
同じ人が、数年から数十年のうちに買い、売り、また買う可能性があるからです。
一回性の取引として扱うと、獲得にかけられる金額を実際より低く見積もることになります。
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目次
目次
- 不動産売買で、一回の手数料だけを顧客の価値としてはいけない理由
- 一回性と捉えることで起きる判断の誤り
- 一人の顧客から、何度取引が生まれるのか
- 取引が生まれる経路
- 不動産売買で、取引が途中で消えるのはどの場面か
- 消える場面
- 一回性の手数料に、生涯の価値をどう足すか
- 発生の確からしさで割り引く
- 起きるか分からない再取引を、予算にどこまで織り込むか
- 織り込みの範囲を決める
- 決済が終わったあとの接点を、誰が持つのか
- 会社として持つ接点の形
- 売買の紹介を、設計として生み出すには
- 紹介が生まれる場面
- 不動産売買の生涯価値を設計する手順
- 記録が人の単位になっていない問題
- よくある質問
- まとめ
同じ人が、数年から数十年のうちに買い、売り、また買う可能性があるからです。
一回性の取引として扱うと、獲得にかけられる金額を実際より低く見積もることになります。
不動産売買で、一回の手数料だけを顧客の価値としてはいけない理由
同じ人が、数年から数十年のうちに買い、売り、また買う可能性があるからです。
一回性の取引として扱うと、獲得にかけられる金額を実際より低く見積もることになります。
売買仲介の収益は、成約したときに一度発生します。
継続的に入る収入がないため、一件の手数料がその顧客の価値のすべてに見えます。
しかし実際には、同じ人が複数回の取引の当事者になります。
購入した人は、数年後に住み替えを検討することがあります。
そのときの売却の相談を受けられれば、二度目の手数料が発生します。
さらに次の住まいの購入も担当すれば、三度目になります。
一回性と捉えることで起きる判断の誤り
一件の手数料だけを見て獲得の上限を決めると、その金額は実態より低くなります。
結果として、競合が出せる金額に負けて獲得できなくなります。
一方で、上限を高く見積もりすぎると、回収できないまま費用だけが積み上がります。
不動産売買で一回性の収益だけを見たときの弊害
| 判断 | 一回性で見た場合 | 複数回を織り込んだ場合 |
|---|---|---|
| 獲得の上限 | 低く見積もる | 実態に近づく |
| 引き渡し後の接点 | 費用として削られる | 投資として維持される |
| 紹介の扱い | 偶然の産物 | 設計の対象 |
| 顧客の記録 | 取引が終われば不要 | 次の取引の資産 |
| 店舗の評価 | 当期の手数料のみ | 商圏内の顧客基盤も含む |
期間の長さが、設計を難しくする
住み替えまでの期間は数年から十数年に及びます。この長さは、通常の予算の期間をはるかに超えます。だからこそ、どこまでを織り込むかの線引きが必要になります。
一人の顧客から、何度取引が生まれるのか
住み替え、買い増し、相続にともなう売却、家族や知人の紹介の4つが主な経路です。
このうち紹介だけは、取引の直後から発生する可能性があります。
同じ顧客から生まれる取引には、いくつかの型があります。
型ごとに、発生するまでの期間と、自社が関与できる度合いが違います。
取引が生まれる経路
不動産売買で同じ顧客から生まれる取引の種類
| 経路 | 発生までの期間 | 自社が関与できる度合い |
|---|---|---|
| 住み替えにともなう売却と購入 | 数年から十数年 | 接点があれば高い |
| 二件目以降の購入 | 数年 | 関係の維持で高まる |
| 相続にともなう売却 | 予測できない | 接点があれば相談される |
| 家族や知人の紹介 | 取引の直後から | 満足度で決まる |
| 過去の顧客からの再相談 | 不定 | 記録の有無で決まる |
紹介だけが、短い期間で効く
住み替えや相続は、いつ起きるか分かりません。
一方で紹介は、取引が終わった直後から発生します。
生涯の価値を短い期間で回収するには、紹介の設計が中心になります。
売主と買主で、その後の接点が違う
物件を売って引っ越した売主とは、接点が切れやすくなります。購入した買主とは、その地域に住み続ける限り接点を持ち続けられます。接点の維持の設計は、この違いを踏まえて分けます。
不動産売買で、取引が途中で消えるのはどの場面か
資金の審査、家族の合意、他社への乗り換えの3つが主な場面です。
消えた取引は費用だけが残るため、どこで消えているかの把握が採算の前提になります。
売買では、成約の直前まで進んでから取引が消えることがあります。
このときまでにかけた集客の費用と営業の時間は、回収できません。
どの場面でどれだけ消えているかを把握しないと、採算の計算が合いません。
消える場面
不動産売買で取引が途中で消える場面
| 場面 | 起きること | 自社で動かせるか |
|---|---|---|
| 資金の審査 | 借入の見込みが立たない | 早期の確認で減らせる |
| 家族の合意 | 同居する家族や親の反対 | 関わる人の把握で減らせる |
| 条件の再検討 | 優先順位が変わる | 聞き取りの深さで減らせる |
| 他社への乗り換え | より条件のよい提案を受ける | 対応の速さと内容で減らせる |
| 売主の翻意 | 売却そのものを取りやめる | 動かしにくい |
媒介契約の解除も、同じ性質を持つ
預かった物件が、契約の期間内に売れないまま他社へ移ることがあります。
このときも、販売にかけた費用は回収できません。
価格の設定と販売の活動の記録を残し、解除の理由を集計します。
消えた理由を、獲得の設計に返す
家族の合意で消える件数が多いなら、初回の接客で関わる人を把握する設計に変えます。資金で消える件数が多いなら、資金の確認の順番を前に出します。消えた理由の集計は、集客の入口の改善にも使えます。
一回性の手数料に、生涯の価値をどう足すか
確定した一回目の手数料を基準にし、二回目以降は割り引いて加えます。
将来の取引をそのまま足すと、回収できない金額を上限として設定することになります。
生涯の価値を獲得の上限に反映するとき、将来の取引をどう扱うかが問題になります。
起きるかどうか分からないものを、そのまま足すことはできません。
発生の確からしさで割り引く
生涯の価値を上限に反映する計算
| 要素 | 扱い方 | 根拠 |
|---|---|---|
| 一回目の手数料 | そのまま入れる | 確定している |
| 紹介から生まれた取引 | 実績の割合で入れる | 過去の集計から出せる |
| 再取引 | 実績の割合を大きく割り引いて入れる | 期間が長く不確実 |
| 相続にともなう売却 | 入れない | 予測できない |
| 将来の価格の変動 | 入れない | 断定できない |
実績がないうちは、一回目だけで計算する
紹介や再取引の実績を集計していない段階では、割合が出せません。
その状態で推定の数字を入れると、根拠のない上限になります。
まず記録を取り始め、数字が出てから反映します。
数字は説明のための仮の値です。
一回目の手数料が150万円、過去の実績で顧客の1割から紹介が生まれ、その平均が120万円だとします。
このとき、紹介からの寄与は12万円となり、生涯の価値は162万円になります。
上限を上げたら、回収の期間も長くなる
生涯の価値を織り込んで上限を上げると、その費用の回収には時間がかかります。資金の余裕がない状態でこれを行うと、期の途中で苦しくなります。上限を上げる判断は、回収の期間とあわせて経営と合意します。
起きるか分からない再取引を、予算にどこまで織り込むか
予算の根拠には入れず、上限の議論の材料としてのみ使います。
将来の収入を予算に組み込むと、それが入ってこなかったときに期の途中で立ち行かなくなります。
生涯の価値の考え方は、獲得の上限を判断するための材料です。
期の予算をそのまま膨らませる根拠ではありません。
この区別をしないと、入ってこない収入を前提に費用を使うことになります。
織り込みの範囲を決める
将来の収入の織り込み方を、項目ごとに見ていきます。
期の予算の総額については、将来の収入を入れるかは入れない、理由は入らない可能性がある。
一件あたりの獲得の上限については、将来の収入を入れるかは割り引いて入れる、理由は判断の材料として使う。
店舗や施策の評価については、将来の収入を入れるかは別に集計する、理由は当期の成果と混ぜない。
中期の計画については、将来の収入を入れるかは入れてよい、理由は期間が合う。
資金の計画については、将来の収入を入れるかは入れない、理由は時期が読めない。
当期の成果と、将来の成果を分けて報告する
当期の手数料と、将来につながる接点の数を分けて報告します。
混ぜると、当期の実績が水増しされているように見えます。
分けて示すことで、接点への投資の意味が説明できます。
経営との合意の形
生涯の価値を織り込むという判断は、経営の判断です。どの割合で割り引くか、何を入れて何を入れないか。この前提を文書にして共有しておかないと、期中に議論が蒸し返されます。
決済が終わったあとの接点を、誰が持つのか
営業の担当者に任せると、担当者が変わった時点で切れます。
会社として接点を持つ仕組みを置き、担当者は個別の関係を上乗せする形にします。
引き渡しが終わると、営業の担当者は次の案件へ移ります。
その顧客との接点は、担当者の個人的な関係だけになります。
担当者が退職すると、その顧客との関係は消えます。
会社として持つ接点の形
引き渡し後の接点の持ち方を、項目ごとに見ていきます。
定期的な情報の送付については、担い手は会社の仕組み、向いている相手は全員。
周辺の相場の知らせについては、担い手は会社の仕組み、向いている相手は購入した顧客。
住まいに関する相談の受付については、担い手は会社の窓口、向いている相手は購入した顧客。
担当者からの個別の連絡については、担い手は営業の担当者、向いている相手は関係が深い顧客。
地域の催しへの招待については、担い手は店舗、向いている相手は商圏内に住む顧客。
売主との接点を、どう残すか
物件を売って地域を離れた売主とは、接点が切れやすくなります。
一方で、住み替えの場合は次の住まいの購入で接点が続きます。
売却だけで終わった顧客には、紹介の経路としての接点を残します。
接点の維持を、費用として計上する
引き渡し後の接触には費用がかかります。この費用を当期の集客費として評価すると、効果が見えず削減の対象になります。別の枠に置き、四半期で再取引と紹介の件数を見て評価します。
売買の紹介を、設計として生み出すには
紹介が生まれる場面を特定し、そこで依頼できる形を用意します。
満足度が高ければ自然に紹介が起きるという前提では、件数は増えません。
紹介は、満足した顧客が自発的に行うものと考えられがちです。
実際には、紹介できる状況と、依頼されたという事実の両方が必要です。
どちらかが欠けると、満足していても紹介は生まれません。
紹介が生まれる場面
不動産売買で紹介が生まれる場面と設計を、項目ごとに見ていきます。
引き渡しの直後については、そこで起きることは満足度が最も高い、用意しておくものは依頼の言葉と渡せる資料。
住み始めて落ち着いた頃については、そこで起きることは生活の話題が出る、用意しておくものは連絡の機会。
家族や知人が住まいを探し始めたときについては、そこで起きることは話題に上る、用意しておくものは思い出してもらう接点。
地域の集まりや催しについては、そこで起きることは会話が生まれる、用意しておくものは店舗の存在。
自身の次の相談のときについては、そこで起きることは関係が再開する、用意しておくものは記録から引き出せる状態。
依頼する言葉を、用意しておく
紹介の依頼は、担当者が言いにくいと感じる行為です。
会社として依頼の言葉と渡せる資料を用意すると、実行の障壁が下がります。
用意がないと、依頼は担当者の性格に依存します。
紹介の件数を、記録する
誰からの紹介で誰が来たかを記録します。記録がないと、紹介の実績が集計できず、割合も出せません。生涯の価値の計算に使う数字は、この記録から出てきます。
不動産売買の生涯価値を設計する手順
過去の顧客が再び取引の当事者になった件数を数えるところから始めます。
実績がない状態で計算式だけを作っても、使えません。
生涯の価値の設計は、計算式を作る作業ではなく、実績を集計する作業です。
記録が残っていない場合、そこから作ることになります。
不動産売買の生涯価値を設計する順番を、項目ごとに見ていきます。
1については、やることは過去の成約から、再取引と紹介の件数を数える、期間の目安は4週間。
2については、やることは顧客の記録を、取引の単位から人の単位に組み替える、期間の目安は4週間。
3については、やることは紹介の記録を残す仕組みを作る、期間の目安は2週間。
4については、やることは引き渡し後の接点の形を決める、期間の目安は3週間。
5については、やることは生涯の価値の計算の前提を経営と合意する、期間の目安は3週間。
6については、やることは獲得の上限に反映し、回収の期間を決める、期間の目安は2週間。
記録が人の単位になっていない問題
多くの会社で、記録は取引の単位で残っています。
同じ人が二度目の取引をしても、別の記録として扱われます。
この組み替えが、生涯の価値を測る前提になります。
生涯の価値の状態を測る数字
不動産売買の生涯価値の状態を測る数字を、項目ごとに見ていきます。
過去の顧客からの再相談の件数については、見る頻度は四半期、判断の目安は接点が維持されているか。
紹介から生まれた相談の件数については、見る頻度は四半期、判断の目安は紹介の設計が機能しているか。
紹介の依頼を実行した割合については、見る頻度は毎月、判断の目安は依頼が習慣になっているか。
取引が途中で消えた件数と理由については、見る頻度は毎月、判断の目安はどの場面で失っているか。
引き渡し後の接点の維持率については、見る頻度は四半期、判断の目安は連絡が届いている割合。
一年目は、数字が出ないことを前提にする
再取引の実績は、短い期間では出ません。
最初の一年は、記録が取れている状態を作ることが成果になります。
数字が出るまでは、一回目の手数料だけで上限を計算します。
不動産売買の顧客の価値の見積もりで迷う場合は、無料相談で現状の記録を一緒に整理するところから始められます。獲得の上限ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
一回で終わる取引なのに生涯の価値を考える意味はありますか
あります。同じ人が住み替えや二件目の購入、相続にともなう売却の当事者になり、紹介も生まれます。一回性として扱うと獲得の上限を実際より低く見積もり、競合に負けます。
将来の取引をそのまま獲得の上限に足してよいですか
足せません。確定した一回目の手数料を基準にし、紹介や再取引は過去の実績の割合で割り引いて加えます。相続にともなう売却や将来の価格の変動は入れません。
生涯の価値を予算の総額に織り込んでよいですか
予算の根拠には入れず、一件あたりの獲得の上限を判断する材料としてのみ使ってください。入ってこない可能性のある収入を前提に費用を使うと、期の途中で立ち行かなくなります。
引き渡し後の接点は誰が持つべきですか
会社として持つ仕組みを置き、担当者は個別の関係を上乗せする形にします。担当者だけに任せると、その人が変わった時点で顧客との関係が消えます。
紹介を増やすにはどうすればよいですか
満足度が高ければ自然に生まれるという前提では増えません。紹介が生まれる場面を特定し、依頼の言葉と渡せる資料を会社として用意してください。誰からの紹介かを記録することも必要です。
まとめ
- 同じ人が、数年から数十年のうちに買い、売り、また買う可能性があるからです。一回性の取引として扱うと、獲得にかけられる金額を実際より低く見積もることになります
- 住み替え、買い増し、相続にともなう売却、家族や知人の紹介の4つが主な経路です。このうち紹介だけは、取引の直後から発生する可能性があります
- 資金の審査、家族の合意、他社への乗り換えの3つが主な場面です。消えた取引は費用だけが残るため、どこで消えているかの把握が採算の前提になります
- 確定した一回目の手数料を基準にし、二回目以降は割り引いて加えます。将来の取引をそのまま足すと、回収できない金額を上限として設定することになります
- 予算の根拠には入れず、上限の議論の材料としてのみ使います。将来の収入を予算に組み込むと、それが入ってこなかったときに期の途中で立ち行かなくなります
- 営業の担当者に任せると、担当者が変わった時点で切れます。会社として接点を持つ仕組みを置き、担当者は個別の関係を上乗せする形にします
- 紹介が生まれる場面を特定し、そこで依頼できる形を用意します。満足度が高ければ自然に紹介が起きるという前提では、件数は増えません
- 過去の顧客が再び取引の当事者になった件数を数えるところから始めます。実績がない状態で計算式だけを作っても、使えません