製造業のインハウス化の判断|内製と外注の分け方

広告の運用は外に出せますが、技術情報は社内でしか作れません。
どちらを内製するかの判断は、この非対称から始まります。
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目次
目次
- 製造業の内製化は、運用ではなくコンテンツから考える
- 外から買えるものと、買えないもの
- 内製化の動機を、正しく整理する
- 公表されている動機
- 製造業で内製化が止まる場所
- 公表されている障壁
- どこまでを社内に持つかの線引き
- 3つの層に分ける
- 社内に人を置くときの、育て方
- 誰を選ぶか
- 外部に残す領域を、どう決めるか
- 変化が速い領域
- 内製化の判断で、見落とされやすいこと
- 兼務の限界
- 内外の分け直しを、どう進めるか
- 棚卸しで分かること
- よくある質問
- まとめ
広告の運用は外に出せますが、技術情報は社内でしか作れません。
どちらを内製するかの判断は、この非対称から始まります。
製造業の内製化は、運用ではなくコンテンツから考える
広告の運用は外に出せますが、技術情報は社内でしか作れません。
どちらを内製するかの判断は、この非対称から始まります。
インハウス化の議論は、広告の運用を社内に移す話として始まることが多くなります。
製造業では、内製すべき対象の優先順位が違います。
外から買えるものと、買えないもの
媒体の操作、入札の調整、レポートの作成。
これらは市場に人材がいて、外から調達できます。
自社製品が何に使われ、どの条件で選ばれ、何ができないか。
これは社内にしかありません。
順序を逆にすると、詰まる
運用を内製しても、コンテンツが作れなければ配信するものがありません。
コンテンツが内製できれば、運用は外に出しても成果が出ます。
業務の性質と、内製の優先度
| 業務 | 外部から調達できるか | 内製の優先度 |
|---|---|---|
| 技術的なコンテンツの企画と監修 | できない | 高い |
| 自社製品の情報の整備 | できない | 高い |
| 問い合わせへの技術的な回答 | できない | 高い |
| 対象とする顧客層の決定 | できない | 高い |
| 広告の日々の運用 | できる | 低い |
| 広告文の制作 | できる | 低い |
| サイトの制作 | できる | 低い |
| データの集計と可視化 | できる | 中くらい |
何を内製するかの問いに置き換える
すべてを内製するか外注するかではありません。どの業務を社内に持つかの配分の問題です。
内製化の動機を、正しく整理する
費用の削減を動機にすると、人件費を含めた計算で成立しないことがあります。
知見の蓄積を動機にするほうが、判断が安定します。
内製化を検討する理由は、いくつかに分かれます。
理由によって、進め方も判断の基準も変わります。
公表されている動機
Testifyが2026年5月に行った調査では、全面委託をしている企業の8割超が1年以内のインハウス化を計画または検討していました。
決定または予定が52.9%、積極検討が32.8%です。
動機はノウハウの蓄積が56.7%、コスト削減が46.7%でした。
費用の削減が動機の場合
外部への支払いがなくなる代わりに、人件費が発生します。
経験者を採用する場合、人件費が委託費を上回ることがあります。
既存の人員が兼務する場合、その人の他の業務が止まります。
内製化の動機と、判断の基準
| 動機 | 判断の基準 | 注意点 |
|---|---|---|
| 費用の削減 | 人件費を含めた総額で比較 | 採用と教育の費用を入れる |
| 知見の蓄積 | 社内に残る情報の量 | 時間がかかる |
| 判断の速さ | 意思決定から実行までの日数 | 運用の質とは別 |
| 商材理解の深さ | 説明の往復の回数 | 外部でも改善できる |
| 情報の機密の保持 | 外部に出せない情報の量 | 契約で対応できる場合がある |
| 事業への理解の共有 | 社内での議論の質 | 組織の設計の問題 |
知見の蓄積が動機の場合
内製化しなくても、知見を社内に残す方法はあります。
外部の運用の内容を記録し、判断の理由を残す形です。
内製化が唯一の手段ではありません。
動機を1つに決める
複数の動機を同時に満たそうとすると、判断の基準が定まりません。何を最優先にするかを先に決めます。
製造業で内製化が止まる場所
人材の確保と、媒体の変化への追随の2つです。
産業財の経験者は市場に少なく、未経験から育てる期間が要ります。
内製化を決めても、進まない理由には共通したものがあります。
公表されている障壁
Testifyの調査では、内製化の障壁として教育の時間と知見の不足が44.8%、媒体のアップデートへの追随が困難が40.3%、人材の採用が36.7%でした。
製造業に固有の事情
産業財のマーケティング経験者は、消費財と比べて市場に少なくなります。
消費財の経験者を採用すると、検討期間や商社の存在といった前提の違いに戸惑います。
社内から出す場合、デジタルの知識をゼロから学ぶことになります。
内製化の障壁と、製造業での現れ方
| 障壁 | 一般的な形 | 製造業での現れ方 |
|---|---|---|
| 人材の採用 | 経験者が高額 | 産業財の経験者が少ない |
| 教育の時間 | 習得に半年 | 製品知識と両立で1年以上 |
| 媒体の変化への追随 | 情報収集の負担 | 1人では追いきれない |
| 体制の維持 | 退職で知見が消える | 少人数のため影響が大きい |
| 繁忙期の対応 | 他業務との両立 | 展示会の時期に止まる |
| 判断の基準 | 過去の経験がない | 失敗の許容が必要 |
媒体の変化の速さ
2025年から2026年にかけて、媒体の側で大きな変更が続いています。
Googleは2025年5月6日にAI Max for Search campaignsを発表し、自動作成アセットとキャンペーンレベルの部分一致は2026年9月に自動アップグレードされます。
DSAは2027年2月に延期されましたが、2026年9月以降は新規のDSAキャンペーンが作成できません。
LINEヤフーは2025年9月25日に統合を発表し、2026年4月1日にリリースされています。
基盤はYahoo!広告ディスプレイ広告で、LINE広告のみを利用していた企業はYahoo!計測タグの新規設置が必要になります。
この量の変化を、1人で追い続けるのは難しくなります。
どこまでを社内に持つかの線引き
判断と、技術的な内容の監修を社内に持ちます。
操作と制作は外に出しても、事業の判断は社内に残る形が現実的です。
全部を内製するか、全部を委託するかの二択にしないことが、実務的な出発点になります。
3つの層に分ける
事業の判断の層。
企画と監修の層。
実行の層。
この3つに分けると、どこを持つべきかが見えます。
3つの層と、担い手の配置
| 層 | 含まれる業務 | 担い手 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 事業の判断 | 対象顧客、予算、獲得の上限 | 社内 | 事業の責任 |
| 企画と監修 | 訴求の決定、技術内容の確認 | 社内 | 製品知識が必要 |
| 実行 | 運用、制作、集計 | 外部でよい | 技術として調達できる |
| 問い合わせ対応 | 一次回答 | 社内 | 技術的な回答が必要 |
| データの解釈 | 数字から次を決める | 社内 | 事業の文脈が必要 |
| 媒体の変化の追随 | 新機能の評価 | 外部でよい | 情報量が必要 |
実行を外に出すときの条件
外に出しても、何をやっているかは社内で把握します。
記録を残す形を契約に入れます。
把握していないと、担当が変わったときに何も残りません。
段階的に移す
いきなり全部を移すと、成果が落ちます。1つの製品群の運用から社内に移し、やり方が固まってから広げます。
社内に人を置くときの、育て方
製品知識のある人にデジタルを教えるほうが、逆より早く進みます。
教える相手は、外部の委託先にしてもらう形が取れます。
人材の確保が障壁になるなら、育てる方法を設計します。
誰を選ぶか
技術営業、営業企画、設計からの異動。
製品と顧客を知っている人が候補になります。
何を教えるか
媒体の操作は、外部の委託先に教えてもらう形が取れます。
契約の中に、社内の担当者への教育の時間を入れます。
月に数時間の同席と説明でも、半年で基礎は身につきます。
育成の進め方を、項目ごとに見ていきます。
1か月目から3か月目については、やることは運用の同席と説明を受ける、外部の関わり方は委託先が説明する。
4か月目から6か月目については、やることは1つの製品群の運用を担当する、外部の関わり方は委託先が確認する。
7か月目から12か月目については、やることは複数の製品群を担当する、外部の関わり方は委託先は相談役。
2年目については、やることは判断と企画を担う、外部の関わり方は実行の一部を委託。
教育を契約に入れる
委託先にとって、社内の担当者を育てることは委託の縮小につながります。
そのままでは協力が得られません。
教育の対価を契約に含めるか、委託の範囲を別の領域に移す前提で合意します。
1人体制の危うさ
担当者が1人だと、退職や異動で知見が消えます。判断の理由を記録に残す習慣を作ります。記録があれば、引き継ぎの期間が短くなります。
外部に残す領域を、どう決めるか
変化が速い領域と、量の要る作業を外に残します。
社内で追い続けられない部分を無理に持つと、質が落ちます。
内製化を進めても、外部に残す領域はあります。
変化が速い領域
媒体の仕様変更、新しい配信の仕組み、計測の要件の変化。
これらを1人で追い続けるのは困難です。
2026年6月15日より、GA4では広告データの共有の可否が同意モードのad_storageのみで決まる形になっています。
2025年10月17日には、GoogleがPrivacy Sandbox関連技術の大半を終了すると発表しました。
こうした変更を把握し続ける必要があります。
外部に残す判断の基準を、項目ごとに見ていきます。
媒体の仕様変更への対応については、外部に残す理由は情報量と検証の速さ、社内で持つ場合の条件は複数人の体制がある。
新しい配信手法の検証については、外部に残す理由は失敗の許容と知見、社内で持つ場合の条件は試す予算の余力がある。
計測と分析の仕組みの構築については、外部に残す理由は専門性が高い、社内で持つ場合の条件は専任の担当がいる。
制作の量産については、外部に残す理由は人手が要る、社内で持つ場合の条件は制作の人員がいる。
繁忙期の増員については、外部に残す理由は一時的な稼働、社内で持つ場合の条件は社内で吸収できない。
海外向けの対応については、外部に残す理由は言語と市場の知識、社内で持つ場合の条件は現地の体制がある。
外部との関係を変える
内製化しても、委託先との関係を切る必要はありません。
実行の委託から、相談と検証の委託に変えます。
知見を得る相手として残す形です。
費用の総額は下がらないことがある
実行を内製化しても、人件費と相談の費用で総額が同じになることがあります。それでも判断が速くなり知見が残るなら、目的は達成されています。費用だけで評価しない合意を、開始時に取ります。
内製化の判断で、見落とされやすいこと
繁忙期に運用が止まることが、最も起きやすい問題です。
展示会や決算の時期に他の業務が重なると、広告が放置されます。
内製化した後に起きる問題には、事前に想定できるものがあります。
兼務の限界
マーケティングの担当者が、展示会の準備や資料の制作を兼務していることがあります。
展示会の直前の1か月は、他の業務が止まります。
その間、広告は放置されます。
内製化の後に起きる問題と、備えを、項目ごとに見ていきます。
繁忙期に運用が止まるについては、原因は兼務による業務の集中、備えは一部を外部に残す。
担当者の退職で知見が消えるについては、原因は1人体制、備えは記録を残す習慣。
媒体の変化に追随できないについては、原因は情報収集の時間がない、備えは相談先を持つ。
改善が止まるについては、原因は日々の運用で手一杯、備えは定期的な外部の点検。
判断が保守的になるについては、原因は失敗を避ける、備えは試す枠を予算に持つ。
社内での評価が下がるについては、原因は成果が見えにくい、備えは報告の形を決める。
外部の点検を年に数回入れる
内製化した後も、年に2回程度は外部に運用を見てもらう形が取れます。
社内だけで続けると、気づかない偏りが生まれます。
外部に相談するときの確認
内製化の支援を提案する会社もあります。
その場合、支援の終わりをどこに置くかを確認します。
支援が終わらない設計になっている提案は、内製化になりません。
戻す判断も選択肢に残す
内製化してうまくいかない場合、外部に戻す判断も選択肢です。一度決めたら戻せないという前提にすると、問題が長引きます。
内外の分け直しを、どう進めるか
いまの業務の棚卸しからです。
何にどれだけ時間がかかっているかが分からないと、移す範囲が決められません。
内製化の議論は、方針の決定から始めると根拠がありません。
業務の量から始めます。
内外の分担を見直す作業の並びを、項目ごとに見ていきます。
1については、やることは委託している業務を項目ごとに書き出す、関わる部門はマーケティング、期間の目安は2週間。
2については、やることはそれぞれの月あたりの費用と工数を出す、関わる部門はマーケティング・経理、期間の目安は2週間。
3については、やることは社内でしかできない業務を特定する、関わる部門はマーケティング・技術、期間の目安は2週間。
4については、やることは内製化の動機を1つに決める、関わる部門は経営、期間の目安は2週間。
5については、やることは移す業務を1つ選び、教育の計画を作る、関わる部門は経営・マーケティング、期間の目安は1か月。
6については、やることは委託先と教育の条件を交渉する、関わる部門はマーケティング、期間の目安は1か月。
棚卸しで分かること
委託費の内訳が、運用の費用と制作の費用に分かれていることが見えます。
制作の費用が大半を占める場合、内製化しても運用費しか減りません。
この確認をしないと、削減額の見込みを誤ります。
見る数字を決める
数字は説明のための仮の値です。
月の委託費が80万円で、うち運用が40万円、制作が40万円だとします。
運用を内製化した場合、削減できるのは40万円です。
一方で、社内の担当者の人件費を月50万円とし、その人が稼働の半分をこの業務に使うなら25万円です。
教育の期間の6か月は、委託費と人件費が両方かかります。
この計算を先に出しておくと、判断が現実的になります。
内製化の進み具合を見る数字を、項目ごとに見ていきます。
委託費と人件費の合計については、見る頻度は四半期、何が分かるかは総額の変化。
社内で判断した件数については、見る頻度は四半期、何が分かるかは判断の移行。
媒体の変更への対応の遅れについては、見る頻度は四半期、何が分かるかは追随の状況。
繁忙期の運用の停止日数については、見る頻度は半期、何が分かるかは兼務の限界。
記録として残した判断の件数については、見る頻度は四半期、何が分かるかは知見の蓄積。
外部への相談の頻度については、見る頻度は四半期、何が分かるかは依存の度合い。
判断の記録を数える
何件の判断を社内で行ったかを数えます。
内製化の本質は、操作ではなく判断が社内に移ることです。
2年の計画で描く
1年目に1つの製品群、2年目に範囲を広げる。
この速度が、製造業の人員規模では現実的になります。
内製と外注の分け方で判断に迷う場合は、無料相談で現状の業務量を見てもらうところから始められます。体制の組み方ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
製造業は何から内製化すべきですか
広告の運用より先に、技術的なコンテンツの企画と監修です。運用は外から調達できますが、自社製品が何に使われどの条件で選ばれるかは社内にしかありません。
内製化で費用は下がりますか
委託費の内訳を確認してください。制作の費用が大半を占める場合、運用を内製化しても減るのは運用費だけです。人件費と教育の期間の重複も計算に入れます。
産業財の経験者が採用できません
社内の技術営業や営業企画から出して、デジタルの知識を外部の委託先に教えてもらう形が取れます。教育の時間を契約に含めるか、委託の範囲を移す前提で合意します。
媒体の変化に社内で追いつけません
変化の速い領域は外部に残してください。内製化は全部か無かではなく、判断と技術的な監修を社内に持ち、実行と情報収集を外に残す配分で成立します。
内製化した後に運用が止まります
展示会や決算の時期に他の業務が重なることが原因です。一部を外部に残し、年に2回程度は外部に運用を点検してもらう形にすると、放置の期間が減ります。
まとめ
- 広告の運用は外に出せますが、技術情報は社内でしか作れません。どちらを内製するかの判断は、この非対称から始まります
- 費用の削減を動機にすると、人件費を含めた計算で成立しないことがあります。知見の蓄積を動機にするほうが、判断が安定します
- 人材の確保と、媒体の変化への追随の2つです。産業財の経験者は市場に少なく、未経験から育てる期間が要ります
- 判断と、技術的な内容の監修を社内に持ちます。操作と制作は外に出しても、事業の判断は社内に残る形が現実的です
- 製品知識のある人にデジタルを教えるほうが、逆より早く進みます。教える相手は、外部の委託先にしてもらう形が取れます
- 変化が速い領域と、量の要る作業を外に残します。社内で追い続けられない部分を無理に持つと、質が落ちます
- 繁忙期に運用が止まることが、最も起きやすい問題です。展示会や決算の時期に他の業務が重なると、広告が放置されます
- いまの業務の棚卸しからです。何にどれだけ時間がかかっているかが分からないと、移す範囲が決められません