
市場全体の広告費が伸び続けているうえに、SaaSは同じ検索語を取り合う競合が多い構造です。
運用の巧拙だけで止められる上昇ではありません。
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目次
目次
- BtoB SaaSで獲得単価が上がり続けるのは、なぜか
- 市場全体が伸びている
- CPAとCACは、どこで差がつくのか
- 含まれる範囲が違う
- リードの質を、どの数字で分解するのか
- 定義がずれていると、会話にならない
- 商談期間の長さを、どう織り込むのか
- 今月の受注は、数か月前のリード
- 解約率とLTVから、許容CACをどう決めるのか
- 逆算の順番
- 無料トライアルからの転換率を、どこで上げるのか
- 転換率が変わると、CACが変わる
- CAC改善でよくある誤解は何か
- よくある誤解
- 何から手をつければいいのか
- 見る数字を決める
- よくある質問
- まとめ
市場全体の広告費が伸び続けているうえに、SaaSは同じ検索語を取り合う競合が多い構造です。
運用の巧拙だけで止められる上昇ではありません。
BtoB SaaSで獲得単価が上がり続けるのは、なぜか
市場全体の広告費が伸び続けているうえに、SaaSは同じ検索語を取り合う競合が多い構造です。
運用の巧拙だけで止められる上昇ではありません。
CPAが去年より上がったという相談が増えています。
これは自社の運用が悪くなったからとは限りません。
市場全体が伸びている
電通が2026年3月5日に発表した2025年の日本の広告費では、インターネット広告費が4兆459億円で前年比110.8%でした。
総広告費に占める構成比は50.2%となり、初めて過半数を超えています。
2025年の広告費
| 項目 | 金額 | 前年比 |
|---|---|---|
| 総広告費 | 8兆623億円 | 105.1% |
| インターネット広告費 | 4兆459億円 | 110.8% |
| マスコミ四媒体 | 2兆2,980億円 | 98.4% |
電通デジタルの詳細分析では、媒体費3兆3,093億円のうち運用型が2兆9,352億円で、構成比は88.7%です。
入札で決まる領域が大半を占めています。
SaaSは、同じ検索語に集中しやすい
BtoB SaaSの検索は、製品名を知らない状態から始まります。
課題名にツールを付けた語や、業務名に効率化を付けた語で探されます。
この語数は限られているため、同カテゴリの各社が同じ枠を取り合います。
CPAが上がっても、事業として問題ないことがある
広告費の単価が上がっても、受注率と継続率が上がっていれば採算は改善します。
逆にCPAが下がっても、商談にならないリードが増えていれば採算は悪化します。
CPAの増減だけでは判断できません。
CPAの動きと、事業への影響
| CPAの動き | 商談化率 | 受注率 | 事業への影響 |
|---|---|---|---|
| 上がる | 上がる | 上がる | 改善することがある |
| 上がる | 下がる | 下がる | 悪化する |
| 下がる | 下がる | 下がる | 悪化する |
| 下がる | 変わらない | 変わらない | 改善する |
CPAとCACは、どこで差がつくのか
CPAは広告費だけ、CACは営業の人件費やツール費まで含めた数字です。
BtoB SaaSは人が動く工程が長いため、この差が大きくなります。
この2つを混同したまま議論している企業があります。
含まれる範囲が違う
CPAとCACの違い
| 指標 | 含む費用 | 使う場面 |
|---|---|---|
| CPA | 広告費のみ | 媒体や広告グループの比較 |
| CAC | 広告費に加えて人件費、ツール費、制作費など | 事業としての採算判断 |
BtoB SaaSでは、人件費の比重が重い
リードを獲得したあと、インサイドセールスが接触し、商談化し、フィールドセールスが提案します。
この工程に数か月かかります。
その期間の人件費は、全部が獲得コストに乗ります。
CACの内訳の例
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 広告費 | 3,000,000円 |
| インサイドセールスの人件費 | 1,200,000円 |
| フィールドセールスの人件費 | 2,000,000円 |
| MAツール、SFAなどの費用 | 300,000円 |
| クリエイティブ制作費 | 500,000円 |
| 合計 | 7,000,000円 |
| 獲得したリード数 | 200件 |
| CPA(広告費のみ) | 15,000円 |
| 受注件数 | 10件 |
| CAC | 700,000円 |
数字は説明のための仮の値です。
比率が変わると、打ち手も変わる
CACに占める広告費の割合が低い場合、広告のCPAをいくら下げても全体はあまり動きません。
商談化率と受注率を上げるほうが、効きます。
広告費比率と、効く打ち手を、項目ごとに見ていきます。
6割以上については、効きやすい打ち手は媒体の配分、入札、クリエイティブ。
3割から6割については、効きやすい打ち手はリードの質、ナーチャリング。
3割未満については、効きやすい打ち手は商談化率、受注率、営業プロセス。
数字は説明のための仮の値です。
リードの質を、どの数字で分解するのか
MQLとSQLの定義が社内で揃っていないと、質の議論そのものが成立しません。
定義を先に固めてから、各段階の転換率を見ます。
リードの質が悪いという話は、多くの場合そこで止まります。
何をもって質が悪いのかが、定義されていないためです。
定義がずれていると、会話にならない
マーケティング側はフォーム送信をリードと呼び、営業側は商談化したものだけをリードと呼んでいることがあります。
この状態で件数を議論しても、噛み合いません。
段階ごとの定義を揃えるを、項目ごとに見ていきます。
リードについては、定義の例はフォームから個人情報が送信された、誰が判定するかはシステム。
MQLについては、定義の例は役職、企業規模、検討時期の条件を満たす、誰が判定するかはマーケティング。
SQLについては、定義の例は営業が接触し、課題と予算の確認が取れた、誰が判定するかはインサイドセールス。
商談については、定義の例は提案の場が設定された、誰が判定するかはフィールドセールス。
受注については、定義の例は契約が締結された、誰が判定するかはフィールドセールス。
転換率を段階ごとに出す
段階ごとの転換率の例を、項目ごとに見ていきます。
リードについては、件数は200件、前段階からの転換率は-。
MQLについては、件数は80件、前段階からの転換率は40%。
SQLについては、件数は32件、前段階からの転換率は40%。
商談については、件数は20件、前段階からの転換率は62.5%。
受注については、件数は5件、前段階からの転換率は25%。
数字は説明のための仮の値です。
どこで落ちているかで、打ち手が変わる
リードからMQLへの転換率が低ければ、集めている層がずれています。
SQLから商談への転換率が低ければ、インサイドセールスの接触設計の問題です。
商談から受注への転換率が低ければ、製品と提案の問題です。
同じリードの質という言葉でも、原因の場所が違います。
媒体別に同じ表を作る
媒体ごとに受注までの転換率を出すと、CPAの安い媒体が受注していないことが分かります。この確認をしないまま配分を決めると、CPAの安い媒体に寄っていきます。
商談期間の長さを、どう織り込むのか
数か月かかるため、今月のCPAと今月の受注は別のリードから生まれています。
時期をずらして対応させないと、評価を誤ります。
BtoB SaaSの評価が難しい最大の理由が、この時間差です。
今月の受注は、数か月前のリード
時間差の例を、項目ごとに見ていきます。
受注については、元になったリードの獲得時期は4か月前。
商談については、元になったリードの獲得時期は3か月前。
SQL化については、元になったリードの獲得時期は2か月前。
MQL化については、元になったリードの獲得時期は1か月前。
数字は説明のための仮の値です。
同月の数字で割ると、実態とずれる
今月の広告費を今月の受注件数で割ると、CACが実態より高くも低くも出ます。
広告費を増やした月は、CACが跳ね上がって見えます。
広告費を減らした月は、CACが下がって見えます。
どちらも、実態とは逆の判断を招きます。
コホートで見る
獲得月ごとにリードをまとめ、その集団が何か月後にいくらの受注を生んだかを追います。
これなら、時期をずらさずに評価できます。
獲得月ごとの累計受注の例を、項目ごとに見ていきます。
1月については、1か月後は1件、3か月後は4件、6か月後は7件。
2月については、1か月後は0件、3か月後は3件、6か月後は6件。
3月については、1か月後は2件、3か月後は5件、6か月後は-。
数字は説明のための仮の値です。
判断のタイミングを決めておく
何か月分のデータが溜まったら媒体の継続を判断するかを、先に決めます。
決めていないと、1か月の数字で止めたり増やしたりすることになります。
決裁者が複数いることで、さらに伸びる
現場の担当者が申し込んでも、上長や情報システム部門、経理の確認で止まります。この工程が読めないと、商談期間の見積もりが甘くなります。
解約率とLTVから、許容CACをどう決めるのか
解約率がLTVを直接決め、LTVが広告費の上限を決めます。
解約率が1ポイント動くだけで、かけられる金額が変わります。
広告費の上限を、予算がこれだけあるからで決めている企業があります。
それでは増やしていいのか減らすべきかが判断できません。
逆算の順番
許容CACの逆算を、項目ごとに見ていきます。
1については、計算することは月額単価、例は50,000円。
2については、計算することは粗利率、例は80%。
3については、計算することは月次の粗利、例は40,000円。
4については、計算することは月次解約率、例は3%。
5については、計算することは平均継続月数(1÷解約率)、例は33.3か月。
6については、計算することはLTV(粗利ベース)、例は1,332,000円。
7については、計算することは許容CAC(LTVの3分の1)、例は444,000円。
数字は説明のための仮の値です。
解約率が動くと、上限が大きく変わる
解約率別のLTVと許容CACを、項目ごとに見ていきます。
1%については、平均継続月数は100.0か月、LTVは4,000,000円、許容CACは1,333,000円。
2%については、平均継続月数は50.0か月、LTVは2,000,000円、許容CACは666,000円。
3%については、平均継続月数は33.3か月、LTVは1,332,000円、許容CACは444,000円。
5%については、平均継続月数は20.0か月、LTVは800,000円、許容CACは266,000円。
数字は説明のための仮の値です。
CACを下げるより、解約率を下げるほうが効く
解約率が3%から2%に下がると、許容CACは444,000円から666,000円になります。
入札で負けていた枠が取れるようになります。
広告の運用改善でCPAを2割下げるより、こちらのほうが影響が大きいことがあります。
比率の目安は、自社で決める
LTVがCACの3倍というのは、一般に使われる目安です。資金繰りや成長段階によって、適切な水準は変わります。
無料トライアルからの転換率を、どこで上げるのか
有料転換率はCACを直接下げます。
獲得件数を増やすより、転換率を上げるほうが安く済むことがあります。
無料トライアルやフリーミアムを持つ製品では、ここが採算を決めます。
転換率が変わると、CACが変わる
有料転換率とCACの関係を、項目ごとに見ていきます。
500件については、有料転換率は10%、有料顧客数は50件、CACは140,000円。
500件については、有料転換率は15%、有料顧客数は75件、CACは93,000円。
500件については、有料転換率は20%、有料顧客数は100件、CACは70,000円。
広告費とその他費用の合計を7,000,000円と置いた場合です。
数字は説明のための仮の値です。
転換しない理由は、製品の外にもある
使い方が分からないまま期間が終わる。
社内の他の部署の承認が下りない。
既存システムとの接続が確認できない。
製品の機能ではなく、導入の段取りで止まっていることがあります。
転換が止まる場所と、打ち手を、項目ごとに見ていきます。
初期設定が終わらないについては、打ち手は初回の設定支援を用意する。
使われないまま期間が終わるについては、打ち手は利用状況を見て接触するタイミングを決める。
現場は使いたいが決裁が下りないについては、打ち手は決裁者向けの資料を用意する。
既存システムと繋がるか不明については、打ち手は接続の確認手順を公開する。
入口の質が、転換率を決める
広告で集めた層がそもそも対象外であれば、転換率は上がりません。
企業規模や業種の条件を、広告の段階で絞ることを検討します。
トライアル開始を広告のコンバージョンに置くときの注意
トライアル開始だけを媒体に送ると、転換しない層を集める方向に学習が進みます。有料転換もコンバージョンとして送る設計が必要になります。
CAC改善でよくある誤解は何か
CPAを下げれば採算が改善するという前提が、最も多い誤解です。
質の情報を媒体と代理店に返さないと、安いリードに寄っていきます。
改善の方向を誤ると、数字は良くなるのに事業は悪化します。
よくある誤解
誤解と、実際に起きることを、項目ごとに見ていきます。
CPAを下げれば採算が良くなるについては、実際に起きることは商談にならないリードが増え、CACは上がる。
リード件数を増やせば受注も増えるについては、実際に起きることは営業が対応しきれず、放置されるリードが増える。
CPAの安い媒体に寄せれば効率が上がるについては、実際に起きることは受注率の低い媒体に予算が集中する。
解約率は営業と開発の話で、広告とは無関係については、実際に起きることは入口の層がずれると解約率は上がる。
今月のCPAで媒体の継続を判断できるについては、実際に起きることは商談期間を考えると判断が早すぎる。
代理店が見ているのは、多くの場合CPAまで
受注したかどうかの情報は、企業側しか持っていません。
これを渡さなければ、代理店はCPAを下げる提案しかできません。
代理店と共有する数字を、項目ごとに見ていきます。
MQLとSQLの定義については、共有する理由は質の議論の前提になる。
段階ごとの転換率については、共有する理由はどこで落ちているかを共有できる。
媒体別の受注率については、共有する理由は配分の根拠になる。
許容CACについては、共有する理由はどこまで入札を伸ばしてよいかが決まる。
解約率については、共有する理由はLTVの前提になる。
質の情報を媒体にも返す
どのリードが受注したかを媒体側に戻すと、自動入札の学習が変わります。
拡張コンバージョンやオフラインコンバージョンのインポートが、その仕組みです。
代理店への不満は、数字の共有で減ることがある
代理店への不満で経営層の最多は、費用が成果に見合わないで56.3%という調査があります。CPAではなくCACと受注率で話すと、この議論が成立します。
何から手をつければいいのか
MQLとSQLの定義を揃えることからです。
定義がないまま広告の数字を動かしても、質の議論ができません。
順番を飛ばすと、打ち手が空振りします。
着手の順番を、項目ごとに見ていきます。
1については、やることはMQLとSQLの定義を営業と揃える、期間の目安は2週間。
2については、やることは段階ごとの転換率を出す、期間の目安は2週間。
3については、やることは広告費以外を含めたCACを計算する、期間の目安は2週間。
4については、やることは解約率からLTVと許容CACを出す、期間の目安は2週間。
5については、やることは媒体別の受注率を出す、期間の目安は1か月。
6については、やることは受注情報を媒体と代理店に返す仕組みを作る、期間の目安は1か月。
7については、やることは獲得月ごとのコホートで評価に切り替える、期間の目安は継続。
見る数字を決める
見る数字を、項目ごとに見ていきます。
CPAについては、見る頻度は毎週、目安の考え方は媒体と広告グループの比較に使う。
MQL件数とSQL件数については、見る頻度は毎月、目安の考え方は定義どおりに判定されているか。
段階ごとの転換率については、見る頻度は毎月、目安の考え方はどこで落ちているか。
CACについては、見る頻度は毎月、目安の考え方は広告費以外も含めて計算する。
媒体別の受注率については、見る頻度は四半期、目安の考え方は配分の根拠にする。
解約率については、見る頻度は毎月、目安の考え方はLTVと許容CACを動かす。
LTVとCACの比率については、見る頻度は四半期、目安の考え方は3倍が一つの目安。
回収期間については、見る頻度は四半期、目安の考え方は資金繰りの制約と照らす。
頻度を分ける
CPAは毎週動きます。
受注率と解約率は、四半期でないと精度が出ません。
同じ頻度で見ようとすると、少ない件数の振れに振り回されます。
最初の1か月でやることは、定義だけでよい
定義が揃っていない状態で施策を増やしても、効果を判定できません。
最初は数字を作るより、数字の意味を揃えることに時間を使います。
獲得コストの構造が分からない場合は、無料相談で現状を見てもらうところから始められます。獲得から受注までの設計ごと見直す段階ならWeb集客改善サービスもあります。
よくある質問
CPAとCACは何が違いますか
CPAは広告費だけを件数で割った数字、CACは営業の人件費やツール費まで含めた数字です。BtoB SaaSはリードから受注まで人が動く期間が長いため、この差が大きくなります。媒体の比較にはCPA、事業の採算にはCACを使います。
リードの質が悪いと営業から言われます
まずMQLとSQLの定義を営業と揃えてください。定義がないまま質を議論しても噛み合いません。定義を揃えたうえで段階ごとの転換率を出すと、どこで落ちているかが分かります。
今月のCPAで媒体の継続を判断してよいですか
商談期間が数か月かかるため、今月の受注は数か月前のリードから生まれています。同月の数字で割ると実態とずれます。獲得月ごとにリードをまとめて追うコホートの見方に切り替えてください。
解約率は広告と関係がありますか
解約率はLTVを決め、LTVは許容CACを決めます。解約率が3%から2%に下がるだけで、かけられる獲得コストは大きく変わります。また入口で集める層がずれていると解約率自体が上がります。
代理店にどこまで数字を渡すべきですか
MQLとSQLの定義、段階ごとの転換率、媒体別の受注率、許容CACです。渡さなければ代理店はCPAを下げる提案しかできず、商談にならないリードが増えます。
まとめ
- 市場全体の広告費が伸び続けているうえに、SaaSは同じ検索語を取り合う競合が多い構造です。運用の巧拙だけで止められる上昇ではありません
- CPAは広告費だけ、CACは営業の人件費やツール費まで含めた数字です。BtoB SaaSは人が動く工程が長いため、この差が大きくなります
- MQLとSQLの定義が社内で揃っていないと、質の議論そのものが成立しません。定義を先に固めてから、各段階の転換率を見ます
- 数か月かかるため、今月のCPAと今月の受注は別のリードから生まれています。時期をずらして対応させないと、評価を誤ります
- 解約率がLTVを直接決め、LTVが広告費の上限を決めます。解約率が1ポイント動くだけで、かけられる金額が変わります
- 有料転換率はCACを直接下げます。獲得件数を増やすより、転換率を上げるほうが安く済むことがあります
- CPAを下げれば採算が改善するという前提が、最も多い誤解です。質の情報を媒体と代理店に返さないと、安いリードに寄っていきます
- MQLとSQLの定義を揃えることからです。定義がないまま広告の数字を動かしても、質の議論ができません