
書き出すと、同じ数字が別名で複数回出ていることや、誰も使っていない指標が見つかります。
整理の作業は、外す議論からは始めません。
現状の把握から始めます。
最初にやるのは、月次の資料に載っている数字を1つ残らず書き出すことです。
資料が複数ある場合は、全部を1枚にまとめます。
書き出すと、同じ数字が別名で複数回載っていることが見つかります。
CV数とリード数、CPAと獲得単価のような重複です。
次に、それぞれの指標について、誰が何の判断に使っているかを聞きます。
使っている人が出てこない指標は、その場で外して構いません。
この2つの作業だけで、指標の数は3割から4割減ります。
判定の基準を当てはめるのは、そのあとです。
KPIを絞り込む工程
| 順番 | やること | 関わる人 | 期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 月次資料の数字を1枚に全部書き出す | マーケティング | 1週間 |
| 2 | 同じ数字の重複と、使われていない指標を外す | マーケティング | 1週間 |
| 3 | 残った指標に3つの判定基準を当てはめる | マーケ責任者 | 1週間 |
| 4 | 量と質と効率の3つの枠を埋める | 3者 | 2週間 |
| 5 | 外した指標のしきい値と報告先を決める | マーケティング | 1週間 |
| 6 | 階層と会議の構成を決めて文書にする | 3者 | 2週間 |
数字は説明のための仮の値です。
月次資料に18個の数字が載っていたとします。
重複と未使用を外して11個、判定基準を当てはめて残るのが4個、そこから枠に入るのが3個という減り方が典型です。
外れた15個のうち、しきい値を付けてモニタリングに回すのは5個から6個程度になります。
残りの9個前後は、資料から完全に落として構いません。
落としても困らないことは、2の工程で確認済みです。
絞ったあとに確認する数字
| 数字 | 見る頻度 | 見るときの観点 |
|---|---|---|
| 有効リード数 | 毎週 | 月次目標に対する進捗 |
| 商談化率 | 毎月 | 量の達成に質が伴っているか |
| CAC | 毎月 | 許容できる水準の内側にあるか |
| モニタリング指標のしきい値超過 | 毎月 | 超えた指標の数と、その内容 |
| 指標の追加要望の件数 | 四半期 | 枠の運用が守られているか |
週次で見るのは量だけにしてください。
質と効率の指標は、週単位では母数が足りず、偶然の振れを変化と取り違えます。
整理の結果は、文書にして期初の資料に添付します。
なぜこの3つになったのかが残っていないと、担当者の交代とともに元の数に戻ります。
この6工程は、着手から文書の確定まで8週間前後が目安になります。
最初の2工程は担当者1人で進められるため、他の準備と並行して着手できます。
整理は現状の書き出しから始めます。重複と未使用を外すだけで3割は減り、判定基準の当てはめはそのあとで十分です。
KPIが多すぎて動けない状態が分からない場合は、無料相談で現状を見てもらうところから始められます。
指標の体系ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
KPIはいくつが適切ですか
3つです。量に有効リード数、質に商談化率、効率にCACを置くと、互いが歯止めになります。1つ減らすと外した側が必ず崩れ、増やすと矛盾の調整と未達時の優先順位づけができなくなります。部門をまたぐ共有指標は、別枠として扱ってください。
絞ると見落としが出ませんか
見落としを防ぐのはKPIの役割ではありません。外した指標にはしきい値を付けてモニタリングに回し、決めた幅を超えたときだけ報告する運用にしてください。KPIは原因特定と打ち手まで、モニタリングは共有と確認までと、扱いを文書で分けます。
部門ごとにKPIを持つと全社では増えてしまいます
階層を分けてください。全社の会議で見るのは売上、受注件数、獲得の総費用の3つで足ります。部門の指標は部門の会議で、部門をまたぐ共有指標は両部門が同席する中間の会議で見ます。部門指標が全社の3つに接続していない場合は、見直しの対象です。
途中でKPIを追加したくなったらどうしますか
足すのではなく入れ替えます。要望の多くは「見ておきたい」であり、モニタリング指標として受ければ満たされます。目標にしたいという要望であれば、枠の中のどれと入れ替えるかを議論し、実施は期初に限定してください。
どの指標を外すべきか判断できません
事業計画から降ろせるか、自部門で動かせるか、未達のときに打ち手があるかの3点で判定します。3つとも満たすものだけがKPIです。判定に迷う指標は、共有指標か、期間を区切った施策の評価指標に回してください。
まとめ
- 増やす理由は毎回あり、減らす理由は誰も持たないからです。見落としへの不安、部門の追加、新しい施策の導入が、そのたびに指標を1つずつ足していきます
- 指標どうしが矛盾し、どれを優先するかが現場の判断に委ねられます。判断が担当者ごとに分かれるため、施策の方向が月ごとに揺れます
- 事業計画から降ろせているか、自部門で動かせるか、未達のときに打ち手があるかの3点で判断します。3つとも満たす指標だけがKPIとして残ります
- 量、質、効率の3つで埋めます。どれか1つを外すと、残りの指標を達成する過程で外した側が必ず崩れます
- しきい値を付けたモニタリング指標に回します。目標値は置かず、決めた幅を超えて動いたときだけ報告する運用にします
- 各部門が3つずつ持てば、部門の数だけ指標が積み上がるからです。全社で見るのは事業の指標だけにし、部門の指標はその下の階層に置きます
- 入れ替えの手続きを通します。足すのではなく、枠の中のどれと入れ替えるかを議論し、入れ替えは期初に限定します
- 現在見ている指標を全部書き出すところからです。書き出すと、同じ数字が別名で複数回出ていることや、誰も使っていない指標が見つかります