
仕様が確定してから比較されると、残る違いは価格と納期だけになります。
差別化の勝負は、仕様が決まる前の段階で起きています。
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目次
目次
- 相見積もりの土俵に乗った時点で、価格勝負になる
- 仕様が決まった後に呼ばれる立場
- 技術的な違いが、なぜ伝わらないのか
- 数値は前提知識がないと読めない
- どこで差をつけるかを、技術以外にも広げる
- 顧客が実際に困っていること
- 価格の説明を、どう組み立てるか
- 性能で説明することの限界
- 比較されたときに、何を見せるか
- 自社に有利な比較表の限界
- 差別化を、社内でどう共有するか
- 説明の型を作る
- 差別化の取り組みで、空回りしやすいところ
- 社内で出る強みの特徴
- 価格以外の軸づくりを、どこから始めるか
- 5社という数の意味
- よくある質問
- まとめ
仕様が確定してから比較されると、残る違いは価格と納期だけになります。
差別化の勝負は、仕様が決まる前の段階で起きています。
相見積もりの土俵に乗った時点で、価格勝負になる
仕様が確定してから比較されると、残る違いは価格と納期だけになります。
差別化の勝負は、仕様が決まる前の段階で起きています。
価格競争から抜けるという課題を、値付けの問題として扱うと行き詰まります。
製造業では、どの段階で候補に入ったかで価格の議論の重さが変わります。
仕様が決まった後に呼ばれる立場
顧客が既に仕様を固め、その条件で複数社に見積もりを依頼する。
この段階で呼ばれると、条件が同じなので価格で比べられます。
技術的に優れていても、仕様の枠内では評価されません。
仕様が決まる前に関われる立場
顧客が何を作りたいかを検討している段階で相談を受ける。
この段階なら、こちらの得意な条件を仕様に反映できます。
結果として、他社が同じ条件では出せない仕様になります。
関わる段階と、価格の議論の重さ
| 関わり始める段階 | 決まっていること | 価格の重み | 自社の技術が効くか |
|---|---|---|---|
| 課題の検討段階 | 何も決まっていない | 小さい | 大きく効く |
| 方式の検討段階 | 方向性だけ | 小さい | 効く |
| 仕様の検討段階 | 要求性能 | 中くらい | 一部効く |
| 図面が固まった後 | 詳細な仕様 | 大きい | 効きにくい |
| 相見積もりの依頼 | すべて | 最も大きい | ほぼ効かない |
| 価格交渉 | すべてと候補 | 最も大きい | 効かない |
早い段階で見つかるための条件
課題を検討している段階の人は、製品名では検索しません。その課題に関する言葉で探します。自社の情報が、課題の言葉で見つかる状態にあるかどうかが分かれ目になります。
技術的な違いが、なぜ伝わらないのか
性能の数値を並べても、相手の困りごとと結びつかないからです。
その数値が相手の現場で何を変えるかに翻訳する必要があります。
カタログには、他社より優れた数値が並んでいます。
それでも価格で比べられるのは、その数値の意味が伝わっていないからです。
数値は前提知識がないと読めない
精度が高い、寿命が長い、消費電力が小さい。
これらの数値は、相手がその意味を知っていれば効きます。
相手が購買の担当者なら、数値だけでは判断できません。
翻訳の形
その数値によって、相手の現場で何が減るか。
段取りの時間、不良の発生、保守の頻度、廃棄の量。
現場で起きることに置き換えると、購買にも伝わります。
技術的な特徴の翻訳
| 技術的な特徴 | 現場で起きる変化 | 金額に換算できるか |
|---|---|---|
| 寿命が長い | 交換の回数が減る | できる |
| 精度が高い | 後工程の調整が減る | できる |
| 消費電力が小さい | 電気代が下がる | できる |
| 段取りが簡単 | 切り替えの時間が減る | できる |
| 小ロットに対応できる | 在庫を減らせる | できる |
| 納期が短い | 計画の自由度が上がる | 一部できる |
金額に換算する資料を作る
交換の回数が年に何回減り、1回あたりの作業に何分かかるか。
この計算を相手と一緒に行う資料を用意します。
数字は相手の現場のものを使うため、こちらは計算の枠組みだけを提供します。
換算の前提を明示する
自社に都合のよい前提で計算した資料は、信用されません。前提条件を明示し、条件が変われば結果が変わることを書きます。この誠実さが、技術的な信頼につながります。
どこで差をつけるかを、技術以外にも広げる
製品の性能だけが差別化の軸ではありません。
納期、小ロット、対応の速さ、技術サポート。
これらのほうが顧客に効く場面があります。
差別化の議論が製品の性能に集中すると、開発の話になって時間がかかります。
いま持っているもので差をつけられる領域があります。
顧客が実際に困っていること
納期が読めない。
少量の試作を受けてもらえない。
技術的な質問に答えが返ってこない。
図面の変更に対応してもらえない。
これらは、製品の性能とは別の困りごとです。
性能以外の差別化の軸
| 軸 | 顧客にとっての価値 | 自社で実現する条件 |
|---|---|---|
| 納期の確実性 | 生産計画が立てられる | 生産管理の精度 |
| 短納期への対応 | 急な変更に対応できる | 工程の余力 |
| 小ロットの受注 | 在庫を持たずに済む | 段取りの効率 |
| 試作への対応 | 検討を早く進められる | 試作の体制 |
| 技術的な相談への回答 | 設計が進む | 技術部門の対応力 |
| 図面変更への柔軟さ | 後戻りが減る | 設計と製造の連携 |
軸を選ぶときの基準
自社が既にできていること。
競合が苦手としていること。
顧客が困っていること。
この3つが重なる領域を選びます。
できることを明示する
小ロットに対応できるなら、最小の数量を明記します。
短納期に対応できるなら、標準の納期と最短の納期を書きます。
書かないと、対応できないと思われて相談が来ません。
できないことも書く
すべてに対応すると書くと、何が得意か分かりません。この条件は対応できないと書くことで、対応できる範囲の信頼が上がります。
価格の説明を、どう組み立てるか
高い理由を製品の性能で説明すると、性能を要らないと言われます。
使っている期間の総額で比べる形に置き換えます。
価格が高いと言われたときの答え方で、その後の交渉が決まります。
性能で説明することの限界
高性能だから高いという説明は、その性能が不要な相手には通りません。
そこまでの性能は要らないと言われて終わります。
期間の総額で比べる
購入時の価格だけでなく、使用する期間にかかる費用の合計で比べます。
消耗品の費用、交換の作業、停止による損失。
これらを含めると、順位が変わることがあります。
期間の総額に含める項目
| 項目 | 含める理由 | 顧客側で把握しているか |
|---|---|---|
| 購入時の価格 | 最も分かりやすい | している |
| 消耗品の費用 | 継続的にかかる | している |
| 交換や保守の作業時間 | 人件費がかかる | していないことが多い |
| 停止による生産の損失 | 金額が大きい | 部分的にしている |
| 不良による損失 | 品質に直結する | 部分的にしている |
| 廃棄と処分の費用 | 最後にかかる | していないことが多い |
相手が把握していない項目を示す
交換の作業時間や廃棄の費用は、購買の担当者が計算に入れていないことがあります。
その項目を示すだけで、比較の枠組みが変わります。
値引きの代わりに条件を変える
価格を下げる代わりに、数量をまとめる、納期を延ばす、仕様を標準品に寄せる。
条件を変えて総額を下げる形にすると、単価の水準を守れます。
一度下げた単価は、次の取引でも基準になります。
値引きの履歴を社内で共有する
同じ顧客に対して、担当者ごとに違う値引きをしていると、基準が崩れます。値引きの実績を記録し、承認の基準を決めます。
比較されたときに、何を見せるか
他社との比較表を自社で作ると、都合のよい項目ばかりになり信用されません。
選定の観点を示して、顧客が自分で比較できる形にします。
比較される段階で何を渡すかは、受注の確率に直結します。
自社に有利な比較表の限界
自社が優れた項目だけを並べた表は、読み手に意図が見えます。
購買の担当者は、そうした資料を何度も見ています。
選定の観点を提供する形
この種の製品を選ぶときに確認すべき項目を並べます。
自社が不利な項目も含めます。
各項目について、条件によってどちらが良いかを書きます。
選定の観点を示す資料の構成を、項目ごとに見ていきます。
確認すべき項目の一覧については、書く内容は一般的な選定の観点、避けることは自社に有利な項目だけ並べる。
項目ごとの判断の考え方については、書く内容はどういう場合にどちらが良いか、避けることは断定的な優劣の主張。
自社が適している条件については、書く内容は具体的な使用条件、避けることはすべてに適しているという書き方。
自社が適さない条件については、書く内容は正直に書く、避けることは書かないこと。
確認の方法については、書く内容は実機での検証の進め方、避けることは検証なしでの決定を促す。
適さない条件を書くことの効果
自社が適さない条件を書くと、その条件の相手は問い合わせません。
残った問い合わせは、適合する相手からのものになります。
商談化率が上がります。
実機での検証を提案する
仕様の比較で決まらない場合、実機での検証を提案します。検証に入った時点で、他社より先に進んでいます。検証の受け入れ体制があるかどうかが、差になります。
差別化を、社内でどう共有するか
営業が説明できない差別化は、存在しないのと同じです。
何を言うかを文章にして、全員が同じ説明をする状態を作ります。
差別化の軸を決めても、現場で使われなければ意味がありません。
営業の説明が人によって違うと、顧客側で混乱が起きます。
説明の型を作る
どういう課題を持つ相手に、何を、どう説明するか。
これを1枚にまとめます。
長い資料にすると読まれません。
説明の型に含める要素を、項目ごとに見ていきます。
対象となる課題については、内容はどういう困りごとを持つ相手か、長さの目安は2行。
自社が提供できることについては、内容はその課題に対して何ができるか、長さの目安は3行。
根拠については、内容はなぜできるのか、長さの目安は3行。
確認してもらう方法については、内容は検証や試作の進め方、長さの目安は2行。
適さない条件については、内容はどういう場合は他を勧めるか、長さの目安は2行。
価格の考え方については、内容は何で決まるか、長さの目安は3行。
営業に覚えさせるのではなく、資料に持たせる
暗記を求めても定着しません。
商談で使う資料の中に、説明の順序が組み込まれている形にします。
資料をめくれば同じ説明になります。
技術部門の言葉を、営業の言葉に直す
技術部門が書いた説明は、正確ですが顧客には伝わりません。
営業が使える言葉に直す作業を、マーケティングが担います。
直したものを技術部門が確認する往復を1回入れます。
実際に使われているかを確認する
作った資料が商談で使われているかを、四半期に一度確認します。使われていない場合、内容ではなく形式に原因があることが多くなります。
差別化の取り組みで、空回りしやすいところ
社内で考えた強みが、顧客の関心と合っていないことがあります。
顧客に直接聞かないまま軸を決めると、伝わらない説明が増えます。
差別化の検討は、社内の会議で進められることが多くなります。
その結果、社内でしか通じない軸ができます。
社内で出る強みの特徴
技術力が高い、品質が良い、対応が丁寧。
これらは、どの会社も言っています。
顧客から見ると区別がつきません。
顧客に聞く
なぜ自社を選んだのかを、既存顧客に聞きます。
5社に聞けば、共通する理由が見えます。
社内の想定と違うことが多くあります。
差別化の検討でよくある間違いを、項目ごとに見ていきます。
社内の会議で強みを決めるについては、起きることは抽象的な言葉になる、代わりの進め方は既存顧客に選定理由を聞く。
性能の優位を前面に出すについては、起きることは必要ない相手に通じない、代わりの進め方は現場で起きる変化に翻訳する。
すべての顧客に同じ説明をするについては、起きることは誰にも刺さらない、代わりの進め方は対象を絞った説明を作る。
比較表を自社で作るについては、起きることは意図が見えて信用されない、代わりの進め方は選定の観点を提供する。
価格を下げて対応するについては、起きることは単価の基準が崩れる、代わりの進め方は条件を変えて総額を下げる。
新製品の開発で差をつけるについては、起きることは時間がかかる、代わりの進め方は納期や対応で先に差をつける。
聞き方に注意する
営業担当が聞くと、良い答えしか返ってきません。
マーケティングの担当が、改善のための調査として聞く形にします。
選ばなかった理由も、失注した相手に聞ければ材料になります。
外部に任せる場合の確認
差別化の検討を外部に依頼する場合、技術的な内容を理解する体制があるかを確認します。製品の仕様を読み込まずに作られた訴求は、技術者に見破られます。
価格以外の軸づくりを、どこから始めるか
既存顧客への聞き取りからです。
なぜ選ばれたかが分からないまま訴求を作ると、社内の想定を並べるだけになります。
差別化の作業は、新しい何かを作ることではありません。
既にある理由を見つけて、言葉にすることです。
差別化の軸を作る作業の並びを、項目ごとに見ていきます。
1については、やることは既存顧客5社に選定の理由を聞く、関わる部門はマーケティング・営業、期間の目安は1か月。
2については、やることは失注した案件3件の理由を確認する、関わる部門は営業、期間の目安は3週間。
3については、やることは共通する理由を抜き出して軸の候補を出す、関わる部門はマーケティング、期間の目安は2週間。
4については、やることは技術的な特徴を現場の変化に翻訳する、関わる部門は技術・マーケティング、期間の目安は3週間。
5については、やることは適する条件と適さない条件を文章にする、関わる部門は技術・営業、期間の目安は2週間。
6については、やることは説明の型を1枚にまとめて営業に配る、関わる部門はマーケティング、期間の目安は2週間。
5社という数の意味
多く聞けば精度は上がりますが、時間がかかります。
5社で共通する理由が2つか3つ出れば、軸の候補として十分です。
1社だけの意見に引っ張られないための最低限の数になります。
見る数字を決める
数字は説明のための仮の値です。
相見積もりになった案件が年に30件、そのうち受注が9件、平均の値引き率が8%だとします。
選定の観点を示す資料を導入した翌年、相見積もりが24件に減り、受注が10件、値引き率が5%になったとします。
件数が減っても、受注と利益は改善しています。
この形で見ないと、案件数の減少だけが目につきます。
差別化の効き方を見る数字を、項目ごとに見ていきます。
相見積もりになった案件の比率については、見る頻度は四半期、何が分かるかは価格勝負に入る前に関われているか。
平均の値引き率については、見る頻度は四半期、何が分かるかは価格の説明が効いているか。
仕様検討の段階からの相談件数については、見る頻度は四半期、何が分かるかは早い段階で見つかっているか。
失注理由のうち価格の比率については、見る頻度は半期、何が分かるかは差別化の伝わり方。
受注した案件の平均粗利率については、見る頻度は四半期、何が分かるかは採算の改善。
選定の観点の資料の利用回数については、見る頻度は四半期、何が分かるかは現場での定着。
値引き率を記録する
値引きの実績が記録されていない会社は多くあります。
記録がないと、差別化の効果が測れません。
見積もりの標準価格と最終価格を並べて残します。
半年から1年の取り組みとして計画する
聞き取りから資料の定着まで、半年はかかります。
四半期で成果を求めると、途中で止まります。
価格以外での選ばれ方で判断に迷う場合は、無料相談で現状の伝わり方を見てもらうところから始められます。訴求の組み立てごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
価格競争から抜けるには何をすればいいですか
仕様が確定した後に呼ばれる立場から、仕様が決まる前に相談される立場に変えることです。課題を検討している段階の言葉で、自社の情報が見つかる状態を作ります。
技術的な優位が伝わりません
性能の数値を、相手の現場で何が減るかに翻訳してください。交換の回数、段取りの時間、不良の発生。金額に換算できる形にすると、購買の担当者にも伝わります。
他社との比較表を作るべきですか
自社で作った比較表は意図が見えて信用されません。選定の観点を並べ、自社が適さない条件も書く形にすると、適合する相手からの問い合わせが残ります。
自社の強みが社内でも一致しません
既存顧客5社に選定の理由を聞いてください。社内の想定と違うことが多くあります。営業が聞くと良い答えしか返らないため、改善の調査として別の担当が聞きます。
値引きを求められたときどう答えますか
価格を下げる代わりに、数量をまとめる、納期を延ばす、標準品に寄せるといった条件の変更を提案してください。一度下げた単価は次の取引の基準になります。
まとめ
- 仕様が確定してから比較されると、残る違いは価格と納期だけになります。差別化の勝負は、仕様が決まる前の段階で起きています
- 性能の数値を並べても、相手の困りごとと結びつかないからです。その数値が相手の現場で何を変えるかに翻訳する必要があります
- 製品の性能だけが差別化の軸ではありません。納期、小ロット、対応の速さ、技術サポート。これらのほうが顧客に効く場面があります
- 高い理由を製品の性能で説明すると、性能を要らないと言われます。使っている期間の総額で比べる形に置き換えます
- 他社との比較表を自社で作ると、都合のよい項目ばかりになり信用されません。選定の観点を示して、顧客が自分で比較できる形にします
- 営業が説明できない差別化は、存在しないのと同じです。何を言うかを文章にして、全員が同じ説明をする状態を作ります
- 社内で考えた強みが、顧客の関心と合っていないことがあります。顧客に直接聞かないまま軸を決めると、伝わらない説明が増えます
- 既存顧客への聞き取りからです。なぜ選ばれたかが分からないまま訴求を作ると、社内の想定を並べるだけになります