
全社の平均で1つの数字を出しているからです。
平均のLTVは、どの顧客層にいくらまで使ってよいかを決める役には立ちません。
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目次
目次
- LTVを計算しても、判断に使えないことがあるのはなぜか
- 平均が実態と離れる場面
- LTVを動かす要素は、どこに分かれるのか
- 4つの要素と、その性質
- 解約は、いつどこで決まっているのか
- 初期の期間に起きていること
- 既存顧客からの拡大を、LTVにどう織り込むのか
- 拡大と縮小を同時に見る
- セグメントごとにLTVが違うとき、獲得の配分をどうするのか
- 層ごとに上限を変える
- LTVを伸ばす打ち手のうち、マーケティングが関与できるのはどこか
- 獲得する層の選択
- LTVの数字が独り歩きすると、何が起きるのか
- 数字が膨らむ3つの置き方
- LTVの設計は、どこから着手するのか
- 見る数字を決める
- よくある質問
- まとめ
全社の平均で1つの数字を出しているからです。
平均のLTVは、どの顧客層にいくらまで使ってよいかを決める役には立ちません。
LTVを計算しても、判断に使えないことがあるのはなぜか
全社の平均で1つの数字を出しているからです。
平均のLTVは、どの顧客層にいくらまで使ってよいかを決める役には立ちません。
LTVは、1件の顧客が契約期間を通じて生む金額です。
この数字を出している事業は多くあります。
ただし、出したあとに何も決まらないことがあります。
原因は、出し方にあります。
全社の平均月額と、全社の平均継続期間を掛けた数字は、どの顧客も表していません。
平均が実態と離れる場面
小規模の顧客と大企業の顧客が混ざっている事業を考えます。
片方は単価が低く解約も早く、もう片方は単価が高く長く続きます。
平均を出すと、どちらの層にも当てはまらない中間の数字になります。
平均のLTVが判断に使えなくなる例
| 顧客層 | 平均月額 | 継続の傾向 | 平均に混ぜたときの影響 |
|---|---|---|---|
| 小規模 | 低い | 短い | 平均を押し下げる |
| 中堅 | 中程度 | 中程度 | 平均に近い |
| 大企業 | 高い | 長い | 平均を押し上げる |
| 無料から有料に移行 | 低い | ばらつきが大きい | 平均を不安定にする |
| 値引きで獲得 | 低い | 短い | 平均を押し下げる |
使える形にするための条件
顧客層ごとに分けること。
確認できる期間に区切ること。
粗利で計算すること。
この3つが揃うと、獲得にいくらまで使ってよいかが決まります。
LTVは計算する数字ではなく、設計する数字
出てきた数字を眺めるだけでは事業は変わりません。どの要素をどれだけ動かすと、LTVがいくら伸びるか。この分解までやって、初めて打ち手が決まります。
LTVを動かす要素は、どこに分かれるのか
単価、継続期間、拡大、粗利率の4つです。
どれを動かすかで、関わる部門も、効果が出るまでの時間も変わります。
LTVを1つの塊で見ていると、何をすれば伸びるかが分かりません。
掛け算の要素に分けます。
4つの要素と、その性質
LTVを構成する要素と、動かし方
| 要素 | 動かす方法 | 効果が出るまで | 主に動かす部門 |
|---|---|---|---|
| 契約時の単価 | 価格改定とプラン構成の見直し | 即時から数か月 | 経営と営業 |
| 継続期間 | 定着支援と解約の予防 | 半年以上 | カスタマーサクセスと開発 |
| 契約後の拡大 | 上位プランと利用人数の追加 | 数か月 | 営業とカスタマーサクセス |
| 粗利率 | 提供原価の削減 | 数か月から1年 | 開発と運用 |
単価を動かすのが最も速い
価格の改定やプランの構成を変えると、新規の顧客には即座に効きます。
既存の顧客に適用する場合は、解約の増加という副作用が伴います。
新規と既存で、適用の時期を分けて検討します。
継続期間は、最も遅く効く
定着の施策を打っても、その効果が継続期間の数字に出るまでに半年以上かかります。
短期の評価では動いたかどうかが分かりません。
初期の利用の深さを、継続期間の代理指標として見ます。
粗利率を忘れない
提供にかかる原価が重い事業では、売上ベースのLTVが実態より大きく出ます。サーバーの費用、サポートの人件費、初期設定の工数。これらを含めた粗利で計算しないと、獲得の上限が過大になります。
解約は、いつどこで決まっているのか
契約から最初の数か月で、ほぼ決まっています。
解約の申し出は更新の時期に来ますが、原因は初期の定着にあります。
解約の対策というと、更新の時期の接触の話になりがちです。
実際には、その時点で打てる手は限られています。
初期の期間に起きていること
契約から最初の数週間で、初期設定が終わるかどうか。
実際の業務のデータが入るかどうか。
使う人が1人から複数に広がるかどうか。
ここで止まった顧客は、その後の利用も伸びません。
契約後の段階と、解約につながる兆候
| 段階 | 進んでいる状態 | 止まっている兆候 |
|---|---|---|
| 契約直後 | 担当者が決まり日程が入る | 窓口が決まらない |
| 初期設定 | 設定が完了し運用が始まる | 設定の途中で止まる |
| 業務投入 | 実データが入る | 試験データのまま |
| 利用の拡大 | 複数の担当者が使う | 1人だけが使っている |
| 定着後 | 利用が習慣になる | 月ごとに利用が減る |
獲得の段階に原因があることがある
期待と実際の機能がずれていた場合、定着は進みません。
訴求の内容が実態より広く見せていると、契約後に食い違いが出ます。
解約の理由に期待との差が挙がるなら、原因は獲得の側にあります。
解約の理由を、獲得の入口ごとに集計する
解約した顧客が、どの入口から来たかを紐付けます。
特定の入口からの顧客に解約が集中していれば、その入口の訴求か配信の設定に原因があります。
解約率の計算の定義を固定する
件数で数えるか、金額で数えるか。申し出の時点か、契約の終了時点か。定義が揺れると、月ごとの比較ができなくなります。
既存顧客からの拡大を、LTVにどう織り込むのか
契約時の単価ではなく、期間を通じた単価の推移で計算します。
拡大が起きる事業では、契約時の単価だけで計算するとLTVが実態より小さく出ます。
利用人数が増える、上位のプランに移る、追加の機能を契約する。
これらが起きる事業では、契約時の単価がそのまま続くわけではありません。
拡大と縮小を同時に見る
拡大だけを見ると、実態より良い数字になります。
利用人数の減少やプランの引き下げも同時に起きています。
両方を合算した、期間を通じた単価の推移で見ます。
契約後の単価の動きと、LTVへの影響
| 動き | 単価への影響 | LTVへの影響 |
|---|---|---|
| 利用人数の増加 | 上がる | 大きく伸びる |
| 上位プランへの移行 | 上がる | 大きく伸びる |
| 追加機能の契約 | 上がる | 伸びる |
| 利用人数の削減 | 下がる | 縮む |
| プランの引き下げ | 下がる | 縮む |
拡大が起きやすい条件を見つける
拡大した顧客と、しなかった顧客の違いを並べます。
契約時の規模、導入した部門、初期の利用の深さ。
この違いが分かると、獲得の段階で狙う層が決まります。
拡大を前提にした獲得の判断
契約時の単価が低くても、拡大が見込める層なら獲得に使える額は増えます。
小さく入って広げる流れを前提にするなら、初期の単価の低さは問題になりません。
ただし、拡大が実際に起きているかを継続して確認する必要があります。
拡大の見込みを楽観しない
将来の拡大を織り込んだLTVで獲得の上限を決めると、拡大が起きなかったときに回収できません。拡大を含む数字と含まない数字の両方を出し、含まない数字で下限を確認します。
セグメントごとにLTVが違うとき、獲得の配分をどうするのか
LTVの高い層に寄せるのではなく、層ごとに上限を変えて並行して獲得します。
高い層だけを追うと、対象企業数の上限にすぐ到達します。
LTVの高い層が分かると、そこに集中したくなります。
ただし、その層は多くの場合、母数が限られています。
層ごとに上限を変える
すべての層に同じ獲得単価の上限を適用すると、片方では使いすぎ、もう片方では使わなすぎになります。
層ごとにLTVを出し、それぞれに上限を設定します。
層ごとの獲得上限の考え方を、項目ごとに見ていきます。
小規模については、LTVの傾向は低い、獲得上限は低く設定、件数の上限は市場が広く多い。
中堅については、LTVの傾向は中程度、獲得上限は中程度、件数の上限は一定数ある。
大企業については、LTVの傾向は高い、獲得上限は高く設定、件数の上限は対象企業数で頭打ち。
特定業種に特化については、LTVの傾向は層による、獲得上限は業種ごとに設定、件数の上限は業種の企業数による。
高い層に集中したときに起きること
対象企業数が限られた層に予算を集中すると、同じ企業に何度も接触することになります。
獲得単価は上がり、それでも件数は増えません。
この層は、件数ではなく接点を持てた企業数で管理します。
低い層を切らない理由
単価の低い層は、事業の入口として機能していることがあります。
小さく契約して、後から拡大する経路があるなら、その層の初期のLTVだけで判断できません。
拡大までを含めた数字で評価します。
配分の見直しの周期
セグメントごとのLTVは、プロダクトの変化と価格の改定で動きます。四半期に一度、層ごとの数字を並べて配分を見直します。
LTVを伸ばす打ち手のうち、マーケティングが関与できるのはどこか
獲得する層の選択と、契約前の期待の整え方です。
定着の支援そのものは他部門の仕事ですが、その前提はマーケティングが作っています。
LTVの改善は、カスタマーサクセスや開発の仕事だと整理されがちです。
実際には、獲得の段階で決まっている部分があります。
獲得する層の選択
定着しやすい層と、そうでない層があります。
どちらを取りにいくかは、配信の設定と訴求の内容で決まります。
これはマーケティングの判断の範囲です。
マーケティングが関与できる範囲を、項目ごとに見ていきます。
獲得する層の選択については、関与の仕方は配信の対象と訴求の設計、効いてくる場所は継続期間。
契約前の期待の調整については、関与の仕方はできることとできないことの明示、効いてくる場所は初期の定着。
初期の利用の後押しについては、関与の仕方は契約直後の案内と導線、効いてくる場所は初期設定の完了率。
既存への情報提供については、関与の仕方は活用の事例と新機能の案内、効いてくる場所は拡大。
解約理由の獲得への反映については、関与の仕方は入口ごとの解約率の集計、効いてくる場所は継続期間。
期待を広げすぎない訴求
できることを大きく見せると、契約は取れて定着しません。
向かない使い方を明示することで、対象外の顧客の契約を減らせます。
短期の件数は減り、定着率は上がります。
契約直後の案内をマーケティングが担う
契約した直後の案内は、担当者の手作業になっていることがあります。
初期設定の案内や、最初に使うべき機能の紹介は、仕組みとして作れる領域です。
ここを整えると、初期設定の完了率が動きます。
既存顧客への情報提供の位置づけ
新機能の案内や活用の情報は、拡大に直結します。獲得の施策と比べて費用がかからず、対象も明確です。予算の配分で後回しにされやすい領域です。
LTVの数字が独り歩きすると、何が起きるのか
獲得の上限が過大に設定されます。
楽観的な継続期間を前提にすると、回収できない獲得が続きます。
LTVは、前提の置き方で大きく変わる数字です。
その前提が共有されないまま数字だけが使われると、判断を誤ります。
数字が膨らむ3つの置き方
LTVが過大になる前提の置き方を、項目ごとに見ていきます。
解約率の逆数をそのまま使うについては、何が起きるかは実績のない期間まで含まれる、どう直すかは確認できる期間で区切る。
売上で計算するについては、何が起きるかは提供原価が反映されない、どう直すかは粗利で計算する。
拡大を最大値で見込むについては、何が起きるかは一部の顧客の動きを全体に適用、どう直すかは拡大を含まない数字も出す。
全社平均を使うについては、何が起きるかはどの層にも当てはまらない、どう直すかは層ごとに出す。
好調な時期の数字を使うについては、何が起きるかは市場環境の変化が反映されない、どう直すかは直近12か月で更新する。
数字と一緒に前提を書く
LTVの数字を社内で共有するときは、前提を併記します。
何か月で区切ったか、粗利か売上か、どの層の数字か。
これがないと、受け取った側が別の意味で使います。
見直しの時期を決めておく
LTVは一度出して終わりにはなりません。
価格の改定、プランの変更、解約率の変化で動きます。
四半期ごとに更新する時期を決めます。
上限に達したときの扱いを決める
獲得単価が上限を超えたチャネルをどうするか。すぐ止めるのか、何か月続いたら止めるのか。これを決めておかないと、上限の数字が形だけのものになります。
LTVの設計は、どこから着手するのか
解約率の定義を固定するところからです。
定義が揺れていると、継続期間もLTVも比較できません。
LTVの作業は、計算式を作ることではなく、計算に使う数字の定義を固めることから始まります。
LTVの設計を進める順番を、項目ごとに見ていきます。
1については、やることは解約の定義と計上の時点を確定する、期間の目安は1週間。
2については、やることは顧客層の区分を決めて過去12か月を集計する、期間の目安は2週間。
3については、やることは提供原価を洗い出して粗利率を出す、期間の目安は2週間。
4については、やることは層ごとに区切った期間でLTVを出す、期間の目安は1週間。
5については、やることは層ごとの獲得上限を決めて合意する、期間の目安は2週間。
6については、やることは解約理由を入口ごとに集計する経路を作る、期間の目安は2週間。
見る数字を決める
数字は説明のための仮の値です。
ある層の平均月額が15万円、粗利率が80%、区切った期間を24か月とすれば、LTVは288万円です。
拡大を含めて平均月額が期間中に18万円まで伸びるなら、LTVは345万円になります。
この差が、獲得に使える額の差になります。
LTVの前提を点検する数字を、項目ごとに見ていきます。
層別の解約率については、見る頻度は毎月、何のために見るかは前提が崩れていないか。
初期設定の完了率については、見る頻度は毎月、何のために見るかは定着の入口が詰まっていないか。
獲得月別の3か月継続率については、見る頻度は四半期、何のために見るかは獲得の質が保たれているか。
契約後の単価の推移については、見る頻度は四半期、何のために見るかは拡大が起きているか。
層別の粗利率については、見る頻度は四半期、何のために見るかは提供原価が変わっていないか。
入口別の解約率については、見る頻度は四半期、何のために見るかはどの獲得が定着していないか。
前提を文書にして共有する
区切った期間、粗利の計算に含めた原価、層の分け方。
この3つを文書にして、経営と各部門で共有します。
数字だけが共有されると、別の意味で使われます。
最初は粗い数字で構わない
正確な原価の配賦に時間をかけるより、粗い数字で層ごとの差を把握するほうが先です。
差が分かれば、獲得の配分の判断はできます。
LTVの前提づくりで判断に迷う場合は、無料相談で現状の数字を一緒に整理するところから始められます。獲得の上限の設計ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
LTVは全社の平均で出してもいいですか
平均は、どの顧客層も表していない数字になります。小規模と大企業では単価も継続期間も違います。層ごとに分けて出さないと、獲得にいくらまで使ってよいかが決まりません。
継続期間は解約率の逆数で計算していいですか
計算上はそうなりますが、実績のない期間まで前提に入ると上限が過大になります。24か月や36か月など、自社で確認できる範囲に区切った期間を使ってください。
解約を減らすには、更新の時期に何をすればいいですか
その時点で打てる手は限られています。解約は契約から最初の数か月の定着でほぼ決まっています。初期設定の完了率と、利用が1人から複数に広がったかどうかを見てください。
契約後の拡大をLTVに含めていいですか
含めた数字と含まない数字の両方を出してください。拡大を前提に獲得の上限を決めると、拡大が起きなかったときに回収できません。含まない数字で下限を確認する形が安全です。
LTVの改善に、マーケティングはどこまで関われますか
獲得する層の選択と、契約前の期待の整え方です。どちらも配信と訴求の設計で決まる範囲です。契約直後の案内の仕組み化も、初期設定の完了率に効きます。
まとめ
- 全社の平均で1つの数字を出しているからです。平均のLTVは、どの顧客層にいくらまで使ってよいかを決める役には立ちません
- 単価、継続期間、拡大、粗利率の4つです。どれを動かすかで、関わる部門も、効果が出るまでの時間も変わります
- 契約から最初の数か月で、ほぼ決まっています。解約の申し出は更新の時期に来ますが、原因は初期の定着にあります
- 契約時の単価ではなく、期間を通じた単価の推移で計算します。拡大が起きる事業では、契約時の単価だけで計算するとLTVが実態より小さく出ます
- LTVの高い層に寄せるのではなく、層ごとに上限を変えて並行して獲得します。高い層だけを追うと、対象企業数の上限にすぐ到達します
- 獲得する層の選択と、契約前の期待の整え方です。定着の支援そのものは他部門の仕事ですが、その前提はマーケティングが作っています
- 獲得の上限が過大に設定されます。楽観的な継続期間を前提にすると、回収できない獲得が続きます
- 解約率の定義を固定するところからです。定義が揺れていると、継続期間もLTVも比較できません