
在庫を持つ事業では、売上を止められないからです。
仕入れた在庫を動かす必要があるため、確実に需要を作れる手段に頼ることになります。
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目次
目次
- ECサイトが広告に依存しやすいのは、どういう構造からか
- 依存の度合いをどう測るか
- ECのチャネルは、どう分類して考えるのか
- 分類したあとに決めること
- モールと自社ECの役割は、どう分けるのか
- 自社ECを選ぶ理由をどう作るか
- 残る経路を育てるには、何年かかるのか
- 中間の数字を目標にしない
- 広告の投下を減らす判断は、どの順で行うのか
- 減らした分をどこに回すか
- 新しいチャネルを試すとき、どう判断するのか
- 試す期間と撤退の決め方
- 外部に配分を任せるとき、依存はどう扱うのか
- インハウス化との関係
- ECのチャネル配分は、何から着手すればいいのか
- 経路別の集計で起きるずれ
- よくある質問
- まとめ
在庫を持つ事業では、売上を止められないからです。
仕入れた在庫を動かす必要があるため、確実に需要を作れる手段に頼ることになります。
ECサイトが広告に依存しやすいのは、どういう構造からか
在庫を持つ事業では、売上を止められないからです。
仕入れた在庫を動かす必要があるため、確実に需要を作れる手段に頼ることになります。
ECは在庫を先に仕入れ、後から売ります。
仕入れた時点で資金が寝るため、売上を止める選択が取りにくくなります。
確実に需要を作れる手段は、広告です。
出せば一定の反応が返るため、計画に組み込みやすくなります。
この構造が続くと、広告以外の流入が育ちません。
育っていないため、広告を止めた瞬間に売上が落ちます。
落ちるので止められず、依存が固定されます。
獲得単価が上がっても、投下を減らす判断ができません。
もう1つの要因が、成果の見え方の違いです。
広告は投じた月に結果が出ますが、検索や会員の育成は数か月かかります。
月次で評価する運用では、短期で結果が出る手段が優先されます。
優先の積み重ねが、そのまま依存の形になります。
依存の度合いをどう測るか
依存の度合いは、売上に占める広告経由の比率で測ります。
ただしこの比率だけでは、危険度までは分かりません。
併せて見るのが、指名検索と直接流入と再購入からの売上です。
この3つの合計が、広告を止めたときに残る売上の概算になります。
残る売上が固定費を下回る場合、投下を減らす判断は取れません。
この状態を先に把握しておくことが、配分の議論の前提になります。
在庫を持つ事業は売上を止められないため、広告への依存が固定されます。止めたときに残る売上を先に概算してください。
ECのチャネルは、どう分類して考えるのか
流入の経路ではなく、費用の発生の仕方で分類します。
投下を止めると消える経路と、残る経路を分けるのが出発点です。
チャネルの分類を媒体名で行うと、配分の判断に使えません。
媒体ごとの効率は比較できても、依存の構造は見えないからです。
使えるのは、費用の発生の仕方による分類です。
投下を止めると消える経路と、止めても残る経路に分けます。
消える経路は、検索広告、ディスプレイ、動画、SNS広告です。
出稿を止めれば、翌日から流入がなくなります。
残る経路は、自然検索、指名検索、直接流入、会員への配信です。
作るまでに時間がかかる代わりに、止めても急には消えません。
モールへの出店は、その中間に位置します。
出店料や手数料が固定で発生し、露出は自社の努力だけでは決まりません。
この3分類で売上の構成を出すと、配分の議論ができます。
どの経路を何年かけて何割まで育てるか、という話になります。
ECのチャネルを費用の発生で分類する
| 分類 | 経路 | 止めたときの動き | 育つまでの期間 |
|---|---|---|---|
| 消える経路 | 検索広告とSNSと動画 | 翌日から流入が消える | 即時 |
| 残る経路 | 自然検索と指名と直接流入 | 数か月かけて減る | 1年以上 |
| 残る経路 | 会員への配信 | 会員数に応じて残る | 半年以上 |
| 中間 | モールへの出店 | 手数料と露出が連動 | 数か月 |
| 中間 | 外部の比較サイト | 掲載を止めれば消える | 数か月 |
分類したあとに決めること
分類したら、それぞれの目標比率を決めます。
現状の比率と、3年後に目指す比率を並べる形です。
目標を決めずに施策だけを増やすと、投下は消える経路に戻ります。
短期の成果が出やすいからです。
比率の目標は経営と合意してください。
合意がないと、期中の未達で残る経路への投資が止まります。
チャネルは媒体名ではなく、投下を止めたときに消えるかどうかで分類します。3年後の比率を経営と合意してください。
モールと自社ECの役割は、どう分けるのか
モールは新規との接点、自社ECは関係の継続と役割を分けます。
同じ商品を同じ価格で両方に出すと、手数料の高い側に注文が寄ります。
モールには、すでに買う気のある利用者が集まっています。
新規の接点としては、広告より効率が良いことがあります。
ただし手数料が発生し、顧客の情報も自社には十分に残りません。
再購入の施策を自社で設計できない構造になります。
自社ECは、手数料がかからず顧客の情報も残ります。
一方で、集客をすべて自前で行う必要があります。
役割を分けるなら、モールを入口、自社ECを継続の場に置きます。
分けるためには、扱う商品か提供する条件に差を付ける必要があります。
同じ商品を同じ条件で両方に出すと、利用者は使い慣れた側を選びます。
多くの場合それはモールで、手数料の高い注文が増えます。
差の付け方は、価格ではなく条件で行うのが基本です。
価格差を付けると、モール側の規約や利用者の印象に影響します。
自社ECを選ぶ理由をどう作るか
条件の差として使えるのは、品揃えと購入後の体験です。
自社ECにしかない商品群や、組み合わせの提案がこれにあたります。
会員向けの仕組みも、自社EC側の理由になります。
購入履歴に応じた提案は、自社でしか設計できません。
配送の選択肢を増やすことも差になります。
日時の指定や、まとめ配送は自社側のほうが柔軟に設計できます。
モールは新規の入口、自社ECは継続の場に役割を分けます。差は価格ではなく、品揃えと購入後の体験で付けてください。
残る経路を育てるには、何年かかるのか
自然検索と指名は1年以上、会員への配信は半年以上が目安です。
この期間を前提にしないと、途中で投資が止まります。
残る経路を育てる施策は、着手から成果まで時間がかかります。
その間、広告の投下は続けたまま並行で進めることになります。
並行で進めるには、予算を別枠にする必要があります。
同じ枠に入れると、短期の効率で比較され、削られます。
期間の目安として、自然検索と指名検索は1年以上を見ます。
記事や商品ページの整備から流入が積み上がるまでに、それだけかかります。
会員への配信は半年以上です。
会員数が一定に達するまで、配信の効果が数字に出ません。
この期間を経営と合意しておかないと、途中で止まります。
四半期ごとに成果を問われると、続けられません。
合意する内容は、投資額と期間と、途中で見る中間の数字です。
中間の数字がないと、進んでいるかどうかを説明できません。
残る経路ごとの中間で見る数字
| 経路 | 最終的に見る数字 | 途中で見る数字 | 見る頻度 |
|---|---|---|---|
| 自然検索 | 自然検索経由の売上 | 対象ページ数と表示回数 | 月次 |
| 指名検索 | 指名の検索数 | 認知施策の到達数 | 月次 |
| 直接流入 | 直接流入の売上 | 再訪問の割合 | 月次 |
| 会員への配信 | 配信経由の売上 | 会員数と有効な連絡先数 | 月次 |
| 口コミと紹介 | 紹介経由の注文数 | レビュー数と評点 | 月次 |
中間の数字を目標にしない
中間の数字は、進捗の確認に使うものです。
目標として置くと、数字を作ることが目的になります。
たとえばページ数を目標にすると、内容の薄いページが増えます。
増えても、流入も売上も動きません。
目標に置くのは、最終的に見る数字だけにしてください。
中間の数字は、未達のときに原因を探すために使います。
残る経路は自然検索と指名で1年以上、会員で半年以上を見ます。期間と中間の数字を経営と先に合意してください。
広告の投下を減らす判断は、どの順で行うのか
残る経路の売上が積み上がった分だけ、減らします。
先に減らして育てる順序では、売上が戻らないことがあります。
依存から抜ける順序には、2つの考え方があります。
先に広告を減らして原資を作る方法と、残る経路が育ってから減らす方法です。
在庫を持つECでは、後者を採ります。
売上が落ちた期間の在庫は、そのまま滞留になるからです。
減らす判断は、残る経路の売上が四半期で積み上がったことを確認してから行います。
確認の単位は月次ではなく四半期です。
減らす対象は、獲得単価の悪い配信からではありません。
残る経路と重なっている配信からです。
重なりが最も大きいのは、指名検索への出稿です。
自然検索で上位にある状態なら、出稿を減らしても流入の一部は残ります。
減らすときは一度に止めず、段階的に下げて影響を測ります。
測らずに止めると、影響の大きさが分からないまま元に戻すことになります。
減らした分をどこに回すか
減らした予算は、そのまま削減するか、別の投資に回すかを決めます。
何も決めないと、翌月には別の配信に吸収されます。
投資に回す場合は、残る経路の育成か、新しいカテゴリの獲得が候補です。
どちらも短期の効率では説明できないため、枠として確保します。
削減する場合は、その分の利益改善を経営に報告します。
報告がないと、翌期の予算でそのまま元に戻されます。
広告を減らすのは、残る経路の売上が四半期で積み上がってからです。重なりの大きい配信から段階的に下げてください。
新しいチャネルを試すとき、どう判断するのか
獲得単価ではなく、在庫と配送の相性で先に絞り込みます。
相性が合わないチャネルは、効率が良くても継続できません。
新しいチャネルの評価は、獲得単価から入りがちです。
ただしECでは、単価より先に見るべき条件があります。
1つ目が、そのチャネルで売れる商品に在庫を確保できるかです。
突発的に売れるチャネルでは、欠品が起きやすくなります。
2つ目が、配送の条件が合うかです。
少額の注文が大量に発生するチャネルでは、配送原価が粗利を上回ることがあります。
3つ目が、顧客の情報が自社に残るかです。
残らないチャネルは、新規の入口としてしか使えません。
この3つを確認してから、獲得単価の試算に入ります。
順序を逆にすると、条件が合わないチャネルに時間を使うことになります。
試すときの期間と金額も、先に決めてください。
決めずに始めると、判断がつかないまま継続することになります。
新しいチャネルを試す前に確認すること
| 確認項目 | 見る内容 | 合わない場合の扱い |
|---|---|---|
| 在庫の確保 | 想定の販売量に対する在庫 | 対象商品を絞る |
| 配送の条件 | 1件あたりの配送原価 | 最低購入金額を置く |
| 顧客情報 | 自社に残るかどうか | 新規の入口に限定 |
| 手数料 | 売上に対する比率 | 許容獲得単価に含める |
| 撤退の条件 | いつどの数字で判断するか | 開始前に決める |
試す期間と撤退の決め方
試す期間は、その商品の購入周期の1倍以上にします。
短すぎると、再購入が起きる前に判断することになります。
撤退の条件は、獲得単価ではなく回収月数で置きます。
単価が良くても、再購入が起きなければ回収は終わりません。
撤退を決めたら、そこで使った素材や学びを記録に残します。
記録がないと、数年後に同じ検討を最初から行うことになります。
新しいチャネルは在庫と配送と顧客情報の3つで絞り込みます。試す期間と撤退の条件は、開始前に決めてください。
外部に配分を任せるとき、依存はどう扱うのか
残る経路の育成は、外部の評価対象から外します。
短期の獲得効率で評価される相手に、時間のかかる投資は任せられません。
広告の運用を外部に任せる会社は多くあります。
Testifyが2026年5月14日から18日に実施した調査では、回答者の9割超が代理店を活用しており、全面委託が37.2%、社内運用との併用が54.4%でした。
外部の評価は、多くの場合その期の獲得効率で行われます。
この評価軸のままだと、消える経路への投下が最適解になります。
残る経路の育成を同じ相手に任せる場合は、評価を分けてください。
同じ契約の中でも、枠と評価指標を別にする形です。
分けない場合は、残る経路の育成を社内か別の相手に持たせます。
どちらにしても、評価の軸を混ぜないことが条件です。
外部に渡す情報も、この設計に合わせます。
消える経路の運用には、許容獲得単価と在庫の投下可否があれば足ります。
残る経路の育成には、商品情報と顧客の購入傾向が必要になります。
渡す情報の範囲が違うため、契約も分けたほうが管理しやすくなります。
インハウス化との関係
依存から抜ける議論は、内製化の議論と重なります。
同じ調査では、全面委託している企業の8割超が1年以内のインハウス化を計画または検討しており、決定・予定が52.9%、積極検討が32.8%でした。
移行の動機はノウハウ蓄積が56.7%、コスト削減が46.7%です。
一方で障壁は教育時間と知見不足が44.8%、媒体アップデートへの追随困難が40.3%でした。
残る経路の育成は、内製に向いた領域です。
商品情報と顧客の傾向を持っているのは社内だからです。
残る経路の育成は、短期の獲得効率で評価しないでください。外部に任せる場合も、枠と評価指標を分けます。
ECのチャネル配分は、何から着手すればいいのか
売上を経路別に分けて、広告を止めたときに残る額を出すところからです。
この額が分かれば、何年かけてどこまで育てるかを決められます。
最初にやるのは、売上の経路別の構成を出すことです。
広告経由、自然検索、指名、直接流入、会員経由、モールに分けます。
分けたうえで、広告を止めたときに残る額を概算します。
残る経路の合計が、その額の目安になります。
次に、3年後の目標比率を経営と合意します。
現状と目標を並べ、毎年どれだけ動かすかを決めます。
その後、残る経路ごとに投資の枠を別に確保します。
同じ枠に入れると、短期の効率で比較されて削られます。
最後に、中間で見る数字と報告の頻度を決めます。
最終的な成果が出るまでの間、進捗を説明する材料になります。
ECのチャネル配分に着手する順番
| 順番 | やること | 関わる部門 | 期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 売上を経路別に分けて構成を出す | マーケとシステム | 2週間 |
| 2 | 広告を止めたときに残る額を概算する | マーケと経理 | 1週間 |
| 3 | 3年後の目標比率を経営と合意する | 経営とマーケ | 2週間 |
| 4 | 残る経路ごとに投資の枠を確保する | 経営 | 1週間 |
| 5 | 中間で見る数字と報告の頻度を決める | マーケティング | 1週間 |
| 6 | 重なりの大きい配信から段階的に下げる | マーケティング | 四半期ごと |
数字は説明のための仮の値です。
月商1億円のうち広告経由が6,000万円、残る経路が4,000万円であれば、広告を止めたときに残るのは4,000万円前後になります。
固定費が月5,000万円であれば、この状態で投下を減らす判断は取れません。
まず残る経路を5,000万円まで育てることが、配分変更の前提になります。
着手から合意までは、全体で6週間前後が目安です。
残る経路が育つ期間は、これとは別に1年以上を見ます。
経路別の集計で起きるずれ
経路別の集計では、同じ注文が複数の経路に数えられることがあります。
広告を見てから指名検索で訪れた場合が典型です。
この重複を厳密に配分しようとすると、作業が終わりません。
最後の接点で1つに寄せる方法で、実務上は足ります。
重要なのは精度ではなく、同じ方法で継続して集計することです。
方法を決めて文書に残し、期中は変えないでください。
着手点は経路別の売上構成と、広告を止めたときに残る額です。集計の方法を決めて、期中は変えないでください。
ECサイトのチャネル配分に迷う場合は、無料相談で現状の構成を見てもらうところから始められます。
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よくある質問
ECが広告から抜けられないのはなぜですか
在庫を先に仕入れる構造上、売上を止める選択が取りにくいからです。確実に需要を作れる広告に頼り続けると、それ以外の流入が育ちません。広告を止めたときに残る売上を先に概算し、固定費と比べることから始めてください。
チャネルは媒体ごとに比較すればよいですか
配分の判断には使えません。媒体別の効率は比較できても、依存の構造が見えないためです。投下を止めると消える経路と、止めても残る経路に分けて売上の構成を出し、3年後の目標比率を決めてください。
モールと自社ECは、どう使い分ければいいですか
モールを新規の入口、自社ECを継続の場に置いてください。同じ商品を同じ条件で両方に出すと、利用者は使い慣れた側を選び、手数料の高い注文が増えます。差は価格ではなく、品揃えと購入後の体験で付けます。
広告の投下は、いつ減らせばいいですか
残る経路の売上が四半期で積み上がったことを確認してからです。先に減らすと、売れ残った在庫がそのまま滞留になります。減らす対象は獲得単価の悪い配信ではなく、自然検索など残る経路と重なっている配信からにしてください。
新しいチャネルは、どう選べばいいですか
獲得単価より先に、在庫を確保できるか、配送の条件が合うか、顧客情報が自社に残るかの3つを確認してください。相性が合わないチャネルは、効率が良くても継続できません。試す期間と撤退の条件も、開始前に決めます。
まとめ
- 在庫を持つ事業では、売上を止められないからです。仕入れた在庫を動かす必要があるため、確実に需要を作れる手段に頼ることになります
- 流入の経路ではなく、費用の発生の仕方で分類します。投下を止めると消える経路と、残る経路を分けるのが出発点です
- モールは新規との接点、自社ECは関係の継続と役割を分けます。同じ商品を同じ価格で両方に出すと、手数料の高い側に注文が寄ります
- 自然検索と指名は1年以上、会員への配信は半年以上が目安です。この期間を前提にしないと、途中で投資が止まります
- 残る経路の売上が積み上がった分だけ、減らします。先に減らして育てる順序では、売上が戻らないことがあります
- 獲得単価ではなく、在庫と配送の相性で先に絞り込みます。相性が合わないチャネルは、効率が良くても継続できません
- 残る経路の育成は、外部の評価対象から外します。短期の獲得効率で評価される相手に、時間のかかる投資は任せられません
- 売上を経路別に分けて、広告を止めたときに残る額を出すところからです。この額が分かれば、何年かけてどこまで育てるかを決められます