BtoB SaaSのマーケと営業の連携|対立が起きる理由と解き方

成果が確定するまでの時間が、部門ごとに違うからです。
マーケティングは当月で評価され、営業は数か月後に評価され、収益はさらに後から積み上がります。
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目次
目次
- マーケティングと営業の対立が、BtoB SaaSで起きやすいのはなぜか
- 時間軸のずれが、会話を噛み合わなくさせる
- 評価の単位が違うと、何が起きるのか
- 件数で評価する副作用
- カスタマーサクセスが加わると、対立はどう変わるのか
- 責任の空白が生まれる場所
- 共通の数字を1つ置くと、議論はどう変わるのか
- 何を共通の数字にするか
- 会議体をどう組み替えるのか
- 3つの層に分ける
- 用語と定義を揃える作業を、誰がやるのか
- 揃えるべき言葉
- 仲が良いだけの連携が、成果につながらない理由
- 摩擦がないのに数字が動かない状態
- 連携の組み直しは、どこから着手するのか
- 見る数字を決める
- よくある質問
- まとめ
成果が確定するまでの時間が、部門ごとに違うからです。
マーケティングは当月で評価され、営業は数か月後に評価され、収益はさらに後から積み上がります。
マーケティングと営業の対立が、BtoB SaaSで起きやすいのはなぜか
成果が確定するまでの時間が、部門ごとに違うからです。
マーケティングは当月で評価され、営業は数か月後に評価され、収益はさらに後から積み上がります。
どの業種でもマーケティングと営業の間に摩擦はあります。
BtoB SaaSでは、その摩擦が構造的に強く出ます。
理由は3つあります。
成果が出るまでの時間が部門ごとに違うこと。
収益が契約の時点で確定しないこと。
契約の後にもう1つの部門が関わること。
時間軸のずれが、会話を噛み合わなくさせる
マーケティングは、当月に何件取れたかで評価されます。
営業は、数か月かけて進む商談の結果で評価されます。
同じ月の会議で、片方は今月の件数の話をし、もう片方は3か月前のリードの話をします。
部門ごとの時間軸のずれ
| 部門 | 評価される数字 | 確定するまでの期間 |
|---|---|---|
| マーケティング | リード件数と獲得単価 | 当月 |
| インサイドセールス | 商談化した件数 | 数日から数週間 |
| 営業 | 受注件数と契約額 | 1か月から半年 |
| カスタマーサクセス | 継続率と拡大額 | 契約から数か月以降 |
契約が終わりではないという事情
一回性の商材であれば、受注した時点で成果が確定します。
継続課金では、契約の後に定着と更新が続きます。
だから、良いリードだったかどうかの判定が、契約から数か月後にずれ込みます。
対立の中身は、たいてい定義の不在
質が悪いという主張と、対応が遅いという主張がぶつかります。どちらも、何をもって質とするか、何時間以内を対応とするかが決まっていないことが原因です。感情の問題に見えて、実際は定義の問題であることがほとんどです。
評価の単位が違うと、何が起きるのか
それぞれが自分の数字を守る動きに変わります。
件数で評価される側は件数を作り、受注率で評価される側は渡されたリードを選びます。
部門の行動は、評価の仕方で決まります。
連携がうまくいかないとき、原因は個人の姿勢ではなく評価の設計にあります。
件数で評価する副作用
件数の目標だけを置くと、ハードルの低い獲得に寄ります。
配信を広げ、入力項目を減らし、資料の本数を増やします。
件数は増え、商談化率は下がります。
受注率で評価する副作用
営業を受注率だけで評価すると、確度の低いリードに手をつけなくなります。
渡されたリードの一部が、接触されないまま残ります。
マーケティング側からは、対応されていないと見えます。
評価の置き方と、現場に出る動き
| 評価の対象 | 現場に出る動き | 起きる問題 |
|---|---|---|
| リード件数のみ | 量を作りにいく | 質が落ちる |
| 獲得単価のみ | 安く取れる層に寄る | 対象が狭まる |
| 受注率のみ | 確度の高い案件だけ進める | 機会を取りこぼす |
| 受注件数のみ | 小さい案件を多数取る | 単価が下がる |
| 継続率のみ | 解約しそうな顧客を避ける | 拡大の機会を逃す |
片方だけを直しても解けない
マーケティングの評価に質の指標を足しても、営業の評価が受注率だけなら摩擦は残ります。
両方の評価を同時に組み替える必要があります。
評価の変更は、期の区切りで行う
期の途中で評価の指標を変えると、それまでの努力が否定されたと受け取られます。変更は期の区切りに合わせ、なぜ変えるかを先に説明します。
カスタマーサクセスが加わると、対立はどう変わるのか
二者の押しつけ合いが、三者の責任の空白に変わります。
どの部門も自分の担当外だと考える領域が生まれます。
BtoB SaaSでは、契約の後に定着と更新を担う部門があります。
この部門が加わることで、責任の切れ目が2か所になります。
責任の空白が生まれる場所
マーケティングと営業の間。
営業とカスタマーサクセスの間。
この2か所で、引き継ぎの情報が落ちます。
引き継ぎの切れ目と、落ちやすい情報
| 切れ目 | 落ちやすい情報 | 落ちたときに起きること |
|---|---|---|
| マーケティングから営業 | 何に関心を持って問い合わせたか | 同じ説明を最初からやり直す |
| 営業からカスタマーサクセス | 契約時に何を期待していたか | 想定と違う使い方で定着しない |
| カスタマーサクセスから営業 | 拡大の見込みがある顧客 | 追加の提案が遅れる |
| カスタマーサクセスからマーケティング | 解約の理由 | 同じ層を取り続ける |
解約の理由が、獲得に戻ってこない
解約した顧客の理由は、カスタマーサクセスが最もよく知っています。
この情報がマーケティングに戻らないと、同じ条件の顧客を取り続けます。
月に一度、解約の理由を入口ごとに集計して共有する場を作ります。
拡大の責任を誰が持つか決める
既存顧客の上位プランへの移行を、営業が担うのかカスタマーサクセスが担うのか。
決まっていないと、どちらも動きません。
規模や金額で線を引き、どちらが提案するかを明記します。
三者で見る数字を1つ持つ
三者が別々の数字を見ていると、議論の土台がありません。純増額のように、三者の動きがすべて反映される数字を共通で置きます。
共通の数字を1つ置くと、議論はどう変わるのか
相手の責任を問う会話から、どこが詰まっているかを探す会話に変わります。
共通の数字がないと、それぞれが自分の数字の正しさを主張し続けます。
連携の改善で最も効くのは、共有する指標を置くことです。
仕組みや会議を増やすより先に、これを決めます。
何を共通の数字にするか
マーケティングと営業の境界にある数字を選びます。
商談数か、そこから生まれる新規契約額です。
共通指標の候補と、置いたときの効果
| 候補 | 境界のどこにあるか | 置いたときの効果 |
|---|---|---|
| 商談数 | マーケティングと営業の間 | 質の議論が具体的になる |
| 新規契約額 | 入口から受注まで | 件数と単価の両方を見るようになる |
| 有効リードあたりの契約額 | 入口の質の評価 | 量だけの議論が減る |
| 純増額 | 全部門 | 維持と拡大にも目が向く |
| 獲得月別の3か月継続率 | 獲得と定着の接続 | 短期の受注だけを追わなくなる |
目標を分けたまま、共通の数字を上に置く
各部門の目標をなくす必要はありません。
部門の目標の上に、共通の数字を1つ置きます。
会議は共通の数字から始めて、そこから部門の数字に降ります。
共通の数字に連動する仕組みを作る
共通の数字を置いても、評価に反映されなければ行動は変わりません。
評価の一部に組み込むか、達成時の扱いを決めておきます。
数字を見る場所を一本化する
部門ごとに別のツールで数字を出していると、同じ名前の指標でも値が違います。どの画面の数字を正とするかを決めます。
会議体をどう組み替えるのか
頻度ではなく、議題の粒度を分けます。
週次では止まっている案件を、月次では率の変化を、四半期では定義そのものを扱います。
連携のために会議を増やす進め方があります。
数が増えると出席者が減り、形骸化します。
何を扱うかを分けて、必要な人だけが出る形にします。
3つの層に分ける
会議の層と、扱う内容を、項目ごとに見ていきます。
週次については、出席者は実務の担当者、扱う内容は止まっているリードと商談の個別対応。
月次については、出席者は各部門の責任者、扱う内容は入口別の率の変化と失注理由の傾向。
四半期については、出席者は責任者と経営、扱う内容は定義の見直しと目標の再設定。
半期については、出席者は全員、扱う内容は評価の指標の組み替え。
週次の会議で個別案件を扱う理由
率の議論を週次でしても、母数が足りず振れるだけです。
週次では、止まっている個別の案件を動かすことに絞ります。
接触されていないリードと、進んでいない商談を名指しで確認します。
月次では、原因の所在まで降りる
入口別の商談化率と、失注の理由の内訳を並べます。
どの入口の、どの理由が増えたかまで見ます。
ここまで降りないと、翌月の施策が決まりません。
資料を作る負担を減らす
会議のたびに資料を作り直していると、続きません。見る項目を固定して、数字だけが入れ替わる形にします。
用語と定義を揃える作業を、誰がやるのか
どちらかの部門ではなく、両部門の上位者が決めます。
現場同士の話し合いでは、自部門に有利な定義に寄ります。
有効リード、商談、案件、失注。
同じ言葉が、部門によって違う意味で使われています。
揃えるべき言葉
定義を揃える言葉と、決める内容を、項目ごとに見ていきます。
有効リードについては、決めることはどの条件を満たしたものか、決めないと起きることは渡す基準が人によって変わる。
商談については、決めることはどの段階から商談と数えるか、決めないと起きることは商談化率が比較できない。
案件については、決めることは受注見込みとして扱う基準、決めないと起きることは見込みの集計が合わない。
失注については、決めることはいつの時点で失注とするか、決めないと起きることは残っている案件の数が実態と違う。
解約については、決めることは申し出時点か終了時点か、決めないと起きることは解約率の数字が部門で食い違う。
決め方の手順
現状で各部門が使っている意味を書き出します。
違いが出たところだけを議題にします。
最初から理想の定義を作ろうとすると、時間がかかりすぎます。
決めた定義を、システムの選択肢に落とす
文書だけを作っても、実務では使われません。
管理ツールの入力項目と選択肢を、決めた定義に合わせて作り替えます。
選択肢に存在しない状態は記録できなくなり、定義が強制されます。
定義の変更履歴を残す
いつ、なぜ変えたかを記録します。これがないと、過去の数字と比較したときに説明がつきません。
仲が良いだけの連携が、成果につながらない理由
問題が表に出なくなるからです。
摩擦がないことと、数字が動いていることは別です。
連携の改善というと、部門間の関係の良さの話になりがちです。
関係が良くても、事業の数字が動かないことがあります。
摩擦がないのに数字が動かない状態
質の低いリードを、営業が黙って受け取っています。
対応が遅れていても、マーケティング側が指摘しません。
お互いに配慮しているうちに、改善の機会が失われます。
連携の状態と、数字の動きを、項目ごとに見ていきます。
摩擦があるについては、数字の共有は共有されていない、起きていることは押しつけ合いが続く。
摩擦があるについては、数字の共有は共有されている、起きていることは原因の特定が進む。
摩擦がないについては、数字の共有は共有されていない、起きていることは問題が表に出ない。
摩擦がないについては、数字の共有は共有されている、起きていることは改善が速い。
指摘が出る仕組みを作る
個人の関係に任せず、数字が自動的に表に出る形にします。
接触されていないリードの件数、差し戻しの件数、対応時間の分布。
これらが毎週同じ形で共有されていれば、指摘は不要になります。
交流の施策を目的にしない
合同の会や、席の配置の変更には一定の効果があります。ただし、それ自体は成果指標ではありません。共通の数字が動いたかどうかで判断します。
連携の組み直しは、どこから着手するのか
言葉の定義を揃えるところからです。
定義がずれたまま仕組みを作ると、出てくる数字が食い違い続けます。
連携の改善は、会議や仕組みを作る前に、言葉を揃える作業から始まります。
連携を組み直す順番を、項目ごとに見ていきます。
1については、やることは有効リードと商談と失注の定義を揃える、期間の目安は2週間。
2については、やることは管理ツールの入力項目を定義に合わせる、期間の目安は3週間。
3については、やることは共通の指標を1つ決めて、見る場所を一本化する、期間の目安は2週間。
4については、やることは会議を週次と月次と四半期に分ける、期間の目安は2週間。
5については、やることは解約理由をマーケティングに戻す経路を作る、期間の目安は2週間。
6については、やることは評価の指標を期の区切りで組み替える、期間の目安は期初に実施。
見る数字を決める
数字は説明のための仮の値です。
月に有効リード120件、商談36件、受注12件、平均月額15万円なら、新規契約額は月180万円です。
この新規契約額を共通の数字に置くと、件数と単価の両方に目が向きます。
部門をまたいで並べる数字を、項目ごとに見ていきます。
接触されていないリード件数については、見る頻度は毎週、誰が見るかは両部門の担当者。
差し戻し件数と理由については、見る頻度は毎週、誰が見るかは両部門の担当者。
入口別の商談化率については、見る頻度は毎月、誰が見るかは両部門の責任者。
新規契約額については、見る頻度は毎月、誰が見るかは両部門の責任者と経営。
解約理由の内訳については、見る頻度は毎月、誰が見るかは三部門の責任者。
獲得月別の3か月継続率については、見る頻度は四半期、誰が見るかは三部門の責任者と経営。
最初に変えるのは、記録の形
定義を決めても、記録の形が変わらなければ数字は出ません。
入力項目と選択肢の変更を、定義の合意とセットで進めます。
経営が共通の数字を使う
責任者同士で共通の数字を決めても、経営が部門ごとの数字で評価していれば戻ります。
経営の会議で、共通の数字から報告が始まる形にします。
部門間の噛み合わせで判断に迷う場合は、無料相談で現状の流れを見てもらうところから始められます。獲得から受注までの設計ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
マーケティングと営業の対立は、どこから手をつければ解けますか
有効リードと商談と失注の定義を揃えるところからです。質が悪い、対応が遅いという主張のほとんどは、定義が決まっていないことから生まれています。仕組みや会議より先に言葉を揃えてください。
共通の指標は何を置けばいいですか
商談数か新規契約額です。どちらもマーケティングと営業の境界にあり、片方だけでは動かせません。部門ごとの目標は残したまま、その上に共通の数字を1つ置く形にしてください。
カスタマーサクセスとの連携は、何から始めればいいですか
解約の理由を入口ごとに集計して、マーケティングに戻す経路を作ってください。この情報が戻らないと、解約しやすい層を取り続けることになります。月に一度の共有から始められます。
会議を増やせば連携は良くなりますか
数を増やすと出席者が減り、形骸化します。週次は止まっている個別案件、月次は率の変化と失注理由、四半期は定義の見直しというように、扱う内容を分けてください。
部門の関係は良いのに数字が動きません
摩擦がないことと数字が動いていることは別です。互いに配慮して問題を指摘しなくなっている可能性があります。接触されていないリード件数や対応時間の分布を、毎週同じ形で自動的に共有してください。
まとめ
- 成果が確定するまでの時間が、部門ごとに違うからです。マーケティングは当月で評価され、営業は数か月後に評価され、収益はさらに後から積み上がります
- それぞれが自分の数字を守る動きに変わります。件数で評価される側は件数を作り、受注率で評価される側は渡されたリードを選びます
- 二者の押しつけ合いが、三者の責任の空白に変わります。どの部門も自分の担当外だと考える領域が生まれます
- 相手の責任を問う会話から、どこが詰まっているかを探す会話に変わります。共通の数字がないと、それぞれが自分の数字の正しさを主張し続けます
- 頻度ではなく、議題の粒度を分けます。週次では止まっている案件を、月次では率の変化を、四半期では定義そのものを扱います
- どちらかの部門ではなく、両部門の上位者が決めます。現場同士の話し合いでは、自部門に有利な定義に寄ります
- 問題が表に出なくなるからです。摩擦がないことと、数字が動いていることは別です
- 言葉の定義を揃えるところからです。定義がずれたまま仕組みを作ると、出てくる数字が食い違い続けます