
1回の購入では、多くのECで獲得費用を回収しきれないからです。
何回目の購入で回収できるかが、払える獲得単価の上限を決めます。
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目次
目次
- ECサイトのLTVが、獲得の上限を決める数字になるのはなぜか
- 全社平均のLTVが使えない理由
- ECのLTVは、どう計算するのか
- 期間を12か月にするか24か月にするか
- 再購入が止まるのは、どの段階が多いのか
- 2回目までの日数をどう使うか
- 複数カテゴリを買ってもらうことは、LTVにどう効くのか
- 回遊を促すときの見せ方
- LTVから許容獲得単価を出すには、どう計算するのか
- 入口カテゴリごとに上限を分ける
- 離脱した顧客を、どこまで追うべきか
- 離脱の予兆をどう捉えるか
- LTVを外部と共有するとき、何に注意するのか
- 実績の検証は発注側が行う
- ECサイトのLTV設計は、何から着手すればいいのか
- 最初の3か月で確認すること
- よくある質問
- まとめ
1回の購入では、多くのECで獲得費用を回収しきれないからです。
何回目の購入で回収できるかが、払える獲得単価の上限を決めます。
ECサイトのLTVが、獲得の上限を決める数字になるのはなぜか
1回の購入では、多くのECで獲得費用を回収しきれないからです。
何回目の購入で回収できるかが、払える獲得単価の上限を決めます。
ECの初回購入は、単価が低く粗利も薄いのが通常です。
入口に値引きや送料無料を置いていれば、さらに薄くなります。
この状態で獲得単価を初回の粗利以内に収めようとすると、投下できる額が小さくなります。
小さいまま運用すると、獲得できる件数も伸びません。
上限を引き上げる唯一の方法が、複数回の購入を前提に置くことです。
2回目以降の粗利を含めれば、払える額は数倍になります。
ただし前提にできるのは、実際に2回目が起きている場合だけです。
起きていない状態で上限だけ上げると、赤字が積み上がります。
そのため、LTVの計算は希望値ではなく実績から出す必要があります。
過去の顧客が実際に何回買い、いくらの粗利を残したかを見ます。
ECで特有なのは、複数カテゴリを扱うことによる差です。
入口のカテゴリによって、その後の購入回数がまったく違います。
全社平均のLTVが使えない理由
全社平均のLTVは、性質の違う顧客を1つに混ぜた数字です。
消耗品で入った顧客と、大型品で入った顧客が同じ母集団に入ります。
混ぜた平均から出した上限を全商品に適用すると、両方でずれます。
消耗品では低すぎ、大型品では高すぎる上限になります。
そのため、LTVは入口カテゴリごとに出してください。
全社平均は、経営への報告以外では使いません。
LTVは獲得単価の上限を決める数字です。全社平均ではなく、入口カテゴリごとに実績から出してください。
ECのLTVは、どう計算するのか
一定期間内の粗利の累計を、その期間に獲得した顧客数で割ります。
生涯ではなく期間で区切ることが、実務で使える条件です。
LTVという言葉は生涯価値と訳されますが、生涯では計算できません。
まだ購入が続いている顧客の将来を含めることになるからです。
実務で使うのは、期間で区切った累計粗利です。
獲得から12か月、あるいは24か月という形で切ります。
計算は単純で、対象期間に獲得した顧客の粗利累計を人数で割ります。
粗利には、送料と決済手数料と返品分を反映させます。
この3つを引かないと、LTVは実態より2割前後高く出ます。
高く出た数字で上限を決めると、採算が合いません。
期間の長さは、資金繰りの事情で決まります。
仕入れに資金が要るECでは、回収期間を短く取る必要があります。
期間を決めたら文書に残し、期中は動かしません。
動かすと、前期との比較も上限の妥当性の検証もできなくなります。
ECのLTVを計算するときの前提
| 項目 | 置き方 | 注意 |
|---|---|---|
| 期間 | 獲得から12か月または24か月 | 資金繰りに合わせる |
| 粗利 | 送料と決済手数料と返品を引く | 引かないと2割前後高く出る |
| 母数 | 期間内に獲得した新規顧客数 | 既存の再購入を混ぜない |
| 単位 | 入口カテゴリ別 | 全社平均は報告用にとどめる |
| 更新 | 四半期ごと | 期中は上限の計算を変えない |
期間を12か月にするか24か月にするか
12か月にすると、上限は低く出ます。
そのぶん資金の回りは安全になり、投下の判断も早くできます。
24か月にすると上限は上がりますが、回収前に資金が必要になります。
仕入れの支払い条件と合わせて判断する必要があります。
判断するのは経営と財務です。
マーケティング部門が単独で長い期間を採ると、資金繰りの議論が抜けます。
LTVは期間で区切った粗利累計で計算します。期間の決定は資金繰りの話であり、経営と財務が判断してください。
再購入が止まるのは、どの段階が多いのか
2回目までの段階が最も多く、ここを超えると残りやすくなります。
そのため施策の重点は、初回から2回目の間に置きます。
購入回数ごとの残存率を並べると、初回から2回目の落ちが最大になります。
2回目から3回目の落ちは、それより小さくなるのが通常です。
この形は、多くのECで共通して見られます。
初回の購入が試しであることが多いためです。
したがって、施策の投資対効果が最も高いのは2回目までの区間です。
3回目以降の施策は、効果が出るまでの期間も長くなります。
2回目までの区間で効くのは、購入直後の体験です。
納期どおりに届いたか、梱包に問題がなかったかが再購入に影響します。
広告やメールの前に、この体験の質を確認してください。
体験が悪い状態で施策を打っても、数字は動きません。
もう1つが、2回目の購入のきっかけです。
消耗品なら使い切る時期、その他なら関連する商品の提示がきっかけになります。
2回目までの日数をどう使うか
2回目までの日数の中央値が分かれば、施策の投入時期が決まります。
中央値の少し手前に施策を置くのが基本です。
日数が長いカテゴリでは、間に接点を置く必要があります。
接点がないと、次の購入時に想起されません。
日数はカテゴリごとに違うため、一律の配信では合いません。
入口カテゴリごとに、投入の時期を分けてください。
再購入が最も止まるのは2回目までの区間です。日数の中央値の手前に施策を置き、入口カテゴリごとに時期を変えてください。
複数カテゴリを買ってもらうことは、LTVにどう効くのか
購入カテゴリが増えた顧客は、離脱しにくくなります。
ただしカテゴリを増やす施策は、粗利の薄い商品に流れやすい点に注意が要ります。
複数のカテゴリを買っている顧客は、1カテゴリの顧客より残存率が高くなります。
サイトを訪れる理由が増えるためです。
そのため、2回目以降の施策では回遊を促すことが選択肢になります。
関連カテゴリの提示や、複数カテゴリを束ねた企画がその手段です。
ただし提示するカテゴリを、売れやすさだけで選ぶと粗利が落ちます。
値引き対象の商品は反応が良く、回遊の施策で使われやすいからです。
選ぶ基準は、粗利率と再購入への寄与の両方にします。
寄与は、そのカテゴリを2回目に買った顧客の3回目購入率で見ます。
この数字を出すには、購入履歴をカテゴリの組み合わせで集計する必要があります。
集計の設計は、データ基盤の整備と同時に進めます。
回遊の施策は、在庫の制約も受けます。
提示するカテゴリが欠品していれば、体験は悪化します。
回遊を促すカテゴリの選び方
| 見る数字 | 出し方 | 判断 |
|---|---|---|
| 粗利率 | カテゴリ別の粗利 ÷ 売上 | 薄いカテゴリは提示を抑える |
| 3回目購入率 | 2回目にそのカテゴリを買った顧客の次の購入率 | 高い順に優先 |
| 在庫の安定度 | 欠品日数の実績 | 不安定なら提示から外す |
| 配送の相性 | 同梱できるかどうか | 同梱できると原価が下がる |
| 購入周期 | そのカテゴリの再購入間隔 | 短いほど接点が増える |
回遊を促すときの見せ方
回遊の提示は、購入直後が最も反応します。
配送の完了通知や同梱物に置くのが基本です。
広告で回遊を促す場合は、既存顧客向けの配信として別枠にします。
新規獲得の枠に混ぜると、獲得単価が良く見えるだけになります。
提示する数は絞ってください。
多く並べると選べなくなり、結局値引き品が選ばれます。
複数カテゴリの購入は残存率を上げますが、提示するカテゴリは粗利率と3回目購入率で選んでください。
LTVから許容獲得単価を出すには、どう計算するのか
期間内の粗利累計に、残したい利益の割合を掛けて出します。
そのうえで、回収が何か月目に終わるかを必ず確認します。
許容獲得単価は、期間内の粗利累計から逆算します。
粗利の何割までを獲得に使ってよいかを決め、掛け算するだけです。
数字は説明のための仮の値です。
12か月の粗利累計が1万5,000円で、粗利の4割までを獲得に使うなら、許容獲得単価は6,000円になります。
この計算だけでは足りません。
6,000円を投じたとき、何か月目に回収が終わるかを確認する必要があります。
初回の粗利が2,000円で、2回目以降が毎月1,500円ずつ積み上がるなら、回収は約4か月目です。
数字は説明のための仮の値です。
回収が4か月であれば、資金の回りに大きな支障は出ません。
これが10か月を超えると、仕入れの支払いと重なって資金が不足します。
そのため、許容獲得単価の決定には回収月数の上限も併せて置きます。
上限を超える投下は、金額が収まっていても行わない判断になります。
入口カテゴリごとに上限を分ける
許容獲得単価は、入口カテゴリごとに計算します。
カテゴリによって粗利累計も回収月数も違うからです。
分けた上限を媒体の運用に渡すときは、カテゴリごとの目標として渡します。
全社平均の1つの数字を渡すと、カテゴリの差が消えます。
上限の見直しは四半期ごとに行います。
実績のLTVが動けば、上限も動かす必要があります。
許容獲得単価は粗利累計から逆算し、回収月数の上限も併せて置きます。入口カテゴリごとに分けて渡してください。
離脱した顧客を、どこまで追うべきか
最後の購入からの経過日数で区切り、一定を超えたら追いません。
追う費用が、戻ってくる粗利を上回るからです。
離脱した顧客への働きかけは、新規獲得より安く済むと考えられがちです。
連絡先を持っているため、配信の費用はかかりません。
ただし反応率は、経過日数とともに急速に落ちます。
落ちた後も配信を続けると、配信全体の到達に影響が出ます。
区切りを決める材料は、経過日数別の復帰率です。
過去のデータから、何日を超えると復帰がほとんど起きないかを出します。
出た日数を基準に、それ以降は通常の配信から外します。
外した相手には、年に数回の案内だけを送る形にします。
復帰の施策で値引きを使う場合は、幅に上限を置いてください。
戻ってきた顧客の粗利が、追う費用を下回ることがあります。
復帰した顧客のその後も追ってください。
1回だけ戻って再び離脱する場合、その施策は成立していません。
離脱した顧客の扱いを分ける基準
| 経過日数 | 扱い | 手段 | 上限 |
|---|---|---|---|
| 購入周期の1倍まで | 通常の再購入対象 | 定期の配信 | 通常 |
| 1倍から2倍 | 離脱の予兆 | 用途の提案 | 値引きなし |
| 2倍から3倍 | 復帰の対象 | 限定の案内 | 幅を限定 |
| 3倍以上 | 通常配信から外す | 年数回の案内 | 行わない |
| 問い合わせ履歴あり | 個別に確認 | 内容に応じる | 判断による |
離脱の予兆をどう捉えるか
離脱は、最後の購入の後に突然起きるわけではありません。
その前に、購入間隔が延びる段階があります。
間隔の延びを捉えるには、顧客ごとの購入周期を持つ必要があります。
全社平均の周期では、個別の変化が見えません。
周期を持つには、購入履歴を顧客単位で集計する基盤が要ります。
基盤の整備と、離脱対策の設計は同時に進めてください。
離脱した顧客は経過日数で区切り、一定を超えたら追いません。復帰の施策は値引きの幅に上限を置いてください。
LTVを外部と共有するとき、何に注意するのか
数字そのものではなく、許容獲得単価の形で渡します。
LTVを渡すと、上限の解釈が外部の判断に委ねられます。
外部に獲得を任せる場合、上限の共有は必須になります。
共有しないと、外部は管理画面で見える獲得単価だけで判断します。
ただしLTVをそのまま渡すと、どこまで使ってよいかの解釈が分かれます。
利益をどれだけ残すかは、発注側の経営判断だからです。
渡すのは、計算済みの許容獲得単価です。
入口カテゴリごとの上限という形にすれば、解釈の余地がありません。
あわせて、回収月数の上限も伝えます。
金額の上限だけだと、回収の遅い獲得が増える可能性があります。
LTVの内訳を出せない事情がある場合も、上限だけなら渡せます。
粗利率も購入回数も出さずに、判断の基準は揃えられます。
上限の更新は四半期ごとに行い、更新のたびに共有します。
更新を伝えないと、古い上限のまま運用が続きます。
実績の検証は発注側が行う
獲得した顧客のその後は、発注側のデータにしかありません。
LTVの実績検証は、外部では行えません。
四半期ごとに検証し、結果を上限に反映してください。
反映しないと、上限が実態から離れていきます。
検証の結果は、外部にも共有します。
どのカテゴリの獲得が質として良かったかが、次の配分の材料になります。
外部にはLTVではなく、計算済みの許容獲得単価と回収月数の上限を渡します。実績の検証は発注側が四半期ごとに行ってください。
ECサイトのLTV設計は、何から着手すればいいのか
入口カテゴリ別に、獲得から12か月の粗利累計を出すところからです。
この数字がないと、許容獲得単価に根拠が作れません。
最初にやるのは、過去に獲得した顧客を入口カテゴリで分けることです。
分けたうえで、12か月分の購入履歴を集計します。
集計には、送料と決済手数料と返品を反映させます。
反映していない数字は、実態より高く出ます。
次に、購入回数ごとの残存率を並べます。
どの回で最も落ちているかが分かれば、施策の重点が決まります。
その後、期間の長さを経営と財務で決めます。
決めた期間は文書に残し、期中は動かしません。
最後に、入口カテゴリごとの許容獲得単価と回収月数の上限を出します。
この2つを媒体の運用と外部への条件に反映させます。
ECのLTV設計に着手する順番
| 順番 | やること | 関わる部門 | 期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 過去の顧客を入口カテゴリで分ける | マーケとシステム | 2週間 |
| 2 | 12か月の粗利累計を出す | マーケと経理 | 2週間 |
| 3 | 購入回数ごとの残存率を並べる | マーケティング | 1週間 |
| 4 | 期間の長さを決める | 経営と財務 | 1週間 |
| 5 | 許容獲得単価と回収月数の上限を出す | マーケ責任者 | 1週間 |
| 6 | 媒体の運用と外部の条件に反映する | マーケティング | 2週間 |
数字は説明のための仮の値です。
あるカテゴリの12か月粗利累計が1万5,000円、別のカテゴリが6,000円であれば、同じ4割を使うとしても上限は6,000円と2,400円になります。
この差を1つの平均値で運用していたことが、採算のずれの原因になります。
分けた時点で、どのカテゴリに投下を寄せるかの判断も変わります。
着手から反映までは、全体で8週間前後が目安です。
購入履歴の集計に時間がかかる場合は、先に1カテゴリだけで試してください。
最初の3か月で確認すること
最初の3か月は、集計の定義が正しいかを確認します。
複数商品を含む初回注文の入口カテゴリの割り当てが、定義どおりかを見ます。
もう1つが、返品の反映です。
返品は購入から1か月以上遅れて確定するため、集計の時期によって数字が変わります。
確定のタイミングを決めて、毎回同じ条件で集計してください。
条件が変わると、四半期ごとの比較ができなくなります。
着手点は入口カテゴリ別の12か月粗利累計です。返品の確定タイミングを決めて、毎回同じ条件で集計してください。
ECサイトのLTVと獲得上限の置き方に迷う場合は、無料相談で現状の数字を見てもらうところから始められます。
再購入の設計ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
ECのLTVは、どの期間で計算すればいいですか
生涯ではなく、獲得から12か月または24か月で区切ってください。期間の長さは資金繰りの事情で決まります。仕入れに資金が要るECでは短く取るほうが安全で、決定は経営と財務が行う判断になります。
LTVは全社の平均値で出してはいけませんか
経営への報告以外では使えません。入口カテゴリによって購入回数も粗利も大きく違うため、平均から出した上限は消耗品では低すぎ、大型品では高すぎる数字になります。入口カテゴリごとに出してください。
再購入の施策は、どの段階に重点を置くべきですか
初回から2回目までの区間です。購入回数ごとの残存率を並べると、この区間の落ちが最大になります。まず納期や梱包などの購入直後の体験を確認し、そのうえで2回目までの日数の中央値の手前に施策を置いてください。
許容獲得単価はLTVだけで決めてよいですか
金額の上限に加えて、回収が何か月目に終わるかを必ず確認してください。金額が収まっていても回収が10か月を超えると、仕入れの支払いと重なって資金が不足します。回収月数の上限も併せて置いてください。
離脱した顧客は、いつまで追えばいいですか
最後の購入からの経過日数で区切ってください。目安は購入周期の3倍で、それを超えたら通常の配信から外し、年に数回の案内にとどめます。復帰の施策で値引きを使う場合は、戻る粗利が追う費用を下回らないよう幅に上限を置きます。
まとめ
- 1回の購入では、多くのECで獲得費用を回収しきれないからです。何回目の購入で回収できるかが、払える獲得単価の上限を決めます
- 一定期間内の粗利の累計を、その期間に獲得した顧客数で割ります。生涯ではなく期間で区切ることが、実務で使える条件です
- 2回目までの段階が最も多く、ここを超えると残りやすくなります。そのため施策の重点は、初回から2回目の間に置きます
- 購入カテゴリが増えた顧客は、離脱しにくくなります。ただしカテゴリを増やす施策は、粗利の薄い商品に流れやすい点に注意が要ります
- 期間内の粗利累計に、残したい利益の割合を掛けて出します。そのうえで、回収が何か月目に終わるかを必ず確認します
- 最後の購入からの経過日数で区切り、一定を超えたら追いません。追う費用が、戻ってくる粗利を上回るからです
- 数字そのものではなく、許容獲得単価の形で渡します。LTVを渡すと、上限の解釈が外部の判断に委ねられます
- 入口カテゴリ別に、獲得から12か月の粗利累計を出すところからです。この数字がないと、許容獲得単価に根拠が作れません