
最初に決めるのは広告媒体ではなく、1件の新規注文を獲得するために最大いくらまで使えるかです。
客単価、粗利率、送料、決済手数料、リピート率を先に計算しないと、売上が増えても利益が残らない状態になります。
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目次
目次
- ECサイトの集客では最初に何を決めるべきですか
- 売価ではなく1注文から残る金額を見る
- モールと自社ECはどちらに集客すべきですか
- モールの手数料だけを見て撤退すると危険です
- 自社ECを立ち上げても客が来ないのはなぜですか
- 検索する人は商品名だけを調べているわけではありません
- EC広告には月いくら使えばよいですか
- 広告費は売上目標ではなく注文数から考えます
- 初回購入を赤字にしてリピートで回収してもよいですか
- 引き上げ率を必ず確認します
- ECサイトでは在庫と広告をどう連動させるべきですか
- 売れる広告を止めなければならないこともあります
- ECサイトの利益を増やすには新規集客以外に何をすべきですか
- リピート率が上がると許容広告費が変わります
- ECサイトでよくある間違った集客施策は何ですか
- SNSのフォロワー数を売上目標にしません
- よくある質問
- まとめ
最初に決めるのは広告媒体ではなく、1件の新規注文を獲得するために最大いくらまで使えるかです。
客単価、粗利率、送料、決済手数料、リピート率を先に計算しないと、売上が増えても利益が残らない状態になります。
ECサイトの集客では最初に何を決めるべきですか
最初に決めるのは広告媒体ではなく、1件の新規注文を獲得するために最大いくらまで使えるかです。
客単価、粗利率、送料、決済手数料、リピート率を先に計算しないと、売上が増えても利益が残らない状態になります。
ECサイトの集客では、Instagramを始める、検索広告を出す、SEO記事を書く、といった施策から考えがちです。
しかしECでは、集客方法を選ぶ前に新規顧客1人を獲得するために使える金額を決める必要があります。
店舗ビジネスと違い、ECは商品原価だけを引けば利益が残るわけではありません。
商品原価に加えて、送料、決済手数料、梱包資材、倉庫費用、出荷作業、返品対応などが注文ごとに発生します。
さらに広告を使う場合は、初回購入時点で利益を出すのか、2回目以降の購入まで含めて広告費を回収するのかによって、許容できる広告費が大きく変わります。
売価ではなく1注文から残る金額を見る
説明のための仮の値として、商品価格が8,000円の商品を考えます。
粗利率が60パーセントなら、商品原価を引いた粗利は4,800円です。
ここから送料700円、決済手数料300円、梱包資材200円、出荷関連費300円がかかるとすると、広告費を除いて残る金額は3,300円です。
この商品で新規注文を1件取るために広告費を5,000円使えば、初回購入だけでは1,700円の赤字です。
売上8,000円に対して広告費5,000円なので、一見すると広告費率が高いという話に見えますが、実際に経営判断で見るべきなのは広告費を含めた注文単位の利益です。
ECではCPAという言葉をよく使います。
CPAとは、1件の購入や申込みを獲得するためにかかった広告費のことです。
CPAだけを下げようとするのではなく、何円までならCPAを許容できるかを商品ごとに決めておく必要があります。
新規注文1件あたりの採算を考える例
| 項目 | 説明のための仮の値 |
|---|---|
| 販売価格 | 8,000円 |
| 商品原価 | 3,200円 |
| 商品粗利 | 4,800円 |
| 送料 | 700円 |
| 決済手数料 | 300円 |
| 梱包資材 | 200円 |
| 出荷関連費 | 300円 |
| 広告費を除いて残る金額 | 3,300円 |
| 許容広告費 | 利益目標やリピート率によって決める |
客単価が同じでも広告に使える金額は違う
同じ客単価1万円のECサイトでも、粗利率30パーセントの商品と70パーセントの商品では広告戦略は変わります。
食品、アパレル、化粧品、家電、雑貨では、粗利構造もリピート頻度も違います。
そのため、EC広告ならCPA5,000円を目指すといった業種横断の基準だけでは判断できません。
さらに、まとめ買いによって客単価を上げられる商品と、基本的に1商品しか購入されない商品でも違います。
送料無料ラインを設ける場合は、客単価が上がる一方で送料負担も増えるため、注文単位の利益まで確認する必要があります。
ECサイトの集客計画では、月の広告予算を先に決めるより、まず1注文に使える金額を決めます。その金額と想定注文数を掛け合わせて、広告予算を決める方が事業の採算とつながります。
モールと自社ECはどちらに集客すべきですか
モールは集客力を借りる場所、自社ECは顧客資産を積み上げる場所として役割を分けるべきです。
どちらか一方に寄せるのではなく、手数料と顧客情報の価値を比べながら販売比率を決めます。
EC事業では、モールに出店するか自社ECを育てるかが大きな判断になります。
モールの利点は、すでに商品を探している利用者がいることです。
検索結果やランキング、セール企画などを通じて、ブランドを知らない人にも商品を見つけてもらえる可能性があります。
その代わり、販売手数料、システム利用料、モール内広告費などがかかります。
また、購入者との接点や顧客情報の扱いにも制約があります。
一方、自社ECは販売手数料を抑えやすく、購入履歴やメールアドレスなどを今後の販売活動に活用できます。
しかし、自社ECを開設しただけでは人は来ません。
検索、SNS、広告、動画、口コミ、既存顧客からの再購入など、自社で入口を作る必要があります。
モールの手数料だけを見て撤退すると危険です
モールでは売上に対して複数の費用が発生します。
売上が増えるほど支払額が増えるため、自社ECに移行したくなる経営者は少なくありません。
ただし、モールから自社ECへ移せば、その分の手数料がすべて利益になるわけではありません。
モールが持っていた集客機能を、自社広告費やコンテンツ制作費で補う必要があるからです。
たとえば説明のための仮の値として、モール経由で1万円の商品が売れ、各種費用として売上の15パーセント相当がかかっていたとします。
単純に考えれば1,500円の負担です。
自社ECに切り替えた結果、新規注文1件を取るために広告費が3,000円かかれば、モールより費用負担が増える可能性もあります。
モールの手数料を高いと感じる場合でも、その手数料のうちいくらが集客機能への対価なのかという視点で見る必要があります。
自社ECの価値は2回目以降に表れます
自社ECの強みは、1回目の注文だけでは判断できません。
顧客との継続的な接点を持てることで、再購入、新商品の案内、セット商品の提案、定期購入への移行などにつなげられます。
初回注文の利益だけならモールの方が良い場合でも、顧客が半年間や1年間で複数回購入するなら、自社ECの顧客情報には経済的な価値があります。
LTVという言葉があります。
LTVとは、1人の顧客が取引期間を通じて企業にもたらす売上や利益の総額を考える指標です。
EC経営では、初回売上よりも顧客単位の利益を見るために使います。
モールと自社ECで異なる経営上の特徴
| 項目 | モール | 自社EC |
|---|---|---|
| 新規集客 | 既存の利用者に接触しやすい | 自社で流入を作る必要がある |
| 販売時の費用 | 販売手数料などが発生しやすい | 決済費用やシステム費用が中心 |
| 顧客情報 | 活用範囲に制約がある | 自社の顧客施策に活用しやすい |
| 価格競争 | 比較されやすい | ブランドの見せ方を設計しやすい |
| 再購入施策 | モールの仕組みに依存しやすい | メールや同梱物などを設計しやすい |
| 集客依存 | モール依存になりやすい | 広告やSNS依存になりやすい |
EC事業を安定させるには、モール対自社ECという二者択一にしない方が現実的です。
新規顧客との出会いはモール、ブランドを知った顧客の再購入は自社ECという役割分担も考えられます。
どの比率が合うかは、商品粗利とリピート率によって変わります。
自社ECを立ち上げても客が来ないのはなぜですか
自社ECには最初から人が集まる仕組みがないからです。
検索需要を取る施策、まだ商品を探していない人に知ってもらう施策、既存顧客を戻す施策を分けて設計する必要があります。
ECサイトを制作すると、公開後は検索やSNSから自然に人が集まると思われることがあります。
実際には、自社ECの立ち上げは店舗で言えば土地も人通りもない場所に店を建てた状態に近いです。
そのため、サイト制作費とは別に集客費が必要です。
EC集客は、大きく分けると今まさに商品を探している人、商品は探していないが悩みや欲求がある人、一度買ったことがある人の3つを別々に考えます。
検索する人は商品名だけを調べているわけではありません
ECのお客様が検索する言葉は、商品名だけではありません。
たとえば日用品ならおすすめ、比較、口コミ、使い方、どこで買えるといった言葉が使われます。
ファッションなら年代、体型、季節、コーデ、サイズ感などが加わります。
食品ならギフト、お取り寄せ、日持ち、常温、無添加など、購入条件そのものが検索されます。
美容商材では成分、使い方、順番、違い、口コミといった情報も調べられます。
自社の商品名を検索している人だけを対象にすると、すでに認知している顧客しか取れません。
一方でおすすめのように競争が激しい言葉だけを狙っても、大手メディアや大規模ECと競うことになります。
自社の商品を買う人が、購入直前と購入前の検討段階で何を調べているかを分解することが必要です。
広告は需要を取りに行く広告と需要を作る広告を分けます
検索広告は、商品や課題をすでに検索している人に接触しやすい方法です。
一方、SNS広告や動画広告は、まだその商品を探していない人にも商品を見せられます。
この2つは役割が違います。
たとえば、すでに商品名と通販で検索している人に見せる広告と、SNSを見ている人にこういう商品があると初めて知ってもらう広告では、使う言葉も商品ページも変わります。
SNS広告から来たユーザーに、いきなり商品スペックと購入ボタンだけを見せても、買う理由が不足することがあります。
逆に商品名を検索している人に長い説明を見せ続け、購入場所が分かりにくければ、機会を逃します。
最初から全チャネルをやる必要はありません
予算が限られている中小ECが、検索広告、SNS広告、動画、SEO、インフルエンサー、SNS運用を一斉に始めると、どの施策が売上を作ったのか判断しにくくなります。
最初は購買意欲の高い検索需要を取り、その後にSNS広告などで認知を広げる考え方があります。
一方、世の中でまだ検索されていない新しい商品では、検索広告だけでは市場が小さいため、SNSや動画から始める方が合う場合があります。
流行している媒体ではなく、購入者が商品を知る順番から選ぶべきです。
EC広告には月いくら使えばよいですか
月額予算を先に決めるのではなく、許容CPAと必要な新規注文数から逆算します。
少額で多媒体に分散するより、採算を確認できるだけの購入データが集まる媒体に絞る方が判断しやすくなります。
ECサイトの広告相談では、月30万円あれば足りますか、100万円使えば売上はいくらになりますかと聞かれることがあります。
しかし広告費は、会社規模だけでは決められません。
客単価と商品粗利、初回購入後のリピート、在庫量によって変わります。
説明のための仮の値として、許容CPAが4,000円で、月100件の新規顧客を取りたいなら、単純計算では広告費40万円が基準になります。
ただし実際のCPAは毎月一定ではありません。
競合の出稿、季節、セール時期、広告クリエイティブなどによって変動します。
そのため、40万円使えば必ず100件という意味ではありません。
広告費は売上目標ではなく注文数から考えます
月商を2倍にしたいから広告費も2倍にするという考え方では、利益が崩れることがあります。
ECでは、広告費を増やすほど獲得単価が上がることがあります。
購入しやすい人から順番に広告が届くとは限りませんが、配信対象を広げることで効率が変わることは珍しくありません。
そのため、最初から大きな広告予算を使うのではなく、現在のCPAと注文後の利益を確認しながら拡大します。
広告費だけでなく制作費も集客原価です
ECでは、広告媒体に払う費用だけを広告コストとして見てしまうことがあります。
実際には、商品撮影、動画制作、バナー制作、商品ページ制作、記事制作なども集客に必要な費用です。
特にSNS広告では、同じ広告素材を長期間使い続けると反応が落ちる場合があります。
広告費を増やすなら、その分だけ新しい広告素材を作る費用も考える必要があります。
説明のための仮の値として、月100万円を広告媒体に使い、クリエイティブ制作に20万円かかっているなら、実質的な集客投資は120万円です。
広告代理店への運用費用が発生する場合も含めて、総額で判断します。
少額を5媒体に分けると判断できなくなります
月30万円の広告予算を、検索広告、SNS広告、動画広告、インフルエンサー、モール広告に6万円ずつ分けても、十分な注文数が集まらなければ比較ができません。
EC広告はクリック数ではなく購入数で評価する必要があります。
そのため、予算が少ないうちは媒体数を増やすより、顧客の購買行動に近い媒体へ寄せる方が分析しやすくなります。
どの媒体から始めるかは商品によります。指名検索やカテゴリ検索が多い商品と、見た目や体験で欲しくなる商品では入口が違うからです。
初回購入を赤字にしてリピートで回収してもよいですか
リピート実績が確認できていない段階で初回赤字を前提にするのは危険です。
何回目の購入で広告費を回収できるのかを実データで確認し、途中離脱を含めて資金繰りまで見なければなりません。
ECやD2Cでは、初回は赤字でもLTVで回収すればよいという考え方があります。
成立する事業はあります。
ただし、これはリピートが起きることを前提に広告費を先払いするモデルです。
リピート率を確認せずに採用すると、売上は伸びても現金だけが減っていくことがあります。
引き上げ率を必ず確認します
引き上げ率とは、初回購入者が2回目の購入や定期購入など次の取引に進む割合です。
初回商品を安く販売して本商品へつなげる場合、この数字が事業採算を大きく左右します。
説明のための仮の値として、初回購入1件を6,000円の広告費で獲得し、初回注文では2,000円しか利益原資が残らないとします。
この時点で4,000円を将来の購入から回収する必要があります。
2回目購入率を50パーセントで計画していたのに、実際には20パーセントしかなければ、広告費を回収する設計は大きく変わります。
平均購入回数だけを見るのも危険です。
10回以上購入する一部の顧客が平均値を押し上げている可能性があるからです。
初回購入者100人のうち、何人が2回目、3回目、4回目へ進んでいるかを見る必要があります。
定期購入は解約率まで含めて考えます
定期購入商品は、継続回数が増えれば1人当たりの売上が大きくなります。
そのため広告費をかけやすいように見えますが、契約者数だけを見て判断してはいけません。
初回で解約する人、2回目で解約する人、数か月継続する人を分けて見ます。
定期購入開始数が伸びても早期解約が増えれば、想定していた利益は残りません。
解約方法が分かりにくい設計で継続率を高めようとするのではなく、商品価値によって継続されているかを見る必要があります。
回収までの期間が長いほど現金が必要です
初回赤字モデルでも、最終的に利益が出れば帳簿上は成立します。
ただし広告費は先に支払います。
説明のための仮の値として、1人獲得するたびに初回4,000円の赤字が出る状態で月1,000人を獲得すれば、一時的に400万円分の資金負担が発生します。
その400万円が3か月後、6か月後に回収されるなら、その間の運転資金が必要です。
売上成長だけを追って広告費を増やすと、利益が出る前に資金繰りが厳しくなることがあります。
初回赤字モデルで確認する数字
| 確認する数字 | 確認する理由 |
|---|---|
| 初回注文の利益 | 新規1件ごとの先行赤字額を知るため |
| 2回目購入率 | 初回顧客が次回購入へ進む割合を見るため |
| 3回目以降の継続率 | 一部顧客だけが平均を押し上げていないかを見るため |
| 平均購入間隔 | 広告費の回収時期を把握するため |
| 解約率 | 定期購入の想定売上との差を確認するため |
| 顧客単位の累計利益 | 何回目で広告費を回収できるかを見るため |
新規獲得を増やす前に、既存顧客の購入推移を確認します。数字が見えていないうちは、初回利益の範囲内に広告費を抑える方が資金管理はしやすくなります。
ECサイトでは在庫と広告をどう連動させるべきですか
広告担当と在庫担当を分断せず、売れる速度と補充までの日数を共有する必要があります。
欠品する商品に広告費を投下したり、過剰在庫の商品を利益無視で売り切ったりすると、集客効率だけでは判断できません。
EC広告ではCPAや売上だけを追いかけやすいですが、在庫を無視すると事業全体では非効率になります。
売れた商品をすぐ補充できるECなら問題は小さくなります。
一方、海外製造、受注生産、季節商品など補充に時間がかかる場合は、広告量と在庫量を連動させる必要があります。
売れる広告を止めなければならないこともあります
広告運用だけを見れば、CPAが低く売れている商品には予算を増やしたくなります。
しかし残り在庫が100個しかなく、次回入荷が2か月後なら、在庫を短期間ですべて販売することが正解とは限りません。
広告を見た人が後日検索したときに欠品していれば、せっかく作った需要を取りこぼします。
さらに定期購入やセット販売に組み込んでいる商品が欠品すると、新規販売以外にも影響します。
広告予算を決めるときは、売上目標だけでなく、販売可能在庫と次回入荷日を確認します。
在庫処分と通常集客を同じCPAで評価しません
過剰在庫の商品では、通常より低い利益でも現金化を優先したいケースがあります。
一方、在庫が少ない商品では、多少販売量を抑えてでも利益率を守った方がよい場合があります。
この2つを同じ広告目標で運用すると判断がぶれます。
ECでは、広告効率だけを見て売れている商品に広告を寄せると、仕入れ計画と矛盾することがあります。
欠品後に広告を止めるのでは遅い場合があります
欠品表示が出てから広告を止めればよいように見えますが、広告には時間差があります。
広告を見てその場で買う人だけではありません。
数日後に商品名を検索したり、口コミを確認したり、家族に相談してから購入したりする人もいます。
在庫が尽きる直前まで大量に広告を出すと、その後の購入需要を受け止められません。
売れ行きが急に伸びた商品では、広告担当者、仕入れ担当者、倉庫担当者が同じ在庫数字を見る仕組みが必要です。
D2Cでは広告費が販売量を直接動かすことがあるため、広告計画は仕入れ計画でもあります。
ECサイトの利益を増やすには新規集客以外に何をすべきですか
リピート率、客単価、定期購入、レビュー獲得を改善し、新規1人から得られる利益を増やします。
新規広告だけに予算を使うより、一度買った顧客が戻る仕組みを整えた方が広告に使える上限も広がります。
EC事業では、新規顧客数を増やすことが売上成長の中心に見えます。
しかし毎月100人の顧客を集めても、その100人が一度しか買わなければ、翌月も新たに100人を広告で獲得し続ける必要があります。
一方、一部の顧客が2回目、3回目と購入すれば、広告に依存しない売上が少しずつ増えます。
リピート率が上がると許容広告費が変わります
説明のための仮の値として、初回注文から残る利益が3,000円の商品を考えます。
一度しか買わない顧客なら、新規獲得に3,000円以上使うと赤字になります。
しかし平均して複数回購入し、顧客1人から累計8,000円の利益が残るなら、新規獲得に使える金額の考え方は変わります。
だからこそ、新規広告担当者だけで広告予算を決めてはいけません。
CRMと呼ばれる既存顧客との関係管理の数字も必要です。
同梱物は次回購入の接点です
EC特有の接点に商品発送があります。
箱を開けた顧客に、商品だけを届けるのか、使い方、関連商品、ブランドの考え方、次回購入方法まで伝えるのかで、その後の行動は変わります。
同梱物は、新規顧客にもう一度広告を見せるためのものではありません。
すでに購入した人が商品を正しく使い、価値を理解し、必要なら次の商品を見つけるための接点です。
使い方が分かりにくい商品なら使用方法を優先します。
消耗品なら次回購入の目安を知らせます。
関連商品があるなら、なぜ一緒に使うのかを説明します。
値引きクーポンだけを入れると、割引があるときに買う顧客を増やすこともあります。
レビューは広告より購入に近い場所で効きます
初めて買うECでは、商品を手に取れません。
そのため購入者のレビューは、サイズ感、使用感、味、配送状態など、商品説明だけでは分からない情報を補います。
レビュー数だけを増やせばよいわけではありません。
購入検討者が不安に感じる点に答えるレビューがあるかを見る必要があります。
たとえば衣類であれば身長やサイズ感、食品であれば量や味の印象、雑貨であれば使用場面など、カテゴリごとに知りたい情報は違います。
レビュー依頼は購入直後ではなく、商品を使える程度の時間が経った後の方が答えやすい商品もあります。
定期購入に向かない商品もあります
定期購入は売上を予測しやすくする手段ですが、すべての商品に向いているわけではありません。
消費周期が一定の商品なら相性があります。
一方、買い替え頻度が低い耐久商品に無理に定期購入を付けても、顧客にとって価値がありません。
商品特性によっては、本体購入後に消耗品や関連商品を案内する方が自然です。
EC事業では、新規顧客獲得、新規から2回目への転換、継続購入を別々の数字として管理することが必要です。
ECサイトでよくある間違った集客施策は何ですか
広告を増やせば売上も比例して増えると考えることと、サイトへのアクセス数だけを増やすことです。
商品利益、購入率、在庫、リピートを直さずに集客量だけ増やしても、赤字や在庫問題まで拡大することがあります。
ECサイトの集客で失敗しやすいのは、施策そのものが間違っているというより、実施する順番が違うケースです。
SEOもSNSも広告も有効になる場面があります。
しかし商品ページで買う理由が伝わらない状態でアクセスだけ増やしても、売上にはつながりにくくなります。
SNSのフォロワー数を売上目標にしません
SNS運用では、フォロワー数が分かりやすい指標なので追いかけやすくなります。
しかしECの目的はフォロワーを増やすことではなく、商品を知ってもらい、必要な人に購入してもらうことです。
フォロワーが増えていても、ECサイトへの訪問や購入につながっていなければ、事業への貢献を別に確認する必要があります。
反対にフォロワー数が少なくても、既存顧客や購入見込みの高い人が集まっていれば価値があります。
インフルエンサー施策を投稿単価だけで選びません
ECではインフルエンサー施策もよく使われます。
フォロワー数が多い人ほど売れるとは限りません。
商品の購入者層と視聴者層が合っているか、普段どのような商品を紹介しているか、投稿を見た人が購入まで進める導線があるかを見る必要があります。
単発投稿の売上だけで評価するのか、指名検索増加まで含めて見るのかも事前に決めます。
誰が投稿したか分からない状態で売上だけ見ても、次回の予算配分に活かせません。
送料無料を無条件に正解と考えません
送料が表示されると購入をやめる顧客はいます。
そのため送料無料は購入率改善の施策として使われます。
一方、送料はEC事業者が負担しています。
低単価商品を1点だけ購入しても送料無料にすると、利益がほとんど残らない場合があります。
その場合は一定金額以上を送料無料にして、まとめ買いを促す方法もあります。
ただし送料無料ラインを高く設定しすぎれば購入自体を諦める人もいます。
送料無料にするかどうかは、競合サイトの真似ではなく、客単価と送料負担から決めます。
値引きで新規を取り続けると通常価格が売れにくくなります
初回限定価格やセールは新規購入のきっかけになります。
しかし毎月セールを続けると、顧客が通常価格で買わなくなることがあります。
モールの大型セールと自社ECのセールを繰り返していると、次の割引まで待つという購買行動を作る可能性もあります。
値引きを行う場合は、在庫消化、新規体験、セット購入など、何のために実施するのかを決めます。
SEO記事を大量に作る前に検索意図を確認します
ECサイトでもSEO記事を増やす施策があります。
しかし商品と関係が薄い検索流入を大量に集めても、購入にはつながりにくくなります。
たとえば検索数の大きい一般的な悩みを狙うだけではなく、その悩みを持つ人が自社商品を検討する可能性があるかを見る必要があります。
アクセス数が増えたという成果と、購入につながる顧客が増えたという成果を分けることが必要です。
法律を無視した強い表現で購入率を上げようとしません
ECでは、広告や商品ページの表現にも制約があります。
景品表示法では、実際の商品やサービスより著しく優れていると誤認させる表示などが問題になります。
化粧品、健康食品、医薬品や医療に関係する商品では、薬機法に関わる表現にも注意が必要です。
購入率を上げたいからといって、根拠のない最上級表現や、認められていない効果を断定する表現を使うべきではありません。
広告だけ表現を弱くして、遷移先の商品ページで強い表現を使えばよいという話でもありません。
広告、商品ページ、記事、SNS投稿まで含めて確認する必要があります。
外部の制作会社や広告会社へ任せる場合も、法律上の責任まで外注できるわけではありません。
よくある質問
ECサイトの集客は広告とSEOのどちらから始めるべきですか
すでに検索需要があり早く販売データを集めたい商品では広告から始める方法があります。一方、比較検討期間が長く、検索される質問が多い商品ではSEOコンテンツも資産になります。予算と商品特性によって優先順位を決めます。
自社ECだけで販売した方が利益率は高くなりますか
販売手数料だけを比べれば自社ECが有利に見える場合があります。ただし自社ECでは集客費が別途必要になるため、広告費、制作費、決済費、物流費まで含めて比較する必要があります。
ECサイトの広告費率は売上のどのくらいが適正ですか
一律の適正値はありません。客単価、粗利率、送料、リピート率によって許容できる広告費率は変わります。売上比率ではなく、新規注文1件から最終的に残る利益を基準に決めます。
リピート率が低い場合は新規広告を止めるべきですか
すぐに全面停止する必要があるとは限りません。ただし初回赤字をリピートで回収する前提なら、広告拡大より先に2回目購入率や商品満足度、再購入導線を確認する必要があります。
EC集客を自社運用するか外注するかはどう決めればよいですか
商品利益、在庫、顧客データなど経営判断に関わる部分は自社で把握する必要があります。広告運用や制作など専門作業は外注できますが、許容CPAや優先商品まで外部任せにすると、広告数字だけが良くても事業利益とずれる可能性があります。
まとめ
- 最初に決めるのは広告媒体ではなく、1件の新規注文を獲得するために最大いくらまで使えるかです。客単価、粗利率、送料、決済手数料、リピート率を先に計算しないと、売上が増えても利益が残らない状態になります
- モールは集客力を借りる場所、自社ECは顧客資産を積み上げる場所として役割を分けるべきです。どちらか一方に寄せるのではなく、手数料と顧客情報の価値を比べながら販売比率を決めます
- 自社ECには最初から人が集まる仕組みがないからです。検索需要を取る施策、まだ商品を探していない人に知ってもらう施策、既存顧客を戻す施策を分けて設計する必要があります
- 月額予算を先に決めるのではなく、許容CPAと必要な新規注文数から逆算します。少額で多媒体に分散するより、採算を確認できるだけの購入データが集まる媒体に絞る方が判断しやすくなります
- リピート実績が確認できていない段階で初回赤字を前提にするのは危険です。何回目の購入で広告費を回収できるのかを実データで確認し、途中離脱を含めて資金繰りまで見なければなりません
- 広告担当と在庫担当を分断せず、売れる速度と補充までの日数を共有する必要があります。欠品する商品に広告費を投下したり、過剰在庫の商品を利益無視で売り切ったりすると、集客効率だけでは判断できません
- リピート率、客単価、定期購入、レビュー獲得を改善し、新規1人から得られる利益を増やします。新規広告だけに予算を使うより、一度買った顧客が戻る仕組みを整えた方が広告に使える上限も広がります
- 広告を増やせば売上も比例して増えると考えることと、サイトへのアクセス数だけを増やすことです。商品利益、購入率、在庫、リピートを直さずに集客量だけ増やしても、赤字や在庫問題まで拡大することがあります