
図面や仕様に組み込まれると、その製品が続く限り発注が続きます。
一度の採用で数年分の売上が決まるため、初回の獲得にかけられる金額が変わります。
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目次
目次
- 製造業のLTVは、採用された瞬間に大半が決まる
- 採用という言葉の重さ
- 継続する売上と、一回きりの売上を分ける
- 初回の売上に含まれるもの
- 獲得にいくらまでかけられるかを、どう決めるか
- 計算の形
- 取引が細っていく過程を、どう捉えるか
- 終わり方の型
- 更新の周期を、獲得の機会として扱う
- 更新の判断は、故障の前から始まる
- LTVを使うときに、間違えやすいこと
- 平均を使うことの危うさ
- 既存顧客からの拡大を、どう仕組みにするか
- 顧客ごとの取引の地図を作る
- 継続の設計に、どこから着手するか
- データが揃わない場合
- よくある質問
- まとめ
図面や仕様に組み込まれると、その製品が続く限り発注が続きます。
一度の採用で数年分の売上が決まるため、初回の獲得にかけられる金額が変わります。
製造業のLTVは、採用された瞬間に大半が決まる
図面や仕様に組み込まれると、その製品が続く限り発注が続きます。
一度の採用で数年分の売上が決まるため、初回の獲得にかけられる金額が変わります。
LTVという考え方は、継続課金の事業で使われることが多いものです。
製造業にも、形の違う継続性があります。
採用という言葉の重さ
顧客の製品の図面に自社の部品が指定されると、その製品が生産される間は発注が続きます。
設備の場合は、導入後の消耗品と保守部品が続きます。
どちらも、最初の1件を取るかどうかで、その後の数年が決まります。
切り替えが起きにくい理由
一度採用された部品を別のものに変えるには、再度の評価が必要になります。
検証の工数、品質保証の手続き、場合によっては顧客側の顧客への承認。
この手間があるため、多少価格が高くても継続されます。
製造業での継続の型と、その性質
| 継続の型 | 続く期間の考え方 | 切り替えの起きやすさ |
|---|---|---|
| 図面への部品の採用 | 製品の生産期間 | 低い |
| 設備の消耗品 | 設備の稼働期間 | 中くらい |
| 設備の保守部品 | 設備の使用期間 | 低い |
| 標準品の繰り返し購入 | 必要が続く間 | 高い |
| 受託加工の継続発注 | 取引関係が続く間 | 中くらい |
| 設備そのものの更新 | 更新の周期ごと | 周期時にだけ起きる |
LTVを出すために必要なもの
継続する期間と、その間の年間の発注額。
この2つが分かれば概算が出ます。
どちらも販売管理のデータにあります。
平均で出すことの限界
顧客ごとに継続期間が大きく違います。平均を出すと、実態と離れた数字になります。上位、中位、下位の3つに分けて出すほうが判断に使えます。
継続する売上と、一回きりの売上を分ける
同じ顧客からの売上でも、性質が違います。
分けずに合計すると、獲得にいくらかけられるかの判断ができません。
製造業の売上には、続くものと続かないものが混ざっています。
初回の売上に含まれるもの
設備を納入した場合、機械本体の代金は一回です。
そのあとの消耗品と保守は続きます。
この2つを分けないと、獲得の採算が読めません。
分けて見ると、判断が変わる
本体の利益が薄くても、消耗品で回収できる構造なら、本体の受注に投資できます。
逆に、消耗品が他社製でも使える構造なら、本体だけの採算で判断する必要があります。
売上の性質による分類
| 売上の種類 | 一回か継続か | 粗利の傾向 | 獲得投資の判断材料になるか |
|---|---|---|---|
| 設備・装置の本体 | 一回 | 低めになりやすい | 単独では不足 |
| 消耗品 | 継続 | 高めになりやすい | なる |
| 保守・補修部品 | 継続 | 高めになりやすい | なる |
| 保守契約 | 継続 | 中くらい | なる |
| 図面採用された部品の量産 | 継続 | 製品による | なる |
| 試作・単発の受託 | 一回 | 低い | ならない |
| 更新時の再受注 | 周期的 | 本体と同じ | 部分的になる |
自社製の消耗品が使われるかを確認する
設備に使う消耗品が、汎用品で代替できる場合があります。
このとき、継続収入は保証されません。
設計の段階で自社製の使用が前提になっているかどうかで、LTVが大きく変わります。
契約で継続を担保する形
保守契約を締結する形にすると、継続が読めるようになります。契約率をKPIに置く判断もあり得ます。納入時の提案の内容が、その後の数年の売上を決めます。
獲得にいくらまでかけられるかを、どう決めるか
継続期間中の粗利の合計から逆算します。
初回の取引額で判断すると、投資できる金額を小さく見積もることになります。
広告や営業活動にかけられる金額の上限は、LTVから決まります。
この計算を、初回の受注額で行っている会社が多くあります。
計算の形
継続期間中の粗利の合計から、その期間の維持にかかる費用を引きます。
残った金額の一部が、獲得にかけられる上限です。
一部というのは、全部を獲得に使うと利益が残らないからです。
獲得の上限を出す計算の順序
| 順番 | 出す数字 | 計算の方法 |
|---|---|---|
| 1 | 平均の継続期間 | 過去の取引の開始と終了から |
| 2 | 年間の平均粗利 | 年間売上から原価を引く |
| 3 | 継続期間中の粗利合計 | 年間粗利 × 継続期間 |
| 4 | 維持にかかる費用 | 保守対応と営業の人件費の按分 |
| 5 | 正味の粗利 | 粗利合計 − 維持費用 |
| 6 | 獲得の上限 | 正味の粗利の一部を配分 |
期間の割引を入れるかどうか
5年後の売上を今日の価値で評価すると、額面より小さくなります。
厳密に計算する場合は、この割引を入れます。
社内の議論では、期間を短く見積もることで代用できます。
数字は説明のための仮の値です。
年間の粗利が200万円、平均の継続期間が5年なら、粗利の合計は1,000万円です。
維持にかかる費用が年40万円で5年分200万円なら、正味は800万円になります。
このうち2割を獲得に配分するなら、1件あたり160万円まで使えます。
この数字を営業に共有する
160万円まで使えるという数字は、営業活動の判断にも使えます。
試作を無償で行う、技術者を何度も派遣する。
これらの判断の根拠になります。
顧客区分ごとに上限を変える
すべての顧客に同じ上限を使うと、大口の機会を逃します。想定される規模で3区分に分け、それぞれの上限を持ちます。
取引が細っていく過程を、どう捉えるか
製造業の取引は、解約という形では終わりません。
発注が徐々に減り、気づいたときには他社に切り替わっています。
継続課金の事業なら、解約という明確な出来事があります。
製造業の取引は、そうした区切りがないまま終わります。
終わり方の型
顧客の製品が生産終了になる。
顧客が設備を更新して他社製に変える。
顧客側の設計者が代わり、新しい設計で他社が採用される。
発注が四半期に一度になり、そのうち止まる。
気づくのが遅れる理由
毎月の発注額の変動は、生産量の増減として説明がつきます。
本当に切り替わったのか、たまたま減ったのかが区別できません。
半年から1年経ってから、営業が気づきます。
取引が細る兆候と、確認の方法
| 兆候 | 見るデータ | 確認の方法 |
|---|---|---|
| 発注の間隔が延びている | 受注の日付 | 過去の間隔と比較 |
| 1回あたりの数量が減っている | 受注明細 | 過去の平均と比較 |
| 特定の品番だけ止まっている | 品番別の出荷 | 品番ごとに並べる |
| 技術的な問い合わせが来なくなった | 問い合わせの記録 | 前年同期と比較 |
| 担当者が代わった | 営業の記録 | 交代の連絡の有無 |
| 見積もりの依頼が減った | 見積もりの記録 | 前年同期と比較 |
兆候を自動で拾う
販売管理のデータから、発注間隔が前年の1.5倍を超えた顧客を抽出します。
この一覧を月次で営業に渡します。
仕組みとしては単純ですが、気づくのが数か月早くなります。
減った理由を聞ける関係を持つ
発注が減った理由を聞ける相手がいるかどうかで、対応の速さが変わります。購買だけでなく、設計側にも接点を持っておく必要があります。
更新の周期を、獲得の機会として扱う
設備には更新の時期があります。
その時期の数年前から接触を持つかどうかで、候補に入れるかが決まります。
設備の更新は、新規の獲得機会でもあり、既存の維持の場面でもあります。
どちらの立場でも、周期を把握しているかが効きます。
更新の判断は、故障の前から始まる
設備の更新は、壊れてから検討されるとは限りません。
生産量の変化、省人化の要請、部品の供給終了。
これらのきっかけで、計画的に検討されます。
他社の設備を使っている相手にどう接触するか
競合の設備を使っている企業は、更新の時期に候補を探します。
その時期に自社の情報が見つかる状態にしておきます。
更新の検討は、まず情報収集から始まります。
更新の時期に届けたい情報を、項目ごとに見ていきます。
既存設備からの入れ替えの考え方については、検討のどの段階で見られるかは初期、形式は解説の記事。
他社製からの切り替え時の注意点については、検討のどの段階で見られるかは初期、形式は解説の記事。
導入時に必要な工事や設置の条件については、検討のどの段階で見られるかは中期、形式は技術資料。
既存の周辺設備との接続については、検討のどの段階で見られるかは中期、形式は仕様の資料。
更新後の保守の体制については、検討のどの段階で見られるかは後期、形式は営業資料。
概算の投資額の考え方については、検討のどの段階で見られるかは中期、形式は価格の考え方。
自社の設備の更新時期を把握する
自社が納入した設備の台帳があれば、更新の時期が予測できます。
その時期の1年前から接触を増やします。
既存顧客の更新を他社に取られるのは、接触が途切れていたときに起きます。
保守の接点を、営業の機会にする
保守で訪問する人が、更新の兆候を最初に知ります。その情報が営業に伝わる仕組みがあるかどうかで、機会を拾えるかが変わります。
LTVを使うときに、間違えやすいこと
高いLTVを前提に獲得へ投資すると、想定より早く取引が終わったときに回収できません。
上限は、実績の平均ではなく下限に近い値で置きます。
LTVから獲得の上限を出す計算は、前提が崩れると成立しません。
平均を使うことの危うさ
継続期間の平均が5年でも、半分の顧客は3年で終わっているかもしれません。
平均で上限を決めると、短い顧客では赤字になります。
分布を見て、下位側の値も確認します。
LTVの計算で確認する前提を、項目ごとに見ていきます。
継続期間については、崩れる場面は顧客の製品が早く終わる、確認の方法は品番ごとの生産期間の分布。
年間の発注額については、崩れる場面は生産量が減る、確認の方法は過去3年の推移。
粗利率については、崩れる場面は原材料費が上がる、確認の方法は原価の変動幅。
消耗品の継続については、崩れる場面は汎用品に切り替えられる、確認の方法は自社製の使用比率。
保守契約の継続については、崩れる場面は契約更新されない、確認の方法は更新率の実績。
顧客自体の存続については、崩れる場面は事業の撤退や統合、確認の方法は業界の動向。
原価の変動をどう織り込むか
原材料費や為替の変動で、粗利率が変わります。
5年分の粗利を前提にした投資は、この変動の影響を受けます。
粗利率を低めに見積もって計算します。
上限いっぱいまで使わない
計算した上限は、回収できる限界の金額です。
その金額を使うと、利益はゼロです。
実際に使うのは、その半分程度にとどめる判断が多くなります。
新規と既存で、上限を分ける
既存顧客の別用途への展開は、獲得の費用が新規より小さくなります。同じ上限を使うと、既存への投資が過大になります。新規獲得と既存の拡大で、別の上限を持ちます。
既存顧客からの拡大を、どう仕組みにするか
横展開の機会は、営業の記憶の中にあって共有されていないことが多くなります。
用途と部署の一覧を作ると、空白が見えます。
既存顧客からの売上を増やすのは、新規獲得より確率が高い取り組みです。
それでも進まないのは、機会が可視化されていないからです。
顧客ごとの取引の地図を作る
その企業のどの工場の、どの製品に、自社のどの品番が使われているか。
これを一覧にすると、使われていない箇所が見えます。
そこが展開の候補になります。
横展開の機会の見つけ方を、項目ごとに見ていきます。
取引のある部署と、ない部署を並べるについては、必要なデータは納入先の記録、分かることは接点のない部署。
使われている製品群と、ない製品群を並べるについては、必要なデータは品番別の出荷、分かることは提案していない製品。
同業他社での用途と比較するについては、必要なデータは業種別の用途データ、分かることは未提案の用途。
サイトの閲覧履歴と取引を照合するについては、必要なデータは閲覧の記録、分かることは関心のある領域。
問い合わせの記録を見るについては、必要なデータは問い合わせの履歴、分かることは既に関心が示された箇所。
保守の記録を見るについては、必要なデータは保守の訪問記録、分かることは現場で見えている課題。
サイトの閲覧履歴が使える場面
既存顧客が自社サイトの別の製品ページを見ていることがあります。
これは、営業が知らない需要が現れている状態です。
月次で既存顧客の閲覧を営業に共有する形を作ります。
展開の提案は、既存の担当者を通す
別の部署に直接接触すると、既存の担当者との関係が悪くなることがあります。紹介を依頼する形を基本にします。この手順を飛ばすと、既存の取引まで危うくなります。
継続の設計に、どこから着手するか
継続期間の実績を出すことからです。
何年続いているかが分からないと、獲得の上限も維持の優先度も決められません。
LTVの議論は、データの整理から始まります。
販売管理のデータに必要なものが入っていることが多く、集計するだけで済む場合もあります。
継続の設計を進める作業の並びを、項目ごとに見ていきます。
1については、やることは顧客ごとの取引開始年と直近の取引年を出す、関わる部門は経理・営業、期間の目安は2週間。
2については、やることは継続期間の分布を上位中位下位で出す、関わる部門はマーケティング、期間の目安は1週間。
3については、やることは売上を一回性と継続性に分類する、関わる部門は経理・営業、期間の目安は2週間。
4については、やることは粗利率を含めた継続期間中の金額を出す、関わる部門は経理、期間の目安は2週間。
5については、やることは獲得にかけられる上限を顧客区分ごとに決める、関わる部門は経営、期間の目安は3週間。
6については、やることは発注間隔が延びた顧客を抽出する仕組みを作る、関わる部門は情報システム、期間の目安は1か月。
データが揃わない場合
品番ごとの継続が追えない会社もあります。
その場合は、金額の大きい上位20社だけを手作業で調べます。
全体の傾向は、この20社から推定できます。
見る数字を決める
数字は説明のための仮の値です。
上位20社の平均継続期間が7年、中位が4年、下位が2年だとします。
獲得の上限を平均の4.3年で計算すると、下位の顧客では回収できません。
中位の4年を基準にして、上振れを利益として扱う形が安全になります。
継続の状態を確認する数字を、項目ごとに見ていきます。
顧客あたりの年間粗利については、見る頻度は四半期、何が分かるかは単価の推移。
継続期間の分布については、見る頻度は年次、何が分かるかはLTVの前提の確認。
発注間隔が延びた顧客の数については、見る頻度は月次、何が分かるかは離れの兆候。
保守契約の更新率については、見る頻度は四半期、何が分かるかは継続の担保の状況。
既存顧客の新規品番の採用件数については、見る頻度は四半期、何が分かるかは横展開の進捗。
更新時期を迎える設備の台数については、見る頻度は半期、何が分かるかは機会の把握。
兆候の一覧を、営業の動線に置く
抽出した一覧を、営業が見る場所に置きます。
別のファイルにすると見られません。
週次の営業会議の資料に1枚加える形が続きます。
年に一度、前提を見直す
原価も生産量も変わります。
獲得の上限は、年に一度は計算し直します。
継続の見方で判断に迷う場合は、無料相談で取引の推移を一緒に整理するところから始められます。獲得と維持の配分ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
製造業でもLTVという考え方は使えますか
使えます。図面への採用や消耗品と保守部品の継続が、事実上の継続収入になります。継続期間と年間の粗利が分かれば、獲得にかけられる金額の上限を出せます。
獲得の上限はどう計算しますか
継続期間中の粗利の合計から維持にかかる費用を引き、その一部を配分します。平均ではなく中位の継続期間を基準に置くと、短く終わった顧客でも回収できます。
取引が細っているのに気づけません
発注の間隔が前年の1.5倍を超えた顧客を販売管理のデータから抽出して、月次で営業に渡してください。仕組みは単純ですが、気づくのが数か月早くなります。
設備の更新の機会をどう捉えますか
自社が納入した設備の台帳から更新時期を予測し、1年前から接触を増やします。他社製を使っている企業には、入れ替えの考え方を解説する情報を検索で見つかる状態にしておきます。
既存顧客からの横展開が進みません
どの部署のどの製品に自社のどの品番が使われているかを一覧にすると、空白が見えます。別部署への接触は、既存の担当者からの紹介という手順を通してください。
まとめ
- 図面や仕様に組み込まれると、その製品が続く限り発注が続きます。一度の採用で数年分の売上が決まるため、初回の獲得にかけられる金額が変わります
- 同じ顧客からの売上でも、性質が違います。分けずに合計すると、獲得にいくらかけられるかの判断ができません
- 継続期間中の粗利の合計から逆算します。初回の取引額で判断すると、投資できる金額を小さく見積もることになります
- 製造業の取引は、解約という形では終わりません。発注が徐々に減り、気づいたときには他社に切り替わっています
- 設備には更新の時期があります。その時期の数年前から接触を持つかどうかで、候補に入れるかが決まります
- 高いLTVを前提に獲得へ投資すると、想定より早く取引が終わったときに回収できません。上限は、実績の平均ではなく下限に近い値で置きます
- 横展開の機会は、営業の記憶の中にあって共有されていないことが多くなります。用途と部署の一覧を作ると、空白が見えます
- 継続期間の実績を出すことからです。何年続いているかが分からないと、獲得の上限も維持の優先度も決められません