
一人の求職者から得られる売上と、一社の求人企業から得られる売上は、性質が違います。
一つの数字に合算すると、獲得の上限を誤ります。
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目次
目次
- 人材紹介のLTVは、求職者側と企業側で別物になる
- 一回性の売上が積み上がる構造
- 求職者一人からの売上は、一度で終わるとは限らない
- 再転職での再利用
- 求人企業一社からの売上が、事業の安定を決める
- 企業側のLTVを決める三つの要素
- 返戻は、この事業における解約にあたる
- 返戻率を、チャネルごとに出す
- 二つのLTVから、獲得の上限をどう出すか
- 上限を出す手順
- 取引が止まる理由を、企業側と求職者側で分けて見る
- 企業側が止まる理由
- LTVを伸ばす投資と、獲得の投資の配分
- 既存からの決定の割合を把握する
- LTVの計算を、どこから始めるか
- 名寄せは、完璧を目指さない
- よくある質問
- まとめ
一人の求職者から得られる売上と、一社の求人企業から得られる売上は、性質が違います。
一つの数字に合算すると、獲得の上限を誤ります。
人材紹介のLTVは、求職者側と企業側で別物になる
一人の求職者から得られる売上と、一社の求人企業から得られる売上は、性質が違います。
一つの数字に合算すると、獲得の上限を誤ります。
継続課金の事業では、一つの顧客から毎月の売上が立ちます。
人材紹介は違います。
売上は入社が成立した一件ごとに立ち、その後は自動的に続きません。
一回性の売上が積み上がる構造
一人の求職者が入社すれば、そこで一件の売上が立ちます。
同じ人が再び転職するまで、次の売上はありません。
一方、求人企業は採用を繰り返すので、同じ取引先から複数の売上が立ちます。
二つのLTVの違い
| 対象 | 売上の発生 | 繰り返しの間隔 | 事業への効き方 |
|---|---|---|---|
| 求職者 | 入社一件ごと | 数年単位 | 獲得単価の上限を決める |
| 求人企業 | 採用一件ごと | 年に複数回もある | 売上の安定を決める |
| 紹介経由の求職者 | 入社一件ごと | 不定期 | 獲得費用がほぼかからない |
| 再利用の求職者 | 入社一件ごと | 数年単位 | 獲得費用がほぼかからない |
どちらのLTVを使うかで、判断が変わる
求職者の獲得単価を決めるときは、求職者側のLTVを使います。
企業開拓の費用を決めるときは、企業側のLTVを使います。
混ぜて計算すると、どちらの上限も実態からずれます。
両方を見ないと、片側に寄る
求職者側だけを見ると、求人が足りなくなっても気づきません。企業側だけを見ると、推薦できる人がいない状態が続きます。二つを並べて置くことが前提になります。
求職者一人からの売上は、一度で終わるとは限らない
再転職での再利用と、知人への紹介があります。
この二つを勘定に入れるかどうかで、許容できる獲得単価が変わります。
一件の入社で関係が終わると考えると、獲得単価の上限は一件の粗利で決まります。
実際には、その先に二つの売上の可能性があります。
再転職での再利用
一度利用した人が、数年後に再び転職するときに同じサービスを使うことがあります。
このときの獲得費用はほとんどかかりません。
再利用の割合を実績から出せば、LTVに加算できます。
知人への紹介
面談の体験が良ければ、同僚や知人に伝わります。
この経路からの登録は、費用がかからないうえに決定率が高い傾向があります。
経路として記録しておかないと、存在が数字に出ません。
求職者一人あたりのLTVを構成する要素
| 要素 | 発生の仕方 | 記録の方法 |
|---|---|---|
| 初回の入社決定 | 獲得から数か月後 | 通常の管理で記録される |
| 再転職での再利用 | 数年後 | 同一人物の判別が必要 |
| 知人への紹介 | 不定期 | 登録時の経路入力 |
| 転職しなかった場合の紹介 | 不定期 | 同上 |
| 求人企業側としての接点 | 転職先で採用担当になる場合 | 企業側の記録と突合 |
転職先で採用担当になる経路
紹介した人が転職先で採用の担当になることがあります。
そこから求人の依頼が来れば、企業側の売上につながります。
この経路は記録されないことが多く、意識して残す必要があります。
数字は説明のための仮の値です。一件あたりの粗利が七十五万円、再利用率が一割、紹介による追加の決定が一件あたり〇・一件なら、一人あたりのLTVはおよそ九十万円になります。
求人企業一社からの売上が、事業の安定を決める
一社が年に何件採用するかで、売上の読みやすさが変わります。
初回の一件だけで企業側の獲得を評価すると、継続する取引先を逃します。
求人企業との取引は、一度始まると複数年にわたることがあります。
採用計画がある限り、依頼は繰り返されます。
企業側のLTVを決める三つの要素
年間の採用件数。
取引が続く年数。
一件あたりの手数料の水準。
この三つを掛け合わせた額が、一社の価値になります。
求人企業を分類したときの、売上への効き方
| 分類 | 年間の決定数 | 取引の継続性 | 営業の掛け方 |
|---|---|---|---|
| 継続的に採用する大口 | 多い | 長い | 専任を置く |
| 定期的に採用する中堅 | 中くらい | 中くらい | 定期的に接触する |
| 不定期に採用する | 少ない | 短い | 依頼が来たら対応する |
| 一度だけの取引 | 一件 | なし | 獲得費用を抑える |
大口に偏ると、リスクが集中する
数社で売上の大半を占める状態は、安定しているようで脆くなります。
その会社の採用計画が止まれば、売上が一気に落ちます。
上位数社の構成比を毎期確認します。
企業側の獲得費用は、年間の決定数で割る
一件目の決定だけで獲得単価を計算すると、実態より高く見えます。初年度の決定数、できれば三年分で割り直します。この計算をすると、企業側への投資の余地が見えてきます。
返戻は、この事業における解約にあたる
入社後の早期離職で売上が戻ることがあります。
継続課金の解約と同じ扱いで、率を測って管理します。
人材紹介の契約には、入社後の一定期間内に退職した場合の取り扱いが定められているのが通例です。
内容は契約ごとに異なりますが、売上が戻る可能性があるという構造は共通しています。
返戻率を、チャネルごとに出す
どの経路から来た求職者が定着しやすいかは、実績を取れば分かります。
獲得単価だけで比べると、定着しにくい経路が安く見えます。
返戻を反映した実質の単価で比べ直します。
返戻を反映した単価の計算
| 項目 | 計算 | 意味 |
|---|---|---|
| 名目の決定数 | 期間内に入社した件数 | そのままの件数 |
| 返戻件数 | 期間内に返戻となった件数 | 戻った分 |
| 実質の決定数 | 名目から返戻を引いた件数 | 評価に使う件数 |
| 実質の獲得単価 | 広告費 ÷ 実質の決定数 | チャネル比較に使う |
| 実質のLTV | LTV × 定着率 | 上限の計算に使う |
返戻の原因を二つに分ける
条件の伝わり方が原因なら、集客と面談の側に手が入ります。
配属や業務内容が原因なら、求人企業側の話になります。
切り分けないまま広告を止めても、率は変わりません。
早期離職の兆候を、入社後に拾う
入社後の一定期間、定期的に接点を持つ運用を置いている会社があります。これは返戻の防止であると同時に、再利用と紹介の起点にもなります。コストはかかりますが、LTVの両側に効きます。
二つのLTVから、獲得の上限をどう出すか
求職者側と企業側で別々に上限を出します。
それぞれのLTVに投資比率を掛けた額が、許容できる獲得単価です。
獲得の上限は、一件あたりの粗利から出す方法と、LTVから出す方法があります。
一件だけで見ると上限が低くなりすぎるので、LTVから出すほうが実態に近くなります。
上限を出す手順
求職者側と企業側の獲得上限の出し方を、項目ごとに見ていきます。
基準となる売上については、求職者側は初回決定の手数料、企業側は年間の決定数 × 手数料。
差し引く原価については、求職者側は面談と選考支援の人件費、企業側は営業の人件費と提案の費用。
戻りの反映については、求職者側は返戻率を反映、企業側は同じく反映。
繰り返しの反映については、求職者側は再利用率と紹介を加算、企業側は取引継続年数を掛ける。
投資比率については、求職者側は成長段階に応じて決める、企業側は同じ比率でなくてよい。
許容獲得単価については、求職者側は上記を掛け合わせた額、企業側は同じく。
投資比率は、回収期間とセットで決める
LTVの全額を獲得に使えるわけではありません。
何か月で回収したいかを決めると、比率が決まります。
回収期間が長いほど比率を上げられますが、資金繰りへの負担が増えます。
年収帯ごとに上限を分ける
高年収帯の一件と、そうでない一件では手数料の額が違います。
同じ上限を全体に当てると、高年収帯で機会を逃します。
配信の設計も、この区分に合わせます。
上限を超えた配信を、どこまで許すか
新しい職種や地域を試すときは、一時的に上限を超えます。どの程度まで、どの期間まで許容するかを先に決めておきます。決めていないと、試す動き自体が止まります。
取引が止まる理由を、企業側と求職者側で分けて見る
企業側は採用計画の変化か、満足度の低下で止まります。
求職者側は、そもそも転職の頻度が高くありません。
LTVを伸ばすには、止まる理由を知る必要があります。
二つの側で理由がまったく違います。
企業側が止まる理由
採用計画そのものがなくなった場合と、他社に切り替えられた場合があります。
前者は自社では動かせません。
後者は、推薦の精度や対応の速さが原因になります。
求人企業との取引が止まる理由と、打てる手を、項目ごとに見ていきます。
採用計画の縮小については、自社で動かせるかは動かせない、打てる手は再開時期を聞いて接点を残す。
他社への切り替えについては、自社で動かせるかは動かせる、打てる手は推薦の精度と対応速度を上げる。
担当者の異動については、自社で動かせるかは一部動かせる、打てる手は複数の接点を作る。
条件面の不一致については、自社で動かせるかは動かせる、打てる手は提示条件の相談を早める。
早期離職の発生については、自社で動かせるかは動かせる、打てる手は定着の支援を設計する。
求職者側が止まる理由
転職が成立すれば、次の機会まで数年空きます。
これは構造なので、止まるというより間隔が長いだけです。
その間の接点をどう保つかが、再利用率を決めます。
接点の保ち方は、負担の小さいものにする
数年に一度の再利用のために、手厚い接触は割に合いません。職種ごとの市場の動きを伝える程度の、軽い接点にします。再転職を考え始めたときに思い出される状態を作れば十分です。
LTVを伸ばす投資と、獲得の投資の配分
新規の獲得だけに寄せると、返戻と取引終了で目減りします。
既存の取引先と過去の求職者に、一定の枠を残します。
広告予算の議論は、新規の獲得に集中します。
成果が数字に出やすいからです。
ただし、既存の取引先からの決定は獲得費用がかかりません。
既存からの決定の割合を把握する
全決定のうち、既存の取引先から出た件数の割合。
再利用と紹介から出た件数の割合。
この二つを出すと、新規獲得への依存度が見えます。
決定の出どころと、その費用構造を、項目ごとに見ていきます。
新規の求職者については、獲得費用は高い、安定性は低い、伸ばす手段は広告と検索。
再利用の求職者については、獲得費用はほぼゼロ、安定性は中くらい、伸ばす手段は軽い接点の維持。
紹介の求職者については、獲得費用はほぼゼロ、安定性は低い、伸ばす手段は面談体験の質。
既存取引先の求人については、獲得費用はほぼゼロ、安定性は高い、伸ばす手段は定期的な接触と提案。
新規取引先の求人については、獲得費用は高い、安定性は低い、伸ばす手段は営業と広告。
配分の目安を、四半期ごとに見直す
新規獲得に全額を寄せる時期と、既存の維持に寄せる時期があります。
需給の状態と、上位取引先の構成比で決まります。
固定の比率を決めるより、四半期ごとに判断するほうが実態に合います。
既存への投資は、広告費以外の形になることが多い
定期的な接触、市場情報の提供、定着の支援。これらは人件費や運営の費用として現れます。マーケティングの予算に含めるかどうかを、先に決めておきます。
LTVの計算を、どこから始めるか
同一人物と同一企業を判別できる状態を作るところからです。
判別できないと、再利用も繰り返し発注も数字になりません。
LTVの計算が進まない原因の多くは、データの持ち方にあります。
過去に登録した人が再び登録したとき、同じ人と分からない状態では計算できません。
LTVを計算できる状態にする手順を、項目ごとに見ていきます。
1については、やることは求職者の同一人物判別のルールを決める、期間の目安は二週間。
2については、やることは求人企業の名寄せを行う、期間の目安は三週間。
3については、やることは過去三年の決定を人と企業に紐づける、期間の目安は三週間。
4については、やることは返戻の記録を決定に紐づける、期間の目安は二週間。
5については、やることは求職者側と企業側のLTVを別々に出す、期間の目安は二週間。
6については、やることは年収帯と職種で分けて上限を決める、期間の目安は二週間。
名寄せは、完璧を目指さない
求人企業の名寄せは、支社や部署単位で分かれていることがあります。
どこまでを一社と数えるかを決めて、そのルールで統一します。
精度を追い過ぎると、いつまでも計算が始まりません。
LTVの管理のために定期的に見る数字を、項目ごとに見ていきます。
実質の決定あたり獲得単価については、見る頻度は毎月、判断の内容は上限の範囲に収まっているか。
返戻率については、見る頻度は四半期、判断の内容はチャネル評価を見直すか。
上位取引先の売上構成比については、見る頻度は四半期、判断の内容は依存が集中していないか。
既存からの決定の割合については、見る頻度は四半期、判断の内容は新規獲得への依存度。
再利用と紹介の件数については、見る頻度は半期、判断の内容はLTVの前提が変わっていないか。
LTVは固定の数字ではない
扱う職種や年収帯が変われば、LTVも変わります。
半期に一度は計算し直します。
古い数字で上限を決め続けると、機会を逃すか使いすぎるかのどちらかになります。
上限の根拠を文書にする
なぜこの獲得単価を上限にしたのか。
その根拠を残しておかないと、期ごとに同じ議論を繰り返します。
計算の前提と、見直す条件を一緒に書いておきます。
獲得単価の上限をどこに置くべきか判断が固まらない場合は、無料相談で現在の数字を整理するところから始められます。LTVの設計ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
一回性の成功報酬でもLTVという考え方は使えますか
使えます。求職者側は再転職での再利用と知人への紹介、企業側は繰り返しの発注が続くため、一件だけで見るより実態に近い上限が出せます。
求職者側と企業側のLTVは一つにまとめてよいですか
合算しないでください。売上の発生の仕方も繰り返しの間隔も違うため、一本にすると両方の上限が実態からずれます。求職者の獲得単価には求職者側、企業開拓の費用には企業側を使います。
返戻はLTVにどう反映しますか
継続課金の解約と同じ扱いで率を測り、チャネルごとの実質の決定数と実質の獲得単価を計算し直します。原因が条件の伝わり方か配属かで、手を入れる先が変わります。
求人企業の獲得単価はどう計算しますか
初回の一件だけで割ると実態より高く見えます。初年度の決定数、できれば三年分の決定数で割り直してください。
LTVはどのくらいの頻度で計算し直しますか
半期に一度です。扱う職種や年収帯が変わればLTVも変わるため、古い数字で上限を決め続けると機会を逃すか使いすぎるかのどちらかになります。
まとめ
- 一人の求職者から得られる売上と、一社の求人企業から得られる売上は、性質が違います。一つの数字に合算すると、獲得の上限を誤ります
- 再転職での再利用と、知人への紹介があります。この二つを勘定に入れるかどうかで、許容できる獲得単価が変わります
- 一社が年に何件採用するかで、売上の読みやすさが変わります。初回の一件だけで企業側の獲得を評価すると、継続する取引先を逃します
- 入社後の早期離職で売上が戻ることがあります。継続課金の解約と同じ扱いで、率を測って管理します
- 求職者側と企業側で別々に上限を出します。それぞれのLTVに投資比率を掛けた額が、許容できる獲得単価です
- 企業側は採用計画の変化か、満足度の低下で止まります。求職者側は、そもそも転職の頻度が高くありません
- 新規の獲得だけに寄せると、返戻と取引終了で目減りします。既存の取引先と過去の求職者に、一定の枠を残します
- 同一人物と同一企業を判別できる状態を作るところからです。判別できないと、再利用も繰り返し発注も数字になりません