BtoB SaaSのマーケティング組織の作り方

プロダクトの中に、マーケティングが使える情報と接点があることです。
利用データと、プロダクト内の画面が、獲得と維持の両方に効きます。
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目次
目次
- BtoB SaaSのマーケティング組織が、他の業種と違うのはどこか
- 組織の設計に効いてくる3つの特徴
- 最初の一人に、何を任せるのか
- 最初に作るべき土台
- 職能をどの順に増やすのか
- 増員の典型的な順番
- プロダクトと接続する役割を、どこに置くのか
- この役割が担うこと
- 組織をチャネル別に分けるか、顧客層別に分けるか
- 2つの分け方の比較
- 外部に出す仕事と、社内に残す仕事をどう分けるのか
- 線を引く基準
- 人が増えても成果が伸びなくなるのは、なぜか
- 頭打ちになる3つの原因
- 組織を作り替える順番を、どう置くか
- 見る数字を決める
- よくある質問
- まとめ
プロダクトの中に、マーケティングが使える情報と接点があることです。
利用データと、プロダクト内の画面が、獲得と維持の両方に効きます。
BtoB SaaSのマーケティング組織が、他の業種と違うのはどこか
プロダクトの中に、マーケティングが使える情報と接点があることです。
利用データと、プロダクト内の画面が、獲得と維持の両方に効きます。
販売する商材が自社で作られていて、しかも顧客が日々それを使っている。
この2つが同時に成立している事業は、それほど多くありません。
利用の状況がデータとして残ります。
誰がどの機能で止まっているかが分かります。
この情報は、獲得の訴求にも、解約の予兆の検知にも使えます。
組織の設計に効いてくる3つの特徴
BtoB SaaSの組織設計に効く特徴
| 特徴 | 組織への影響 |
|---|---|
| 利用データが社内にある | データを扱う職能が早い段階で必要になる |
| プロダクト内が接点になる | 開発チームとの調整役が要る |
| 機能が継続的に変わる | 訴求を更新し続ける役割が要る |
| 契約後も関係が続く | 既存向けの施策を担う役割が要る |
| 検討期間が長い | 中長期の情報発信を担う役割が要る |
獲得だけの組織にならないようにする
広告と検索だけを担う組織にすると、既存顧客への施策が誰の仕事でもなくなります。
契約後の定着と拡大に効く施策は、収益への効きが大きい領域です。
組織を作る段階で、既存側を含めるかどうかを決めます。
プロダクトとの距離が成果を決める
新しい機能が出たときに、誰がどう伝えるかが決まっていない組織があります。開発の情報が営業やマーケティングに届くまでに時間がかかります。この距離の短さが、他の業種にはない差を生みます。
最初の一人に、何を任せるのか
施策の実行ではなく、数字を出せる状態を作ることです。
獲得の実務は外に出せますが、数字の定義と集計は社内でしか作れません。
専任のマーケティング担当を初めて置くとき、広告の運用やコンテンツの制作を任せる形があります。
この形だと、数字の土台がないまま施策だけが進みます。
最初に作るべき土台
問い合わせから契約までの各段階を、数字として出せる状態。
入口ごとにリードを分類できる状態。
獲得月ごとの継続率を出せる状態。
この3つが揃うと、以降の判断が速くなります。
最初の一人が整える順番
| 順番 | 整えること | なぜ先にやるか |
|---|---|---|
| 1 | 問い合わせの記録を一元化する | 入口ごとの比較ができるようになる |
| 2 | 有効リードの定義を営業と揃える | 質の議論の土台になる |
| 3 | 各段階の率を毎月出せるようにする | 施策の評価ができるようになる |
| 4 | 獲得月別の継続率を出す | 質の判定が受注の先まで届く |
| 5 | 主要な入口ごとの獲得単価を出す | 配分の判断ができるようになる |
実務を任せるなら、範囲を絞る
土台作りと同時に実務も進めるなら、範囲を1つか2つに絞ります。
広告と検索の両方、さらにイベントまで任せると、どれも中途半端になります。
採用で見る点
媒体の運用経験より、数字を分解して説明できるかを見ます。社内の別部門と定義を合意した経験があるかどうかも、実務で効きます。
職能をどの順に増やすのか
獲得の量を作る役割の次に、質と定着を見る役割を置きます。
量だけを増やし続けると、解約が後から膨らみます。
増員の順番は、事業の詰まっている箇所で変わります。
ただし、多くの事業で共通する傾向はあります。
増員の典型的な順番
職能を増やす順番と、置く理由
| 順番 | 職能 | 置く理由 |
|---|---|---|
| 1 | 数字を整える役割 | 判断の土台を作る |
| 2 | 獲得の実行を担う役割 | 量を作る |
| 3 | コンテンツを作る役割 | 検討期間の長さを埋める |
| 4 | データと計測を担う役割 | 入口別の評価を精緻にする |
| 5 | プロダクトと接続する役割 | 機能の変化を訴求に反映する |
| 6 | 既存顧客向けの施策を担う役割 | 拡大と維持に効かせる |
コンテンツの役割を早めに置く理由
BtoB SaaSの検討期間は長く、その間に情報を探す行為が何度も起きます。
広告だけで期間を埋めようとすると、費用が積み上がります。
中長期に効く情報発信は、立ち上がりに時間がかかるので、早めに始める必要があります。
データの役割を外に出し続けたときの問題
計測と集計を外部に任せ続けると、数字の意味を社内で説明できなくなります。
経営から質問されたときに、確認に日数がかかります。
実装は外に出しても、設計と解釈は社内に残します。
既存向けの役割を、誰の下に置くか
既存顧客への施策は、カスタマーサクセスの下に置く形と、マーケティングの下に置く形があります。どちらでも構いませんが、決めないまま進めると空白になります。
プロダクトと接続する役割を、どこに置くのか
マーケティングの側に置きます。
開発の側に置くと、市場での言葉に翻訳する作業が後回しになります。
機能が追加されたとき、それを誰がどう伝えるか。
この役割が定まっていない組織は多くあります。
この役割が担うこと
新機能を、顧客の課題の言葉に置き換える。
どの顧客層に効くかを決める。
営業が使える説明の材料を作る。
既存顧客に案内する経路を決める。
プロダクトと接続する役割の仕事
| 仕事 | 関わる相手 | 出てくるもの |
|---|---|---|
| 機能の価値を言語化する | 開発と営業 | 訴求の文言 |
| 対象の顧客層を決める | 開発と経営 | 優先して案内する層 |
| 営業向けの説明材料を作る | 営業 | 提案時の資料と想定問答 |
| 既存顧客への案内を設計する | カスタマーサクセス | 案内の経路と時期 |
| 利用データから改善点を戻す | 開発 | 次の機能の優先順位 |
開発側に置いたときに起きること
開発の優先順位に引っ張られ、市場向けの言語化が後回しになります。
機能が出てから訴求を考えることになり、立ち上がりが遅れます。
兼任で始める場合の注意
専任を置けない段階では、コンテンツの担当が兼任することがあります。
その場合、開発の定例に出る時間を確保します。
情報が事後に届く形では、この役割は機能しません。
価格と条件の変更も、この役割の範囲に入れる
プランの構成や価格を変えるとき、市場での受け取られ方を検討する必要があります。この検討を経営だけで行うと、既存顧客への説明が後手になります。
組織をチャネル別に分けるか、顧客層別に分けるか
顧客層のばらつきが大きいなら顧客層別、小さいならチャネル別です。
小規模の顧客と大企業が混在している事業では、チャネル別に分けると訴求が平均化します。
組織の分け方は、どちらが優れているという話ではありません。
事業の顧客構成で決まります。
2つの分け方の比較
組織の分け方と、向き不向きを、項目ごとに見ていきます。
チャネル別については、向いている事業は顧客層が単一に近い、弱くなる点は層ごとの訴求が平均化する。
顧客層別については、向いている事業は規模や業種のばらつきが大きい、弱くなる点はチャネルの専門性が薄まる。
プロダクト別については、向いている事業は複数の商材を持つ、弱くなる点は重複する作業が増える。
機能別については、向いている事業は規模が小さい段階、弱くなる点は連携の手間が増える。
顧客層別に分けるときの注意
層ごとにチームを分けると、広告の運用やデータの扱いが重複します。
専門性を要する部分は、共通の機能として残す形が現実的です。
チャネル別に分けるときの注意
チャネルごとに目標を持たせると、同じ顧客を別々に取りにいく動きが起きます。
最終的な受注の帰属をどう決めるかを、先に取り決めます。
分け方は、事業の段階で変える
単一の顧客層で始めた事業が、大企業向けに広がることがあります。その段階で、チャネル別から顧客層別へ切り替える判断が必要になります。分け方を固定し続けると、新しい層の立ち上がりが遅れます。
外部に出す仕事と、社内に残す仕事をどう分けるのか
判断に関わる仕事を社内に残し、実装と制作を外に出します。
この線で分けると、外部の体制が変わっても社内に知見が残ります。
すべてを社内で抱えると、人が足りません。
すべてを外に出すと、数字の意味を説明できなくなります。
線を引く基準
その仕事の成果物が、判断を変えるかどうかで分けます。
どこにいくら配分するかを決める作業は社内です。
決めた配分を実行する作業は外に出せます。
社内と外部の分け方を、項目ごとに見ていきます。
予算の配分の決定については、社内か外部かは社内、理由は事業の方針に直結する。
有効リードの定義については、社内か外部かは社内、理由は営業との合意が必要。
広告の入稿と日々の調整については、社内か外部かは外部でよい、理由は実装の作業。
クリエイティブの制作については、社内か外部かは外部でよい、理由は制作の専門性が要る。
計測の設計については、社内か外部かは社内、理由は数字の意味を説明する必要がある。
計測の実装については、社内か外部かは外部でよい、理由は技術の作業。
数字の解釈と報告については、社内か外部かは社内、理由は経営への説明責任がある。
外部に出したあとに社内で持つもの
管理画面の権限、計測の設定、データの所有。
この3つは社内で保持します。
体制が変わったときに、引き継ぎで止まらなくなります。
外部の使い方を段階で変える
Testifyが2026年5月に実施した調査では、代理店を全面委託している企業の8割超が1年以内のインハウス化を計画または検討していました。
動機はノウハウの蓄積が56.7%、コスト削減が46.7%です。
一方で障壁として、教育の時間と知見の不足が44.8%、媒体の更新への追随が40.3%挙がっています。
全面委託から一気に内製に切り替えるのではなく、判断の部分から順に社内へ戻す進め方が現実的です。
人が増えても成果が伸びなくなるのは、なぜか
調整の時間が増え、判断の速度が落ちるからです。
人数に比例して増えるのは施策の数で、成果は入口の広さで頭打ちになります。
増員すれば施策は増えます。
ただし、その施策が届く先の市場は自動では広がりません。
頭打ちになる3つの原因
増員しても伸びなくなる原因を、項目ごとに見ていきます。
市場の上限については、起きていることは対象企業に行き渡っている、対処の方向は新しい層かプロダクトを増やす。
調整の時間については、起きていることは会議と確認が増える、対処の方向は決裁の範囲を下位に降ろす。
施策の重複については、起きていることは複数のチームが同じ層に出す、対処の方向は担当の境界を引き直す。
判断の集中については、起きていることは責任者に承認が集中する、対処の方向は金額の上限を決めて委譲する。
定義の不在については、起きていることは数字の意味が揃っていない、対処の方向は定義を固定して記録を揃える。
増員の前に確かめること
現在のチームの時間が、どこに使われているかを出します。
施策の実行ではなく、確認と報告に時間が使われている場合、人を増やしても同じ構造が続きます。
決裁の範囲を降ろす
一定額までは担当の判断で動かせる範囲を作ります。
金額の上限と事後の報告の形を決めておけば、統制は保てます。
この変更だけで、施策の反映までの日数が縮みます。
成果の頭打ちが市場側にある場合
対象としている市場に行き渡っているなら、組織の問題ではありません。新しい顧客層に広げるか、提供するものを増やす判断に移ります。
組織を作り替える順番を、どう置くか
数字を出せる状態を作ることからです。
役割を先に決めても、評価に使う数字がなければ機能しません。
組織の設計は、人を配置する作業ではなく、何を誰が決めるかを決める作業です。
組織を作り替える手順を、項目ごとに見ていきます。
1については、やることは各段階の数字を毎月出せる状態にする、期間の目安は1か月。
2については、やることは既存顧客向けの施策を誰が担うか決める、期間の目安は2週間。
3については、やることは判断と実装の線を引き、外部の範囲を決める、期間の目安は2週間。
4については、やることはプロダクトと接続する役割を置く、期間の目安は1か月。
5については、やることは決裁の範囲を金額で決めて下位に降ろす、期間の目安は2週間。
6については、やることは顧客層別かチャネル別かを見直す、期間の目安は期の区切りで実施。
見る数字を決める
数字は説明のための仮の値です。
マーケティングの人員が4人、月の予算が400万円、新規契約額が月200万円とします。
人を1人増やすなら、その人が担う範囲で新規契約額がいくら増えるかを先に置きます。
置けないなら、増やすべきは人ではなく別のものです。
組織の状態を見る数字を、項目ごとに見ていきます。
一人あたりの新規契約額については、見る頻度は四半期、何のために見るかは増員の効果が出ているか。
施策の反映までの日数については、見る頻度は毎月、何のために見るかは判断が滞っていないか。
会議と報告に使う時間の比率については、見る頻度は四半期、何のために見るかは調整が膨らんでいないか。
外部への委託費の比率については、見る頻度は四半期、何のために見るかは社内と外部の配分が適切か。
既存向け施策からの拡大額については、見る頻度は毎月、何のために見るかは既存側が動いているか。
担当の重複している施策数については、見る頻度は四半期、何のために見るかは境界が曖昧になっていないか。
役割の名前より、決める範囲を先に書く
肩書きを決めても、何を決めてよいかが不明確なら動けません。
役割ごとに、単独で決めてよいこととそうでないことを文書にします。
変更は期の区切りに合わせる
組織の変更を期の途中で行うと、評価の基準が揺れます。
急を要する場合を除き、期の区切りに合わせます。
組織の形で判断に迷う場合は、無料相談で現状の体制を見てもらうところから始められます。役割の分担ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
BtoB SaaSでマーケティングの最初の一人には何を任せるべきですか
施策の実行ではなく、数字を出せる状態を作ることです。問い合わせの記録の一元化、有効リードの定義の合意、各段階の率の集計。この土台がないと、以降の施策の評価ができません。
プロダクトマーケティングの役割は、開発とマーケティングのどちらに置くべきですか
マーケティングの側です。開発側に置くと、市場での言葉に翻訳する作業が開発の優先順位に押されて後回しになります。専任が置けない段階でも、開発の定例に出る時間は確保してください。
組織はチャネル別と顧客層別のどちらで分けるべきですか
顧客層のばらつきで決まります。小規模の顧客と大企業が混在しているならば顧客層別、顧客層が単一に近いならチャネル別です。層別にする場合、広告運用やデータの扱いは共通の機能として残してください。
どこまでを外部に出してよいですか
判断に関わる仕事を社内に残し、実装と制作を外に出す線が扱いやすい形です。管理画面の権限、計測の設定、データの所有は社内で保持してください。体制が変わっても引き継ぎで止まりません。
人を増やしたのに成果が伸びません
市場の上限に達しているか、調整の時間が増えているかのどちらかです。まず現在のチームの時間がどこに使われているかを出してください。確認と報告に多くが消えているなら、決裁の範囲を下位に降ろすほうが先です。
まとめ
- プロダクトの中に、マーケティングが使える情報と接点があることです。利用データと、プロダクト内の画面が、獲得と維持の両方に効きます
- 施策の実行ではなく、数字を出せる状態を作ることです。獲得の実務は外に出せますが、数字の定義と集計は社内でしか作れません
- 獲得の量を作る役割の次に、質と定着を見る役割を置きます。量だけを増やし続けると、解約が後から膨らみます
- マーケティングの側に置きます。開発の側に置くと、市場での言葉に翻訳する作業が後回しになります
- 顧客層のばらつきが大きいなら顧客層別、小さいならチャネル別です。小規模の顧客と大企業が混在している事業では、チャネル別に分けると訴求が平均化します
- 判断に関わる仕事を社内に残し、実装と制作を外に出します。この線で分けると、外部の体制が変わっても社内に知見が残ります
- 調整の時間が増え、判断の速度が落ちるからです。人数に比例して増えるのは施策の数で、成果は入口の広さで頭打ちになります
- 数字を出せる状態を作ることからです。役割を先に決めても、評価に使う数字がなければ機能しません